2025/01/21 - 21:22~00:25 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」にサフィルさんが現れました。<補足:ブロンドの編み込みハーフアップウェーブロング。ゆったりとした導士装束。【後入歓迎】>
サフィル > 年が明けてしばし、貴族同士のあいさつ回り、管理を担う結界の処置、年初めの行事ごとを終えて
月も替わってひとごこち。

「ん~、むぅ~……。」

大柄な女性はラウンジでサンドイッチをかじりながら首を傾げ、瞳を閉じて咀嚼しながら思案顔で、
時折瞳を開き、ため息一つ。

「最近良い出会いがありませんねぇ……。」

時に魔族を、時に国益に仇成す者を駆逐し、国防の一角を担うステイシス家の名に恥じぬ働きもしてきた、が、
年も明けてしばし張り切り過ぎた気がするというか、日常をおざなりにしてきた気がする。

「久しぶりにぃ~、良い出会いとかぁ~、ありませんかねぇ~……。」

久しく会っていない友人達や、同じ趣味を分かち合えるまだ見ぬ者、
異性でも目を引く者がいればいないかと。

要は少し、いや、大分、溜め込んでいて。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」にエリビオさんが現れました。<補足:学生服>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」からサフィルさんが去りました。<補足:ブロンドの編み込みハーフアップウェーブロング。ゆったりとした導士装束。【後入歓迎】>
エリビオ > 刻は昼か夕方か。
授業の一区切りとしてラウンジに訪れた背丈の高い少年はなにかおもしろいものはないだろうかと。
少し赤みがかる黒瞳をくぅるりと見渡していく。
仲間同士で談笑するもの。図書館代わりに勉強してるもの。
それらに混じること無く机について。
売店で購入したパンと牛乳を取り出した。

「なにか面白いことないかなぁ……」

作業のようにパンを食いちぎり牛乳で喉に押し流しながらいつもと変わらぬラウンジの様子を呆然と見ていた。

エリビオ > パンを食べ終えた後はテーブルに肘をつきぼんやりとラウンジを眺めながら過ごしていった。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」からエリビオさんが去りました。<補足:学生服>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 時計台」にロイナさんが現れました。<補足:160cm前後/チューブトップ、ホットパンツ、革製ブーツ>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 時計台」にロイナさんが現れました。<補足:160cm前後/チューブトップ、ホットパンツ、革製ブーツ>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 時計台」にロイナさんが現れました。<補足:160cm前後/チューブトップ、ホットパンツ、革製ブーツ>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 時計台」からロイナさんが去りました。<補足:160cm前後/チューブトップ、ホットパンツ、革製ブーツ>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 特別教室」にリセさんが現れました。<補足:名簿内ご参照下さい>
リセ >  昼休み終わり、普段通り多くの学級では午後の授業が行われていた構内にて。

 担任にも、クラスメイトにも恵まれなかった一人の気弱な女生徒が。

「あ、あの……ちょ、っと……待ってくださ……い、いや……いやです……ぁ…ご、ごめんなさい…、ごめんなさい……」

 とある貴族クラスの自習時間。空いていた特別教室に連れ込まれ同級生女子三人に囲まれていた。
 普段から爵位の高く見た目も性格も派手な……いわゆるカースト上位の女生徒に目をつけられてことあるごとに(ことがなにもなくとも)虐められるという、そんな学院ではありきたりであり最低の構図に組み込まれた下層貴族の銀髪女生徒。

 今日も今日とて不当な因縁でしかない理由をつけられて、空きコマの暇つぶしとばかりに所属する教室から連れ出され学舎の端に位置する二階の視聴覚教室に引っ張り込まれ。

『はぁ~い。今日はァ、そのぉ、うざったい髪ぃ~?』

『綺麗にィ、カットしてあげるゥ~』

『邪魔だもん、ねェ~?』

 にやつきながら口々にそんな言葉を、教室の窓際に追いつめた女生徒に向かって。
 一人が右手にした鋏をシャキシャキと音を鳴らし。
 一人が逃げられないように退路を断つように立ちふさがり。
 一人が長く伸ばした銀髪を無造作にひっつかんで。

「や、やめて……やめて、くださ……ぃ、ったっ……!」

 髪を強く引っ張られて悲鳴を上げ涙目で訴えるが。
 そんな反応は連中の思う壺でしかなく。
『もう泣いてやんの~!』とさも可笑し気な哄笑が響き渡った。

リセ >  そもそもそんな悲惨な断髪イベントが起こることになったのは非常にしょうもない発端があった。

 普段通りに、長く伸ばした髪を下ろして廊下を歩いていたところ。
 たまたま脇をすれ違った男子生徒の制服の釦に毛先が引っかかってしまい。
 男子生徒も自分も慌てて絡んだ髪を釦から外したのだが。
 どうにかやたらに絡まず釦から髪を外せたのはいいものの。
 当方の髪が絡んでしまいとんだご迷惑を…!と無駄に平身低頭謝罪すると、その男子生徒が首を振りながらお愛想として『綺麗な髪だね』と微笑みかけてくれたのが……いけなかった。

 その男子生徒は女生徒に人気のある、爽やかで性格も良く見目も良い上になんなら文武両道という……なんだか逆に胡散臭いほどのカースト上位層男子だったのである。

 その男子生徒を日頃から気にしていた意地悪な同級生に現場を見られ。
 今に、至る……。

『お前さー。わざとだろ? 髪、引っ掛かったん』

『〇〇君に優しくしてほしかったァ~?』

『ぼっちだからって必死かよウケる』

「わざと……? いえ、まさか……っ、わざと、そんなこと……」

 わざと人気のある男子生徒に釦に髪が引っかかった振りして接触を図る器用さがあれば、今ここで虐めっ子に囲まれてません、と余程思う。

 ただ、本当に口にしたら、髪じゃなくて首でも切られそうでとても云えやしない……。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 特別教室」にエアさんが現れました。<補足:学院制服を着た透明人間/真っ白い仮面、フード付き外套/シルク手袋/柑橘系香水>
エア > 昼休みに飲んだ珈琲が不味かった所為もあるが、
履修する授業に関して教員と相性が悪く、
授業の最中であるというのに、行き成り特別教室にある教材を運んで来いと言われて、
真っ白な仮面の奥で舌打ち一つ打った後に(事前に準備しておけよ)と心で悪態吐きながら、
渋々と特別教室までやってきたのだ。

……どうも、先客がいるらしいが。

「……キミ達何をしているんだい?
 今は授業の時間の筈で、どうみても授業に見えないが、
 もしかして美容に関わる実習中かな。」

特別教室の扉をあけて直ぐに視界に飛び込んでくる光景に、
思わず嫌みの一つでも舌打ちと共に苛立ちの吐き出そうか。
指先は当然誰かに危害を加えようとしている三人に突きつけ。

頭髪を隠すように外套についたフードをかぶり。
顔を隠すように切れ込みのない真っ白な仮面をかぶり。
指先までキッチリと包むようにシルク素材の手袋をつけた姿。

多少は威圧感みたいなものはでているだろうか。
どちらかと言うと珍妙不可思議な姿方もしれない。
どっちでもいい、とにもかくにも面倒な状況を排除が優先だ。

リセ >  騒ぎの中――扉が不意に開くと、四人の視線が一斉にそちらへと向く。

「え……?」

『ちょ、鍵かけてなかったの?』

『ぁー……うっざ』

『なに? 関係ないでしょ。こっちはこっちで野暮用。ほっといてくれる?』

 開いた扉。全員一瞬は虚を突かれた。そちらにおわしたのがいかにも面妖な有様であったから。
 しかし、一人は若干焦ったらしいが、他は面倒くさそうに舌打ちしたり、圧を含んで睥睨したりと大して応えてはいない様子で。
 しっしっと失敬にも追い払うように手を振るって。用事があるならさっさと済ませて退室しろと促し。

「ぁ………」

 唯一被害者の女生徒はどうしたらいいのかおろおろと仮面の生徒と他の女生徒を見やっていたが。
 このままではばっさりと髪を切り落とされてしまう。
 助けを求めたいが、そうしたら彼に迷惑が掛からないだろうかと泣きそうに潤んだ目はどこか縋るようで。

「ぁ、の、あ……」

 だが、震える声で先生を呼んでください、と発そうとするも。

『オイィ、余計なこと云わなくていいから』

『うちら美容の実習中、でしょ?』

『かわいくしてあげるんだもんねー?』

 いじめっ子に牽制され遮られてしまい。頼りない小動物めいた目だけが『助けて』と訴えていた。

エア > 視界を確保するための切れ込みはない。
けれど『助けを訴える視線』はのっぺらな仮面の奥で、
誰にも見えない瞳で視認し受け止めてしまった。
同時にこちらを追い払うように動く手もだ。

勉学も普通。
運動も普通。
魔法も普通。
並みの並みの並みがそろう平凡な人間と自負はある。
加えて相手は異性で暴力を振るうなんて貴族らしからぬ行為なのでダメ。

助けを求める女子生徒を見捨てるのもまた貴族ではない。
――…貴族とは本当に面倒臭い。

突きつけた指先を上下に揺らし、苛立ちの仕草をわざとらしく見せつけながら、
矢継ぎ早に向けられた言葉にひとつひとつ反論をする。

「関係はない、確かに関係はないのは認めよう。
 だがキミ達がしている行為は人道に欠けると思うのだが。
 それを見逃すのは貴族として恥ずかしいだろう?
 だから、私はあえて言うぞ。」

真っ白い仮面の内側で、見えない眉間に皺を寄せて、
一つ大きく息を吸い込んでから、上下に揺らしていた指先を、
一人一人順番に突き付けて。

「………君たちに一つ良い事を教えてやろう。
 今、私は授業の教材を教員に言われて取りに来ている。
 それもまるでスライムが這うような足取りで、だ。
 つまり、あと数分もしないうちに教材もまともに運べないのか!
 とご立腹な教員がはげた頭に角を生やして飛び込んでくるだろう。」

嘘である。
あの教師は適当な理由をつけて自分を教室から追い出しただけ、
即ち排除が目的であって教材が目的ではない。
だから教員は追い出した生徒が戻ってこようがきまいが、
どちらでも構わない、戻ってこなければ成績にバツがつけられてラッキーとでも思うだろう。

――…つまり、言葉にしたように、教員が来ることはない。

「さあ、どうする?」と言葉を最後まで吐き出した後に、
すーっと扉の脇によけて、指を突き付けていた手で外へどうぞ?と優美な仕草を見せるのだった。

リセ >  指を向けた位置の正確さや足取りの揺ぎなさ。明らかに人や物の場所や空間を感知しているような挙措から、一見すると視界を遮るような仮面には見通す仕掛けがある、と認識していた。
 それに、目が合っているような気もする。
 藤色の眼と透明な眼差しは絡み合っていないように見えるけれど。

 今は目だけで訴えるので精一杯ないじめられっ子。
 それが通じるかどうかは分からなかったが。
 うざったそうに追い払おうとするいじめっ子連中は、

『だるぅ……なにー? こいつ……』

『うちらも貴族だよん。別に恥ずくないよん。だからとっとと出てって♡』

『人道とかウケるぅ』

 彼のもっともなご意見は右から左。聞く耳を持っちゃいないし、どうでもよさそうに耳をかっぽじる態度の悪さであったが、次に続いた言には少々動きが止まる。

 また面倒なこと云いだした……。
 とうんざりしたように顔をしかめ。

 えー、どうする?センセくるとかぁ。
 マジだるい……。
 フカシじゃね?

 はったりかとひそひそと声を交わし合ったが、そうでなかった場合はまあ、面倒だ。大変に。
 しかし、本当にやってこないとしても……結局この仮面の生徒が現場を見咎めたからには、追い出してから教師を実際に呼んできてしまう、という可能性も考えられた。

『っは~……なんか知らんけどクビ突っ込むとか、バカじゃん?』

『今度はアンタがタゲられたいんかぁ?』

『気取るのも大概にしとけ? 滑ってっし』

 低レベルな悪態をついて藪睨み。不承不承、三名の女生徒はぴしゃん!といら立ち交じりに態と大きな音を立てて扉を閉めて退室していった。

 ぽつ、と後に残された女生徒は、ばくばくしている胸を押さえてっは~…と大きな息を吐きだし、冷や汗を拭うと。

「あ、あの…ありがとう…ございました……! す、すみません、こんなことに巻き込んでしまって……申し訳ありません……っ」

 慌てて風変わりな仮面の生徒にぺこぺこと平身低頭頭を下げ。

エア > 彼女達は不幸中の幸いであった。
身体を循環する魔力が安定しているのだから。
もし魔力が安定していなければ、特別教室にいる全員を敵味方問わず、
衣服を透明化させて全裸に剥いていたかもしれない。
と、………少し強がってみる。

出来ない事はないが、そんな貴族らしからぬ行為はできない。
そして女生徒にやり込められていたら、実家から絶縁されていたかもしれない。

貴族として、男として、負けた者に価値などないのだから。
それくらいは実家は厳しい、と思う。

しかし、貴族として質の悪い奴らだ。
名前は知らないが、ひとまず顔は覚えておくことにした。

背後で少々大げさなくらいに音を立て扉が閉まる。
大きな音にビクとなりそうなのを抑え込んで、残された被害者らしき女子生徒に、
切れ込みの全くないのっぺらな仮面の奥から視線を向けた。

平身低頭頭を下げるその姿を見て、先ほどまで退室を促すために伸ばしていた手を戻し、
その手の指先で仮面の縁をつまんで、位置を直して。

「何、謝罪はいらないさ。
 その分、こちらに利益をくれればね?
 ほら、調度此処は外に音が漏れない教室であるし。
 鍵をかければ外から誰も入ってこれないし。」

当然無償で助ける何て事もしない。
最初から利益を求めて助けたわけではなく、
視線の先の少女が言葉にした通り巻き込まれたのだ。
ただ自分は降りかかる火の粉を振り払っただけである。

――…だから助けた相手に問うた。

助けた借りはどうやって返してくれるの?と。
別に言葉にするだけしてみただけで、今すぐどうこうのつもりはない。

しかし、場所が場所。
視線の先の藤色の瞳をもつ少女の小動物のような態度に、
少し意地悪いことを言いたくなっても罰は当たらないだろう。

あと、勿体ないことに切られそうだった涼しげな白銀色の髪にも興味がある。

リセ >  彼の側での状態や事情、心情もなにもわからないけれど、助けられたのだけは間違いない。
 裏で何を考えていたのかも知る由もなければ、その事実だけで礼を尽くすには十分で。
 髪を揺らすように頭を何度も下げて、没落とは云え貴族階級とは思えぬ様を見せていたが。
 いじめっ子らが退室して二人だけになれば、表情の一切窺えない仮面と対峙し。
 そして告げられた言葉に目を瞠って硬直し。

「ぇ。あ。えっと……
 利、益……ですか……その、あの……そんなにお小遣いいただいていなくて……
 沢山はお礼ができないかと思うのですが……」

 いじめからカツアゲにシフトしたとでも勘違いしたらしく。
 音漏れどうこういいだしているということは素直に出さなければ恫喝でもされるのだろうかと。
 しどろもどろ。
 泪で潤みを見せる双眸。弱ったように眉を下げて。
 さすがにありがとう、の言葉だけで済ますのは厚かましいか。
 今月のお小遣いを差し出すしかないかと項垂れ。
 でも、よくよく考えてみれば相手も貴族階級だと云う。
 金に困ってはいない筈だけれども。

 いくらあっても困らないのが金銭ではある。
 いつ誰から要求されても不思議はあるまい……。

エア > ――…これはダメだ。
先ほどの三人組と変わらぬ態度になってしまいそうになる。
あの三人組とはイジメる理由は違えど少女を見ていると、
正直虐めたくなる。

ぐ、と色々と湧き上がるのを飲み込みながら、
夕暮れ時そして音の漏れない密室というシチュエーションに、
吐きだした吐息は熱を帯びてしまうのだった。

「よし、ひとつ意地悪を言おうか。
 珍妙不可思議な格好をしているが、これでも貴族でね。
 金銭などに興味はないんだが、代わりにキミに興味があってね?」

こつこつこつ、と足音を特別教室に響かせて距離を詰める。
出入り口の扉から付近から教室の中へ、
教室の中から手を伸ばせば少女に触れられる距離まで。
そうして距離を詰めれば、シルク素材の手袋に包み込んだ手を伸ばし、
先ほどから触れて見たかった少女の白銀色の髪に触れようと。

拒まれても少々強引にでも触れてしまいたい。
少女の綺麗な髪にそれくらいに興味はある。
それに先ほどの小動物のように縋るような藤色の瞳。
それを困らせて泣かせてみたいとも……。

現状でもすでに困ってるかもしれない。
と、思うけども止められないのが男の性であり、
美しいモノが欲しくなるのは貴族の性でもあるのかもしれない。

のっぺらとした切れ込みのない真っ白な仮面の奥では、
見えない瞳を細めて、少女の藤色の瞳を見つめている。
視線は感じさせるかもしれないが、瞳はそこにはない。

リセ >  無駄におどおどと腰は低く、気も弱い。
 ついでに身体も弱いし防御力は紙。メンタルに至ってはプティング並み。
 ――けれど妙な体質であり、異能は総て無効化させる。
 多分透明化の能力も異能に当たり、それは効果をなさないであろう。
 
 当人は相手の能力なんて知りもしないけれど。
 けれど、見た目ですでに不審なのは良く分かる。
 大変失礼だ、そんなことは思ってはいけない、そんな無礼な…とは葛藤しているが、どうしようもなく不審であると感じてしまうのは仕方ない。

 それが助けてはくれたものの、近づいて来るので反射的にびくりと肩を跳ねさせ。

「ぁ。え、と……その……とても…個性的……なんですね……。
 え、あ、わ、たしに…ですか……?」

 正直何も興味を持たれる点などないと思うが。
 不可思議そうに首を傾け。
 そして手袋をはめたその指先が髪に伸びると思わず身を縮めるように肩を竦めてしまい。

「ぁ、の……その……」

 まだ意図を察せぬらしくさらりと癖のない銀髪に触れる手指に戸惑ったように眸を揺らし。
 やはり困惑したような表情で白く平坦な仮面を見つめ。
 立ち竦んでされるままだったが、仮面の向こうの眼とやはり目が合っているような気がして妙に落ち着かない。

エア > 制御さえ出来ていれば意図せず他者を透明化する事はない。
制御さえできていれば、だが幸い今日も問題はない。
あの三人組を見ていれば問題があっても良かったと思うが。
それはそれ、これはこれ、あの三人組のことは忘れよう。

この都市で異能を持つものは決して珍しくない。
真っ白い仮面の奥かた向ける視線の先の少女もまた異能の持ち主かもしれないが、
日常的に異能が存在する世界で異能の有無は気にする事はない。
ただ――…異能の無効化というモノを知れば興味はわくだろう、
何せ自分でも制御できない己の透明化の解決に近づくかもしれないのだから。

触れようとして、伸ばした指先にびくりと肩を跳ねさせる姿に、
白い手袋に包んだ手を一瞬だけ引きか躊躇する様子を見せたが、
すぐにガラス細工でも触るようにそっと少女の白銀の髪に触れ、
その感触をシルクの布越しに楽しみながら、髪から今度は困惑している少女の頬へと手を滑らせて、
髪ではなく乳白色の滑らかな頬へと触れて見せる。

「そう、キミに。
 白銀色の髪に、藤色の素敵な瞳に、
 白磁見たいな白く柔らかい肌に。
 ……あと、その唇に。」

見えない、見せない唇を真っ白い仮面の奥で笑みの形に変えて、
やんわりと柔らかな笑みを浮かべるが、誰にも見せない。
もし、少女の頬に触れることで透明化の異能が無効化されるなら、
仮面の隙間から血色の良い唇が見えてしまうかもしれない。

「……当然ながら、身体にも興味があるけどね?」

片方の手で少女の白銀の髪を楽しみ、頬まで触れていこうとすれば、
もう片方の手は文字通り手持無沙汰。
だから言葉で興味があると示した通り、するっと少女の腰に腕を回して、可能であれば抱き寄せてしまおうと。

リセ >  まさか身体が透過しているなんて想像も及んでいないけれど、全身を覆い隠すような様相には奇妙なものを感じた。
 人目にはつかせたくないような傷や火傷の痕でもあるのだろうか。
 そんな風な想像をしてしまえば、なんだか少し気の毒そうな表情が浮かぶ。
 全然的外れかも知れなかったが。
 大概、姿を隠そうとする者はなんらかの事情があるものだ。
 そしてその事情は大概良いものではない。

 どうしてそんな姿をとはとても訊けないけれど、勝手に深い事情があるのだろうとは解釈した。
 したけど、不信感は拭い切れない。
 
 髪に触れる指先は決して乱暴なものでもなく、逆に壊れ物に触れるような慎重さを感じたが。
 無造作に引っ張られる経験もあるせいかびくついてしまう。
 髪から頬へと移ろう指先に、ぴくっとやはり怖じるように肩を震わせ。

「ぁ……、そ、そんな……わたしなんて……そんな滅相も……
 く、くち、びる……?
 そ、んな……か、からかわないで、下さい……」

 表情は窺えないが、微笑するような雰囲気を感じる。
 かあ、と頬を紅潮させ俯いて。
 触れられることで、透過が異能の質であればその肉体を強制的に彩ってしまう。
 肌も眸も髪も。
 ただ、手袋越しであれば、相手が全身を覆っている状態であればどの程度の効力があるのかは定かではないし確認も難しいだろう。

「か、らだ……? や……は、離して……くださぃ……」

 頬に触れ抱き寄せる腕に弱弱しい声を発して身を竦め、ふるふるとおびえたようなまなざしで首を振り。

エア > 好きで透過しているわけではなかった。
生まれたときは普通の人間(?)であった。
成長するにつれて、稀にであったものが時々に、
時々であったものが常に、と悪い方向に成長してしまい、
今や真っ白い仮面を被り、街中であろうと外であろうと、
外套についたフードをかぶり、指先までも手袋で覆わねば、
自己の存在を他者に誇示できない。

――…肌に微かにまとう柑橘の香りもまた自己表現である。
ここに自分がいると他者に教えるための香り。

慣れたもので今は悲観的になることはないが、
何れは仮面を外して外套を脱いで普通に過ごしたいとは思っている。

時々悪戯に使いたいので全て無くなるよりも、
コントロールできるようになりたいのが目標だった。

知らず知らずの内に透過していた肉体が彩られている。
それに気が付くよりも小動物のように身をすくめて怯える少女を
(別の意味で)イジメてしまいたい欲が勝っている。

白磁よりも果実か、白桃のような肌に紅が差し俯く少女は愛らしく、
怯える素振りが余計に自分の中の悪い虫がざわめいてしまう。

柔らかな頬にはシルク素材の手袋に包まれた手で触れるのみ、
強引に顔を上げさせたりはしない。

腰に回しで抱き寄せる腕もそれ以上は止める。
でも掌は少女の腰とお尻のふくらみギリギリのラインを撫でて、擦って、愛でて遊ぶ。

「からかうとは心外だな。
 今なんて果実のように白い肌に熱が入り大変美味しそうだ。
 それに手折れてしまいそうな腰も大変結構。
 その下の果肉にも興味はあるし。」

例えるならレストランでメニューに迷うように。
少女のひとつひとつを気に入った個所を言葉にして褒めながら、
肌に触れ、仮面越しに変化を楽しみに、果皮でも向いて果実を食らうように、
ゆっくり、じっくり、じわじわと触れる面積を増やしていく。

離して、と言われると、笑みを浮かべる唇の隅を持ち上げて、どこか不敵で不穏なものへと変えてしまうのだった。

「…前払いで唇だけでも先に頂こうかな?」と、意地悪い言葉は囁くように。

リセ >  魔法でも呪術でも神聖術でも。
 有益なもの有害なもの、どれも問わず一切合切なきものにしてしまう体質。
 自身の意思ではなく発動してしまうそれは、勝手に透けてしまう現象と或いは同じようなものかも知れない。
 
 今も触れていればオートで透過している身体をオートで具現させている。
 ただ、離れるとやはり効力をなさないのであるが。

 相手の肉体が見えないものであるとか、それを見えるようにしているとか、彼を覆う布地がその事実を隠してしまっていて当事者すら気づかぬまま。

 怯えて竦んでしまい抱き寄せている腕を振り払えないまま腰付近に触れられて小さく震え。

「や……やめて…くださ……
 そ、そんな……」

 表現される言葉に戸惑って言葉を失い。
 余計に頬に差す赤みは増して。泣きそうに歪む表情。
 頬に触れる指先に熱さが伝わりそうに火照っては捕らえられた小動物のように小刻みに震え。

「い、いや……っ、だ、だめ、です……やめて……」

 仮面の下の見えるようになっている顔は隠されていて窺い知れないが、戯れているように聞こえる声に懸命に毛先を揺するようにふるふると首を振る。
 少なくとも仮面のままではどうしようもなさそうだ…と冷静に判断する思考は今のところない。

エア > 片方の腕は手を伸ばして少女の頬を。
もう片方の腕は容易く手折れそうな腰に回して抱き寄せ、
掌で腰と尻肉の絶妙な境界線に触れて楽しむ。

当然ながら言葉で宣言した通りに唇を奪うために、
必要な仮面を外すという動作が出来る手はない。
だから飽く迄も言葉でからかい脅かすのみとなる。

けれど、拒まれても離すことはないだろう。
折角の美しく愛らしい者を腕に収めたのに、
逃がす馬鹿はいないのだから。

それに彼女の頬は本当に滑らかで柔らかく、
何時までも何時までも触れていたいとさえ思う。
もう一つ、腰と尻肉の境界線もまた撫でるの楽しく、
ゆっくりと手の位置を下げて、腰との境界線ではなく、
明確に少女の尻の丸みに撫でて触れようと。

「悪徳貴族らしく、特別教室は教室の中から外へと、
 声が漏れぬように、魔力が漏れぬように作られている。
 助けを呼ぶのもかまわないが、誰もこないだろうね?
 と、言わせてもらおうか。」

こつん

キスの代わりに、唇を強引に奪う代わりに。
のっぺらとした仮面の額部分を少女の額部分に軽くぶつけるだけで、収めておく。

仮面を脱いだらそこには何もない。
そんな顔で口づけも何もあったものでないと。
仮面の奥で苦みのある笑みを浮かべるのであった。

「小遣い程度の金銭より、こっちの方が余程価値がある。
 白銀の髪もそうだ……これを切ろうとするとか、勿体ない。」

感嘆の吐息。
何処か恍惚交じりに少女の髪を褒めて。
勿体ないとさえ言葉にするのだった。

リセ >  すっかり捕らえられた小動物…といった態。
 身体に触れる手に震えはやまずに、すっかり怯えたような眸。
 やがて腰に触れてた手指がその下の柔らかな丸みまでに至るとびくんっ、と腕の中で大きく震え。

「い、い、やっ……!
 いや、です、待って……やめて……!」

 気は弱いものの身持ちは硬い。それを守り切るほどの力がないのが問題だけれど。
 悪辣な台詞に蒼褪めてじたばたと藻掻いて、その胸の辺りを押して身体を離そうとする。
 仮面が迫って来て額を合わせるような所作に。思わずひ、と息を吞んで。

「はな…離してください……お願いします……いやっ……」

 泣きそうな表情で非力ながら押し返そうとする抵抗。
 髪を誉める声にもむしろ怯えが募って。
 必死にどんっ、と突き飛ばそうとする。身体を離して逃げようと。
 その儚い抵抗が実を結ぶかどうか、それは……

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 特別教室」からリセさんが去りました。<補足:名簿内ご参照下さい>
エア > 名前も聞かず、名前も名乗らず、
ただただ見目麗しく思えただけで手折ろうとた仮面の貴族。
突き飛ばして逃げようとする少女のはかない抵抗を受け入れ、
その力に負けたようによろけて見せると、逃げてゆく少女を見送る。

のっぺりとした仮面の向こう側で、楽しそうに笑みを浮かべながら。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 特別教室」からエアさんが去りました。<補足:学院制服を着た透明人間/真っ白い仮面、フード付き外套/シルク手袋/柑橘系香水>