2024/02/03 のログ
ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」に八蛟さんが現れました。
八蛟 >  
 深夜の旅籠
 王都の中央区画から外れた位置にある穴場の温泉宿は、今日も静かなもの。
 多くの賑わいを見せず、穴場の魅力を出してから知れず知れずと鬼隠しのように人を攫う場。
 そのせいか、八蛟 鬼のような者には居心地がいい。

 普段奴隷都市や港湾都市に居ることが多いせいか、王都の空気が生温く感じて余り運ばない。
 だが、木の匂いで一杯に満ち、木組みの浴槽から香る香り木の匂いは甘い花よりも好ましい。
 その上で、隙あらば攫おうとする虎視眈々とした構えが鬼は好きだった。

 強けりゃ何をしてもいい 弱けりゃ何をされても文句は言えない
 心地よさとは裏腹に匂わせるそんな旅籠の空気が好きだ。
 蛇が、この旅籠を中心に蜷局を巻いているようにすら感じる。
 今もその裂け目舌を伸ばして匂いを嗅いでいるかのようだ。

 ―――ばしゃんっ 温泉の湯の独特な匂い
 長い髪を巻くこともせず湯舟の中で揺らめかせ、掌に掬った湯で貌を濡らす鬼
 前髪を掻き上げ、その太ましい腕 湯舟の縁で両腕とも放りだし、堪能している。
 素焼きの酒壺 釉で焼かれた茶碗大のぐい吞みがあるのは、鬼の持ち込んだものだろう。


   「あ゛~…、…溶けんァ…、…海や都じゃ味わえないさね。」


 人気が少ないせいもあり湯舟は開放的
 足を延ばし、巨躯を寛がせ、髪に気を使わないのはその程度で剥がれる質でもないせいか。


 

ご案内:「温泉旅籠「九頭龍の水浴び場」」から八蛟さんが去りました。