2025/02/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 宿併設の酒場」にエアさんが現れました。
■エア > 何故平民地区にある宿が併設されている酒場にいるのか。
何故酒場の片隅にあるテーブル席で珈琲を飲んでいるのか。
それはその理由は今求めている事と関係があった。
……『虫除けハーブ』
寮の自室に未だにカサカサと蠢く黒い何かを部屋から駆逐すべく求めているモノである。
学院内の図書館でレシピを調べメモに取り、
平民地区で薬草を扱っている店を巡り歩き、
材料を一通りそろえたのだが、どうしても後1個、後1個だけ材料が揃わない。
あとハーブを調合する人間も伝手がない。
それを含めて『冒険者ギルド』に材料と調合できる人間を募集し、
同時に『学院のラウンジ』に同様に材料と調合できる人間を募集する趣旨の紙を張り出していて、
もし材料あれば『この酒場まで持ってきてほしい』
もし技術があれば『力を借りたいので酒場まできてほしい』
と、
ここの酒場の住所を書いて今に至るのだ。
来て早々酒場の主人に金を握らせて、以下説明を。
それに合わせてそれっぽい客が来たかの確認を。
結果どちらもハズレだったので、仕方なく店の片隅のテーブル席を借りて、
砂糖もミルクもない珈琲を頂きながら、本を読み依頼を受託した人間や、
依頼に興味がある人間を待つことにしたのだ。
この店を選んだ理由は貴族である両親の伝手なのと、
伝手であればこんな時間まで学生が本を読んでいても文句言われないのと、
――…店主の作るチョコレートが美味しいと聞いているからだ。
珈琲を静かに一口。
鼻腔で香りを味わい、舌で苦みと酸味を味わい、
苦みに耐え切れなくなった所でうわさのチョコレートを頂く。
実に至福の時である。
同じ学院の生徒にだけならラウンジでもよかったが、
今回は冒険者や平民地区の人間の力も借りたかったのだ。
しかし、本当にチョコレートが美味しいな。
いくつか持ち帰りをしようか。
切れ込みも何もないノッペリとした真っ白い仮面を指先でずらし、
器用にコーヒーをすすり、チョコレートを口に含む。
騒がしい酒場の中でも片隅のテーブル席だけは奇妙な光景になっていた。
■エア > 視力に不安がある者が眼鏡をかけるように、
自分には視界を確保するための切れ込みも、
飲食をする為の切れ込みすらない真っ白な仮面は手放せない。
どうしてか?それは指先までシルク素材の手袋で包むくらい、
露出を拒んでいるからである。
もう少し端的に言葉にするのであれば、
露出が露出にならず、そこには――…何もないからだ。
親指で白い仮面の顎にふれる淵を押し上げて、
隙間を作り陶器のマグカップをもちあげて口に寄せて、
音もなく小さくまた褐色の珈琲を啜る。
鼻腔や口の中どころか、仮面の中にまで広がる珈琲の香りは、中々悪くはない。
仮面を押し上げた状態を維持しながら、マグカップを下すと、
マグに合わせた真っ白い陶器のお皿に乗るチョコレートを指先で摘み、また口の中に放り込む。
周囲は喧騒とアルコールの香りに包まれているのに、
自分の周囲だけは珈琲とチョコレート、あとは奇異の視線。
好奇の視線もあるが、どちらもあまり心地よいものではない。
「…材料も調合してくれる人もそろえば言うことなしだけど。」
無情にも時間だけが過ぎていく。
時々真っ白い仮面の奥からそれっぽい人間がいないか、
視線を辺りに向けたのだが、誰も彼もが新しい冒険の話や、
終えたばかりの冒険の話で一杯のようだ。
それでも、もう少しだけ待とう。
学院のラウンジだけに限定するよりは、
こうして冒険者にも求める事で、まだ可能性はあるのだから。
■エア > チョコレートと珈琲。
本命はこれではないが、ハズれではなくアタリ。
今夜は話が進みそうもないかなと、席を立ちあがる。
飲み終わったマグカップと更に幾許かのチップを置き、
カウンターの方まで歩くと、酒場のマスターに持ち帰り用のチョコレートを注文する。
――…よし。
手土産はできたし、寮長へのわいろもできた。
いや?友人の部屋に滑り込むわいろにしようと、
色々と策を巡らせながら、仮面の少年は酒場を後にした。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 宿併設の酒場」からエアさんが去りました。