2025/01/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にティアフェルさんが現れました。
■ティアフェル > 店じまいをして暗がりに閉ざされ静けさの広がっていく市場街とは対照的に。
宵を盛り、次々に赤々とした灯が燈り夜の底を照らし、刻々と賑わいに満ちてゆく繁華街から――
「――っ待って…待てー!! そいっ……そいつ、捕まえてえぇぇ!!」
人波をかき分けて追い掛けていく声。
それを振り切るように駆け抜けていく小柄な人影。
追うもの追われるもの。
ふたつの影が宵断つ明かりの下を横切っていく。
息を上げて追い縋っていくのは茶髪の女。寒風に鼻先や耳を真っ赤にしながらほおを紅潮させぜいぜいと必死に追いかけるが、分が悪い。
相手は場慣れした小柄な体躯の掏摸。
まんまと財布を掠め取られ、気づきはしたが逃亡の足は速く。
また、人並みの壁を味方とばかりするすると苦もなくすり抜け追っ手を撒くなんて訳はないと韋駄天の走りを見せるもので。
どちらかと云えば健脚。冒険者として体力も持久力もそこそこにある被害者の女ではあったが。
がやがやと喧騒を行く人々にぶつかってしまったり行き先を塞がれてしまったりしてもうかなり距離をあけられてしまった。
でもまだ、見失っていない。はあはあと汗を掻きながら必死で時折人波に途切れる掏摸の背中を追いながら、
「だ、れか……! そいつ!その黒髪のチビ捕まえてー!!」
やばい、撒かれる…!と焦って一縷の望みを託して通行人へも懇願し。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカーレルさんが現れました。
■カーレル > ドンッと胸の辺りに正面からぶつかってきたのは小柄な人影であった
少年であるか、少女であるか、またはそのどちらでもないのか…そこまでは定かではないが、
小柄な事もあってか衝撃はそれほどでもなく、むしろよろけたのは当たってきた方、
一歩、二歩、と己の脇にたたらを踏むようにしたかと思えばそのまま、走っていってしまった
何事かあって逃げているようであったが先程よりも懐も軽くなり幾分、早く走り去っていけることであろうと思う
遠くから『捕まえて』という声が聞こえていなかったならば、そのまま逃していたことであろう
この辺りではまあ日常茶飯事、そんな光景であることだし…
偶然、声が聞こえて、犯人らしき人影が真正面から向かってきたので小柄な犯人の懐から、
似つかわしくない掠め取ったらしい財布をぶつかったタイミングで掠めとり返したというわけである
「…そのつもりでいれば案外、すり盗れるもんだな…」
逃げていた犯人も必死だったからだろうけれども
掠め取った…否、取り返した財布を手に案外とできるものだなんて考えていれば、
そのうち向こうから被害者が息も絶え絶えに現れる
よく知る顔が耳の先まで真っ赤でいるが、寒さばかりのせい、というのではないだろう
「…囚人みたく鎖かなんかで繋いでおきゃ盗まれる事もなかろうに…」
銀鎖とか、そういうヤツでなく地下牢獄のアレを頭に思い浮かべながら、取り返した財布を彼女に差し出した
■ティアフェル > 逃げ足の速さを誇らねばやっていけない盗人稼業。
遁走に追いつける目は端から少ない。
それでも息の限りに追いかけていたが。
「――っ! あ、ごめんなさいっ……!」
またいい場所にいた通行人にぶつかって謝っている裡に距離もタイムラグも開いてしまい。
「あぁ~~……」
すっかり人込みに紛れて見えなくなってしまった影に肩を落とし、頭を抱え。
もう駄目か~とアホ毛をしょげさせていれば。
「……ぁ、れ……?」
掏摸の逃げ去っていった方向を立ちつくしてみていれば見覚えしかない金髪。
はあ、はー…と乱れた呼吸のまま少し速足で近づけば差し出された財布と……厭味。
「な、なんで……
紐……切られちゃったのよ」
目を丸くして呟いては、少し渋い顔をして繋いでいた紐の断ち切られた財布を受け取って。
「ありがと……でもなんで??」
もう一度何故を問う。バッグに財布をしまい込んで呼吸を整え、滲んだ汗を拭いながら軽く見上げ。
■カーレル > よほど必死になって追いかけてきたのだろう
息を切らしながら現れた彼女の癖っ毛は心なしかいつも程の元気がない
回復役とはいえ冒険者をここまで追い込んだ盗人であるから小柄とはいえ結構な手練であったのかもしれない
まあ、手練とはいえ運は無かったようではあるが
「…なるほど、まあ、あの手の盗人は刃物くらいは持ってるか…
………なんか薄ら寒くなってきたわ、刺されなくてよかった」
財布を手渡しながら断ち切られた紐を見れば背筋に冷たいものが流れる
小柄だったとはいえ勢いよく、手に刃物を持ってぶつかってこられたならばグサッとされていたに違いない
「いや…なんでって…偶々としか…
捕まえてーって声がして、走ってくるやつがいたので、この辺じゃスリか物取りかだろうなーって…」
偶然、自分が通りかかり、偶然、彼女の声が耳に届き、偶然、犯人が真正面から走ってきたのだ、と
そうとしか言いようがなく、そう説明する
付け加えるのであれば、偶然、犯人の懐から上手く財布を抜き取れた
「まあ、結局、ティアが幸運だったんだわ…
財布スリ盗られて幸運ってのも変な話だけども…」
見上げる彼女の赤く染まった頬を見ているとなんだか林檎が恋しくなってきた
■ティアフェル > 真冬に全力疾走。あんまり走るのに向いた様相もしてなかったので少々足が痛い。
北風に吹かれれば汗が冷えて、くっしゅ、とくしゃみに肩を震わせた。
むず痒い鼻を擦りつつ。
「ちょっとやそっと刺されたって死にゃしないけど……即死なら駄目だなー。あは、セーフセーフ」
割と普段から荒事に慣れ親しんでいる哀しい職種。
あっけらかんと、そもそも痛いのはきらーいと軽くのたまって、事を深刻には受け止めていない。
死ぬのが怖くて生きれるか、と豪胆というよりバカである。
「えぇ……そんなことあるー……?
てか、それなら足でもひっかけてくれたら良かったのにー」
財布を取り返すくらいだからそのくらい訳なかったとは思う。むしろその方が大分簡単だったのではないかと思われる。
なんでわざわざ面倒な方を咄嗟に選択するか……付き合いは長い方だと思うが、ここへきてもつくづく謎な人である。
「んー……だねえ……壱割寄こせって云わない人で助かったし」
ともあれ気が抜けたしどっと疲れた。走って一時的に暖まったものの……立っていれば汗はやっぱり背筋を冷たく流れてさぶい。身震いして、さぶさぶっとその場で足ふみすれば。
「帰ってあっつい湯舟に沈みたい! 頭から!」
心底からの願望を口走ってはもうお家帰るです、と早々の帰宅を選択実施する構え。
■カーレル > 走ってきた身体に冷たい風で冷えたか、彼女が漏らすくしゃみに上着の一つもかけてやれば、
格好もつくのであろうが、汗をかいていようがいまいが、風は冷たく自分だって寒い
何なら良さそうなコートを彼女は身につけていたから大丈夫だろうと勝手に納得する
「刺されてたら財布を人質に回復魔法を頼んでたわ…
流石にスリに使う刃物で即死は………いやあ、どうかな…王都じゃ判らんな…」
風貌や見た目で判断すると碌な目には合わない
小柄で小さな刃を懐に隠し持ち、盗人に身をやつした超生物だって潜んでいないとは言い切れない
何はともあれ、セーフセーフという彼女にうんうん、と頷き
「捕まえたら捕まえたで面倒だしな…衛兵とのとこまで引っ張っていってもいいけど、
色々聞かれたりとか時間取られるしな…ササッと帰るって風にはならんだろうし…
……なんかやれそう、って気がしてつい…?」
財布が返ってきたんだから良しとしようや、といい含めておく
スリ返したのはまあなんというか深い意味はない
足を引っ掛けてとっ捕まえる…という選択肢が頭から抜け落ちていたのは事実であったけれども
「一割渡して『貸し』を精算しておいたほうが良かった…と思わせる人であるかもしれん
………冗談だけど」
冗談を交えつつ、さて、と周囲を見回す
犯人が逃げていった方から犯人が戻ってくる様子もないし、
徒党を組んで財布を取り返しに来る、とかいうこともどうやらない
「くしゃみしてたしそうしな…今年の風邪はしつこいらしいから」
了解、了解、と頷き一先ず、犯人が徒党を組んで戻ってくる気にならないうちにこの場を離れることにした
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカーレルさんが去りました。
■ティアフェル > 走ってあったまっても一瞬で冷える……走り続けていなければならなかろうか。そんな回遊魚みたいな真似……しんどい。
今頃件の掏摸も体を冷やして身震いしているだろうか。むしろ風邪でも拗らせて臥せっていれば治安がほんの僅かマシになる。
「まー……起こってもいないことを今心配したって仕方ないわ。
次回から気をけることにすればいい訳で」
経験値として消化しおくが吉と片付けてしまうと。
「あーね……なんていうか……いうと思った……
面倒ならこっちに引き渡してフェードアウトって手もあるがな。
咄嗟にそんなこと思いつくとか、どういう思考回路」
さらに分からん。
けどまあ、結果オーライ。掏摸を捕まえられなかったのは少し残念だけども。
「下手な冗談は休ませるべし。笑えない。滑ってる。つまんない。株も下がる」
ちょっとした軽口に対して畳みかけてひとつの意見を叩き潰しておく。ぐしゃぐしゃ。
失敗した掏摸をやり直すのはハイリスクに他ならない。逃げた掏摸は今夜はおとなしくするか、それとも別の懐を狙うのか定かではないが。
とにもかくにもお風呂が恋しい。芯から冷える前にお家帰ろ。と急ぎ足に。
寒風吹きすさぶ繁華街を速やかに後にするのであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からティアフェルさんが去りました。