2023/10/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシェティさんが現れました。
シェティ > 王都富裕地区の中でも店舗や商会の施設が集中する区画に在る一軒の店舗内、
侍女風貌の女は一人、その商品棚の一角の前で長い事考え込む風な素振りを見せて居た。

今回の目的は至極単純な買い付け。
王都に在る商店へと足を運び、主の好みそうな酒をひとつ購入して帰還する。唯それだけの筈だったのだが―――。

「――――……まさか、同じ品種のワインひとつ取っても此処まで種類が有るとは………。」

ぽつりと、誰に聞かせるでも無く零れた感想は抑揚の淡い声とは裏腹に、驚きと感嘆の色を含みながら、
目の前の商品棚に無数に陳列されたワインボトルのラベルと、中身の液体の色合いをひとつひとつ見比べてゆく。

富裕地区の貴族達の好みに合わせるべく、様々な種類の商品を取り扱う王都内でも有数と言われている其の商店は、
棚に並べられたワインだけでも数十種類、恐らく他の場所に貯蔵された物を含めればその倍は優に超えるであろう。
従者として、主の好みそうな酒精の傾向はある程度把握しているつもりではあったが、
無数に並べられたボトルの内どれが最も主の好みに近しいかは、最早皆目見当が付きそうに無かった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にメレクさんが現れました。
メレク > 侍女が葡萄酒を選ぶ商店の前。路上の脇には一台の馬車が停められている。
馬車の扉には家紋が施されており、その紋章が王国の辺境伯を指し示している事は、
この界隈に住まう富裕層の人間であれば、誰もが周知であろう。
そして、その馬車より一人の老嬢が降り立つと商店の扉を開き、悩む少女の許に近寄っていき。

『――――シェティ。いつまで時間を掛ける心算ですか?
 お屋敷ではご主人様がお待ちかねですよ』

少女が身に着けるのと同様の侍女服を完璧に着こなしているのは彼女の上司である侍女頭。
既に薹が立った年齢ではあるが、若い頃は周囲が放置しておかなかった事が容易に知れる容貌の持ち主である。
数多く並べられたワインを前に逡巡して決めあぐねる少女に眉尻を下げつつも、急ぐようにと急かして。

シェティ > そうした数有る内から如何にか二本まで絞り込んで、片方ずつの手に取った其れらを見比べて吟味していた最中、
店舗の扉が開いたかと思うと、現れたのは己と同様の侍女服を纏った一人の老女。
女が王都に身を置くにあたって一時的に仕えている屋敷の侍女頭であった。

「――――大変失礼致しました。………只今参ります。」

どうやら、女自身が思っていた以上に時間を掛け過ぎてしまっていたらしい。
普段であれば決してしない失敗に恥じ入る様に小さく項垂れながら、結局選んだ二本の内の片方を手に取り、
会計を済ませてから最終的に二本のボトルが入った包みを持って侍女頭の元へと足早に戻って来る。
片方は女が一時的に仕える屋敷の主人の為のもの。
もう片方は『故郷の父への贈り物』という名目で購入した、女の本当の主の為のものだった。

メレク > 彼女が勤める屋敷には厨房を取り仕切る料理人がおり、ワインを管理するソムリエも居る。
態々、侍女を商店にお遣いにやらずとも、地下の貯蔵庫にはこの店に負けず劣らずの秘蔵の酒が取り揃えられている。
では、何故に彼女にそのような指示が与えられたかと言えば、主人の悪趣味なお遊びである。
商店へと赴かせ、その葡萄酒の豊富さと値段の高さに侍女が狼狽する様を想像して愉しみ、
その上で選択したワインに舌鼓を打つという、そのような嗜好は彼女以前にも幾人の侍女に課せられており。

『――――結構です。屋敷に戻りましたら、貴女がご主人様に手ずからサーブするように』

過去幾度も同じようなお遊びの目付け役として遣わされた侍女頭にして見れば、
主人の悪趣味さと、若き侍女の狼狽振りを目の前で見せ付けさせられるもどかしさに辟易するしかない。
時間を掛けて、彼女が選んだ銘柄を横目で確認すると、一つ、肯いて見せて馬車に乗るように促し。
二人を乗せた馬車は、富裕地区に居を構える主の屋敷へと走り出していき――――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からメレクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシェティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にロイナさんが現れました。
ロイナ > 富裕地区の空気はいつもとそう変わらない。
特に商会や店舗が軒を連ねる界隈になれば、金銭の行き来する区画だからか警備も厳しくなる。
そして富める者が時にゆったりと、時に忙しなく出入りするのだ。
最もそれは陽の高い日中の話──夜はからりと人の気配は薄くなり、打って変わって静けさが場を支配する。

そんな夜更け──
一人の少女がふらりと、今は無人の辺りに立ち寄った。

「また随分と──この時間は寂しいところだね」

餌──もとい懇ろにしている妙齢の女性が住む邸宅からの帰り道。
寄生しているわけではなく、気が向いた時に顔を見せているだけだ。無論訪れている間、どこで過ごしているかといえばベッドだが。

さておき、何か興味を惹かれるものはないかと見回してみる。
が、警備の兵士が眠そうに立っている以外は特別何も見つからない。
ちょっぴりがっかりしつつ、偶々見かけた長椅子にすとんと腰を下ろした。