2025/04/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にヴェスタさんが現れました。
ヴェスタ > 石畳に行き交う人々の喧騒が響く通りの片隅、黒い獣人の男が道端の大きな掲示板を腕組みしながら覗き込んで、いくつかの張り紙を興味深そうに眺めたかと思えば、やはりすぐ興味を失う様子を見せたりと、周囲から少し浮いた様子で立っていた。

まだ日の光がかろうじて影を作って伸びているものの、もうすぐ暗くなるだろう、と言うような時刻で、そんな中で黒くて人とは違う者が大きな図体で居るものだから、それに気づいた者たちの中にはそそくさと遠回りに避けて行くのも少なくない。
なんだただの獣人か、と気にしない者は気にしないのだが、やはり少々目立つのは仕方がない。

「ふむ、探そうと思えばそれなりには、あるものだな。ひとつ、真面目に考えてみるのも良いのかもしれんか?
 ――安宿を渡り歩くのも面白くはあるがな」

主に商業地区、と言った体のその通りの掲示板には、ちょっとした依頼のようなものから、店の広告やら、手配犯の似顔絵やら、あれこれ貼られている。
男が先刻から気にしているのは、どうやら空き家の貸出の告知や、売家の広告のような内容のもののようである。
その日暮らし、を気取っていると言うわけでもないが、気の向いた適当な宿を数日借りて、移動して、を繰り返していたのだが、この街に居る事が多くなった機に、自分用の拠点が欲しくなったようであった。

ヴェスタ > 「……。 こらこら、それは危ないからやめたまえ」

丁度活発になって、親が追いかけるのが大変になってきただろう頃の、小さな男の子が獣人男の足から背中へと器用によじ登り、背中の剣の柄辺りに手を伸ばした辺りで……ひょい、と後ろ手に男に捕まり。
ぷらぷらと垂れ下がるように顔の横へ持ち上げられると、面白がってきゃあきゃあ言っている。

「でかい猫か何かと思ったのかもしれんが、少なくとも遊具ではないぞ。それと親はどこかね?」

探そうとするまでもなく、すみませんすみませんと頭を下げながら駆け寄ってくる女が居たから、よじ登るならあっちにしたまえ、と子供をそっと下ろしてやると、今度は母親であるのだろう方へ飛び込んで行って登り始める。
子供の方が自ら行ったのだから間違いはあるまい、と腕組みして眺めながら。母親らしき女がこちらを見て、獣人の姿に少々怯えたか、だいぶ焦っている様子を、気にするな、とばかりに片手を左右にゆらゆらさせて。

「俺の方はどうと言う事もなかったがな。子供から目を離してはいかん――とは言え、子供と言うものは一瞬の隙をついて居なくなるものだからなぁ、難しいものだろう」

攫われるような事にはならんようにな、と少し笑みを浮かべていると、ひい、とまた怯えた声を上げられたが。そんなものは慣れているから尚更どうと言うこともなく。
男の猫顔が、恐る恐るでも良く見てみれば、それは一応笑っている顔なのだろう、と女の方もなんとなく理解したのか。少し気恥ずかしそうに再び一礼すると、子供を抱きかかえて去っていく。

ヴェスタ > 再び周囲に何事もなくなれば、掲示板の張り紙の中から、いくつか気になるものを書き留める。
資金の方はどうとでもなるのだが、問題はむしろ自分のこの見た目と、身の保証を立てるのが難しい事の方だろう、と考える。
盛大にインチキしてやることもできなくはないのだが、それでは面白くない。

「金さえ出しておけば他は気にせん、と言う場所をまず探してみるのが楽ではある、か」

ボロ屋ぐらいで丁度いいのだ、とも思う。旅の拠点とするのに豪奢な家など不要だし、何より少し狭いぐらいの場所を好きに弄り倒して好みに仕上げる、と言う作業は案外好むのだ。
この日のうちに決めねばならぬものでもないしな、とも思うし、思い立ったらすぐ決めてしまいたいとも思いつつ、もっと他の場所も回ってみるか、と歩き出し。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からヴェスタさんが去りました。