2024/11/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にグラスシエルさんが現れました。
■グラスシエル > 平民地区の公園
住宅地域と商業地域の中間にある小さな公園だ
石畳で舗装はされてるが小さなベンチがいくつかとレンガでかこまれた生け垣ぐらいしかない場所
夜遅く、そんなベンチに向かって歩く少年。
硬そうな濃紺の軍服に身を包んだ少年は何かを睨むような目つきでベンチにまっすぐ歩き、どかっと乱暴に腰掛ける。
手には茶色の紙袋。揚げ物のニオイがする。
「っふぅ……さむさむ」
冬に入った王国はこの時間はかなり冷え込む。
そんな公園のベンチで、少年は紙袋からフライドフィッシュをとりだし、がじりと噛みちぎる。
むすっとした顔のままもぐもぐと咀嚼。 無愛想というか不機嫌な顔だがこれが普段の表情であって不機嫌だとか何かを睨んでるというつもりはない。
王国での調べ物を終えて、休憩と食事がてら寄った公園。
にゃあ――にゃあ
生け垣から鳴き声をさせながら公園の住民たちが出てくる。
野良猫だ。 黒猫、茶トラ、三毛、数匹の猫が少年に挨拶するようににゃあにゃあと鳴きながら近寄ってくる
「うっせ、お前ら」
悪態をつきながら紙袋をごそごそと漁る。 調理前の干し肉と干し魚をつまみ上げ、ぽいっと捨てるように投げると群がる猫たち。
こういうのは早いもの勝ちだが大体はトロい猫がいて、他の猫にボディブロックされて食べれない。
あーあーお前いつもトロいな、と少年はウロウロしてる猫に干し魚を放ってやって。
「ほれ、食い終わったらさっさとどっかいけ」
■グラスシエル > 夢中で投げられたエサをがっつく猫たち
元々野良猫などには妙に好かれる。 町中でもいくら追い払っても後ろをついてくるしやたらとにゃあにゃあ鳴かれる。
少年も口ぶりは悪辣でも――根っこはお人好しな方だ。 殺すべき対象でなければ困ってる相手や友好的な相手を見て口汚く言うことはあってもこうして猫のための干し肉、魚をもってきてやるぐらいには。
猫たちからしても口数が少なくあまり動かずそれでいてエサをくれる少年のことを気に入ってるのか、エサを食べきってご機嫌そうに顔を洗ったりその場で転がって身体を舐めている
「あー、そういうのは他でやれ他で。俺をカカシか見張りみたいに使うな」
口は悪辣だが力任せに追い払うことはしないらしい。
猫たちは思い思いにそこでリラックスして、少年に時々挨拶のように鳴くが少年はシッシっと手を振るぐらい。 次第に猫たちも勝手に茂みに消えたりどこかへパトロールに向かったり。
勝手なものだが、少年からしたら後腐れのない態度はむしろ好ましい。
「ったく、贅沢に皮とヒレだけのこしやがる」
石畳を掃除するつもりはないがここに放置するより幾ばくかマシだろ、と石畳に残った骨を拾って生け垣にポイっと放り投げ、ベンチに腰を沈め直す。
「あぁ、だり。 つっても寒いから宿は取らないとな……ついこの前までここで寝ても良かったんだがなあ」
金がないわけではないが、王国はなんでも金、金、金だ
贅沢をする気はないが金を握らせれば大体の人間は饒舌になるし上機嫌になる。 金って素敵、経済主義最高。
金を自分のあれこれに使うより他人の口をゆるめたり多少のお目溢しに使ってると、多少の雑用や仕事をしてもすぐに無くなるのだ。
■グラスシエル > 「……あ?」
ベンチでだらけていると、のそのそと茂みから出てくる一匹の野良猫。 さっきの集団には居なかったがタイミングが悪かったのか、少年をみつけるとゆっくりと少年の前に座って
――恐らくはニャアとないてる、つもりなのだろう。口を開け鳴いてるのだろうが聞こえない声を上げる。
「……ねえよ、さっきあげちまった。」
当然、猫に言葉が通じるわけもなく。 くれ、くれというように少年の脚の周囲をうろうろ。 時々見上げては鳴き声にならぬ鳴き声をあげてねだってくる。
「あああもう、ねえつってんだろ。そもそもなんで俺がお前らの食い物の面倒をだな――ったく、ちょっと待ってろ」
それからしばし時間が経って。
新しい紙袋の中には干し魚、少年はしかめっつらをして公園のベンチに戻ってくる。
先ほど遅刻してきた野良猫はベンチに丸まってたが少年をみると、「ァ、……ァ」と声のでない鳴き声。
「わかったわかった、いいから座ってろ。 ほれ」
恐らくはもう老猫っぽい野良に魚を置いてやる。 猫は黙々と干し魚に食いついててるのを、少年はすこしだけ離れてベンチに座って
■グラスシエル > 老猫は食事を食べ終わってしばらくは顔を洗ったり毛づくろいをしたり。
猫に絡まれるせいで、だいたい顔を洗ってる時は満腹だということすら覚えてしまった。 これをせずにまだ鳴くような猫はよほど飢えてるか、腹に子猫がいるか、子猫にエサや乳をやってるせいで足りないかのどれかだ。
とはいえ――そこまで面倒をみるつもりはないが。
食うもんくったしどこかいくだろう、と思っていたが老猫はそこでちょこんと座り、少年をじっと見てる。 目が合うと目を細めてるあたり、警戒とかではないらしい。
「いいから、腹いっぱいなったならどっかいけ」
老猫は目を細めたままじっとしてる。 少年はそんな老猫を睨みつけて
「……」
……
「……はあ、お前らは怖がらねえよな、なんだよまだ食い足りねえのかよ」
乱暴にわしわしと頭を撫でる。 老猫は目を細めてされるまま。 もっと撫でろというでもなく、甘えるでもなくおとなしい。
少年の膝の上に前足をのせ、登ろうとしながら少年を見上げる。まるで「のっていい?」というかのようだ
「重いから乗るな。 投げるぞ」
老猫はじっと見上げてそんな返事を聞いてから、良いんですねありがとうございますというように膝に乗り、その上で丸まる。
「乗るなつってんだろ」
はあ、とため息。 とはいえ言葉が通じないなんて当たり前のことで……諦めたようにベンチでだらだらする