2024/10/03 のログ
■ジーゴ > 「ふーん、なんかこういうやつの方がいいんじゃないの?」
話を最後まで聞くと小さく首を傾げた。
こういうやつ、の部分は、両方の手のひらを手首の部分で合わせ
指先を歯のようにしてパクパクと動かしてみせた。
山の中で動物に仕掛けるような金属の大掛かりな罠をジェスチャーで表現しようとして、ちょっと間抜けな動きをすることになった。
「ここのおうちの人ってこと?んー、こわしちゃったやつ直す?」
彼なりの理解で返事をして、直せる自信でもあるのだろうか、提案してみる。
周囲を見渡して、残りの罠を探すようなそぶりを見せた。
観察力には長けている少年。目が慣れてきたらどこにあるかは随分わかってきた。
「この辺、あんまり人いないからしらない」
十分な高さの塀を飛び越える人なんてそうそういないし、
これを近道だと捉えているのはミレーの脚力があってのこと。
そうそう他の人が近道にしているとは思えない。
■セカンド > 「あー……トラバサミか。あれ、結構すんねん」
動きで何を言いたいかはわかったので、結構する、といいながら親指と人差し指で輪を作る。
実際の所は殺傷力が高いから見送っていた。下手をすると子供の足を折ってしまうほど力が強い。
「いや……ウチが直すからええよ。んー、そうか」
申し出は有難いが、少年の能力を何も知らない。自分で言うからには腕に覚えがあるのだろうが……。
少年の視線が止まる所をみるに、罠の目星はついているようだ。これ以上壊すことはないだろう。
言葉を聞くと顎に手をあてる。獣の耳からしてミレーだろう。崩れた壁や穴といった通り道はなかったから、塀を超えてきたのだろう。
自分を基準にして考えていたが、大人の背丈を優に超える塀だ。そうそう近道にする者はいないのか。
「……ま。幸いケガもしてへんようやし。よかったわ。
あーあと。ここ数日はこの近道使わんといてな」
襲撃がいつあるかはわからないが、ある程度時間がかかるかもしれない。
念の為に少年に、敷地内に立ち入らないように注意をしておく。
■ジーゴ > 「そっか、高いよね。大きいし」
相手の言葉はところどころわからないところがあるけれど、
お金のジェスチャーは十分にわかった。
「おこってない?」
直す提案を断られたばかりか、せっかく設置した罠をいくつか台無しにしてしまったのに、怒られもしなくて首を傾げた。
実際のところ、直すほどの器用さはない狼。
チャレンジして余計に手間をかけさせてしまうことは防げたのがかえって良かったかもしれない。
「んー、わかった」
近道を数日間禁止されたのに頷いて、
廃教会の庭、なんの変哲もない草が茂っただけのところを目で追って、指をさす。
罠の部分、糸が通っている場所、鳴子の位置なんかを確認していたが、
「あ!!!!!やばい、オレちこく!!!」
突然今までで一番大きな声を出した。
肝心なことを忘れていた。バイトに遅刻しそうだから近道をしていたのだ。
罠が張り巡らされている庭で突然走り出した。
器用に罠を避けて、飛び跳ねるように。
「ばいばい、またねー」
数秒のうちに塀の下まで辿り着いて、一際大きな跳躍。
壁を蹴って塀の上に乗ると、小さく振り返るとにっこり手を振って、すぐに塀の向こう側に消えていく。
小さな足音もすぐに遠ざかって市内の方に消えていく。
■セカンド > 「まぁ……意図的に壊した訳やないからな」
怒っていないかという言葉には頷いて返す。急にあげられた声に少しのけぞった。
近道をするぐらいに急いでいたのだろう。数分だが引き留めてしまったのは悪かったか。
摺り足と言ったのに駆けだした少年が別の罠にかからないか冷や冷やしたが、杞憂だったようだ。
器用に罠をかいくぐっているのがわかる。
「……おぉ、ほななー」
塀に乗り、風のように去っていく少年を見送ってから腕を組んだ。
昼間で注意深そうとはいえ、罠の設置が露骨すぎただろうか。いい塩梅を探し直さなくては。
木製品を銜え、小さく息をついた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/廃教会」からセカンドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/廃教会」からジーゴさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシグルズさんが現れました。
■シグルズ > 好みの尻を追い求めれば、益もあれば損もある。
どうやら今日は損に傾いたようで。
ビキニアーマーからむっちりと健康的に食み出た尻を追って入っていった酒場は、平民のあまり寄り付かない、荒くれ者の冒険者たちが贔屓にしている酒場だった。
上下真っ白なスーツで決めた、いかにもちゃらんぽらんそうな青年などは完全に場違い。
向けられただけで子供ならば小便をチビりそうな鋭い視線が、何十と青年に向けられ。
「アハハ。どーも、どーも。
たまにはいつもと違うお店で飲むのもいいかな、なーんて思ってさ」
人間に化けての生活も長くなり、場違いなところに紛れ込んでしまった、という感覚は学んでいた。
さりとて、そそくさと入口から退散するほど臆病でもなく。
邪魔にならぬよう隅の席を陣取って、運ばれてきた酒と、皿に大盛りになった揚げ芋に口をつける。
「――む。なかなかイケるじゃないか」
■シグルズ > 運ばれてきた酒や料理を食べ終える頃には、場違いな青年に敵意を向ける者はいなくなっていた。
図太いと思われたのか、美味しそうな食べっぷりに毒気を抜かれたか。
追いかけていった美尻の冒険者を見つけることができなったのは残念だが、美味しい店を見つけたという怪我の功名もあり。
「――ふう。それじゃ、ごちそうさま。お代はここに置いとくね、マスター」
満腹感という妙に人間らしい気持ちを得て、酒場を後にしていった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシグルズさんが去りました。