2024/07/01 - 22:38~02:07 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 正面玄関」にリセさんが現れました。<補足:名簿内ご参照下さい>
リセ >  ――また、雨が強くなってきた。
 まるで、世界を洗い流そうとでもしているようだ。

 放課後の学院、大半の生徒が下校していて玄関の人影もまばら。
 朝から雨の降りしきるその日、運動場は使用不可。当然屋外で行う部活動は休み。
 構内で行われる部活動も低気圧な日々にやる気がしないのか不参加の生徒も多く、撤収している部もあるようで。
 その日はとても静かな放課後であった。
 雨音だけがしとしとと響き渡り。
 こんな日は早く帰宅して家でごろごろしていたい――という生徒も多数。玄関口に無駄にたむろしている連中もいない。

 いつまでもそんなところでぐずぐずしているのは雨具を持たずに途方に暮れている生徒くらいなもので――

「………雨具、どこにいったんでしょう……」

 同級生にいじわるをされて、持ってきていた雨具一式隠されたか棄てられたか。
 鞄だけを背負ってぽつねんと玄関口で立ち尽くし、雨雲を見上げる女生徒。

 貴族階級ともなれば同級生はほとんどが迎えの者が引き取ってくれて馬車で優雅に帰宅していたが。
 何分落ちぶれた貧乏貴族の子女なんて、徒歩通学が当たり前。
 だからしっかり雨具を持参していたのだが。
 頼みの綱のそれもないとなると、困り果てて立ち尽くし。

「どうしましょう……」

 お家に帰れない、と雨具一式隠した同級生を喜ばせそうなほどしょんぼりと肩を落としていた。

リセ >  走って帰る……なんて発想もない。
 傘に入れてくれる……なんて友人もいない。
 迎えの当ても……ない。

        ザ―――

 雨脚は一層強くなる一方であった。
 
「今日……帰れないかも知れません……」

 たかが雨で帰宅困難者、帰宅を諦め始める。
 豪雨……と云うほどでもないが、家まで駆け抜けるには厳しいし、そもそも脚は遅い。とても遅い。致命的に遅い。
 下手に走って滑って転ぶよりもずぶ濡れ覚悟で歩いた方がまだ安全だ。

 雨に濡れるのは厭だが、いつまでもこうしている訳にも……
 なんの決断もできずにぐずぐずとただただ立ち尽くして空を見上げ。
 せめて雨がやむまで、もう少し小雨になるまで一緒に待ってくれる話し相手でもいれば救われただろうが。
 ぼっちTHEぼっちには望めまい……。
 他にも迎えを待っている生徒なんて、その辺の誰かと談笑しながら暇をつぶしたりしているものだが。
 それを羨ましそうに見ていることしかできない……コミュ障である。
 独りぼっち、大きく溜息を吐き出した。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 正面玄関」にホーセーアさんが現れました。
ホーセーア > 晴耕雨読、などという言葉がある。
晴れた日は田を耕し、雨の日には書を読んで教養をつける・・・くらいの意味だが、
最近でこそ体を鍛えたりもしているが基本的にいつでも本読みで過ごすニセ子供教師が
相変わらずの杖の上に乗ってホッピングよろしく飛び跳ねながら、珍しく人探し顔でうろついており。

やがて玄関近くで探し人の姿認めると、まずは深く息を吸って少し溜めてから
「フッ!」と短い気合とともに吐き出す。
こうする事で「内気」を全身に張り巡らせ、折角探し当てた少し変わった体質の相手に
妙な気づかいさせるのを防いでからようやっとコツコツと杖の音立てながら近づいていく。

「やあやあ、えーと・・・リセ君、だったね。
この前少し話させてもらった、外国史教諭のホーセーアだが、覚えているかね?」

声の方見れば、少し含みのある笑み浮かべた子供モドキが、1.8mほどの杖の上に
猿のように座ったままで近寄ってきて。

「・・・?どうしたね?
下校時間はとうに過ぎているぞ、僕はまあ不良教師だからほかの先生たちより早く帰るのは日常だが、
君は・・・そうではなかろうに」

口調は心配しているが、ニヤケた顔はそのままなので若干不信感持たれても仕方ないだろう。

リセ >  帰れない雨の日は憂鬱の塊のようだ。
 濡れて帰るのかどうか、そろそろ決断しなくてはならない。
 脇を通り過ぎて帰宅していく生徒達を何人も見送って、往生際悪く、やまないものかと雨雲を見上げていたその時。

「……え……?」

 近づいてくる杖の音、声を掛けられてそちらを振り向くと予想した位置にその人の顔はなく。
 杖の上にいるせいでかなり情報に位置する顔を見上げるようにすると、一瞬ぱちくり、と双眸がまたたく。
 ゆる…と首を傾けると髪がその方向に流れる。

「え、っと……あ……ホーセーア、先生……こんにちは、その節はお世話になりました」

 えーっと、と遭遇時のことを想起させると深々と頭を下げて挨拶をし。
 それからぐずぐず立ち尽くす事情を訊かれれば少々逡巡気味に。

「あ、の……帰ろうと、したら……持ってきていた雨具がなくなっていて……
 雨の勢いも強いのでどうしようかと思っていたところで……」

 困ったように眉を下げて少々情けない事情を話す。
 しかもどうしようかと思い始めて小一時間である。情けない。

ホーセーア > 「そうかそうか、雨具が、ねえ・・・。
その雨具というのは、ひょっとしてこんな物だったりするのかな?」

心底困った様子の生徒の訴えにもかすかな笑い顔崩さないまま、懐からおそらく生徒が見覚えあるだろう
包みを取り出して手渡そうとするだろう。

「実は先程裏庭を通りかかった時に、実に親切な三人の生徒から誰かの落とし物ではないかと託されてね。
失礼とは思ったが魔法で探知をかけさせてもらった所、どうやら君の物だと判明したので
この天気ではさぞ大弱りしているだろうと、おせっかいながら探させてもらっていたのだよ。
ああ・・・その親切な生徒が誰なのかはあえて言わないが、三人とも急に具合が悪くなったらしくてね、
明日は授業を休むらしいので礼を言う必要はないぞ?」

と、実にありそうな話しているが、真実は大幅に違っていたりする。
裏庭を通りかかったというより、おかしな事している者がいないかと自主的に見回りしていると
焼却炉にて何かを燃やそうとしている三人組を発見したので、それは何かと問うてみた所
いらないゴミを処分しようとしているだけだとの答えだったが、
どう見ても貴族然とした彼女らの私物には見えなかったため、こっそり探知の魔法をかけてみると
脳裏に浮かび上がった真の持ち主の顔に物凄く見覚えあった為、続いてその道具に魔法をかけて
青い肌に筋骨隆々のいかにもランプから飛び出てきそうな魔神の幻影を三人組に見せ、
ついでに軽い呪い・・・2日ほど悪寒が止まらなくなる程度のものをかけて仕置きをしてから、
幻影に驚いて逃げ出した彼女らが放り出した雨具を、出来るだけ丁寧に畳み直して
持ち主を探して今に至る・・・のが本当だ。

しかし、そんなことはおくびにも出さずに今度は真に嬉し気な笑み浮かべて

「いやあ、良かった良かった・・・無事に持ち主に届けられてほっとしたよ。
さて・・・僕はこれで帰らせてもらうがついでだから、君の家まで送らせてもらえたりしないかな?
あまり遅くなっても何だし、早く帰った方がいいと思うのだがどうだろう?」

別に一人で帰るのが寂しいとかではない、親切めいた心配があるのは間違いないが、
この生徒が何だか色々つらい学院生活送ってそうだから、帰り道ついでに話を聞いたり
もっと積極的に自分の授業受けに来ないかと勧誘してみようとしてたり。

リセ > 「え……、これ……」

 なんだか含み笑いをしているような表情に小首を傾げていたが、その小さな手が取り出した包み。手渡されて確認すると、確かにいつの間にかなくなっていた……というか盗られていた持参してきたはずの雨具たちだった。

 イニシャルが入っているのを認めて、

「わたしの、です……ここに名前……」

 傘の柄やレインコートの裏にR.Sと刻まれたアルファベット。間違いない。
 そして続く説明を相槌を打ちながら傾聴しそして、その言葉の裏に隠された事情を想像した。
 大方、捨てようとされていたか、どこかに捨てられでもしていた雨具を見つけたか現場を見咎めたかしたのだろう。
 細かいところまでは察せないが凡そ予想しては、

「そう、ですか……ありがとう、ございます。
 わざわざすみません……
 でも先生、どうしてわたしのだと判って探していただいていたのに、知らんぷりして、どうしたのか、なんて訊いてきたんですか?」

 そこら辺はよく分からない。この教師特有の冗談かなにかなのかも知れないが。
 勘の悪い女生徒には理解できなかったようで首を傾げて。
 まさか雨具を捨てようとした連中がお仕置まで食らっていることも、もちろん微塵も察しがつかない。
 具合が悪く…という言葉に、何かよろしくないことが生じていたような気もするが。
 ともかく、彼女らの顔は明日見なくて済むらしい。

「はい、助かりました……本当にお世話になりました。
 え、え、っと……でも、雨、ですし……申し訳ない、ですけど……いいん、ですか……?」

 送ってくれるという言葉に、晴れの日でも面倒だろうにまだ弱まりそうにない雨の中、遠回りさせるのは恐縮ではあったが……教師相手に遠慮し過ぎもどうかな…と逡巡して取り返してもらった雨具を抱えてやはり、ぐずぐずしていた。

ホーセーア > 「あ、そうか・・・そこに名前があったのか。
いやあ済まなかった、魔法は便利だが頼りすぎると基本的な物事を見失ってしまうな。
いい勉強になった、ありがとうリセ君」

普通なら探すまでもない多少目立たない場所に・・・いやそれが普通なのだが、
はっきりと記入されていたイニシャル見せられると、とりあえず杖から飛び降りる。
どうせこれから使うつもりの魔法の為に杖の上を空けておく必要はあったのだが、
気付きを与えてくれた相手に礼言うのなら頭上からは違うだろうと
地にしっかり足つけてからぺこんとそこだけは子供らしいしぐさで頭下げ。

「・・・それはその・・・すまない。
僕が見た事のある君は、大体いつも困り顔だったのでね。
たまには違う表情も見たくて、少し揶揄わせてもらった。
気を悪くしたのなら、誠に申し訳ない。
償いをしろというなら何でもするぞ、言ってくれたまえ」

とぼけて見せたのは本当に軽い気持ちからだったのだが、それがこの生真面目と言ってもいい生徒を
傷つけてしまったりしていたのなら、それは本意ではなく、故に許して貰えるなら多少の無茶でも受け入れるぞと申し訳なさそうに上目遣いしてみたり。

「まあ、これも無事に君の手元に戻ったことだし、あまり細かいことは気にせずにいたまえ。
・・・無論だ、というかだな、折角苦労して畳んだそれをこんなに早く広げられてしまうと
あの時間は何だったのかと僕が若干空しくなるので、ぜひ送らせて欲しい」

このまま遠慮されていても時間がたつばかりだし、独り身故色々と融通が利く自分と違って
家族がいるのだろうリセは、帰りが遅くなればなるほど心配かけてしまうだろうと
もっともらしい(?)理屈つけてどうかと頼み込むようにもう一度頭下げ。

リセ > 「わたし、よく失くしものするので……名前、つけておかないと……なくなった時、困るので……
 いえ、イニシャルだけでは、先生も誰のものかよく分からなかったと思いますし……とんでもないです、お礼を仰られるようなことでは……」

 イニシャルだけではどの生徒の物か特定は難しかっただろうし、魔法で突き止めるのは何も間違っていない。
 よく物を失くす、と云ったが正確にはよく物を盗られると云った方が実は正しい。本当になくなって困る物はフルネームをしっかり刻んだりもするが……捨てられたら一緒だ。
 杖から降りて頭を下げる所作にいえいえ、と毛先を左右に揺らすように首を振って。

「あ、い、いえ……っ、ただ……どうしてなのかな、と思っただけ、で……
 あの、気を悪くしたりとか、そういうことはありませんので……っ。
 その、お気遣い、なく、です……、むしろ責めたように思われたのでしたらすみません……」

 ちょっと疑問に思っただけで、特に他意のある質問ではなかった。
 ふるふるふる、と先程より強く首を振って、償いなんてとんでもないと慌てて口にして……結果、余計困った顔に仕上がった。

「はい、では……あの、ご親切にありがとう、ございます……では、お言葉に甘えて……よろしくお願いします。
 え、っと……あの、わざわざ畳んでくださってありがとうございます……でも、これ、使っちゃ駄目なんです、か……?」

 わざわざ畳んでくれているとまでは知らなかったが。広げないと使えない。雨も降っている中、どちらにせよ帰るのなら広げてないいけないのだが。
 頭を下げる彼に、逆に、よろしくお願いします、とぺこぺこ頭を下げ、頭を下げ合いつつ疑問符を浮かべ。

ホーセーア > 「教師としては、持ち物にきちんと名前を書いておくというのは実に喜ばしい事だ。
みんなが君のように振舞ってくれるといいのだがね・・・」

まあ、リセ嬢の場合必然に迫られての事ではあるのだろうなと何となく推察はしているが
言っているのは大分本音。
他の教師から頻繁に持ち込まれる生徒の忘れ物についての相談(要は魔法による持ち主の探知願い)には
心底閉口しているので、それを未然に防いでくれそうな態度の彼女には実に好印象で。

「そうか、そう言ってくれるのならまあ、僕もあまり気にしないでおこう。
だからリセ君も早い内にさっさと忘れてくれると嬉しい・・・のだが、どうだろうか?」

気にしていない、と聞かされれば判ったとあっさり納得して、
寧ろますます眉寄せてしまった生徒の顔こそ戻して欲しいと軽く腕に触れたり。
先に体中に「気」を巡らせてあるので、魔法打ち消す体質のリセに触れても
前の様に気を失うようなこともなく。

「・・・いや、別に使いたいのなら止めるつもりはないが、
こう言うからには、ただ送らせてもらうだけのはずはないだろう?
それを使わなくても濡れなくする方法などいくつもあって、
魔法使いたる僕がどうするつもりなのかは、何となく想像できたりはしなかったかな?
まあ一番簡単なのは・・・」

左手に持った樫の杖を軽く持ち上げてから、石突きでトン、と一度床を叩くと、
リセと子供モドキ二人の頭上に黒い靄のようなものが大き目の傘の様に広がって。
そのまま子供教師が外に出ると、靄の下には一切雨粒落ちてきている様子無く、得意げな表情浮かべながら。

「こんな感じなのだが、どうかね?
ああ、色や形は自在に変えられるから、リクエストがあるならどんどん言ってくれたまえ」

言いながら戸口の際まで戻り、リセを誘うように空いた右手伸ばして誘い。

リセ > 「この学院は本当にたくさん人がいますから……同じ持ち物だったりするのも珍しくありませんし……
 あと、物に名前を書いておくことは一番最初に習いました」

 多分、持って行かれることがなくても、律儀に入学して最初の教えを守っていたから名前は記されていた。簡潔にイニシャルだけでも。
 上級生になってから守っている生徒が多いのか少ないのかは分からないけど。

「ええ……あの、些末なこと、ですし……わたしも、忘れます……というか空気が読めなくて恐縮です……」

 ちょっとしたジョークにも気づかない。鈍感極まりないのがいささか恥ずかしい。
 しかし余り恐縮していてはよろしくないし、軽く腕に触れる仕草に一瞬びく、としてしまう。
 触ると良くない影響があったことを思い出して身をこわばらせてしまい。

「……え、っと……?
 わたし……魔法にはなじみがないので……」

 片っ端から無効化してしまうから、雨を避ける方法なんて雨具以外に考えが及ばなかったが。
 
「――っ……」

 不意に黒い靄が広がって雨を弾いている様子に驚いたように息を呑んで。
 結構強力に術を無効化してしまうので、もしかするとその魔法も直接触れないにせよ多少施術を邪魔しているかも知れない。
 近づくのに少し遠慮しつつ、

「え、っと……あの、お見事、です、けど……強いて云えばなるべく……目立たない、感じの方が……」

 通りかかった生徒からは視線が向いているような気がする。
 目立つのが苦手だし、明日教室で何か云われるのも困る。
 雨具を片手におずおずと伸ばされる手を取って、大丈夫だろうかというように頭の上を見上げ。
 そうして、すごいですね…と行使される術に感心しながらお言葉に甘え、取り戻してもらった雨具は開かれないまま、家まで送ってもらうことになったのであろう。

ホーセーア > 「目立たないように、か・・・ではこんな感じでどうだろうか?
うん、これで何も見えなくなったし目立つことも無いだろう。
早速だがリセ君、ご家族が心配しているかもしれない。少々急ぐとしよう・・・」

無論、リセ嬢の無効化能力がどの程度まで働くかについての知見などある筈も無かったが、
「最低限体に触れないようにして、後は適当な高さに浮かせておけば何とかなるだろう」くらいで
微調整して、何とか二人の頭上に雨粒弾く力場形成して見せ。
早速のリクエストには快く応じて、黒かった色が瞬時に透明に変わり、見た目にはただ二人の回りには
雨が落ちてこないだけの様になり。
・・・まあ普通に考えれば、その状況こそが最も目立ってしまっているのは、たぶん二人とも気づいていないのだろう。
更に無事にリセ嬢を家に送り届けたのはいいが、
どう見ても子供にしか見えない教師が、雨具持っている娘をわざわざ送ってきた事が
ちょっとした騒動になってしまったのは・・・仕方のないところで。

ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 正面玄関」からリセさんが去りました。<補足:名簿内ご参照下さい>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 正面玄関」からホーセーアさんが去りました。