2024/09/25 - 19:38~00:45 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」にトーラスさんが現れました。<補足:三白眼の黒目。ぼさぼさの黒髪を無造作に後ろで束ねる。顎に不精髭。頬に傷痕。>
トーラス > 王都の平民地区と富裕地区の間に位置する王立コクマー・ラジエル学院は、
創立200年を誇る王国内でも有数の歴史ある由緒正しき教育機関である。
王国の未来を担う人材の育成のため、平民から貴族まで幅広く門戸が開かれた学院は、
実際に卒業後には役人や騎士団、魔術師、冒険者になる生徒が多い事でも知られている。
また、生徒達を指導する教師陣も身分や経歴に捉われず、実力が重視されて、
より実践的な教育が施される事も、この学院が一目置くに値する所以とも言えた。

そんな学院の廊下を練り歩く講師の名札を首にぶら下げた中年男性が一人。
現役冒険者であり、過去には偉業も成し遂げた実力者として、ギルド経由で請われて、
戦闘訓練や冒険者のノウハウを座学で教える非常勤講師として月に数度、教鞭を執っていた。
ならず者が多く他人にモノを教える事が得意ではない冒険者の中では、伊達に歳を喰っておらず、
評判は上々な彼が、講師の仕事を引き受けたのは、勿論、王国の未来の為、――――等ではなく。

「……さて、今度は、どの子に声を掛けようか?」

無垢な学院生を歯牙に掛けて、手籠めにしようという王国らしい理由であった。
何しろ、学院である故に一回りも年の離れた若い娘には事欠かず、
学院生の中には決して高くはない授業料にも困窮して、身を売る者もいる始末。
最近は新クラス設立にあたり、内情も知らぬ新入生や新任教師と獲物は降って湧く状況で。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院」からトーラスさんが去りました。<補足:三白眼の黒目。ぼさぼさの黒髪を無造作に後ろで束ねる。顎に不精髭。頬に傷痕。>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 身分混合クラス 大教室」に影時さんが現れました。<補足:黒髪/暗赤色の眼/不精髭/白い羽織+暗色の着物と濃茶色の袴、黒い襟巻/刀/鎧通しの短刀>
影時 > ――ふらりと現れて、ふらりといなくなる。
暫く見ないと思えば、受け持ちがなければだらけているような素振りも見える。

王立コクマー・ラジエル学院に籍を置く教員は多いけれども、受け持つ事柄によっては常に学院に居ない者が居る。
特別講師然り、実地授業然り。月一回、週数回の頻度であれば、一週間近く居ないことだってあり得る。
特に実地授業または実地訓練と呼ばれるものは、その性質上、受ける生徒も監督者も含めて数日不在となる。
だが、無事に帰ってきて「ああ終わったー」「疲れたー」で済ませていいものか? 否、往々にしてそうはならないものだ。

その実例が夕暮れに近い王立コクマー・ラジエル学院の大教室のひとつに、ある。

「――まぁ、じっくり考えても良いとは云ったが……」

何十人も詰められる教室は、僅か数人で利用すると非常に広々と感じられて仕方がない。
その前方、最前列。そこに今この場に集うものが坐している。
髪色や服の仕立て含め、色々違う男女数人を前にし、教壇近くに椅子を置いて座る姿が一同がうんうん唸る様子を眺め、嘯く。
白い羽織と濃茶色の袴に身を包んだ男だ。髪色も肌色も含め、王国の出ではない筈の男が何故ここに居るか、と言えば、教師としての籍を持つからに他ならない。
椅子を軋ませながら膝を組み、背を曲げて頬杖を突いた姿勢のまま、男女を見遣る理由はこの数日間、実地訓練に付き添っていたからだ。

「……日がくれちまうから、各員それぞれじゃなくて、集まって書いて良いぞー」

危ない目に遭いかけたり。和気藹々したり。ドッキリしたり。色々あって、全員で一つの仕事を成し遂げた。
それはいい。最終的にこれをどのように文章に認め、報告書――という形にするのか。
一流魔法使いの卵のようなものや、騎士志望も交じってはいるが、しっかりとした文書作りというのは、苦手らしい。
全員に記述させ、提出させようとすると詰まる状況に一息。
是非もない、と皆でディスカッションし、最終的にまとめたものを清書して出す方向を指示しよう。
そうすれば漸くその気になれたのか。行けそうな気がしたのか。動きらしい動きが出てくる。

影時 > 監督した実地訓練の内容は、「廃坑に棲み付いた魔物の掃討」というもの。
冒険者の仕事としてはオーソドックス。そう珍しい類ではない。ただ、難易度と脅威のばらつきが非常に大きい。

下調べの有無一つで厄介さの数が変わる。
場所に応じた編成と立ち回りを心しなければ、倒せる筈の敵が倒せない。
水薬をケチると、それだけで命とりとなりうる。

ベテランの冒険者が随伴してるから、手抜きしても大丈夫? ――大丈夫じゃないんだよなァ。
監督を最後の仲間、解決手段と思っているなら、大間違いだ。
最低限の助言はするが、基本的には殿を守りつつ、見ているだけ。それが監督だ。

「……おぉ早かったな。どーれどれ……」

報告書を書かせる前、廃坑のマップを板書しておいたのが、良かったのだろう。
進行方向を確かめたり、何があったかを言い合ったり、時折口論じみてきた処を眺め、勢いがついてきた様子を見遣る。
最終的に書記役を買って出た魔法使いの卵が内容を纏め、速記をまとめたノートを出してくる。
それを受け取り、吟味しながら目を通すこと暫し。固唾を呑む気配を聞きつつ、まぁ良かろ、と一言吐いて。

「――全員の総評としての提出で問題なければ、受け取ろうか。ン?」

一同に確認すれば、揃って頷き出す様に肩を竦める。
長く引きとどめていても仕方がない。少しずつ傾き始めた太陽の様子に、そわそわし出す者が居る。
買い出しを頼まれていたのか、それとも近くの喫茶店で売られている新作ケーキでも気になっているのか。
否、もっとそれ以前に、全員で打ち上げなどしたいのかもしれない。
監督として、一部始終を眺めていたものとほぼ相違ないと認識すれば、此れで解散と許可を出そう。

歓声じみた声を出しながら、先を競うように外に出ていく生徒を手を振って見送り、残るは一人。
否、一人と二匹だ。中途半端に開いた教室の扉から、入れ違いのようにやってくる二匹の小動物がある。
揃って白いとんがり帽子をかぶった――シマリスとモモンガ。
今日はどこぞの魔法の講師の授業を聴きに行くつもりでもいた、らしい。
教壇の下までやってくると攀じ登って、ひらり。前足を挨拶よろしく挙げてみせるのは、ただいまー、と言っているつもりか。

影時 > 「つくづく、アレだ。……ギルドの職員は毎回こういう感じしてンのかという、感慨に駆られちまう」

お帰り、と。子分と呼ぶ毛玉たちが前足を振ってくる仕草に頷きつつ、手元のノートを捲る。
様式や書式を指定していない以上、この手の提出物は不揃いになる。
書を読む経験に加え、事柄を感情を挟まずに書き出すことが問われる。
ありがちなのは、経緯や事前事項を長く連ね過ぎて、それだけで済む事柄や結論が一番最後となる書き方だろうか。
属する冒険者ギルドの受付で、受付嬢や事務員たちが、口述される報告を書き出してゆく風景を思い出す。
あれは大変だろう。武勇伝よろしく語りたい冒険者から、不要な語り口を削って必要事項を聞き出すというのは。

「……――次は、嗚呼。予算を決めてモノを整えさせることも視野に入れるか」

最終的に仕事は果たしたが、楽勝、楽々とは言い難い。
廃坑に屯していた小鬼やコボルトが弱く、鎧袖一触に出来るものが多かったからと、愚直に進むのは色々と問題がある。
手傷が多く、都度治療する癒し手が疲弊していた、照明の管理が拙かった等々。
差し入れがてら自費で購入していた水薬が、役に立った場合が多かった。
ベテランでも敵地に潜る場合、想定通りにいった試しは余りない。下調べを入念にして、やっとと言ったところだ。
彼らにとっての課題、気になる点は、次回の実地訓練で想定すべき事柄にも出来る。

「出来りゃぁ、他の先達とかにも聞いておくか……ン?なんだ?腹減ったか」

ぱたむとノートを閉じ、膝上に置けば教壇上の二匹の毛玉たちが、何かせがむように前足を挙げてみせる。
腹が減った、ということだろう。そう察しながら羽織の袖口をごそごそと漁り、小さな袋を摘まみ出す。
中身はヒマワリの種。夕飯前を考えると数を与えるわけにはいかないが、一粒ずつ二匹に与える。
種を受け取り、器用に齧って殻を剥き、咀嚼する小さな音が直ぐに響き出す。足元に放り出された殻はちゃんと摘まんで、小袋に入れる。

影時 > 色々あって教職の籍は得たが、どうしても教師の知り合いはまだ少ない。或いはあいさつ程度でしかない。
実際このようなもの、という割り切りは出来ても、惜しさはある。
誰かを教えるというのは、誰かに教えられることでもあり、横目にしたものからも気づかされることでもある。
何処かのクラスの担任になる、というのは避けたいが、自分の教え方にも改善すべき事はまだまだ多いだろう。

「お前ら食い過ぎちまうから、今は一粒だけからな?
 だいたい、夕飯も此れからあるの忘れてねぇかね……」

少しでも涼しくなれば、秋の気配を感じてしまったのだろう。
二匹の子分はこれからの季節に備えて、食い貯めたり、木の実を集めたげな素振りも見せてくるはずだ。
そのうち、森にでも行って、魔物の間引きがてらどんぐり集めでもしゃれこむ時間を作ろうか。
そう思いつつ毛玉たちに声を掛ければ、え゛ー、とでも言いたげな顔で、己を見上げてくる。
だが、夕飯もあると聞けば不承不承めいた表情で毛繕いして、飼い主の肩や頭上に攀じ登ってくる。
尻尾で叩いてくるのは、早くご飯に行きたいでやんす、とか言いたいのだろうきっと、恐らく。

「職員室に寄ってからな? 提出物納めねぇと仕事が終わったコトになんねぇからなあ」

子分たちにそう呼びかけつつ、荷物を纏める。
忘れ物がないかを確かめ、向かうは職員室。そこに提出物を納め、今日の仕事を終える。
夕飯は――どうしようか。酒場によるか、定宿での食事にするか考えながら、帰途に就こう――。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 身分混合クラス 大教室」から影時さんが去りました。<補足:黒髪/暗赤色の眼/不精髭/白い羽織+暗色の着物と濃茶色の袴、黒い襟巻/刀/鎧通しの短刀>