2025/03/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシグルズさんが現れました。
■シグルズ > 「――ご機嫌よう、レディ。ようこそお越しくださいました。ご自由にお寛ぎください」
貴婦人は恭しく頭を下げた青年の髪から覗いている角を見て目を丸くしたものの、
淑女の威厳を保ってすぐに表情を取り成し、軽く会釈をしてからパーティーホールへ消えていった。
さる貴族の屋敷、ホールの入口にて、青年はドアマンの勤めを果たしていた。
呼ばれるゲストは主催者たる貴族が厳選している者ばかりだから、トラブルが起きる心配はない。
青年の仕事は文字通り、紳士淑女の代わりにドアを開けることであり。
"主" の言いつけとあれば断ることなどできず。
ゲストが望めば個人的な接客をしてもいいと言付けられているが、
大抵のゲストは社交を目的に訪れているはずであり、物好きがいるとは考えづらく。
肉体に恵まれているお陰で、一晩ぐらいならば直立不動で過ごしても然程疲れないことだけが幸運だった。
■シグルズ > パーティーの時刻となってホールは閉め切られ、訪れる来賓の数は激減した。
こうなってからの時間が長いのだが、いつどこから来賓に見られているかも分からず。
「お酒の1杯ぐらい、心優しい御婦人様が持ってきてくれたら泣いちゃうんだけど」
なんて零したところで、涼みに行くのだろうか扉から連れ立った男女が出てくる。
とりなすようにやや背筋を伸ばして、柔和な笑みを作って来賓を見送る。
気を抜くことのできない夜が始まろうとしていた。