2024/07/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にゴットフリートさんが現れました。
ゴットフリート >  
夕刻より降り始めた雨は、夜になって益々その勢いを増していく。
バルコニーより見下ろす庭の木々は雨に洗われ
絶え間ない楽のような音色が響き渡っていた。
硝子戸ひとつ隔てた先の、ダンスパーティーの音楽も此処ならば聞こえない。
その方がずっと良いと、酒のグラス片手に初老の貴族はバルコニーにいた。
降り注ぐ雨に濡れた空気、僅かに衣服を湿らせるそれを我慢する方がずっと良い。
内側に満ちる、欲と下らない陰謀と詰まらない世辞に満ちた空気よりは。

「まったく――つまらん宴にならなきゃいいが。」

ささやかに零した声音も雨音は慎み深く隠してくれる。
新興の商人が催した宴。
大勢の客を節操なく招待し、後ろ暗い財を見せびらかすようなそれ。
解放された屋敷の各部屋に早速、女を連れ込んでいる者もいれば
この場で知り合った者達と、表沙汰にできない話をし始める者もいる。
その、どれとも今は交わらずに、雨のバルコニーを愉しむような老貴族。
灰色の目は、雨の風景へとただ、注がれて。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からゴットフリートさんが去りました。