2024/04/15 のログ
イェン > 「―――――は、あぁぁ……♡ 《個室風呂》など簡素なだけの狭い浴室と考えていましたが、良い意味で予想を裏切られましたね」

(4人掛けの丸テーブルくらいの大きさの掘風呂に細身を浸し、イェンはぷかぷかと湯船に浮かぶ白乳も露わに温水の心地よさを堪能していた。風呂場であっても落とすことのない防水目弾きの朱も印象的な双眸が見つめる先、一面がガラス張りとなっている壁の向こうには庭石と植樹のライトアップされた中庭が広がっている。その明かりが薄暗い浴室内に差し込む様子は、どこか幻想的でさえあった。北方帝国からの留学生が現在利用しているのは、九頭龍温泉のとある廊下にずらりと並ぶ《個室風呂》。本来は個人、もしくは恋人や家族といった少人数で利用するプライベートな浴室として利用されていたそこも、ここ数年はまるで異なった使い方が成されている。そこは現在、一夜限り、行きずりの関係を愉しむための出会いの場として利用されていた。当然そんな内実など知らぬ留学生は入室時、入り口脇に掛けておく《使用中》の札が、赤、青、白に色分けされていた事には小首を傾げつつ、深く考える事も無く最も手前に置かれていた赤札を掛けた。赤は女性が、青は男性が、その浴室で待機中という意味であり、そこに相手が入る時には札を白に変えておくというルールを考えれば、間違いでは無くても最悪な選択であったと言わざるを得まい。まさか今しも部屋の入り口で、己の相手役を狙う男達、事によれば同性やふたなり娘も含んだ熾烈な争奪戦が行われていようとは夢にも思わず、黒髪の少女は程なく破られるだろう一人風呂の寛ぎに上気した美貌を綻ばせていた。)

ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」からイェンさんが去りました。