2025/03/01 のログ
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ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にカーリアンさんが現れました。
カーリアン > 単日の雇用先で業務を終える。
今日は簡単に数字をまとめるだけの事務作業であった。
午後までかかっても良い、との事であったが何の事もなく午前中で終わってしまった。
昼食もついてきたことだし、仕事としては悪くない。
あとは辞するだけとなったのだが、あいにくと雪が降り始めてしまった。
帰りづらいだろう、という事で午後一杯くらいは滞在を許可されている。
とは言え、

「……まぁ、退屈ですわね。」

廊下に飾られた絵を眺めるのも少し飽きた。
話し相手でもいれば気がまぎれるのだが…ぽっと出の雇われメイドではこの屋敷で見つけるわけもなく。
何かできる仕事があれば手伝いに行きましょうかと踵を返した。

道すがら、窓の外を見かければ数人の人だかり。
何かトラブルか…いや、雪下ろしの相談でもしているのかしら、と簡単に考えるが。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 書斎らしき部屋から銀髪の男が出てきた。馬車で送るという室内からの言葉に対し、不要であると手をひらひらさせる。
廊下を歩き、窓の外を眺めているメイドを見つけると釣られるように視線を向けた。

「少し雪がぱらついてきたな……何か気になるものでも?」

メイドの視線は空ではなく、地面側を見ている。声をかけながら近づき、数人の人だかりに気付いた。
何事だろうと少し気になったものの、男の興味はメイドの方に向けられていた。
褐色の肌と銀髪。故郷ではそう珍しいものでもなかったが、王都ではあまり見かけない。
異国の出、だろうか。胸元と頬のあたりを交互に眺める。あまり視線を隠す気はないらしい。

カーリアン > 出てきた男性に声を掛けられる前に気づき、優雅に一礼。
目端が利くようにも見えるかもしれない。

「いえ、外で何か話をされているようでしたので。」

片手で示すように窓の外を示す。先ほど見えた数人の人だかり。
天気のせいで積雪が多少なりありそうだからか、と考えてはいる。

「…屋敷が広いと雪かきにも一苦労でございましょう。」

男性の視線にはもちろん気が付いてはいる。
肌や髪の色は時として奇異の目で見られる事もある。
目線はそこまでのモノではないので、涼しい顔で受け流している。
そんなモノで動揺していてはメイドは務まるまい、と考えていた。

ヴァン > 「玄関口から通りに出るだけならそう大変ではないだろうが……
ここのお屋敷みたいに庭園もあると、どこまでの範囲を雪かきするかも考えないといけなさそうだ。
……あれ? 君はここのお屋敷の人ではないの?」

屋敷が広いと、という単語や人だかりに対する距離感を言葉から感じ、首を傾げる。
日雇いのメイドというものに考えが及ばないようだ。
視線に気付かれたと思ったのだろう、続けて言葉を紡ぐ。

「このあたりでは見ない肌だな、と思ってさ。故郷では船乗りをよく見たんだが。たとえばー」

砂漠の国、密林の国……いくつか挙げた南方の国の名に、メイドの出身地は含まれていただろうか。
男の故郷は額に巻かれたバンダナが示している。交易が盛んなこの国の辺境だ。
胸元を見ていたことにも気付かれただろう。誤魔化すように笑い、付け加える。

「外国から来たばかりの人と、こっちで何年か住んだ人では肌の色が違うんだ。
濃い褐色肌の人も何年かこっちで過ごすと肌の色が落ち着いてくる。君はどうなのかな、と思ってね。
顔みたいに常に外に晒されている所と、服で陽射しから隠れている所は皮膚の色がちょっと違うだろう?」

とはいえ、男の理屈はメイドが常に同じ服を着ていたら成り立たない。
男の視線は何度かペンダントを捉えているが、意識はしていないようだ。

カーリアン > 「そうでございますね。…屋根にまで積もればさぞ手がかかる事でしょう。
あまり雪が続かなければよいのですが。」

屋敷にとっても、自分にとっても。
男の話に同調しながら、自身の立場を聞かれればドレープを開いて再度一礼をする。

「申し遅れました。私はカーリアンと申します。
今日は斡旋所からの日雇い業務で屋敷の事務作業に携わっておりました。
…確かに私は南方の生まれでございます。どこで、との詳細はもう覚えてはおりませんが…。」

口減らし、人攫い、よくある話である。
こうして仕事を得るだけの技術をたたきこまれている分、自分は幸せなのだ。
男性の視線に動じないのも色々と経験を積んできたからに他ならない。
男が誤魔化すようにしても、それを咎める事もない。メイドなのだから。

「そうなのですね。確かにそのような事例もありそうなものです。
私は最近王都へとやってきましたので…。まだ色の差がでるという程では。
たいていはそこまで肌も出ておりませんし、室内業務の多い仕事でございますから。
…雇われの身ですので、外を歩く時間は多いとは思いますけれども。」

斡旋所やギルドへと出向く事が多い、と言う。
如才なく微笑を浮かべたまま、男の視線や表情はじっと見つめている。
屋敷の主人という風体ではなさそうだがと思うが、メイドからはそれを問いかける事はない。
礼を失するのは使用人としては失格だ。

ヴァン > 屋根と言われると男の顔が渋いものになった。なにやら嫌なことを思い出したらしい。

「これはどうも、ご丁寧に。俺はヴァン、という。
神殿図書館の司書をしている。今日は別件でここのご主人に会いに来たんだが……ま、それはいいか。
へぇ……パーティーを開催するから準備も含めて、なんてのは聞いたことがあるが。
そういう契約形態もあるんだな……ん。その契約ってのは、ここみたいなお屋敷だけ?」

斡旋所からの日雇いと聞いて、顎に手をあてて、感心したように頷いた。
屋敷の主人の部屋へ案内した者もメイド服を着ていたが、色遣いが少し違った気がする。
何よりこんなに胸元は開いていない。一瞬屋敷の主人の嗜好を疑ったが、すぐにその疑念を打ち消した。
目の前のメイドは好き好んで胸元の開いた独特なメイド服を着ている、ということだろうか。
あるいは斡旋所の制服なのかもしれない。途中、何かに思い至ったのか、質問する。

「最近来たんだ。普段は雪が降ることは少ないから、もっと過ごしやすいよ。
メイドさんは室内業務が多いよね。屋外だと初級の冒険者を雇って作業をやらせたりするけど……」

この天候で王都を嫌いにならないでほしいと冗談めかした言葉。
飛び回っていた視線はやがて眼鏡の奥の銀の瞳へと向けられる。表情は相変わらず穏やかで、リラックスしているようだ。

カーリアン > 渋い顔になった男を見て何か失言しただろうか、と思い返す。
しかし心当たりがなく、微かに不思議そうな眼差しを浮かべた。

「はい、ヴァン様ですね。屋敷の方ではございませんでしたか。
契約に関してはそう多いわけではありませんが、急に人手が欲しい所はそれなりにありましょう。
そういった場所で雇用先を探しております。主人が見つかるまでは、という所ですね。
私は家事以外にも事務や護衛にも対応できます。
戦闘は本職ではございませんが、冒険者の真似事くらいでしたら。」

スラスラと自身の技術に関して詳らかに晒していく。
差し当って王都で可能な仕事に関してはそういったところだろう。
屋敷や貴族の仕事を優先して選ぶのは『主人』を探している事も、顔を売る事も含まれている。

「つい先日に。比較的過ごしやすい都市だと感じております。
仕事にも困りませんので助かっております。
…こういう天候ですと冒険者様も商売あがったりでございましょう。
少額でも雇っていただける方がいらっしゃるのは心が広い方だと感じますわ。」

特に嫌う理由は無く、心配は要りませんと微笑んだ。
瞳を見つめられると?という風な表情を浮かべた。
不思議な銀色の瞳はそれなりに珍しいかもしれない。

ヴァン > 不思議そうな眼差しに、気にしないでと顔の前で手を振った。

「となると、うちのトラブルも解決できるのかなぁ。
勤務先の図書館で、同僚がしばらく休みをとることになってね。空いた穴を残ったメンバーで埋めてるんだが、
それでもメンバーの都合があるから人手が足りない日がぽつぽつと出てくる。
冒険者ギルドに頼むにしても荒っぽい連中が多いから、本を丁寧に扱える人がいればな、と思ってたんだ。
あー、神殿図書館だけど信徒じゃなきゃ働けないとか、そういうのはないよ」

相談してみて、目の前のメイドの反応を見る。仕事の種を持ってきたとなれば彼女にも何らかの利益が生まれるだろう。
魔法職などは本の扱いもできるが、もっと稼ぎのいい仕事が学院や魔術師ギルドにあるので、行き詰っていたところだった。
メイド斡旋所は中長期勤務のお屋敷向けサービスと思い込んでいた男には盲点だったようだ。
外国の出であれば信じる神もヤルダバオートやそれに連なる神々ではないだろうと考え、最後に付け加えた。

「……とはいえ、主人探しからは遠のくのか。場所柄うちの図書館は平民が多いし。
いや、働きぶりをみて俺が知り合いに紹介すればいいのか……?」

自分の考えを整理するように呟く。中身を聞く限り、この男はこれでも貴族らしい。
ラフな格好は平民にしか見えないが、貴族の邸宅で出入り業者ではなく、客の振る舞いをしている。それなりの立場の者なのだろう。

「ちなみにその格好は斡旋所の制服かい? いや……不埒な男の目を引いて困るんじゃないかな、とね」

不埒な男と言って親指で自分を示して笑う。
銀髪は男自身もそうだ。褐色肌は目につくし珍しい。銀の瞳は――そもそも人の目をじっと見る機会があまりないが、大分珍しいだろう。
男の青い目とは対照的だ。それに、普通の瞳とは何かが違う気がする。具体的にどう、とは言えないが……。

カーリアン > 気にしないでと言われれば気にしない事にする。
要望に応えるのがメイドの務めである。

「なるほど。そういった事でしたら対応できると考えます。
私の業務の予定などもございますので、スケジュールが合えば手伝いにも行けましょう。
書物の取り扱いもメイドの仕事に含まれますので、ある程度の説明さえいただければ差し支えなく携われると思います。」

単純に稼ぎとしても良いが、神殿への伝手もできるとなればこの上ない。
仕事柄、顔が広くて困る事はそうそうないだろう。
何せ来たばかりの王都であるのだから、ある程度の伝手は作っておきたい。

「ふふ。ヴァン様が気に病む事ではございませんよ。
ご紹介がいただけるのでしたら幸いでございますが、私も自分に合う主人を選びたく存じますので。」

この方はこの方で独自の関係を構築しているのだろう。
見てくれは確かに平民のようではあるが、それなりの階級での暮らしを営んでいる様子。

「あら。ふふ。これは私物でございます。殿方は喜ばれますので、女の浅知恵でございますね。
支給いただけるのであればきちんとした給仕服を着用致しますよ。

…それよりも私の目の色の方が貴方様の目を引いているようですが…気になりますか?」

望まれれば夜伽も行うメイドは、その事はおくびにも出さず。
男がやけに覗き込んでくるようで、それを察したメイドはにっこり微笑んで自身の目の色に関して言及した。

ヴァン > 「予定表を組んで足りない日はわかっているから、君の予定次第かな。
もし都合がつかなかったら、斡旋所に話して替わりの人を送ってもらえると助かる」

たまたま立ち止まって数分話をしただけで、男が頭を悩ませている問題があっさりと解決した。
彼女自身が来るのかどうかはわからないが、口許を綻ばせて感謝の意を伝える。
相手が考えていることなど露知らず、男はこの場所での幸運を噛みしめていた。

「ん……あぁ。俺はメイドが必要になる生活をしてないけど、知人には結構いるんだ。
王都用の邸宅を持ってるのとか、あるいは平民でも事業を手広くやってるのとか。ここくらいの規模が多いかな」

この屋敷、と伝えることでイメージを持ってもらう。
数人で足りる所がいいのか、あるいは数十人の一人になりたいのか、そういった希望もあるだろう。
服装が私物だと聞いて眉を僅かにあげた。

「俺がご主人だったら、悪い事をしてしまいそうだ。
図書館は私服にエプロンをつけるんだが……その服だとちぐはぐになりそうだ。
仕事用じゃない服で来てもらった方がいいかもしれないな。
っと、失礼。珍しいなと思ってね……瞳に吸い込まれるようだ、なんて言われたことはないかい?」

胸元に一瞬だけ視線を落とすと、谷間が見えた。この格好では同僚から何か言われるかもしれない。
にこりと微笑まれると、流石に気まずさを覚えて曖昧に笑い、冗談を口にすると共に質問に対して同意した。

カーリアン > 「その内容は斡旋所の方に直接相談してもらう方が良いかもしれません。
話してはみますが、私から代替の者を望める程権利があるわけではございませんので。
私個人が引き受ける分に関しては何ら問題はありませんので、後ほど直近のご予定をいただければ。」

自分にできる事、できない事ははっきりと伝えておく。
折角仕事をいただけるのだから、礼を失してはならない。
相手が助かり、自分も助かるのだからこの場合はよくないという事にはならないだろう。

「なるほど。確かにそういった方々には使用人は必要でしょう。
邸宅の清掃、事業の手伝い、人手と仕事はあって困る事はございません。
で、あればその主人の方々とのご縁をつないでいただけるのはありがたく思います。」

業務内容も多岐に渡るだろう。個人的にはある程度忙しい方が良い。
紹介をしてもらえるのであれば試用という形で幾か所か奉公しに行くのもいいだろう。

「では、ブラウスや薄手の手袋などを用意しておきましょう。
いずれは伺う事になると思いますので、無駄になることもないでしょうから。

…ふふ。そうですね、よく言われます。宝石のようだとか、吸い込まれてしまうとか、目が離せないだとか…。
お世辞でも嬉しいものですね。」

目のやり場に困る男の様子を微笑んで見ながら、どこを見ていても構いませんよ、と続ける。
自身はと言えばあまり男から目を離す事はない。
じっと、ずっと目線を合わせられる事になるだろう。

ヴァン > 「あぁ、それなら確か……難しい日があったらその旨と、斡旋所の場所も教えてくれるかな」

懐から数枚の紙とペンを取り出す。一枚を見て、他の紙へとさらさらと書き写しメイドへと渡した。
数字が5つ書かれている。曜日の記載こそないものの、これが人手の足りない日、ということだろう。
それとは別に三桁の数字が書かれており、下線が引かれている。これが日給か。
斡旋所を噛まさずにこういった取引を行うのは大丈夫だろうかと頭をよぎったが、深く考えないことにした。

「そうだね。会う人に話をしてみるよ。
意外と知らない人、ってのは多いだろうから」

ここ数日で会う約束がある面々を頭に思い浮かべた。
雑談の話のタネとしてそう悪くない話題のように思える。
美人の子だった、と付け加えたら目の色を変えて話に食いつくだろう姿を想像して、くすりと笑った。

「あぁ、助かる。学院なんかでアルバイトを採用するにも時間がかかりそうだからね。
今月と来月あたりで人不足が解決すればいいんだけれど……」

休職する者が復帰するまで一年はかからないだろうが、先のことはわからない。そのまま退職もありうる。
目の前の彼女の助けが長く続いてほしい気も、そうでない気もする。複雑な心境だ。

「確かに……不思議な感じがするな」

許しを得たからか、じっくりと瞳を眺める。半歩歩み寄り、背を曲げて顔を近づけた。
場所が薄暗い所でいいムードならばそのまま唇を奪ってしまいそうになる。
だが、今は昼間で取引先の屋敷だ。仕事の話ならば許されようが、艶めいた行いはさすがに憚られる。
しばし堪能した後、何もなければゆっくりと顔を離していくだろう。

カーリアン > 紙を受け取り、ふむ、と一目確認をする。

「かしこまりました。それでは、こちらの日取りのみ先約がございます。
あとの日付は特に問題ございません。日給の方もこれだけいただけるのでしたら助かります。」

斡旋所に関しても名前の登録はしているものの、仕事内容からすれば日程は歯抜け状態だ。
ある程度スケジュールの管理は任されてはいるらしく、入れない日のみにペケをつけて日程の紙を返した。
あとで1枚もらって日程をメモしておこう、と考える。

「使用人というのはたいていの人が自前で召し抱えているでしょうから…。
フリーの使用人というのはあまり多くはないでしょう。
とは言え方々から渡ってきた人材もいると思います。私のように。」

斡旋所やギルドなどはそういった人材の確保や仕事の斡旋を行っているという事。
まぁ、話半分でもしておいてもらえれば助かるというものだ。

「長期になりそうであれば斡旋所や、文学系のギルドにも話を通してみてはいかがでしょう。
勿論皆が皆仕事を完璧にこなせるわけではございませんが…。
いついかなる時も人は育てねば次につながりませんので。」

と言ってから、少し出過ぎた事を、と小さく頭を下げた。
そこを考えるのはまたこの男性の仕事であろう。

間近で瞳をチェックされても忌避感なく、微笑で受け入れる。
そのままキスしても構わないような雰囲気はあったが…。
男性の方から離れていった。まぁ、さすがに場所が悪いだろう、とは思う。
商談と言えばこんな所だろうか、とは思うが。

ヴァン > 「ありがとう。この日は……俺が出ればなんとかなるか。あ、その紙は持っていてもらって構わない」

日程の紙を返そうとする相手に対し、不要である旨伝えると己の持つ紙束に何やら書き込んだ。
先約があると言われた日程は男が休みの日だった。一日ならばと、斡旋所に相談に行くよりも安易な手段をとろうとする。
続く言葉には頷いて返す。この国は多くの人が訪れる。
彼女はどんなきっかけで故郷からこの国に来たのだろう、とふと思った。

「そうだね……図書館の業務には事務系のものもあれば資格が必要なものもあるんだ。
司書に興味がありそうな人がいないか、いろんな伝手で探してみることにするよ」

人探しが難航した理由もそこにあった。王都平民地区神殿図書館は司書志望の者にとって最良の場所とは言い切れない。
若手の採用・育成は逃れられない業務だ。助言に対して苦笑交じりに返してみせる。

「……さて、そろそろ戻らなけいと。美人との会話は楽しいから名残惜しいが、容赦なく押し寄せてくる仕事の相手をしなくては。
カーリアンさん、今日知り合えて本当によかった。これからよろしく頼む」

お世辞なのか本心なのか、微笑をたたえたまま話す。視線の動きから、男は時間や場所によっては別の顔を見せそうだった。
右手を差し出し握手を求める。貴族にしては身分差を気にしない性質の、珍しい男のようだ。

雪は変わらず降っていたが、悩みの種が一つ解決したこともあってか男は足取り軽く屋敷の敷地内から立ち去って行った。

カーリアン > 「かしこまりました。ありがたく受け取っておきます。」

姿見に似合わず働き者らしい、その辺りは好感が持てる。
仕事は尊いものである。働きに行けば、近い内に世話になる事になるだろう。

「王都は人の数には恵まれていると存じます。
…きっと良い人材が眠っている事でしょう。」

男性の内心を知ってか知らずか、メイドは控えめな声でそう言った。
人材を遊ばせるのは非常にもったいない事だ。
斜陽の王国とは言え許される事ではないだろう。良い巡り合いがあると良いとは思う。

「はい。次に会う時は私には敬称なくお呼びいただけますよう。
こちらも今日の出会いには感謝を。」

年上の男性に敬称をつけられるとは、面はゆい所もあるがそれ以上にメイドという仕事の都合上立場もある。
まぁ、それはまたいずれ、と思いながら差し出された手を握る。
仕事をする男性の筋張った掌だ。と、柔らかい掌を持つ女は思った。

男が去れば一息。
雪のちらつきが緩やかになるころ、メイド姿のまま屋敷を辞して行くだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からカーリアンさんが去りました。