2024/11/02 - 14:06~17:36 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 教練場裏」にサリスさんが現れました。<補足:癖のあるミディアムの灰青髪、ライトオークルの肌、紫藍の双眸、制服、学生鞄>
サリス > 秋風が爽やかに吹き抜け、日暮れの早くなり始めた季節の夕景がどこかノスタルジーに学び舎を茜色に染める。
淡い切なさを感じる秋の放課後に――教練場裏に呼び出される、というか半ば引きずり込まれる女生徒。

「………もはや年中行事のごとく、季節ごとに挟まれてくるイベントになってきてますよね……」

同級生にぐるりと囲まれて、教練場の壁まで追い込まれ遠い目でぼそりと呟き零す灰青髪の女生徒は、ぼっちだった。
至極立派なぼっちだった。
そして、何かと目を付けられやすい面倒なぼっちだった。

「せめて一人で放っておいてくれればと思うのですが……群れから逸れたらこの始末という訳ですかね」

学級カースト上位な女子数名に取り囲まれながら、私がクラスメイトに囲まれる状況と言えば吊し上げのみですよ、とやさぐれきった思想に塗れ。

そして口々に言いがかりを吹っ掛けてくる同級生たちを死んだような目で見つめる。
こいつら本当に暇なんですね、としか感想が沸かない。

「………分かりましたから、用件はとっとと済ませてくれませんか。
 どうせ同じ結果になるなら時間を掛けられるだけ損なので」

これから袋叩きでしょうか、と見当をつけながら、ある意味慣れっこになってしまっているのか、今さら子鹿のようにぷるぷる怯え震えたりはしない。
何せ根本的にふてぶてしい性質。
そんなある種不遜に見える態度が余計にいじめっ子たちを煽るのか、一気に沸き立つ彼女たちは、口々に罵声を浴びせながら、拳を振り上げてくるもので、反射的にぐっと歯を食いしばって目を閉じた。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 教練場裏」にイズナさんが現れました。<補足:品の良い衣服>
イズナ > 気紛れな女主人が何を思ったか『学院に通うわ!』と言い出した時、
従者の半数は呆れた顔し、もう半分は今少し教養を身に着けてもらえればと喜色に顔を緩ませたが、
どうせ若い男でも漁りたいのだろう…と魂胆が透けて見えた気がした

して登校初日
老執事と自分を帯同させて『公主だからと言って特別扱いは無用』とは当人の言葉
どの口が言うかなんて思いつつ授業が始まってみればものの数分で授業に飽きてしまった様子で、
船を漕ぎだしてしまう始末であった…制服の袖に腕を通した時のやる気はどこへ行ってしまったのか?

ともあれ公主だけが生徒というわけでなく災禍なく授業は進んでいったが、
教官の中に『ある種』の教育熱心な者がおり、当然、居眠りをしている公主を咎め罰を与えた
教育者としては至極当然ではあるが、この教官は出世はできんだろうなあ…と思ったものである

というわけで、バケツにたっぷりの水を汲みたった1人教練場の清掃をさせられている公主であった
最初のうちは『すごく学生っぽい』とか喜んでいたけれどもそのうち、『どうして私がこんな事…』と
不満げになり最後には『もう嫌ーっ』という叫びと共に日頃の鬱憤を晴らすようにバケツを、
力いっぱいに投げ飛ばした…飛んだバケツは換気の為に開けていた窓を通過し、階下に落ちていった

「ちょ、ちょっと…外に誰かいたらどうするんです!?」

と言うが早いか、公主はぷりぷりしながら教練場を後にしてしまい、
その背中を嘆息混じりに見送れば、バケツの行方を確認するべく開いた窓から階下を見下ろした
…何やら女子生徒数人が見え、その脇にバケツが転がっているのが見えれば、
スーッと背筋が冷たくなった………断じて僕ではない

サリス > 頭上から――


       っしゃーん!! がこ……ぐわんぐわん……

水の入ったバケツが襲来してきやがった。

それは、あわやぶん殴られる一歩手前、というぼっちかつ苛められ女生徒と苛めっこ女学生が対峙する目下緊迫中な一場面の真っ最中に。である。

苛めっこ達は――性格こそ悲惨だが、運動能力に長けていた。恐らくエネルギーが有り余っての苛めという憂さ晴らしもあったのだろう。
若い少女の肉体には陰湿な鬱憤と反射神経と動体視力が同居していたようで。
苛めに集中しつつも、頭上での危急をいち早く察知し、ずさあ!と見事なまでの脊髄反射で降りかかって来る冷水(掃除用なので多分汚い)と(さしずめブリキ製かなにかの)バケツをバックステップで回避した。

――そして当然それを総て喰らったのは明晰な頭脳も鋭い勘も運動神経もなにもない、ないない尽くめなぼっちかついじめられっ子な女生徒。

「………………………」

頭からずぶ濡れで水を滴らせ、ついでに肩先に堕ちて来たバケツにがこ、と肩を打たれた散々な有様なぼっち女生徒。
しばし、しーん…とまさに水を打ったように(というか打ったのだが)静まり返る中。
どん引き気味な虐めらっれっこ達(水飛沫ちびりとしかかかってない)とは違い。
毛先や制服の裾からぽたぽたと水滴を滴らせながら。

ゆらぁり。

バケツの落下してきた頭上……それが放り投げられたと思しき教室を見上げ。
その窓から見下ろしている少年を認めると。

『 こ ろ す ぞ 』

と……静かな殺意を滲ませた紫藍の双眸を向けてそんじょそこらの妖仙に負けないほどの妖気を漲らせて佇んでいた。

イズナ > 階下で確かにバケツの転がる音が耳に届く
僅かばかりか人の気配もするような気がしたが、窓から外を覗くまでは気の所為であって欲しいと切に願った
………ダメだった

見下ろすに水を被ったであろう女生徒の周囲にもこちらは無事であるようだが数名の女生徒見える
1人、ずぶ濡れではあるようだが全員無事のよう見え、安堵した瞬間、
濡れた女性がゆっくりと頭を上げてその視線がこちらを捉え…いや、突き刺した

昨今、危険からは比較的遠ざかり、安全な市井の内、その中でも王城内での生活を送っていたが、
向けられた視線は首筋をゾクリとさせ、一瞬、その場に立ち竦んでしまった。久しぶりの感覚である
思うに、人の姿になる遥か以前、狼の群れのリーダーたる古狼の視線を受けた時、
それ以来の衝撃ではなかろうか…尻尾があったれば、その毛は逆だっていたことであろうと思われる

というような回想を一息の間に巡らせて、ふう、と息を吐き出す
向けられた殺意には気が付かぬふりを決め込み

「大丈夫ですか?今そちらに参りますので」

と声をかければパーッと駆け出す
途中、教練場に併設された救護室に立ち寄り、大きなタオルなどを手にして、
階下の教練場裏手のちょっとしたスペースまで急ぎ向かう

サリス > 最近ちょっぴり呪法の類にも手を出し始めました、な魔法科生徒。
呪殺の基本は脅しからです。
まずは眼力で人を死なせることをイメージしてみましょう。
なんて授業があるのかどうかは定かではないが。
普段薄らぼんやりとした紫藍の双眸は今その鳴りを潜め。
晩秋、日ごとに冷たさを感じる水を頭からぶっかけられて、それをやった…ように見える(誤解)少年へ『あなたも水責めに処してやりましょうか』という感情をありあり滲ませた不穏な視線を注いでいた。

苛めっこどもはと言えば。
イレギュラーな事態に一瞬思考停止していたようだが、窓から姿を見せていた品の良さそうな少年が言葉を発すると、は、と我に返ったようで。
いいわ、今日はもう……
と首を振る。
興を殺がれたのと、第三者から何をしていたかと問われればいろいろと厄介であると見越して彼が準備良くタオルを持って人気のない教練場裏に駆けつける頃にはその姿はすっかり失せていた。

かくて、一人ぽつねんと取り残されたずぶ濡れ(しかも掃除用バケツの水で)女生徒は。

「………。助かったのやら拗れたのやら皆目分かりませんね……」

妙な疲労感の滲む溜息を吐き出しながら、髪に沁みた水を捻じって搾ったり、スカートの裾を搾ったり。多少なりと脱水を試みる。
しかし濡れた全身は吹き抜ける秋風に冷やされて、ぶると寒気を覚えるとくしゅんっ、とくしゃみをして肩を震わせ。
ふるふる、と毛先の水滴を振り切るように頭を振り、その頃には執事らしい少年が登場するか。

イズナ > タオルやちょっとした医療品などを手にして階下までおりてきた時には
既にずぶ濡れになった女子生徒の姿しか見当たらず、何かしらの集まりの邪魔をしてしまったのではないか、
という気持ちにもなってくる
…と、自分一人申し訳ない気持ちになっていたが元はと言えば主人が悪いのであって、
取り残された自分一人申し訳ない気持ちになっている事に少々腹がたってきた
だが、しかし…いくら腹を立てようとも日も落ちようとしている夕暮れ時、
寒そうに肩を震わす女生徒には関係の無い事であり、その腹立たしさを彼女に向けるような性格ではない

「大変申し訳ありませんでした…どうぞ、こちらお使いください」

彼女の傍にまで駆けつければ救護室で借用してきたタオルを差し出して
受け取ってもらえたならばどこかお怪我はございませんか?と、彼女の様子をうかがう
出来ることであれば着替えなどを見繕ってくるべきであったが、
来校初日という事もあって救護室に着替えの準備があるのか知らなかったし、少々慌ててもいた
パッと見た限りで大きな怪我がないように見えれば、彼女からスッと一歩離れて深々と頭を下げる

「大変申し訳ありませんでした…この度はこちらの落ち度でございます」

と誠心誠意、頭を下げる
一応はあんな公主であっても公主に仕える身。頭を下げる姿勢にも何処と無く品格が滲んでいる

サリス > 教練場裏で濡れ鼠(再三言うがバケツ水でだ)になりリンチに遭う寸前だった女子生徒。
……正直もう何が正義かなんて皆目不明である。
取り敢えずは犯人に思えた少年を咄嗟に呪眼な勢いで睥睨したものの。
やや間を措いて降りて来たのは至極折り目正しく品位のある……なんかこう…いいとこの子、という感じの少年で。

「………はあ」

普段なら礼の一言も口にするところ、何せ頭からずぶ濡れなうな現状ではなんだかありがとうの言葉も逆に的外れな気がして。
差し出してもらったタオルを、どこか気の抜けた声を出して受け取れば、顔と髪を拭いて両肩を包むようにしてストール掛けして。
どうにもこのお上品で礼儀正しい、ついでにキレイな顔した少年がバケツを教室からぶん投げたと思うとそこはかとない違和感を覚え。
怪我の有無を問われて、堕ちて来たバケツが肩にぶつかりました、と見た目では判らない衣服の下に負った打撲の申告をし。
丁寧に低頭する金の頭を眺めながら。

「……ということは、あなたが教室から水の入ったバケツ、ぶん投げた、ということですか?」

絶対そんなことしなそうなのに、人は見かけによらないものなのか……なんてぼんやりと思考を過ぎらせながら、小首を傾げてまずは事実確認を始めるのである。

イズナ > こう言うと不本意甚だしく、まこと遺憾の至りであるが公主に仕えてからというもの、
こうして頭を下げて謝罪するという事には慣れきってしまっている
一角の仙となるべく修練に明け暮れたのは市井に降って主人の不手際に頭をさげる為ではなかった筈であるが、
ここに至っては謝罪に関してはある種の達人の域にまで迫っているのではないかと勝手に思っている

「…いえ、それが…」

突然、頭上より水の入ったバケツが落ちてくれば呆気にも取られるであろう
何処と無く気の抜けた声の女生徒にタオルを受け取ってもらえたならば、後は只管に頭を下げ続ける
打撲を…と聞こえれば、申し訳ありません、お見舞いを当家のものに届けさせます、と返事をし
そこから更に問われれば、頭を下げたまま、一瞬、逡巡したものの、
公主の名に今更、1つ、2つの傷がつこうとも既に傷だらけであればと真実を述べることにした
………これは私怨もコミコミである

「大変に申し上げにくいのですが―――」

自分の仕えている主人が本日、体験入学して授業中、散々に眠りこけて教官の怒りを買い、
教練場の掃除を言いつけられ初めの内、従っていたのであるがそのうちに怒りだして…
と、バケツが彼女の頭上に飛来するまでの経緯を脚色無く、少々の私怨を込めて説明する

「―――という訳でありまして…当人、というか公主様は既にお帰りになられたようですが…
 なにがしかの女生徒の皆様の集まりをお邪魔してしまったようで、
 重ね重ねになりますがもうしわけありません」

ここまで言いよどむこと無く頭を下げたまま言い切るのであった

サリス > 彼が一体全体どういった人物であるのか(寧ろ人ですらないが)甚だ知る由もない。
けれど、謝罪に関しては堂に入っていると言わざるを得ない。
申し訳なさとそれに付随する誠意と慇懃丁寧さと低頭の姿勢。
ふむ……一級品である、と等級つけては。フラットに感心しました。

タオルで拭いたくらいでは服に沁みた水分はぬぐい切れるものでもなく……正直とても寒いので長々と彼から事情を伺うのは少し辛くもあったが。
この謝罪の王様からならばきちんと最後まで傾聴せねばなるまいて。
と、寒さに耐え乍らバケツ落下事件一連の顛末を聞き終えると。

「……そぅ、です、k――ふえっくしょん!」

やはり我慢できずに返答しようとした声はくしゃみに変じて。
我儘公主バケツぶん投げ事件の概要に相変わらずどちゃくそ濡れたままぶるぶるしながら頷きつつ。

「……取り敢えず、お見舞いいただけるとのお話であれば、手っ取り早く現金払いでお願いできますかね。要らんもんいただいても仕方がないんで。
 あと……超風邪引きそうなんですけど……着替えとか手配していただけませんか? 掃除のバケツということで洗う必要も温める必要もあるので入浴も。
 主になり替わりあなたが責任を執ってくださるということであれば以上をお願いします。
 逆に――そんだけしてもらえりゃ私も事を荒立てはしませんよ」

基本的にはっきりきっぱり。上位層でも無関係に物言う太い神経の持ち主。
淡々と普段通りに表情を変えず。
しかし冷えて唇を紫に染めて顔色を白くしながら。
カタカタ、カタカタ、と引っ切り無しな振戦、常に小刻みに身体を震わせつつ。
そして、実はクラスメイトからの集団リンチを受ける寸前だったので“女子生徒の皆さまの集まり”に関しては黙殺した。
バケツの水のお陰でリンチから免れました、と伝え相手の心労を敢えて軽減して差し上げるほどの優しさの持ち合わせは、この苛められぼっちにはありません。

イズナ > 事のあらましを説明する口調に淀みがないのは私怨込みであったからであると断言できる
徹頭徹尾、頭を下げたままで説明を終えれば頭上より聞こえた彼女のくしゃみにようやく顔を上げた
中々どうして、見目に反した豪快なくしゃみをする女生徒であるように思えた
顔を上げれば肩を震わせる姿が見て取れる。日暮れも近づき、建物の裏手という事もあり、
頭から水を被ったということであれば尚の事、冷えるであろう

「お見舞金、ですね…かしこまりました
 ―――お着替え、入浴…あとはお洗濯出来る場所…なるほど、かしこまりました
 ………こちらで取り急ぎ手配いたします。まずこちらを羽織ってください、汚れても構いませんので」

ひとまず自分の上着を彼女の肩から掛けるようにして羽織らせつつ頭の中を様々な思考が光速で巡った
まずは浴場…これは、貴族らの子弟が使う学内寮の個室に空きがあったような気がする
見舞金はあとから彼女の元に届けさせれば良い…着替えはなんとか確保するとして…
最悪、公主の名前を出せば無理でもなんでもねじ込めるだろう…いや、ねじ込む
こうなってしまって直接の謝罪すら無いのだ…権力くらい振るってもバチは当たらんことであろう
…否、バチの1つも当たって欲しいが

「では早速…貴族の皆さまがお使いになる寮の個室まで参りましょう
 ご案内いたします…入学案内の資料で拝見いたしましたので…概ね場所は判っております」

彼女を促そうと思ったが…震えている姿を見れば、どうしたものかと思い
風邪を引かせるのも悪い、と思えば、失礼しますお許しを!と声をかけて、
そのままスクッと抱き上げてしまおうとする。見た目の割に力はある方である

サリス > なんというか……謝罪と説明の口調に妙な私情を滲ませている印象を受ける。
気苦労の絶えないであろう少年の気持ちに寄り添う……段階ではないので。
『なんか大変そう』くらいの軽い感情しか過らないものの。
いくつか投げかけた要求が総て受理されれば寒さは緩和されないながらも得心が行き。
リンチに遭って殴られ損するところが、頭から水被ってバケツに肩殴られたことで――思わぬ臨時収入なラッキーが降りかかってきました。これは嬉しい。
愛想のある性格であればほくほくと表情を弛めているところだが。
無愛想がウリ(?)な生粋ぼっち女学生の表情筋が弛緩することもなく。
内心『よっしゃ金』とガッツポーズ極めつつ。面には出さずに。

「大分……ショックを受けてしまいましたので……その点もご配慮いただければと」

お前がショックなことなど学院内に存在する訳もなかろうに。
慰謝料いっぱい頂戴ね。と暗に仄めかすいやらしさを発揮しつつ。

「はい、お願いします。何せこのずぶ濡れのままでは家にも帰れません。
 私も何分穏便に済ませたいとは思っているんですよ……伺うに公主様が噛んでいるということですし……あなた自身に咎はありませんしね。
 ……マジ汚れますけど、ではお言葉に甘えお借りしておきます」

肩にかけていたタオルをとり、羽織らせてもらった上着で上肢を覆いつつ。
仕立てのいい上着が汚れるのは少し気になるものの、厚意を跳ね除けるのはまた違う。
頭の中でことの収集を図ろうと思案を巡らせている少年の端整な容貌を眺めつつ。
こんな美少年執事侍らせて我儘放題か……その公主とやらは前世で一体どんな徳を積んだものやらと変な感心と。
その積んだ徳も現世で台無しどころかマイナスになるだろうなと無駄に見当をつけた。
我儘公主にバチが当たらないなら当ててやりたい所存である。

「ほー……貴族寮ですか。それはまた入りづらい………
 ――、……これまたいっそう入りづらい運搬方法ですね……。
 めっちゃ目立ってますけども。後、可愛いお顔してなかなかの腕力ですね」

着替えと風呂と、今の状況に最も必要なものを要求したら、案内されるのが貴族寮。
場違い感この上なしとも思ったが、小汚い場所に放り込まれるよりもなんぼも宜しい。
ついて行けばいいのかと思いきや。
不意に抱えあげられて。一瞬ぼんやりとした双眸を丸くしたものの。
ぱたり、と緩く瞬いて茶褐色の双眸を見上げながら。
こころの中で『ハイヨー美少年執事』とか言っていたのは内緒です。

イズナ > 金銭で彼女が納得するというのであれば、どうせ自分の懐が痛むわけでもなし支払うに否はない
どういう理屈なのかは判らぬし、知りたくもないがどういうわけだか主たる公主は金周りだけは良い
実家が太い、というわけでもなければ、公主本人に金を生み出す才があるというわけでもない
こればっかりは公主に仕えている者たちにすら謎なのである

「そこはもちろんでございます…お嬢様がご納得して頂ける金額をお支払させていただきます」

彼女が怒り心頭、笑わせるな責任者だせ、公主に土下座させろとなったのであればそれはそれでも良かったのだが…
そういうタイプではないようであったから幾らか余裕も生まれており、
ちゃっかりしてる…商家の生まれであろうか?なんて事を薄っすらと考えたりもし

取り敢えず、彼女をどうにかこうにかバケツが頭上から襲ってくる前の姿に成す算段は出来上がった
考えを巡らせている最中、なにか視線を感じたりもしたがまだ何か言い足りなかったであろうか?と
思ったりもしたが彼女が更になにか要求してくるわけでもなく

「…入りづらいですか?ともあれ、緊急の案件ですから、公主のあってないような強権でも、
 なんでも行使してお嬢様のご心労を排し、気分良く普段の生活に戻っていただく所存ですので
 ………ん、あー…それは大変、恐縮でございます」

支配下の騎獣を呼びつけても良かったがおどろおどろしい魔獣の類を学び舎に呼び出すというのも
些かくらいには気が引ける。他生徒の脇を通り過ぎる都度、食べちゃダメと注意するのも面倒だ
と言うことになれば自分が運ぶのが手っ取り早い。目立つ、と言われてしまえば、
…出来る限り配慮いたします。とだけ彼女に返して。なるべく人目を避け、迂回したりしなかったり、
としながらなるべく急いで貴族寮に向かうのであった

サリス > お金がもらえる。
バイト減らせるかも。
その時間お勉強に当てて。
ひいては成績あがっちゃうかも。
なんて、快く慰謝料の支払いに応じる少年に心中はどきどきわくわくそわそわであった。
うっかりにっこり笑わないように…と普段は鉄面皮ぼっち女生徒も気を遣った。

「……あぁ、当方サリスと申します」

ただ、お嬢様という、普段呼ばれ慣れない呼称がなんだかむず痒い気がして名乗り。
適えば、公主様とそちらのお名前も伺っても?と尋ねもするのだった。

そして、執事力を発揮して彼が首尾よく事態を収拾する算段が整えばこちらとしては安心してどっかりとそれに乗っからせていただくのみである。
なんか、抱えられたが。あなたが濡れますよって思ったが。
手遅れだったので黙っておいた。もう濡れただろう。

「平民ですしぶっちゃけうちは裕福と対極にある環境なので……ま、確かに緊急は緊急と言えるので……ご厚意に甘えさせていただきますよ。
 そんなに慌てなくっていいですので安全運行でお願いしますね。
 後、腕、疲れないようになさってください…と言っても間違いなく疲れるでしょうから、筋肉痛などお大事に」

けったいかつ自己満足な気遣いを見せては、あ、そこ段差…とか時々暢気に注意を促しつつ。
貴族寮まで運搬していただき、何の罪もないがお仕事である執事くんに、公主様になり替わって水被り事件のけじめをつけていただくのであった。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 教練場裏」からサリスさんが去りました。<補足:癖のあるミディアムの灰青髪、ライトオークルの肌、紫藍の双眸、制服、学生鞄>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 教練場裏」からイズナさんが去りました。<補足:品の良い衣服>