2024/11/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にホアジャオさんが現れました。
■ホアジャオ > しんと冷えた空気の空の中天にまで月が昇ったころ。
夜の富裕地区は繁華街といえど、路地にまで喧噪が漏れるような場所はあまりない。住宅街なら尚更だ。
何れかの屋敷から、高い塀越しにみやびやかな音楽が聞こえてくることはあれど人の声まで漏れてくることはない。何か仕掛けがあるのかもしれない。
風のない夜で、ただ月光によって照らされた建物とその影が奇麗に整備された石畳に落ちている。
(…なァんか
自分が小さくなって、おもちゃの街か何かに迷い込んだみたいだ)
辺りで動くものがない路地を、三つ編みを揺らして歩く人影ひとつ。
辺りの屋敷を見上げたり横目に過ぎたりしながら大股の足取りは自信満々だが、特に行く当てはない。
■ホアジャオ > 数多のライバルを押しのけて勝ち取った(らしい)『公主の用心棒』という仕事は、定期収入が得られる代わり
と言っては何だが、女にとっては退屈が過ぎた。
最初のころこそ富裕地区や王城を珍しく散策したものの、もともとそんなに建物にも文化にも疎いのですぐに飽きてしまったのだ。
そもそも護衛対象がマフィアのボスでもなくあちこちから恨みを買っている悪徳貴族でもなく公主だ。襲われる確率より公主の方がある意味貴族を襲う確率の方が今のところ多い。
今日だってそんな公主が貴族の屋敷のパーティーに乗り込んで、あとついでに多分、今文字通り乗っているころだろう。
明日迎えにこい、という伝言だけ受け取って、女はいま塒に帰る―――ついでに適当に歩き回っている。
体力が余っているのが解る。このまま帰ったって寝付けないから、どうにかして体力を削らなければ。
(喧嘩相手が見つかればなァー)
貧民地区のごろつきをどついて帰るのも飽きた。けど、このまま何もなかったら多分どつきに行くだろう。
■ホアジャオ > 足取りを止めないままはぁーと吐息を漏らしながら空を見上げると、黒い夜空に星が散っているのが見える。
そのまま、今度はそおっと息を吐けばしろくけぶっていった。
(ン―――…)
そのまま機関車よろしく白い煙を漏らしながら、三つ編みを揺らす姿は富裕地区を抜けていく。
たぶんまた今夜も
貧民地区の何処かで、ある意味での犠牲者の叫びが響き渡ったろう―――
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からホアジャオさんが去りました。