2024/07/26 のログ
ミタマ > 「一応、お宿でもあるのですよー? 眠らせ屋、ですからねー?
 先ほども申しましたが……良ければ、後々、少しだけ眠っていきますか? もちろん、この辺りは格安料金でっ♪」

お客様、ですからねー。と、言葉を付け加えつつ。
ミンティ様を連れて向かう其処は、看板と、それこそ客寄せの店主がいなかったら、単なる民家と思われても可笑しくないもの。
いい意味で、普通。悪く言えば、お店らしくはない。

「逆にこだわると、こういうところって足が止まったりしません?
 ほう、こういうお店があるのか! と看板を見てやってきてくれる方には、眠りやすい――普通のお店の方が合っている。と思いまして~。」

――扉の奥。電気を付ければ、ふわりと冷ややかな風が流れ出す。
風の魔石を利用した冷房器具。それが少しだけ蒸し暑い室内の空気を循環させ始めたから。

店内には、まずは木製のカウンター。
そして、その奥には「施術室」と書かれた部屋に「休憩室」と書かれたお部屋に繋がる大きめの扉。後は、恐らく日用的に使う場所へつながる小さな扉が何個か。
よく見れば、カウンターの近くには戸棚に入った寝具のようなものもあり――。

「ではでは。はいはーい、いらっしゃいませーっ! 眠らせ屋にようこそっ!
 お客様のお悩みは、蒸し暑く寝苦しい夜に最適なアイテム。ということですね?」

そのまま、くるっ。とカウンターの方へ向かって、お店番モード!

ミンティ > 閉めきられた空間特有のむっとするような空気。屋内から溢れてきた熱に軽く仰け反るような姿勢になりながらも、風となって循環をはじめたあとは、肌を撫でる涼やかさの方に意識が取られ。
ふ、と息をこぼしつつ強張りかけた身体の緊張を解くと、まばゆさに目を細くしながら、明るくなった店内の様子を確認。

「…格安、で…損にはなりませんか?それでもよろしければ…
 涼しいところで、休めるなら……いいな、と思います、し」

一泊分の宿賃を想像すると、すこしだけ不安そうに問い。
なんだか診療所の待合室のようだなと思いながら店内へと踏みこみ。特に怪しげな品物がずらりと陳列されているわけでもない落ち着いた空間に、はじめて踏み入れる場所に対する緊張も薄れていき。

「…ええと…」

店主らしくカウンターに陣取った少女。こちらから見ると、お店ごっこをしている子どものようだと思えて。さすがに失礼だろうと口にはしなかったけれど、小さく笑い。
カウンターを挟んで少女と向かいあう位置に立つと、あらためて周囲の様子をうかがって。

「ええと…そうですね。一応、家に一つ空気を冷やしてくれるものがあったのですが…今、壊れてしまっていて。
 他にもなにか、おすすめとか…あったら。教えていただけますか?」

商品でも、サービスでも。よく知らない業態だからこそ、とりあえずは店主である少女にお任せしてみようと。

ミタマ > 「あはー。正直なところ、採算は取れてませんよー?
 ……とはいえ、わたし。冒険者でしてー。メインの収入はそちらなのですよねぇ。やはー。
 ……何せ、こう! ベッドをお貸ししたりすると、複数のお客様の対応ができないわけでっ!
 ―――今日はまだ、どなたも使っておりませんし。其処はお気にせずっ! ……あ、飲み物は要りますか~?」

扉を締め、冷ややかな空気が外に出ないようにしたら、カウンターの前に木製の椅子を用意して、お話出来るように。
室内が洒落ていないのもやはり、相手を緊張させないため。という意味合いが強く。
目の前のお相手様が、少しだけ落ち着いたような様子を見せるのなら、ついでにサービスの一つも言葉にしてみたりなど――。

「なるほどー。特にこの時期って、そういった道具をフル稼働させることになって……壊れちゃう。ってよくあるお話ですものね~。
 ……ふむ。とはいえ、ここで同じものをドン!と用意しても重たいと思いますし……。

 いっそのこと、こういったものはいかがですかー?」

と、木製の大きなカウンターから一度離れれば「施術室」と書かれたお部屋へと潜っていく。
数分もせず、其処から何かを担いで戻ってくれば……その担いでいたものをカウンターの前に。
それは、薄水色の枕、のようなもの。半透明な生地の向こう側は、まるで水が入っているかのようになっており。

「寝苦しいのはやはり、枕と触れている首周りとかお顔だと思いましてー。
 これは中の素材によって、普段から適度な冷たさを発揮する枕なのですよ。しかも、ぷるぷるの素材の低反発加減で、首を痛めず眠れるという、すぐれもの、ですっ!」

ミンティ > 自分より年下の冒険者に出会う機会は何度もあったけれど、話を聞くたびに驚かされる。
運動が苦手な自分基準で考えても仕方がないけれど、体型としては同じように細身だろう少女の姿を、ついまじまじと見つめて。

「冒険者。危なく…ないのですか?……いえ、余計な心配なのかも、しれないですけど。
 …ん。わかりました。…おねがいします。あの、ただ、あまりお気づかいなく…」

用意してもらった椅子に腰を下ろして。
商人でありながら口下手な自分から見て、はきはきとしたペースで会話を進める少女。ついつい相槌だけ返すのがやっとみたいになりつつも、最低限の意思表示だけはできるように努める。
すこし喉も乾いていたから、飲み物はいただいておこうと頷き、それでもサービスのよさにすこし恐縮して。

「修理も、この時期は忙しいらしくて。…?」

暑い時期だから、どこも壊れるタイミングは似てくるのだろう。小さな溜息をこぼしたあと、施術室という部屋に向かう少女の背を視線で追いかけ。
しばし待って、枕のようなものを持ってこられると、きょとと目を丸くした。
一見すると普通の寝具のようながら、中が透けていて。

「……こういったものも、あるのですね。はじめて見ました。
 …ふ、っ、……なんだか、感触がすこし、面白い……ですね」

綿とか、そういったものが詰めこまれた枕を今まで使用してきたけれど、液体入りというのは目にした事がなかった。
おそるおそる指を伸ばしてつついてみると、ぷに、と弾力のある感触。なんだかすこし面白いなと思うと、静かに笑みをこぼして。

ミタマ > 「あはー、ご安心を? 実は私……対象を眠らせる力を持ってまして。
 それで魔物を眠らせて、生け捕りにしてー。みたいな、捕獲依頼などをメインにしてるのですよー。
 そういったこともあって、眠りに精通してまして。このお店を始めた!という経緯があったわけなのです!
 ―――いえいえ。お客様ですから! はい、冷たいお水をどうぞーっ。」

会話の合間、カウンターの内側に忍ばせていた自分用の大瓶。
其処には、恐らく客寄せに入る前に入れたのだろう透明な水と、かなり溶けた氷が入っており――。
それを、お客様用の紙コップに注いでご提供。

「あはー。だからといって、新品を購入するのもこの時期だとお高いですし……。悩ましいですよねぇ。」

そうして、お水を飲んでもらっている間に、ぱぱっと施術室。と書かれたお部屋から持ってきた寝具は、特注品。
寝苦しい熱帯夜でも、思わずぎゅっと抱きつきたくなってしまうような、ぷるぷるとした弾力を宿すウォーターピロー。

「ふふー。知り合いにこういうのを作るのが得意な人がおりましてー。
 その方にアイデアなどを送ると、お値打ち価格で作っていただけるのですよ!
 ……そう!そのぷるぷる加減と、いくら密着しても冷ややかなままな生地のお陰で、夜の寝苦しさもかなり緩和されますよーっ。
 ……あ。とはいえ、中身も中身なのでツノがあったり、ツメが長い獣人さんには向かないのですが……お客様は問題なさそう、ですかね?」

自然と、そのメガネ越しの瞳や、頭上をちらちらと見遣って確認。
気に入ったならば、奥でお試ししてみます?と、「施術室」と書かれたお部屋の方も指さしつつの~。

ミンティ > 屋内にいるよりは涼しいと感じていた夜の風も、今となっては蒸し暑かったように感じられてくる。空調で冷やされた室内の空気に身を包まれながら、いくらか溶けてしまっているとはいえ氷入りの水を飲んでいると、身体の芯から冷やされる心地よさに目を細くして。
そうしている間に運ばれてきた枕。たしかにこれならよほど体温が高くない限りは、熱がこもる事もないだろうと思える。

「…なるほど。それで眠らせ屋さん。……いい、ですね。眠りに精通している…って。
 暑さとか、季節以外にも……寝付けない事って、ときどき…ありますから」

なんとなく眼が冴えたりして眠れない、なんて事がないのなら、それだけでも快適に思える。
少々羨ましく思えて、ちらりと少女を見やり。それから自分の手元に視線を落とす。
古い道具を扱ったり、手入れをしたりする事もあり、爪は短く整えているし、ちゃんとやすりで削ってもある。
枕に指先を立ててみても、自分の力では、水を詰めた包みを破れそうにもなくて。

「はい。……わざとどうにかしようとしない限りは…、中身をこぼす事もなさそうです。
 こういうものって…どうやって作るのかも気になります、けど。…使い心地も。
 ……いいのですか?え…と、じゃあ……お願いしよう、かな」

製造方法と同じくらい、ここに頭を乗せてみた感触も気になった。両手のひらを枕の上に置いて、ぐっと押しこんでみたり。不思議な弾力をすっかり気に入って。
目配せされた先、施術室の札を見ると、すこしばかり考えこんだあと、小さく頷きを返した。

ミタマ > 「はいー。冒険者として生計を立てれると言っても。やっぱり、自分の能力を活用したお仕事ができたら、嬉しくなるでしょう!
 そゆことなのですっ!―――ふふふ、おかげでいつも快眠ですとも、わたしはっ!」

此処で少し顔を寄せれば、その顔には疲れや隈といったものは何一つ見えないのが、お客様にもわかるかもしれない。
肌はつやつや。元気ハツラツ。きっと、快眠というアドバンテージが作用してる証拠。

あ、わたしもいただきますねー? と、大瓶を手に取り、同じく紙コップにお水を注いで一口。
体内を冷やしてくれる水の冷たさに、ほっと吐息を零して……。

「おててもきれいですし。ツノなどもないですし。きっと、お客様なら有効活用できるかとっ!
 ……あはー。精霊術関係が作用してるのですよー。魔石とお水をまぜこんで、いい感じに粘度を含ませた上で……と、長くなってしまうので、ここまでとして!
 ……ええ、もちろん大丈夫ですともっ! そもそも、ですっ。此処は眠らせ屋。

 ……お客様に健やかに眠っていただくことが、一番の目的なわけですから! ささ、どぞどぞーっ♪」

お客様がそれを見て、興味津々ならばぜひ使ってもらわなければ。
そして、使っていただいた上で都合が良ければ、ご購入頂いてお金を得る。
寝具店としても色々と動いてるからこそ出来るムーブで、頷きを返すお客様をお誘いするように、施術室と書かれた部屋の扉を開ける。

―――そこには星空を模した室内。淡い点々とした光が幻想的な部屋。
其処に大きなベッドや様々な道具が並んでおり、【施術室】と書かれているのも間違いじゃない、と思わせるはず。

「ささ―――、どうぞ。お客様。眠らせ屋のとっておき。こちらでご堪能くださいませ!」

ミンティ > 新しい寝具をおろす時には、すこしわくわくする。
この枕はまだ購入したわけではないから、ただしくは自分のものではないものの、抱き心地を確かめるように胸に抱えこみ。
表情からはわかりづらいものの、すこしだけ浮足立っているような心地。

「わたしも…同じくらい、眠れるとよいのですが。
 あ、でも朝には、お店を開けに戻るので…適度に熟睡、でお願いします」

能力を使って眠りに落ちる感覚がどんなものかはわからないから、とりあえず朝には帰宅したいという意思だけ伝えておいて。
少女に案内されるまま施術室へと向かう。
診療所の待合室のように感じた落ち着いた雰囲気の部屋とはまた違う、夜を連想させる内装に、ぱちぱちとまばたきをして。

「可愛い、部屋…ですね。……え、と…、じゃあ……おじゃま、します」

部屋の中を見回しながらベッドへ向かうと、ぺこ、と会釈をしてから履物を脱いで、横になる。
抱えていた枕を頭の下に置くと、触れてみた時と同じ弾力に柔らかく受け止められて、心地よく感じ。

「あの……じゃあ、よろしく、おねがい…します……」

眠らされる、というのがどういう感覚か知らないから、声に薄く緊張を滲ませる。それでも相手を警戒してはいないから、素直に目を閉じて。
そのまま、ぐっすりと眠って朝を迎える事となるのかどうか。それは少女次第となったはず――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミタマさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミタマさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店」にラリーさんが現れました。
ラリー > 平民地区内のその小さな古書店は、わりと地区の中心の近くにありながらほとんど目立たず、立ち寄る者もそう多くない。
また古書店という性質上、商品の劣化を避けるために出入り口の向きなど日差しが殆ど入らない設計になっていて、店内は薄暗い。
そんな店の奥、接客カウンターの向こうで椅子に座って文庫本を読んでいる店番らしき少年の姿があった。

この店は少年の実家が経営しているもので、書類上は別の人間を立てているが実質的な店長は少年が務めている。
それ故、この店は少年にとって学院の図書館以上に自由のきくテリトリーである。
獲物となる対象が訪れれば、ほぼ確実に術中に囚われる羽目になるだろう。
もっとも、客足の少なさから獲物の出現は図書館以上に運任せではあるが…その時はその時、が少年のスタイル。
ただ静かに、読書に没頭しながら客の訪れを待ち続ける。

なお主な客層は通常の書店では見つからないような商品を求めるマニアックな本好きか、
遠方の客との本のやり取りの依頼を受けた冒険者あたりとなる。
少年の修理の腕はそれなりに定評があるため、そうした依頼もぼちぼちやってくる。

「…ん」

そうしていれば来客を告げるドアベルの音が響いて、少年はゆっくり本から顔を上げ
珍しく現れた客の姿を視界に入れた。
さてその客は少年の獲物になりうるような者なのか、それともなんでもない一般客か…。