2024/07/10 のログ
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」にニュアさんが現れました。
■ニュア > 肌を晒すのを極端に厭う半陰陽の娘が何故、斯様な場にいるかといえば──それは、とあるギルド依頼が発端。
《露天温泉の岩場の片隅になにやら奇っ怪なものが発生したから迅速に処理して欲しい》なんて依頼書を見たが故。
その形状説明に、───ピンときたのだ。
故に、依頼書を引っぺがし、誰に先を越される前に受諾した。そして案の定。
「……ェ。 マジで?なんでこんなトコに発生しちゃってんの???」
利用者の不在タイミングを見計らい、露天風呂を構成する岩肌の片隅にしゃがみ込み。
露天風呂に全く相応しくない着衣姿の薬師の娘は──真顔で興奮、大歓喜していた。
本来なら、所謂秘境と呼ばれる場に生息する、粘菌に近い原始魔法生物の類。
スライムにも見える毒々しい色彩に蠢くそれは、娘にとっては中々手に入らない有用な生薬原料だ。
温泉成分と岩質、湿度や気候等の環境要因。或いは、利用者の持ち得た魔力等の外的要因。
なにが作用したか知らないけど、こんなところで入手できるなんて僥倖でしかなく。
「ぇ。ぇ。もうこんなん、全力回収コースなんですけど。」
流石に外套は脱いで、長衣の長袖は腕まくり。
もうもうと煙る湯煙のなか、白皙の面に薄らと汗を浮かばせて、いそいそと木篦と陶瓶を扱い、粘菌を回収に取り掛かる。
直ぐに終えられる作業、人払いは頼まなかったから、利用者が来る前に一先ず事を終えたいところで。
■ニュア > 手早く粘性生物を篦で削いでは瓶に落とし込む。
ふつりと額に汗が滲むのを、華奢な細腕で拭いながら。
「なんなら岩ごと持って帰って培養したいくらいだよねーコレ…。売れるんじゃ……?」
不埒なことを考えるも、それが適わぬから稀少なのだ。きっと無理だろうという予感はある。
温泉水に魔力を融かし、即席の培養の力場を陶瓶の中に整えた。
とりあえず、持ち帰って薬に仕立てる迄は死滅することはないだろうけど。
それにしても。
「ぇー… こんな最高な採取場所、このままじゃダメかなコレ…。
ま、風呂にこんなスライムみたいなのがドロドロしてたら、そりゃ宿は困るだろうけどさー…」
宿からの依頼は要するに発生の根絶。駆除である。
迅速に──…素っ裸の何某かがやってくる前に終わらせねばいけないのだけども。
作業がここにきて鈍るのは、この最良の採取場をどうにか残せないかなんて思ってしまうがゆえ。
正直勿体なさすぎる。未練タラタラで娘は眉を顰めること暫し。──…溜息。