2025/01/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にニュアさんが現れました。
■ニュア > とある貴族邸――。約束の刻限に、そのフードで容貌を隠した小柄は屋敷を訪れた。
白髪の召使いに豪奢な貴賓室に通され、背中ごと沈みそうなクッションの利いたソファに腰掛ける。
荷を――即ち商売道具を傍らに降ろし、高価な調度で埋め尽くされた室内を、細面を持ち上げて軽く見回し。
「はァ……っ。如何にも御貴族サマってカンジで嫌味な部屋だよネ……。
コレとか幾らなんだろ。 コッワ…。」
射干玉の艶やかな双眸を皮肉に細めては、ひそりと独白を洩らし、肩を竦めた。
娘の座すソファとて、一流の職人の誂えたものであろうし、靴底に敷いてる絨毯とて怖ろしい値である筈だ。
流石にふらふらと歩き回る気にすらならず、双眸だけを巡らし、大人しく“顧客”を待つ。
その口の悪さに見合わぬ繊細にして可憐な貌をフードの内側に隠しつつも、
まるで野良猫の如き神経質さを漂わせる少年風貌――娘の、生業は薬師。
今日は請われ、商談に訪れた。
傷に効く軟膏、美顔薬に媚薬の類。はたまた表沙汰にできぬイケナイ禁薬まで。
御要望とあらば何でも売る所存。なんたって御貴族様。最上客の部類。
普段持ち合わせぬ愛想だって無理くりにでも捻り出してみせよう、といった具合であるのだから。
■ニュア > 敢えて躯の輪郭を隠す長衣とマントに隠された、その体躯は華奢で細い。
表情のスパイシーな涼やかさ相俟って少年のように見えるだろうが、
それでいて、陶器めいた頬の滑らかさと睫毛の繊細さは少女とも判じられるだろう。
きっとはにかみでもしたなら花舞う愛らしさですらあろうのに、
全く以て無愛想なのが、この薬師である。
「てゆぅかさァ、…遅くない? この自分本位に待たせてくるカンジも、御貴族サマってヤツ…」
双眸据えた半眼に、ぼそり、呟いては欠伸を噛み殺す。
自分中心に時間が巡っている御都合主義なんてのは、貴族によくいる。
後々問うてみれば「茶を嗜んでいた」なんて暢気なことを宣ってくることもあるくらいだ。
正直腹立たしいことこの上無いのだが――…勿論文句なぞ言える筈もない。
大人しく借りてこられた猫のよに、ただじっと待つのみである。
「コレで、大した儲けにもならなかったら許すまじだよネ…」
■ニュア > この後、散々待ち惚けを食らった娘がどのような面持ちで屋敷を出るのか、
それはもう暫く後に知れることであり――…。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からニュアさんが去りました。