2024/12/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > ほとんど無人に近い図書館で男は本を読んでいた。窓の外が明るいことから、朝あるいは昼だとわかる。
開館前なのか休館日なのか、はたまた単に皆が年末で忙しくて訪れていないだけなのかはわからない。
誰かに内容を読み聞かせようとするかのように呟きが漏れる。
「偉人いわく、領地経営で最も良いことは牧畜をして稼ぐことだ。二番目に良いことは牧畜をして少し稼ぐことだ。三番目に良いことは牧畜をして糊口をしのぐことだ。四番目に良いことは耕作することだ。
偉人に尋ねた者がいた。『金貸しはどうでしょうか』と。偉人は答えた。『殺し屋はどうだ』と」
遠い遠い国の言葉だが、この国でも共通する点はある。金貸しは軽蔑される――経済活動を循環させることに価値や社会的意義を見出す者は皆無に近い。賢者と言われる者達ですら否定的だ。
誰も彼もが自力で――あるいは教会の助力に留めて生き、額に汗して働くべきだという、保守的な考えだ。
金貸しであり殺し屋でもある男は苦笑いせずにはいられない。
実家の生き方――羊を使った牧畜が正解であることに、異国の偉人がお墨付きを与えている。
最近図書館に仕入れた本だ。貸出をする前に中身を読んでおいても罰は当たるまい。
内容を聞かれて答えられないのは格好悪いし、と役得を言い訳染みて正当化する。