2024/09/14 のログ
■ランバルディア > 横殴りの雨が薄れ、暗闇の向こうが覗けるようになってきた。
既にぐっしょりと濡れて重たい足を持ち上げて、路地から通りへ歩き出した――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からランバルディアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール:広場 平民地区2」にイオリさんが現れました。
■イオリ > 王都の平民地区にある広場。
ポツンポツン、と点在する朽ちかけたベンチの一つ。
月明かりの下、果たして彼女は何時からいたのだろう。
横向きに寝ていた小さな体は影を伸ばしながら上体を起こして。
「あ、れ……?ここ……」
未だぼんやりとした思考と視界。
見慣れぬ光景に少し不安げになりながら記憶を辿ろうとして。
帰ろうとしていた。どこへ……?家に。
どこから……?
……分からない。
此処がどこなのかも、何故此処にいるのかも。
分からないから故に、動けない。
何処に向かえばいいのかも定かでないから。
少女はただただ起き上がり、ベンチに腰掛ける。
今にも泣きだしそうな顔をして。
ご案内:「王都マグメール:広場 平民地区2」にタマモさんが現れました。
■タマモ > いつも通り、気紛れに彷徨う散歩道。
本日は、平民地区の建物の屋根の上、とん、とん、と屋根伝いに跳び移っての移動、だが。
「………おや?」
広場付近の建物の屋根、とん、と着地をし、一旦周囲に視線を巡らせてみれば。
こんな時間だと言うのに、広場に見える、ぽつんと佇む人影一つ。
雰囲気から、待ち合わせ…と言うようには見えないし、何かをしている訳でもなし。
だったら何だろう?と、そうであれば、気になるもので、気になれば、動き出すのが己の性質。
今は、ベンチに腰掛けている、それ以外に何をしている、との感じでもないだろう少女。
そんな少女の真後ろ、闇夜にゆらりと揺らぎ、現れるのは、屋根の上にあった己の姿。
いや、いつものように、そろりそろりと忍び足、もスリルがあって面白いのだが。
たまには、いきなり現れる、なんて不意打ちもしてみたいと思うのだ。
まぁ、現れてすぐに何かする訳でもなく、一旦、じーっと背後から様子見をしているだけ。
相手が気付いたならば気付いたで、どんな反応を見せるのかは、楽しみではある。
■イオリ > 何時もこうなのだろうか。
夜深い―――時計はないのだが―――広場には他に人の気配がなかった。
少女は依然、困ったような泣き出しそうな表情でどうしていいかわからない様子。
そんな少女が見つかったのは偶然か否か、幸か不幸か。
先ほど泣き言一つ漏らした後は無言の少女がふと、周囲をキョロキョロと見渡した。
何かを感じ取ったのか、それでも。
少女には、何の力もない。
良くも悪くもごく普通の「人間」のようで。
すぐ背後に降り立ち潜む存在に気付いた様子はなかった。
■タマモ > いつもそうなのか、偶然なのか、広場に感じるのは少女の気配のみ。
その辺り、ここに詳しい訳ではないので、偶然だろう、と自己判断をしておこう。
さて、背後を取ったは良いのだが、どうしたものかと考える。
不意に、周囲を見回した時は、あ、これ見付かる、と思ったものなのだが。
どうやら、しっかりと背後までは、見てくれなかったみたいだ。
運が良いみたいな、ちょっと残念なような…そんな事を、感じながらも。
気付かれなかったのならば、これはもう、驚かせるだけ。
いや、そっとしておくとの手もあるだろう、とは思うのだが、それをする己ではない。
背後から、静かに、ゆっくりと…するりと伸びる両手。
それが、不安そうな、泣き出しそうな、そんな少女の体を、がばっ、と背後から抱き締めた。
■イオリ > 果たして期待通りかどうなのか。
見つけて欲しいかのような背後のオーラに気付かなかった少女。
やはり何もない。
見渡していた顔が正面に戻り、そして悲しげに俯いたかと思うと―――
「ひゃっ……やぁぁぁ、やぁぁぁぁっ……!」
背後から、ガバリと。その幼い体躯に巻き付く何かの感触。
何、誰、怖い、お化け、ヤダ……
疑問と恐怖と負の感情。
幼い少女が半ばパニックになるのは必然か。
懸命に張り上げている叫びは響き渡ることなく小さく。
少女はいやいやと駄々を捏ねるように身を捩じらすのが精いっぱいだった。
そして、驚きや恐怖によって上がるはずの心拍数。
けれど巻き付いたその両腕に伝わるものはなく。
■タマモ > 「…お、ちゃんと反応をしてくれたようじゃ」
抱き締めてみた、当然、そんな事をされれば、相手は驚く訳で。
必死さはあるも、周囲に響き渡る程ではない小声、身を捩る程度の軽い抵抗。
ただ、抱き締めた体から感じるものに、不思議そうに首を傾げる。
抵抗は少ない、それは分かる、世の中、こうした相手は少なくはない。
しかし、普通に抱き締めた腕から感じるべき、幾つかの反応が欠如していたからだ。
「ふむ…ふむ…? いや、しかし…これは何なのかのぅ…?」
ぺたぺたと、腕は抱き締めるようにしたまま、手の平が触れられる範囲で、少女の体に触れる。
好きにされている内、諦め、現状を確かめ始めるだろうか?
それとも、そんな余裕なんてある訳もない、頑張って無駄な抵抗を続けるのか。
隠された力が発現し、この現状を打破するのか。
…まぁ、どれが来るかは少女次第だが、何も出来ないままならば。
その体を抱え上げ、腕の中に収めてみよう。
■イオリ > 「なあに?なあに……?なあに……?」
小さな声のまま、涙声の戸惑いに。
聞こえてきたのが粗悪な異性、ではなかったのもまた、幸か不幸か。
この世界は、この街は。
何の力もない幼い少女の命など実は軽いもの、と少女が知るはずもなかったから。
「だあれ?なあに?ヤダ、ヤダァ……」
まるで確かめ探るかのようにあちこちを触れる手の動きに。
声だけの抵抗はあった。
とは言え体の抵抗は依然身を捩るだけだったが。
体温は、ある。生きては……?
か弱くか細い抵抗をつづける少女、ふわり、と軽く持ち上げられる。
少女自身知らないが、背後にいた存在は決して屈強な外見をしていない。
だというのに、容易く抱き上げられていた。
■タマモ > うん、大した抵抗は、結局なし。
簡単に、その軽い体を抱き上げる、に到ったようだ。
「いやいや、むしろ、何をしていたか問うのは、妾の方でもあるが?
こんな誰も居ない広場、襲ってくれ、そう言っておるようなものじゃぞ?」
そんな抱き上げた少女、改めて、表情を確かめるように、その顔を覗き込み、問う。
少女から見れば、すでに襲ってきてる、とも言えなくもないが。
さて、その問いに、答えてくれるかくれないか。
それは置いておいて、表情を確かめた後は、顔から下へと視線を下げ、その恰好も確かめる。
ワンピース姿…まだ暑いし、問題はない。
裸足…裸足?落とした?元々履いてない?再び、首を傾げてしまう。
■イオリ > 「……えっとね……えっと、狐さん?」
怯え戸惑いを見せた少女の声色が変わる。
幼い子供というのは何とも感情の変化も早いか。
視界に入った相手の姿。その頭部にあるものを見て。
少女は不思議そうに呟くように尋ねた。
相手がどういう存在か知らぬ、無知の強みとでもいうか。
「えっとね、起きたらここにいたの。お家にね、帰ろうとしてたの」
果たしてそれは問いかけの答えになっただろうか。
自らを確かめんとする視線を追うことなく、少女の興味は相手の耳に向かったままで。
おおよそ、危機感らしきものは感じさせずに。
■タマモ > 己の姿、それをはっきりと目にした時、少女の反応に変化が見えた。
恐怖を煽るような、恐ろし気な…見た目だけで捉えれば、それからかけ離れた姿だからだろうか?
まぁ、ともかく、面倒が続かなくて良かった、と思っておこう。
「あー…うむ、狐と言えば狐じゃな。
この際、それで良い」
言ってる事に、間違いはない、ちょっと違うが、そこは妥協して。
ふふんっ、とどこか無駄に自慢気に、胸を張ってみせた。
「ほほぅ…お家か、ここから近いのか?
そうであるならば、後からちゃんと、妾が送ってやっても良いが?」
少女の答えに、ふむ、と思案するように視線を巡らせるも。
家に帰ろうとしている、そんな少女に対し、すぐに送ろう、との言葉は出ていない。
そもそも、後からちゃんと、と言っている時点で、何かする気だろう、と受け取れるものだ。
それに少女が気付くとも、気付かずとも…続けての問いと共に、ずぃ、と顔を更に寄せれば。
すでに危機感が去ったような、そんな様子を見せる少女。
気にせずに、そのまま見詰めているだけならば、唇が重ねられてしまうのだが、さてはて。
■イオリ > 「うん、狐さん……狐さんのお耳……」
相手も自身が狐であることを認めた。
ようやく初めて、少女の表情が綻んだように見えた。
きゅっと唇を噛んで、触りたい、モフモフしたい……なんて衝動を堪えているようにも見えたが。
「お家……お家、分かんない。どっちなのか、どこなのか、分かんない……」
続けられる会話の中、また表情は変化し、困ったようなそれに。
お家―――少女の自宅。
そこまでの道順も、そもそもが、どんな家だったかも。
まるで靄が掛かったかのように浮かばなくなっていた。
ましてや、少女がいるのは見たこともない場所だったのだから。
噛み合っているようで何処か噛み合っていないような会話のやり取り。
それは終わりを迎える。
顔を近づけられ、気になっていた耳も見えなくなった。
じぃ、と見つめあうようになった少女と相手。
更にその距離は縮まって―――
「んっ、んんっ、ふっ……んぅ……」
驚きに一瞬目は見開かれ、けれどすぐに。
少女の瞳は、とろん、と。
性に対しての知識はなかったけれど。
少女の手足が脱力する。
よくよく見ればそんな少女の瞳に瞳孔がないのだったが
■タマモ > 「………」
己が狐と理解すれば、不思議と表情が綻んだようだ。
その視線が、触れたいと、もふりたいと、そう訴えているように見えるのは、間違いではないだろう。
その気持ち、分からないでもない、己とて、幼少時代は母親の毛並みを楽しんだものだ。
と、続く質問に、答えが出ると思いきや…分からない、と言われたら、こちらも困ってしまう。
送ってやるにしても、分からなくては、さすがに己であろうと、どうしようもない。
…とも、思う訳だが…
その先の言葉は、唇が重なり、言葉に出来なくなる。
そのまま重ね合わせ、離さずにいれば、蕩けてくる少女の瞳、そして体から抜ける力。
と、今更ながらに気付くのは、少女の瞳孔、ではあるのだが。
そんなもの、己にとってはどうでも良いし、気にする事でもなし、知りたければ後で聞けば良い。
との考えを巡らせながら、一先ず…ここに居ても仕方なし、適当に、場所を変えようと歩き出すのだ。