2024/10/17 のログ
プリシア > 何時もはお友達とやって来る温泉だけれども、偶に一人でやって来る時もある。
一人でゆっくりと浸かりたい時とか、誘う事誘われる事が偶然無かったから出来なかった時とか。
行かない選択肢もあるのだけれど、行こうと決めた時はやっぱり行きたいものだから。

脱衣所の扉がゆっくりと開き、そっと顔を覗かせる様にして浴場内を先ずは確認。
お風呂セットの入った桶を両手で確りと胸元に抱え、転ばない様にヒタヒタとちょっとだけ慎重に歩く。
二つのお団子に纏めた黒髪に、其の頭部からは二本の小さな角。
身体に巻いたタオルが少しばかり半端な巻き方なのは、背中から生えた同じく小さな翼と、お尻から垂れる尻尾の所為。
パッと見でも人間でない事の解る少女だが、其れでも周囲からの注目はそう向けられてはいない。
頻繁ではないが定期的に足を運んでいるからか、周囲からすれば今更感が強いのだ。
尤も、少女自身からすれば注目を受ける事は以前からある事だからあんまり気にしてはいないのだが。

最初に向かうのは洗い場、お風呂に入るのはちゃんと洗った後と教えられているからで。

ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にレヴェリィさんが現れました。
レヴェリィ > 「背中、流しましょうか?」

洗い場の椅子に座ったあなたの背後から投げ掛けられる声。
正面の鏡には、後ろから銀髪の少女が覗き込んでいる様子が映り込んでいた。

……先程、浴場に入った時にはいなかった気もするが。
いつのまにか湯煙のように現れ、人懐っこい微笑みを浮かべている。

「プリシアの髪、長くて一人で洗うには大変そうだもの」

どうかしら、なんて首をかしげながら。竜の子の様子を伺う。
頭に過るのは以前夢の中で聞いた声。
果たしてどこまで信用して良いものか……それもあなたの反応ですぐにわかるはず。

プリシア > 洗い場の椅子に座って、髪を洗ってから身体を洗って、お風呂に入る。
此の温泉に何度かやって来て行っている流れを思い浮かべ、洗おうとした、其の時。
背後から掛かる声に誰だろう?と正面の鏡で映し見る。
其処に見えるのは、何処か見覚えの在る少女の姿であれば。

「あ、うん…えっと、お願いするの」

少しばかり考えを巡らせれば浮かぶだろう疑問、不思議と其れを浮かべる事はなくて。
向けられた微笑みに、ニコッと彼女へと微笑みを返してみせる。
考える事もなくそう答えるのは、何故か彼女を信用し切っているからで。

「えっとね、大変…かどうか、よくわからないの。
プリシア、ずっと、こうだから」

自分で洗う様になる頃からの、此の長い髪との付き合いだから。
彼女の言葉に、逆にちょっと考える様な仕草をしてから素直に答えた。
其処迄を伝えた後に結わいでいたお団子を解けば、緩やかなウェーブ掛かった黒髪がサラリと揺れる。
後は其の侭彼女に任せる様に、椅子に座ってじっとしているのだった。

レヴェリィ > 「ふふ、お安い御用よ」

にっこりと笑みを深めると、隣の洗い場から椅子を借りてあなたの後に座る。
どうやらこちらに見覚えがある様子。
すっかり忘れられてしまっていることも珍しくはないので、それだけでも少し嬉しい。

「なるほど、ずっと伸ばしてるのね。
でも、髪の短いお友達よりも、洗うのに時間が掛かってしまうでしょう?」

普段は友達と来ていることなど、少女には知る由もないはずだが。
当然のように問いかけながら。わしゃわしゃと洗髪剤を泡立てる。

「あなたなら、短い髪型だって似合うと思うわよ。
……まあ、この綺麗な髪を切ってしまうのは勿体ないけれど」

プリシア > 彼女を知ってはいるけれど、知っている以上の事が思い出せない。
其れだけでも不思議に思える事であろうに、そう思えないのは何故なのか理解の及ばない処だろう。

「うん、ありがとう、なの」

何度も洗って、洗われてとしているのだろうけれども、此れだけは何時迄も慣れないもので。
洗い始めて泡立ってこれば、ギュッと強く目を瞑ってしまう。
其れに合わせる様にか、小さな翼は軽く閉じてしまうし、小さな尻尾も垂れた侭で動きを止める。

「えっとね、そうなんだけど、おかーさんも、長いから…いっしょ、なの」

彼女の様に短くても似合うと云われる事もあるのだけれど、両親共に髪は長い部類である為か。
見た目でも近く在りたいと、そうした想いを伝える様に。
そう思うけど切ってしまうのも勿体無いと続ければ、コクンと小さく頷いてみせた。

レヴェリィ > 「あら、そういうこと。なら仕方がないわね。
自慢のお母さん、といったところかしら。
……プリシアの母親ってことは、きっと美人なんでしょうね」

少女が指を動かす度、髪が泡が細かい泡に包まれてゆき。
丁寧に、愛おしむように、慣れた手つきで長い黒髪を洗い込む。
時折指先で軽くマッサージするように頭皮も洗いながら。

「…………ふふ」

すっかり縮こまってしまった幼子を、くすくすと可笑しそうに笑う。
ついでにぴょこんと飛び出た小さな角も優しく擦りつつ。

「そんなに力んでは疲れてしまうわ?
もっとリラックスして……怖がらず、目を開けて御覧なさいな」

不思議なことに、どれだけ泡立てようと顔の方へ泡は流れて来ない。
それはまるで魔法のように。

プリシア > 「うん、えっとね、じまんのおかーさん、なの」

緊張はしているのだけれども、洗って貰って気持ち良いのだろう。
ちょっと身体は強張っているものの、時々翼や尻尾が小さく揺れていて。

「んっ…ちょっと、くすぐったい、かもなの」

小さな角を擦る指の動きに、ピクッと身体を少しだけ震わせるも。
其れが別に嫌という訳でもないみたいで、其の指先から逃げる様な動きを見せたりはしない。
目を開けても大丈夫だと、彼女はそう云ってくれているのだけれど。
何とか目を開けようとして…又閉じて、再び開け様として、閉じて、そう繰り返してしまって。
結局の処は中々目を開き切って見てみる事は出来ないみたいだ。
そうした動きは無意識にしてしまう翼や尻尾の動きでそれとなく解ってしまうかもしれないか。

レヴェリィ > 「あらあら……」

幼子の反応はわかりやすい。
こちらの言葉通りにしようとして、余計に怖がらせてしまったのが伝わった。

「逆効果だったわね。無理しなくていいのよ。
プリシアの楽なようにして頂戴な」

苦笑を漏らしつつも、何度か角を擦り。
その反応に「ふむ」と小さく呟く。
やはり竜の部分やその付け根は感覚が独特なのだろうか。

「ところでプリシア……私の名前、覚えてる?」

頭から手を離し、長い髪の根元から先端に向けて進みつつ。
耳元でそっと囁き掛ける。どうやら面識は残っているらしい、が。
果たしてどこまで自分のことを覚えているのだろう、と。

プリシア > 「ううん、だいじょうぶ…だけど、まだ、ちょっと…むつかしいの」

其れでも小さな角の方は何度か触れていれば少しずつ慣れてくるのだろう。
擽ったそうに肩を竦めたりはしているものの、じっとしてはいられる様に為ってきて。
そうしている際に掛けられる彼女の言葉に、小さく首を傾げてみせる。
少女の名前…云われて気にしてみれば、何故か直ぐには思い出せない。
其れでも思い出そうとすれば、記憶の奥底に眠った場所への手探りに応えてくれるのか。

「えっと…えっと……レヴェリィ…おねー、ちゃん…?」

確かそんな名前だった、如何して疑問に考えてしまうのか解らないのだけれども。
今の処は其れだけを思い出せただけでも十分なのかもしれない。
そうした様子から、他の事も引き出そうとすれば思い出せるかもしれないが。
其れを行うのも、又彼女の世界へと誘う事にするのも、彼女次第だろう。

レヴェリィ > 「まったくもう、相変わらず健気な子ねぇ。
いいのよ。ただ『痛くしない』って、あなたに伝えたかっただけだもの」

こうしている間にも、瞼の上を泡が流れていくことはない。
それさえ伝わっていれば構わない。いずれ自然と肩の力も抜けると良いのだけれど。

やがて、幼子の口から零れる己の名。

「…………ええ、そうよ。あなたの"レヴェリィお姉ちゃん"。
またあなたにそう呼んでもらえて、嬉しいわ。プリシア」

あなたには見えないであろう表情を満面の笑みに染め。
思い出してくれてありがとうね、と伝えるように。洗うのとは少し違う手付きで頭を撫でる。

幼子は自身の記憶を探っている様子であった。
今、自分が名前を訊いたように。
何か切っ掛けがあれば、他の夢の記憶も思い出してゆくのだろう。

「ねぇ、プリシア。あなたの知ってる私のこと、もっと教えて頂戴……?」

髪を洗い終えた指先は、次に洗う場所を探すように……首筋へと下りて行った。

ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」からレヴェリィさんが去りました。
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」からプリシアさんが去りました。