2023/08/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/とある貴族の屋敷」にレベリオさんが現れました。
レベリオ > 王都富裕地区。
夜更け、と呼んでも差し支えない時間に差し掛かった頃合いだ。
けれど、この場所の喧騒はまだ止む気配はない。
とある老貴族の、生誕を祝う宴だったか、初孫の誕生を祝う宴だったか。
メインとなる老貴族が引っ込めば、あとは宴。
贅を凝らした料理や酒がテーブルに並び、壇上では楽団が穏やかな曲を奏でる。
客たちは思い思いに言葉を交わし、中には密やかに屋敷の陰に消えていくものもいる。

「……お盛んなことだ。」

壁の花、という言葉がある。
いささか本来の意味とは違うが、今日の彼を喩えるならその言葉が相応しい。
壁際に立って、料理には手を付けずに、グラスの中の紅の葡萄酒を時折口にする。
その蠱惑的な紅の酒よりも、更に深い深紅の眼差しが見るともなく見ているのは客たち。
ほとんどは貴族だが、中には彼のような“商人”の立場の者もいる。
そもそも、自分がこの場に招かれたのはどういう縁だったか。
確か、この屋敷に以前、絵か調度品を売った縁だったか――。
思い出そうとしても思い出せない、どうでも良い記憶。

とはいえ――こういう場にもたまには顔を出す必要はある。
爪と牙だけではどうしようもない関係を作って維持するため。
それに、いつだって、思いもよらない幸運は、何かをしなければ訪れないのだから。
そんなことを思いながら、知己の者や紹介された者との会話もひと段落ついた頃合い。
壁際で、いささか退屈そうに、欠伸を噛み殺した。

レベリオ > 壁際から、そっと歩き出す。
残念ながらというべきか、宴はまだまだ続くようだ。
流石に欠伸ばかり噛み殺しているのも体裁が悪い。
そう考えながら向かった先は、開放されたバルコニー。
時間帯故に、夏の熱気も和らいだ風の吹き込むその場所へと足を運ぶ。
途中で、給仕の女性に碌に減ってもいないグラスを交換してもらってから。

そして――バルコニーに出れば
ふわりと、柔らかな夜気が白い髪を擽る。
室内の華美な風景を見慣れた目には、夜と月明かりに彩られた光景が快い。。
耳に届く室内の喧騒と、階下の茂みから微かに聞こえる声には目を瞑ろう。
そうすれば、心地の良い夜だと言えなくもないのだから。

「…………。」

よく冷えた葡萄酒に唇をつける。
喉を流れ落ちる紅の酒精。
なるほど、贅沢で知られる貴族の家で出されるものなだけはある。
無聊を慰める供としては、まあ、悪くない。
そのまま、人気のない広い場所を進んで、手すりに両腕を預けて。

レベリオ > 背後に奏でられるのは楽の音。
それが消える頃、あるいは夜が明ける頃まで宴は続く。
バルコニーからその姿が消えたのは、その終わりよりは早かったのだろうけれども。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区/とある貴族の屋敷」からレベリオさんが去りました。