2024/07/30 - 22:33~01:58 のログ
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」にリセさんが現れました。<補足:名簿内ご参照下さい>
リセ > ――放課後のラウンジ。授業が終わって話が尽きない友人同士で集ったり、教師や用務員、警備員などが仕事の合間に、または終わりに一服しに来ていたり。
ただなんとなくまっすぐ家に帰る気になれない生徒がぼんやりとひと時を過ごしていたり。
はたまた家よりも魔法で涼しくエアコンディションされた空間から離れ難くて粘れるだけ粘っているものも。
それぞれが思い思いに寛いでおり、生徒や教職員の姿はそれなりに見られていた。
――その中で、おどおどしながらラウンジ内をうろうろ巡っては。まるで人を探すように視線を彷徨わせる一人の女生徒がいた。
その様子を眺めながらラウンジの隅の方で固まって陣取り、ソファで肩を寄せ合うようにして座ってこそこそひそひそ話ながら、くすくす笑い合う3人の女生徒たち。
その3人に時折ちらり…と視線を向けながら少し泣きそうな程に所在ない表情をしては、声を掛ける相手を探すようにラウンジ内を見回し。
「……ぇ、え……と……あ、あの……す、すみません……」
やがて意を決したように、一人でラウンジで過ごす人物を見つけるとその方が生徒か教師かはたまた用務や警備で配属されているものか……ともかく、声を掛けられそうに見受けられておずおずと小さな声で話し掛けるのであった。
誰にでも積極的に声を掛ける…というようなタイプとは真逆の。むしろ引っ込み思案な性分な女生徒であるため。
酷く遠慮がちに、どこか申し訳なさそうに。そして明らかに緊張している様子で。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」にヴィルヘルミナさんが現れました。<補足:学院制服姿>
ヴィルヘルミナ > うだるような暑い日々の続くこの頃、空調の効いたラウンジは生徒に人気のスポットだ。
ヴィルヘルミナも、今日は備え付けの本と購買で入手したアイスコーヒーを片手に、一人ソファ席で寛いでいる。
普段は取り巻きをよく連れている彼女だが、時たまこうして一人静かに過ごすこともあるのだが――。
「ん?」
声をかけられ、顔を上げれば、話したことのない女生徒の姿。
学院に通う貴族生徒の情報は一通り頭に入れてるヴィルヘルミナは、
彼女の家名もすぐ思い浮かべたが、没落貴族ゆえ今まであまり気に留めたことはない相手だった。
「何か用かしら?」
とはいえ、それだけで邪険にするような性格でもない。特に女子相手には。
笑みを浮かべて彼女が声を掛けた理由をたずねてみる。
リセ > 意を決して声をかけてみたはいいが……
「えっと、あの……その……」
二の句が出てこない。
頼りなさげに眉を下げて、ラウンジの片隅でこちらの様子を窺ってはひそひそくすくす笑いさざめいている三人の女生徒をちらりと見やると、彼女らは『ほーらいけって』『早くしろー』『さっさと云えよー』と声には出さず、口パクと動作で銀髪の女生徒にそれぞれ促していた。
それを見て一層泣きそうな表情を浮かべて俯き、ぎゅ…とスカートの裾を握りしめ。
確実に声をかけた彼女が迷惑になってしまいそうな程、押し黙ってしまい。
笑顔を向けてもらったにも関わらず酷く困ったような貌をして、
「ぅ、え、……そ、の……ぁ……なんでも、な、んでも…なく、って………えと…じゃなくて、あ、あの、あの……お、お隣…あ、空いて、ます、か……?」
なんでもない、失礼しました、と逃げ去ってしまうところだったのを、いくら何でもそれでは意味不明過ぎるし、後でこちらを伺っている三人組に何を云われるか分かったものではない。
明らかに三人でつるんでこちらをこそこそ見ている女生徒たちに何か強要されていると思しき女生徒は、何故か急に他にも空いている席はいくらもあるのに相席などを申し出て。
やはり今にも泣き出しそうな顔をして金髪の女生徒の紅い眸を見つめた。
ヴィルヘルミナ > 明らか挙動不審な様子の銀髪の女生徒。
ちらりとラウンジの片隅の方に目をやるので、ヴィルヘルミナもそちらに目を向けると、
明らかにこちらの様子を見ていた生徒の一団が慌てて視線を逸らし無関係を装う姿。
「……はぁ、それで取り繕ったつもりなのかしら?」
呆れた表情をそちらに向け、目の前の少女に視線を戻す。
何か不本意なことをさせられているだろうことは流石にわかる。
そして、泣きそうな顔で相席を求められ、
「セルステッド家のご令嬢だったかしら?今の所は隣に誰か座る予定は無いわね。
別に座りたいなら構わないわよ?」
断る理由も特にない。ヴィルヘルミナは隣の椅子を指し示し、持っていた本に視線を戻す。
どうせ何かろくでもないことを強要されているのだろうが、まずは様子見だ。
リセ > ラウンジで群れて様子を窺っている女生徒たちだったが、紅い眸が向けられると誤魔化すように別の話題に興じた振りをしつつ。
時折ちらちらと目を盗むようにして視線をくれていた。
バレバレ過ぎて呆れられるのもさもありなん。
そんな中で独り、落ち着かなげにそわそわと相席の許可を求めて立ち尽くす女生徒。
断られたら……いっそ断られた方が……でもそうなったら後で……
そんな風に頭の中でぐるぐると懊悩めいて思考を巡らせながら、少しでもきっかけがあればぶわっと泣き出してしまいかねない弱り果てた面相。
相手の方から家名を告げられると、思わずびくりと肩を震わせ驚いたように瞠目して。
「え、ぁ……ご存じ……なの、ですか……?
あの……そ、ゾルドナー……家の…ヴィルヘルミナ様……です、よね……? 存じて下さっていた、とは思いません、でした……
あ、ありがとうございます……、失礼、します……っ」
彼女の邪魔をしてしまったような気がしてならないものの、相席を許可していただき、さらにこちらの家名まで存じておられたことに驚きつつも、恐縮しきりに示された隣にちょこんと遠慮がちに着席し。
無意識に震えつつ。なにか云いたげにそちらを向いて口を開いては、言葉にする前に逡巡して口を閉じ、俯いて。
膝の上に置いた両手をかたかたと震わせ。
ヴィルヘルミナ > 「まぁ粗相の無いようにね、貴族生徒の事は事前に頭に入れてるのよ」
大貴族の令嬢であり、また優等生として、ヴィルヘルミナはそれぐらいは朝飯前にこなしていた。
とはいえ、相手は特に秀でていたり注目するような点も無い、むしろその変な睡眠癖が噂になるような生徒。
これまでは特に眼中に無かったのであるが…。
「まぁ、これも何かの縁かしら。顔も悪くないものね」
ぱたん、と本を閉じ、明らかに何か言いたい様子のリセを見つめる。
しかし、中々言葉を発しない彼女。
「……何も言わないならこっちからいい?
まず、貴女のことは何て呼べばいいかしら?」
最終的には彼女に何かを強要している生徒達をとっちめるにしても、
まず何を強要されているのか聞かないことには話が進まない。
最悪、しらばっくれられる可能性すらある。
まずは、落ち着いて話をしてもらおう。
リセ > 「貴族クラスも大勢在籍している、のにですか……さすが…です……」
全員把握している、と云うほどでもなければ確かに没落した下層貴族の娘の情報など持っている筈がない。
貴族名鑑に名前があるのかどうかすら怪しい立場であるのに。
対して名家の目立つご令嬢である彼女のことは詳細までは存じ上げないが顔と名前くらいはなんとなく把握はしている……その程度であるが、まあ大抵の貴族クラスの生徒は見知っているのだろう。
「か、お……? え、えっと…お寛ぎのところをお邪魔してしまって……本当に、申し訳、ありません……」
縁、と口にする彼女に、押しかけて迷惑をかけているのに縁と云えるのかと懐の広さを感じながらも相変わらず委縮しきったように。
「あ、すみ、ません……え、っと……リセアリア、と申しますが……リセ、と呼ばれることが多い、です……」
自己紹介すらたどたどしく。
酷く遠慮がちに。目を合わせることすら無礼に値すると思い込んでいるのか目線は下がり気味のまま口にして。
そしてようやく、躊躇いがちに口を開き始めた。
「ぁ、の……大変厚かましい、のですが……お願い、したい、ことがありまして……」
やっとのことで切り出し、話し始めた事情は。
ラウンジにいる見ず知らずの相手にゲリラ告白してこい、と強要されたこと。
そして、勿論断られるだろうから命じた連中はその様子を眺めて笑いものにしてやろうという気であり。
けれど、もともと引っ込み思案な性格でとてもそんなことはできず弱り果てて今に至るのだが。
形だけでもやっておかないと後で酷い嫌がらせをされかねないので、告白された振りだけしておいてくれないか、と。こちらの要望としてはそんなもので。
ヴィルヘルミナ > 自己紹介と、その後の事情説明をふんふんと頷きながら聞く。
まぁ、どうも思った通りの事情のようで。
しかし、女好きの自分が言うのも何だがそういうのは普通男子生徒にやるものではなかろうか?
そんなことを考えつつも、改めてヴィルヘルミナはリセに視線をやる。
「じゃあ私もリセって呼ぼうかしら?よろしくね。
で、事情は分かったわ……でもちょっと難しいわね?」
悪戯気に、ヴィルヘルミナはにい、と笑う。
「私、貴女みたいな可愛い女の子からの愛の告白は断れないの。
だからするなら形だけじゃなくて本気でしてもらいたいわ?
嘘っぱちの告白なんてお断りよ?」
にい、と笑いながらそう語っていたヴィルヘルミナだったが、急に真剣な表情に戻ると、リセの瞳を見据えて。
「そもそも、私の家みたいな大貴族相手に愛の告白なんて、悪意ある人間が目にしたら大騒動になるわ。
最悪貴女は学院にいられなくなる…そこまで考えてやってるのかしら?あいつらは」
リセに告白を強要している女生徒に目を向けると、相変わらず彼女らは白々しくこちらを見ないふりをする。
確か彼女らもヴィルヘルミナの家からすれば王都の木端貴族でしか無かったはず。何をしているのか、自分達でも分かっているのだろうか?
「それとも、そこまで恨まれるようなことをしたの?そうは見えないけど」
リセ > どうにかして話してみたが、云ってから云って大丈夫だっただろうか……と不安が押し寄せる。
多分、大丈夫ではない。
迂闊だったかも知れないと悔やみ始め。
呼び名に関しては、肯いて。
「ええ、是非その様に……こ、こちらこそ、よろしく、お願いします……
あ、そぅ…ですよね……いきなり、こんな……ご迷惑、でした、よね……」
難しいと口にする声にそれはそうだろうと理解してしゅんと項垂れて、すみませんと口癖のように繰り返し。
「え…? い、いえ、あの。そんな…わたしなんて……全然、つり合い、ませんし……
ヴィルヘルミナ様の、ことも……何も、存じ上げ、ませんので……」
本気です、と要望通り云ったところで現状口だけと云うことになってしまう。
不意に目線を重ね合わされると、軽く潤んだ双眸は怯んだような色を映し。
「うー…ん……、多分、ですけれど……ヴィルヘルミナ様はとてもお美しいですし……才女だというお話も伺っております……一方的に慕う生徒からの告白なんて、そんなに珍しいことでは、ないのではないでしょうか……?」
だからあっさりと袖にされるなんて、日常茶飯事であろうし衆目を浴びるような事項とも思えない。
大貴族の方からなんて逆パターンの特殊事例ならともかく、下層貴族の娘が一方的に想いを寄せて玉砕したところで一時少し話題に上るかも知れないが「へー大人しそうな顔して意外とねえ」くらいで一笑に付されて終わりそうな気もする。
……まあ、少しでも話題になんてなってしまえばちょっと死にたくはなりそうだけど。
大騒動になる、という彼女の予想はどうにも的中しないような気がして首をひねり。
「恨まれる……というか……こういう……嫌がらせみたいなのは…いつものこと、ですので……」
ただ、自分より下の地位の者を虐げて面白がり自己顕示欲を満たす、なんて学院の中ではそれこそ何も珍しくはなく。多数起こっている有り触れた事例であろう。
ヴィルヘルミナ > 「存じ上げてない…ま、まぁそうよね……」
面と向かってそう言われると、ますますなら何で私に声をかけたんだという気になるが、
逆に知らないからこそ声をかけたのだということもあるかもしれない。
「別にこっそりと告白するなら問題は無いわ。私が黙っておけばいいだけ。でも貴女はあの連中に強要されてるわけでしょ?
なら絶対アイツらは言いふらすし、それが貴女の家族の耳に入ってみなさいよ。
『娘が何て失礼を!』とか私の実家に土下座に来られても困るわよ私」
そもそも没落貴族の令嬢が大貴族の令嬢に愛の告白だなんて、何か政治的に取り入ろうとしていると見られる可能性もあるだろう。
そうなれば釈明も対応も面倒なことになるのは違いない。
むしろ逆の方が問題が無いぐらいだ。大貴族の戯れなんて珍しくもない。
「はぁ……まぁ分かったわ。じゃ、懲らしめましょうか。
聞いてたでしょ?アイツら捕まえてきて?」
不意に、ヴィルヘルミナは後ろを向いてそう言うと、近くにいた女生徒数人がはぁいと返事をして立ち上がる。
そして、軽やかな足取りでリセに指示を出した三人にそれとなく近づき、包囲し、こちらへと連れてくる。
「あの子達は私の恋人よ?……というかセフレかしら」
そして、ヴィルヘルミナはリセに笑いかけながらそう紹介するのであった。
リセ > 「お噂くらいは多少……というところなのですが、お人となりなどは……」
貴族とはいえクラスはいくつかあり、接点はないのだから時々誰かが話しているのをたまたま耳にしている程度。
好意を寄せるほどは知らないし、好意を持つ相手には無理矢理告白させられるなんて絶対に無理である。
「面倒ごとには……なるかも知れませんね……やっぱり、わたし…他の方に……」
自由恋愛が認められている限りは学生の内での淡い告白なんて多めに見られているだろうが。
恐らく他からもすでにアタックされていそうな彼女が云うのならばすでにそういう面倒ごとに発展したりもしたのかもしれない。
であれば、その懸念のない相手を見繕って、後で何かの手違いであったといくらでも云い訳をして丸く収めた方が無難な気がして。
迷惑をかけたことを丁寧に謝罪して席を立とうかとしたところ。
「え? え? えっ……あ、あの、ちょっと、待ってくださ……あっ……」
懲らしめるという科白に目を丸くし。
てっきり一人でいるのかと思っていたのだが、傍の席で寛いでいたかと思われていた女生徒たちが行動を起こしたのを見ると焦って。
「あ、あの……お、お願い、です……わたし、大丈夫、なので……手荒なことは……」
恐い。影のように周囲にセフレを侍らせて命令して笑う貴族令嬢恐い。
虐めっ子達よりむしろ根本的に恐ろしい存在な気がしてさーっと血の気を引かせ蒼白になりながら、ラウンジにいた三人には何もしないように泣きそうな顔で懇願し。
「お、お詫びします……本当に申し訳ありません……どうかここはお許しください……」
ことが拗れるのがとにかく嫌だったし、正直声をかける相手を完全に間違えたと思った。
謝って済むのならばいくらでも謝罪する。強要された告白も実際にはしていないし、まだ取り返しがつくならなかったことにしたい。
ヴィルヘルミナ > おろおろと焦るリセの姿などどこ吹く風。優雅にコーヒーを飲みながら元凶の三人が連れて来られるのを待つヴィルヘルミナ。
懇願するリセに、満面の笑みを向けて言う。
「あら、ゾルドナー辺境伯家は武門の家、手荒なことは大好きよ?」
かのナルラート王の時代から今日まで、数々の武勲を今に伝える北方鎮守の要の一つ。
それがヴィルヘルミナの実家、ゾルドナー辺境伯家である。
「貴族の本懐はね、ナメられたら殺すことよ?……いやまぁ今回は殺しはしないけど」
どこから現れたのか、十人ほどの女生徒にぴったりと囲まれる元凶三人。
顔面を青くするその様子を愉快そうにヴィルヘルミナは眺めている。
「別に貴女のお詫びは必要ないし、貴女が大丈夫かどうかは…正直に言えば関係ない。
アイツらは私を巻き込んだ。そして愛の告白を人をいじめる道具に使った。それが許せないだけ」
そうこうしているうちに、連れて来られた三人がヴィルヘルミナの前に跪かされる。
いつの間にか後ろ手に縛られていて、その姿はまるで罪人か捕虜のよう。
震えているであろう三人に、ヴィルヘルミナは問いかける。
「で、かのナルラート王の時代から王国に仕え続ける誉れ高きゾルドナー辺境伯家の一人娘をくだらない苛めに使おうとしたことについて、何か申し開きはあるかしら?」
彼女らを見下ろす視線は、冷たいものであった。
リセ > ……帰りたい。
正直ここにきて声を掛けられそうな相手を物色していた時よりも猛烈に帰りたい。
恐いしもう無理……。
頼んでも無駄だったし虐めっ子三人は自業自得と云うことでうっちゃって知らん顔して帰って寝たい。
寝たい……ぁ、眠、い………
若干精神状態が極限に達してきて猛烈に睡魔が襲って来た。
過眠症の発作だ。
大分物騒な貴族令嬢の命令で虐めっ子達が縛られて連行され跪かされているのを見て気が遠くなってくる。
こうなったら彼女らがどういう目に遭わされるのかは知らないが『お前があんな相手を選ぶからこうなったんだ』と完全に恨まれて今までより手酷い目に遭わされてもおかしくない。
申し開きを求められて三人は口々になんだかんだと云い訳がましく保身を第一にした陳腐な言葉を連ねているが。
私たちは何も知らない、だの、そいつが勝手に、だの、むしろ嵌められたのはこっちだ、とかそんなようなことで。
正直、どっちを信用するかは彼女次第であろうから、とにかく困ったことになった。
「……ぁ、そ、の……本当に、すみ、ません……わ、たし……もぅ……」
成り行きをどうしたらいいのか解らず、場違いにも物凄く眠たい顔をして見守っていた女生徒はふつ、と気を失うようにして限界を迎え深い眠りに落ちてしまう。
ヴィルヘルミナ > 「ん?」
何を言い訳しようが、頭も力も家の格も上回っている相手に通用するわけがない。
そういうわけでノリノリで犯人三人を詰めていると、ばたりと倒れる音。
そちらに目を向ければ、意識の無いリセの姿。
「あら、えっと…どうしたのかしら?貧血とか…じゃなさそうね?
もしかして何かの病気…?」
あれこれ考えるも、リセの事をあまり知らないヴィルヘルミナにとっては、それは重大な事態に見えてくる。
とりあえず、こんなところに放置しているわけにはいかないだろう。
「保健室にでも連れていくべきかしらね…。ちょっと行ってくるわ!」
自分の取り巻き数人に補助してもらい、そっと抱き上げるヴィルヘルミナ。
それから保健室に向かおうとして、ふと立ち止まり、もう終わったと思ったのかほっとした様子だったいじめっ子三人に目を向ける。
「そういや結局そいつらどうしようかしら?
……うーん、まぁ、無駄に顔もいいし…貴女達が良ければ、みんなで本当の愛ってやつを教え込むのとかどう?」
そう提案すれば、取り巻き皆が笑みを浮かべていじめっ子に向き直る。
彼女らは全員、女好きで性に奔放なヴィルヘルミナのセフレであり……まぁ、そういうことである。
いじめっ子三人を担ぎ上げ、うきうきとした様子でどこぞへと運んでいく取り巻き達を見送ると、ヴィルヘルミナはリセを保健室へと運ぶべく、彼女を担いだままラウンジを後にする。
リセ > 脆弱な精神が早々に参ってしまった。
過激なことはとても不得手でありすぐに耐えられなくなる。
逃避するように眠りの世界へ逃げ込んでしまい――また、そういう体質が虐めを助長させるのであろう。
襲い来る猛烈な睡魔に必死に抗うも到底敵わず。
そのまま、頽れるようにして座っていた姿勢が横にぱたりと傾倒して昏睡状態に陥る。
事情を知る虐めっ子達は鼻白んで『まただよ』『うざ』『嘘寝が』決して寝たふりなどではないのだが。
所構わず眠り込む体質を鬱陶しく感じる連中としては口々に唾棄して。ほっといてもいいですよ、そんなの、と親切にも眠り込む女生徒を抱きかかえて保健室へ運ぼうという令嬢に告げるも――すぐにそれどころではなくなった。
得体の知れない取り巻き達に囲まれて自らの窮状を憂うのに手一杯となったのである。
そうして保健室に運んでもらえばベッドでしばらく寝かせてもらい。
目を覚まして眠り込む前の事態を思い起こすと顔面蒼白になって頭を抱え。
後日、丁寧なお礼とお詫び状を伯爵令嬢に送るのであった……。
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」からリセさんが去りました。<補足:名簿内ご参照下さい>
ご案内:「王立コクマー・ラジエル学院 ラウンジ」からヴィルヘルミナさんが去りました。<補足:学院制服姿>