2023/12/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 地下劇場」にハレスさんが現れました。
ハレス > ほどよく色気がありつつも落ち着いて飲める健全店、そんな店が王都にも少なからず残っている。
平穏な一日を終えて晩酌を楽しむのに打ってつけのソコはこの男にとってはなじみの店でもあり、店にとっては常連客の一人であろう。
ちょっと洒落た酒とつまみ、そして魅惑のパフォーマンスの肴に、ほかの常連なんかと談笑したりしながらいつも通りに過ごしている。

「むぅ、この時期に暖炉が使えないのはきついな」

踊り子たちが楽屋に戻らず、ある程度の熱気を保ったフロアにとどまっているのに気づき、彼女らの話に耳を傾ければ納得といった表情。
筋骨隆々で経験豊富なこの男も修理工ではないため役に立つことはできないだろう、せめて女の子に酒を奢り、多少暖かくなってもらうくらいだ。

アルマース > 暖炉、と言っても魔法仕掛けのものらしく、修理にも特殊な技術が要るらしい。
『いま修理しているところだよ』と聞けば、ふうんと気の乗らない返事。

ギルドに人を手配してもらった、とオーナーが言っていたから、どこかの魔法使いが来ているのかもしれない。

横手から聞こえた声に顔を向けると、やけにガタイが良い男――この店で仕事をし始めてわずか一月くらいの、まだまだ新顔の女にとっては、話したことは無いが何度も見かけた記憶はある、くらいの認識だ。

腐敗はびこる王都では健全すぎるくらいの店に何度も来るような常連は、大体人柄も良い。
紅い色をのせた唇がにっこりする。

「ねー? 早く直してくれないとこの衣装で帰るしかないよ。
 本物の衛兵さんに捕まっちゃう」

首を竦めて見せて。

「急かしてもしゃあないし、直るまで飲むかあ。
 兄さん、よく見かけるよね。何飲んでるの~?」

ハレス > ハレスのほうもまた、オーナーの話と同じ話を他の常連から聞いているところだ。
それなりに詳しい者もいるということだろう。
そういうことなら余計に力になることはできないだろう、力押しがメインの魔獣であることを隠す男にとってみても、魔法関係はそこまでスキルを振っているわけではない。

「まぁそう時間はかからんだろうよ」

健全店であり、優良店でもあること店であれば、従業員への福利厚生もしっかりしているはずでありその日のうちに直るはずだろう。
問題は今がすっかり寒くなった時間帯だということだが。
合間に相手をしに来る女の子と談笑を挟みつつ、次に声をかけてきたのは初めての相手の踊り子。
もちろん男のほうもその姿と顔は何度か認識はしていたが、こうして直接話すのは初めてだった。

「おぅ、お疲れさんだな。
これかい?ウィスキーにショウガとハチミツをちょっと混ぜたやつだ、結構暖まるからお嬢さんもどうだい?」

まだ飲み始めて間もないためほろ酔いにもなってなさそうな男は豪快な見た目とは裏腹に落ち着いた物腰で、自分が飲んでるものを紹介しつつ時期にちょうどいいものだとおすすめして。

アルマース > 客席の暖炉は稼働しているはずだけれど、火力――魔力?――が弱いのか、確かにいつもより足元がひやっとする。
踊った後なのでまだそんなに寒さは感じないが。

時間はかからないと言うのに、そうだといいねえ……と期待は薄め。
ハレスの手元のグラスを見て、顔を近づけ犬猫のごとくすんすん匂いを嗅ぐ。

「ありがとー。生姜と蜂蜜は良いよねえ……。
 でもウイスキーは匂いがなあ……あ。レモンたくさん入れてくれれば飲める」

そうしよう、それでお願い、と即決してバーテンの方へ声を掛けた。

「話すのは初めてだね。アルマだよ。最近この店に出させてもらってるんだ。よろしくねー。隣、いーい?」

偽衛兵の帽子のつばを持ち上げ、ご挨拶。
隣の席に手をかけて問うように首を傾げる。

ハレス > だがたしかにいつもより足元が涼しいような気がする。
客のいるフロアにも影響がでるようならそれもそれで問題だ。
酒が余計に売れるだけかもしれないが。

「ああ、無理に強い酒にする必要はないからな、薄めるなりジュースで飲むなりしてみるといい」

男も水割りしているとはいえ特有のにおいを苦手とする人も多かろう。
無理に進めることはせずお気に入りを作ってもらうのが一番よい。

「そうだな、初めましてアルマ、俺はハレス。
とりあえずは…なんでも屋ってところか、今は。
もちろんいいぞ、遠慮しないでくれ」

肩書について少し悩んでからざっくばらんに答える、厳密には違うのだが。
説明すると長くなりそうなのではしょることにしよう。

「最近来たと言ったが、ほかの国からきたのか?踊りなれているように見えたが」

最近来たにしては彼女の踊りはとても初心者とは思えない仕上がりというのは素人目でもよくわかる。
今までどこかで踊っていたということだろうと。

アルマース > ジュースで飲むなり……と言われて、子ども扱いしているのかと一瞬剣呑な目つきになりかけたが、単純に優しさらしい。
己の短気を反省する。

「ハレスさんね。とりあえず何でも屋……? すごく何でもしてくれそうだね?
 お邪魔しまあす」

はしょろうとしているところ、漠然たる肩書に笑ってしまった。
隣の椅子に座って足を組む。
癖で椅子のふちを手で確かめるが、ささくれだった木の椅子でガーターやタイツが傷むのを気にしないで良いところはさすが富裕地区の店である。
仕事先のひとつとして手放したくない。

「うん、踊り子やりながらあちこち流れてるんだ。
 ここの街に来たのは一月……? 二月……? くらい前かな。
 都会は危ないけど、仕事が多いのは助かるね~。
 ……ハレスさんはこの国長いの?」

運ばれてきたグラスを、給仕の盆の上に手を伸ばして自分で取った。
かんぱあい、と軽く掲げてみせて。

ハレス > 「暖炉は直せないがな、まぁ傭兵とか冒険者あたりに戻ろうかどうかってとこだ」

だからこその何でも屋といったところ。見た目からしてその手の職業であることは明白だったろうし、現役ではなかったというところも話の流れで察することはできようか。

「ほお、じゃあ方々巡ってきたわけか…大した行動力だな。
どうせならこの国には長くいてほしいもんだ、そのうちまた旅に出るなんて言わないでくれよ、せっかく美人と知り合えたんだしさよならはしたくないからな」

旅の踊り子とはなかなか珍しいタイプだと思う。強かでないと旅先で食い物にされてしまうのは明白な職業であるだろう。
少なくとも彼女はその強さと運の良さを兼ね備えているからこそこの店に腰を下ろせたのだろう。

「俺は数年ってとこだな、それまでは他の国にいて…引退してあちこち巡ってここに落ち着いたって感じだ…むぅ、そう言ってみるとアルマとそう変わらんな」

自分で言ってて彼女とそう来歴は変わらないなと笑いながら、二人の出会いを祝してグラスを鳴らし乾杯をして、ぐいーっとグラスを空にする。

アルマース > 「……傭兵……冒険者? へえ、戦うひとってこと?
 その身体で、お花屋さんですって言われるよりは大分納得かな」

頭の中のハレスを花で囲んで、自分の想像にくすくす笑う。

「んふふ、いつ死ぬか分かんないし、やりたいことやっておかないとでしょ?
 このへんは見るところたくさんありそうだから、長居しそうな気はするけどねえ。
 短気起こして誰か殴ったりしてお尋ね者にならない限りは、しばらくいるんじゃないかしら。ありがと~」

旅をするのは流れるのが好きだからという理由が主だけれど、実のところ、無理やり触ってこようとする客を殴って仕事がしにくくなった、という理由で街を離れなければいけなくなったこともある。
この国で、いつそうならないとも限らないので、ずっといるとは言い切れず、言葉はあやふやだ。
旅するうちに、あしらい方や我慢というものを覚えてきてはいるから、王都にまで悪い噂が流れていたりは、まさかしないだろうけれども。

「ええ、引退は早くない? 怪我とか……奥さんに危ない仕事はやめてって言われたとか……?
 ……ん、んま。これ良いね、部屋でもやろう」

年齢的には現役ではないのかなと。グラスに口をつけて一口。
生姜の辛みと蜂蜜の甘味、レモンの酸味がウイスキーの匂いを軽くしつつ、複雑な味わいを足している。
気に入ってぺろりと唇を舐めた。

ハレス > 「そ、そうか?やっぱり大人しい仕事は似合わなさそうか?」

花屋であると想像されて楽しそうにされているのを見ると、やはりお上品な仕事とこの見た目ではギャップがあるのだろうか。

「強かというよりお転婆だな、まぁ手が出るくらい気が強いならむしろこの国でならうまくやっていけるんじゃないか、客を殴るくらいでお尋ね者になるほど憲兵も暇じゃないからな」

背徳のるつぼであり多くの人間が行きかうこの国である程度の悪評など無いに等しいかすぐに忘れ去られてしまう。
それだけ多くの人の流入があるし、様々な出来事が起こったりもする。
少なくともその点において、所在の心配をする必要はないと思われる。

「するどいじゃないか、まぁ見た目と実年齢が大きく違うということにしといてくれ。
引退はお察しの通り怪我が原因だな、嫁はまぁ…あっちのほうがアグレッシブだったりするから心配は微塵もされてないな」

年齢については見た目よりもずっと長生きであることを仄めかしつつ、それなりの経験をしてきたことをうかがわせるところもあり。
連れ合いのほうも男が遠い目をするくらいしっかりしているということか、少なくともこういった店に遊びに来ることも許すくらいには。

「んんっ、ともかく…アルマはつまり今は一人暮らしって感じか?
職場はあるが頼れる人間とかはいたりするか?」

ちょっと心配な目を向けてしまうのはやはりそういう人柄ゆえか。
店もある程度守ってくれるとはいえその庇護もかぎられているだろう。

アルマース > 「一周まわってすっごく似合うと思う。絶対可愛いでしょ」

笑みが真顔になる。開業するなら応援すると言い出すまである、そんな顔。

「相手がやんごとない人じゃなけりゃ、見逃してもらえるのかなー。
 ……ううん、大人の女なので、もうそういうイザコザは起こすつもりないけど……」

ちょこちょこ殴りたい気持ちになる日は多いので、言葉尻は儚く消えて行く。
ウイスキーを飲んで誤魔化して。

「ン? 見た目と……、……ああー……ん――そうなんだ」

エルフとかドワーフとかミレーとか、人間視点の見た目と年齢が合わないらしい、というふわっとした知識はある。
ハレスは人間に見えるけれど……と、じろじろ見てしまいそうになるが。
きらめく化粧を施した瞼が、ぱちぱちっと瞬いて。異種族なんだなーくらいに思っておく。

「奥さんもつよいの……!? いいなあ。戦える女、格好いいなあ。
 あたし? 平民地区に宿借りてるよ。職場――職場はまあ、流しだからねえ。
 そのへんの路上で芸をやることもあるし、小さい酒場ならその場で交渉して踊らせてもらうこともあるし。
 この店は、今はコンスタントに入れてもらえてるけどね。
 昼間は最近、鍛冶屋で小遣い稼ぎさせてもらったりも――……ん……? 心配されている……?」

訊かれれば、何でも話す性質である。つらつらと訊かれるままに答えながら、たよれるにんげん……? と首を傾げ。
思い浮かぶ顔が無いわけではないけれど。何せ旅の身の上、職も安定しているとは言い難い。
何でそんなこと、と途中で不思議になってきて。

ハレス > 「かわいいか…そいつは想像もつかないが、隠居の身になったら選択肢としてアリかもな」

お堅い頭では想像がつきようがないが、真顔で言ってのける相手を見ると将来の選択肢としてはありだろうと悪くない感触。

「まぁ、無理に抑えろとまでは言えないがな。
なにか他でストレス発散できてるならいいんだが」

他にも仕事をしていて、問題がありそうなら自分の身を守るのに無理に抑える必要はないとも思う。
もちろん無いにこしたことはないが。

「見た目は人間とそう変わらないがな、ただあんまり周りには言わないでくれよ?
偏見と差別だけはしつこく付いて回るからな」

じっくり見ようとする相手に不快に感じることはなく、むしろ違うとこなんてないだろうと見せようとしてくるほど。
一応秘密にしてくれとは念押しするもよろしくねくらいのニュアンスで落ち着いていて。

「ああ、なんだ…年寄りの世話焼きとでも思ってくれ…若いやつにあんまり不幸になってほしくなくてな…」

職業病ともいうべきか、駆け出し冒険者の相談役とかやっているがためについつい余計な気遣いをしてしまったりするのだ。
今回もその悪い癖が出たようで思わずいろいろ聞いては心配する方向になってしまった。
誤魔化すように新しいグラスを一気に飲み干しながらおせっかいですまないなと笑って見せた。

アルマース > 「緑色のエプロンが良いと思うなあ」

目を細くして、お花屋さんの制服を考える……

「ストレスがすぐ体に出るタイプだからねえ。
 したくない我慢はあんまりしないことにしてるのよ。
 ハレスさんみたいに良いお客さんばっかりだったら良いのにね~」

テーブルに頬杖をついて溜息。
暮らしぶりの心配までされてありがたいことである。

「うん。聞かなかったことにしておく。任せて、忘れっぽさには定評があるわ」

肌の色や服装の違いで、旅先で馴染めなければ、違和感のある扱いを受けるのは自分も同じこと。
種族は分からないけれど、上流階級の相手をするみたいに神経を使うわけでもなし、これだけ人が好いなら何の問題があるのか。

「あはは、父さんみたい。
 困ったら誰にでも遠慮なく頼るし、そうそう死なないんじゃないかなー。
 飢え死にしそうになったら餌くれそうな人リストにハレスさんも入れとく。
 家から食べ物が無くなってたらあたしだと思って?」

泥棒宣言をしてにっこりする。飲みっぷりが良いなあと、釣られてグラスを干して。

ハレス > 「まてまて、気が早いぞまったく」

まだ確定でないのにエプロンの色まで決めようとしてきて思考を止めさせる。

「俺も良いとは限らないぞ~、酔っぱらったら我慢できなくなるかもしれないからな。
アルマはいい女だしな」

何杯目かの酒を呷りながら少々饒舌になっていくのは酔いも回ってきた証。
実際彼女のような直情的で明るいタイプは好ましく、この店でなかったならば手を出していたかもしれないと笑って。

「ああ、困ったらいつでも頼ってくれ、遠慮はいらないからな。
だから盗むんじゃなくて普通に食べに来てくれ…ツケにしておくからな」

信用して盗み宣言までしてくる相手に笑いつつ、しっかり貸しにしておくとも笑って。
そうして再びグラスを空にすれば血色も程よく高揚してきており。

「ふぅ、楽しいおしゃべりでついつい飲み過ぎたようだな…身体も暖まったしお暇したいところだが、アルマはまだ仕事かい?」

飲み過ぎたというには足取りはしっかりしているし、本人的にはほろ酔い程度なのだろう。
しかし深酒もほどほどに帰ろうと支度を始めては彼女を見る。
こういう店では客とキャストが一緒に帰ることには取り決めは無い。
客層が良いからというのもあるのだろうし、店の外で起きることは自己責任というのもあるからだろう。

アルマース > つい空想が先走る悪い癖を笑って誤魔化した。

「酒は飲んでも飲まれるなでしょ。
 ええ――そりゃああたしは良い女だけど、一夫多妻が嫌で故郷を出たようなもんだからねえ。
 奥さんに愛想尽かされたらまたおいでよね」

その時は相手をする――とは言わなかったのは、もしかしたら指をさして笑って追い打ちをかける気だからかもしれない。
ガタイの良いハレスがアグレッシブと評する奥さんとどちらが強いのか、見てみたい気持ちも少しある。
頬に口紅の跡でも残して、戦いの狼煙を上げても良かったけれど、不幸になってほしくないと言われたのに、自分の方が人様の家庭の不和を楽しみにするのは大分よろしくないので控えておく。

「んふふ、優しいね。ありがと~。
 ? そういや暖炉――――……」

ハレスが腰を上げるのに、どうなったんだろ、と客席を見回せば、暇をつぶしていた踊り子たちが丁度楽屋へ戻っていく様子。
そういえば足元もいつも通りに温かい。

「ん、直ったみたいね。あたしも着替えて化粧落として帰ろっと!
 おやすみ、ハレスさん。今日はありがと~、また来てねえ」

支度にそこそこ時間がかかるので、連れ立つとは思わず椅子から立った。
機嫌良く投げキッスを振りまいて、楽屋へと――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区 地下劇場」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区 地下劇場」からハレスさんが去りました。