2024/07/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にミンティさんが現れました。
ミンティ > 夜道をとぼとぼと歩きまわりながら、小さく溜息をこぼす。
日中、あちこちに届け物をしていた時に、どうやらお店の鍵を落としてしまったらしい。夕刻、帰るころになってその事実に気がついて、荷物だけ裏口に置いて、あわてて来た道を引き返した。
今日歩いたところを探してはみたけれど、時間のせいで、あたりはどんどん暗くなっていく。見通し悪い状態での探しものはよけい捗らなくて、かといって魔眼の力に頼るわけにもいかず。
大通りを何往復かしたあとは、あまり人通りのない裏道を探し回っているうちに、すっかり夜も更けてしまった。

「どうしよう…」

心細くて、すこし涙目になりながら呟く。
幸い財布は持ってきているから、今日の宿代くらいは出せるし、明るくなるのを待ってから探し直すか。それとも諦めて鍵屋さんにでもお願いしようか。
悩みながらも、あともうちょっとだけ、と踵を返して、下を見ながらのろのろと歩く。不用心だけれど、探し物の方に意識がいっていて、自分の状態も客観視できておらず。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にタマモさんが現れました。
タマモ > 散歩の目的、散歩の道、そして散歩の時間。
己からすれば、それはすべて気紛れに決まる。
だから日も落ちて、夜も更けていようとも、現れる場合があるのだ…今のように。

「………うん?」

とん、いつもの散歩道…屋根の上だから、道、と言うのかは疑問だが。
行き道途中の誰かとも分からぬ家の屋根の上、ふと足を止め、そこに視線を向ける。
視線を向ける先には、こんな暗い夜道を歩む、一人の少女の姿。
ぱっと見た感じ、地面を見ながら歩いているところを見れば…何をしているのか、なんて予想も付く。

さて、何を探しているのか、とかも気になるのだが。
こんな状況を見て、気になるのもあるのだが、ちょっとした悪戯心も湧いて来る。
うん、どうしようか…とも考えるのだが、ふむ、と一つ頷いて。

少女の歩む先、そこに、ちょっとした仕掛けをしておいた。
その行く先に、彷徨いの力を施してみたのだ。
進む道自体には、少女から見て、何ら変化なんてものはない。
だが、ある一定の場所から先に進めば、あら不思議、覚えのある道なのに、抜け出せない迷路となるのだ。

まぁ、引っ掛かったら、そのまま、軽く遊んでとか考えるのだが。
見事に避けられたのならば、その時は、諦めて何をしているのか聞いてみよう、そう思って。

ミンティ > あまり前を見ていないのは、見通しの悪い時間でもそれなりに勘で歩ける程度には、通い慣れた道だから。目をつぶっていても平気とまではいかないけれど、視線が足元に落ちたままでも、大通りまで出ていくくらいの事は問題ない。
そんな理由で伏せている顔はほとんど上げる事もなく、じっと、物陰の深い闇にも目を凝らすようにして、落とし物を探す。
小さなものを見つけようと意識を集中しているせいで、他に対する注意は散漫になっていて。自分がどこからか見下ろされていても、その気配にすら気付く様子はない。

「この辺りにはない…かな…」

日中は約束に遅れないようにと、特に急ぎ足で移動していた場所だから、落としているとしたらここだと思って数往復してみたけれど、やっぱり探し物は見つからなかった。
引き返して、うっかり荷物のどこかに紛れこんでいないか確認してみようか。そちらももう何度か探していたから、可能性はすくないけれど。
はあ、と溜息を吐いてようやく顔を上げると、ずっとうつむいていたせいで疲労がたまったように感じる首の後ろをさすりながら、またとぼとぼと歩いていく。
とりあえず大通りに出ようと考えているけれど、周囲の光景が見慣れたものだから、自分が迷っているのかどうかも判断がついていない。

タマモ > まぁ、こんな時間なのに平気?で歩いているんだ、慣れた道なんだろう。
普通に歩いているのなら、違和感なんてもの、簡単に気付けたものなのだが。
…だが、今は何やら探し物をしている。
そのせいか、思いの外に、すんなりと彷徨いの通りへと、少女は入り込んで行ってしまった。

「あー…あ、うん、たまにはこういう事もあるんじゃろうなぁ」

少しは気付くかな、程度の考えがあっただけに、意外な流れに、幸いなのに微妙な反応。
ともあれ、入ってくれたものは入ってくれたのだ、しっかりと相手をしてやろう。
うんうんと頷き、気を取り直せば、とん、と屋根を蹴り。
少女が入っていった、彷徨いの通りの中へと、己も後を追って入って行った。

そこは、少女からすれば、見慣れた風景、考え描く通りの大通りへと続く道だ。
その実、進めば進む程に、深みへと嵌る罠の道。

さて、そんな少女の背後から、さっそくと悪戯を開始する。
誰かが歩く足音だけを響かせて、背後から、誰かがやって来たのだと思わせるのだ。
もちろん、足音だけだ、少女が気付き振り返れば、誰も居ない。
まぁ…気付いても振り返ったりしなければ、それはそれ、近くまで足音を響かせて。
近くまで足音を聞かせたところで、ぽん、と肩を叩くような感触を与えてみるつもりだ。
当然だが、それもそれで、そこに居る誰かの姿なんてありはしない。

ミンティ > 探すのを半ば諦めたあとも、どうしても未練がましく、ちらちらと足元に視線が落ちる。ときどき光るものを見つけて、はっとするけれど、ガラス片だったり、なにかしらの金属のくずだったり。一瞬期待してしまうせいで、落胆する気持ちも大きくなる。
今日何度目かもわからない溜息をこぼしながら、ほとんど一日歩き通しだったような足を引き摺るようにして先を目指す。
自分の歩みが普段よりも遅い認識はあり、そんな時には歩いている距離も実際より長く感じてしまうもの。
だから本来なら大通りに出ていてもいいタイミングなのに、視線の先には見慣れた裏道の光景が続く事にも、最初は違和感をもたず。
しかし歩いても歩いても広い通りの喧騒すら聞こえてこない事には、さすがに怪訝な顔をして。
ありえないけれど、歩く道を間違えたのかと周囲を見回してみる。目に映るのは見慣れた場所だから、いまだ自分がどんな状況にあるかもわからない。

「…?」

違和感はすこしずつ不安に変わり。そんな時に聞こえてきた足音に、はっとして振り返る。
自分と同じように歩いている人がいて、それが危険な人物でなさそうなら、そっとあとについていくのもいいかなんて思った。
しかし、後ろには誰もいない。心細さのせいで存在しない音を耳が拾ってしまったのかと思いつつ、もう一度、ゆっくりと周囲を見回してみて。

タマモ > 何を探しているかは知らないが、見付かり難い物で、重要な物らしい、と言うのが分かる。
そうでなければ、今日は諦めて、次の日に探す、とか選択肢を選ぶはずだ。
様子を眺めていると、それに加え、結構小さな物、である事も分かってくるか。

だからなのだろう、探すのに夢中になり過ぎて、こんな簡単な仕掛けに引っ掛かる。
そう経たず気付いても良いだろう、そう思える事なのに、少女はなかなかに気付かない。
まぁ、それはもう少しすれば、さすがに気付いたようであって。
進んでいる途中、不思議そうに見回したりすれば、一抹の不安を覚えたのだろう、との事が分かる。

「…お?」

そんな中か、そこで聞こえた己の起こした足音に、振り返ってみせてくれる。
当たり前だが、その視線の先には何もない…が、どうやら、それを幻聴と受け取ったようだ。
しかし、不安は拭えないようか、改めて周囲を見渡しているようで。

そんな反応を見せてくれれば、もっと楽しみたくなってしまう、そんなものだ。
振り返った時に消えた、その足音は、その主を見せないままに、再び少女の側で響き始める。
その音から、少女の周りを歩き回っている、との感じに聞き取れるだろう。
と、そこで、触れられる程の距離まで接近を少女が許したならば。
今度こそ、見えない誰かの手が、少女の肩をぽんと叩く感触のようなものを与えてみせるのだ。

それは、来た道側から。
そうしたのは、もし逃げたりするのなら、奥へと誘導する為のものである。

ミンティ > 何度確認しても、やはり周囲に人の気配はない。
特殊な力を持っているとはいっても、能力的にはほとんど一般人。普通の人なんかよりもずっと脆弱な方だから、小動物みたいにびくびくするばかり。目に見えるような相手になら働く警戒心も、なにもいない空間を見渡す事で、ただ不安に変わるばかりだった。
とりあえずこの場にいてはいけないと思って駆け出そうとすると、またすぐ近くで足音がする。
それどころか、急に肩を叩かれたような感触に、軽く飛び跳ねるくらいに驚いて、びくりと震えて。
竦み上がり、探し物が見つからない心細さに急な状況の変化も加わり、ますます涙目になる。
なにもかもただの人と変わらないなら、あとはもうパニックを起こすか、なりふり構わず逃げ出すか、怯え切って動けなくなるかくらいしか手の打ちようもなかったけれど。

「…っ…」

意を決して眼鏡に手をかけ、ほんの一瞬だけずらし、裸眼で周囲を見た。とたんに襲いくる頭痛に、眉間に深く皺を刻み、ぐらぐらと掻き回される平衡感覚に転倒しないよう、しっかりと地面を踏み締める。
頭に雪崩れこんできた情報の大波に吐きそうになりながらも、その刹那の時間で、自分が幻術のようなものにとらわれている事は認識できた。
眼鏡を戻したあとは、気持ちと体調を落ち着けるために深呼吸をして。

「……あの、やめて…ください…」

ほんの一瞬だから、この幻をしかけている人の位置までは特定できなかったけれど、きっと近くにはいるのだろうと予想して。おずおずと、聞こえるかどうかもわからない小さい声で、術を解いてほしいと訴えかける。

タマモ > 悪戯は、これだから止められない。
こうしたものは、趣味の一つではあるものの、己の糧となる、負の感情を起こす事にも繋がるのだ。
まさに、一石二鳥ではあるが…相手からすれば、迷惑でしかないだろう。
さて、そんな感じに楽しんではいるのだが、さて先はどうなるか、と言ったところで変化が起きた。
少女の手が、掛けている眼鏡に伸び、それをずらしたのだ。

「ほほぅ…これはこれは…?」

直感だ、細かく正確に判別出来ないが、何かしら、この状況を打開する力、と言うのは分かった。
もっとも、それに加え、何かしらの負荷を自身に与えるのだろう、と言うのも知った訳だが。
そう大きな声ではない、離れている者に聞こえる程ではない…が、己は違う。
例え遠く離れていようとも、その声は十分に聞き取れる、聞き取ったのならば…

「ふむ、なかなかに大した力じゃのぅ。
妾の悪戯に短時間で気付く者なんぞ、そうは居らんものじゃぞ?」

そんな少女の小声に答える声は、少女の足元…その影から、ぬるりと現れた。
別に普通に現れる事も出来るのだが、これも性格だ、もうちょっと驚かそうとの演出である。
少女からすれば、自分の影から現れた不思議生物、みたいな感じなのだろうが。
影から抜け出て、しっかりと姿を見せた己の姿を見れば、変わったミレー族?みたいな感じに見られるか。
異国風の着物姿をした、長い髪と同じ金色の狐の耳尻尾をした少女なのだから。

ミンティ > 仕事でも瞳の力に頼りはするけれど、その時はなるべく手元と、鑑定対象となる品物以外は視界に入らないように気を付けている。それでもかなりの負荷がかかってしまうから、広い範囲を見渡してしまった時の反動は相当なもの。
周囲の建物の材質や築年数、脆くなっている場所など大きなものから、道に落ちている砂利粒の数、目にもとまらないような小さな虫の足の運びさえ、なにもかも、おびただしい量の情報がいっせいに頭に流れこみ、それを処理するはめになったのだから。
ほんの一瞬であったのに、まだ頭はずきずきと痛むし、眩暈のような感覚も続く。
動悸がうるさい胸を押さえながら、小さい声はもともとでもあったけれど、そのくらいの声量を出すのがやっとな状態でもあった。
そう何度も眼鏡をずらすわけにはいかないから、今の呼びかけでどうにかなる事を祈る。
そしてすぐに返事があると、相手が何者かわからないうちから、とりあえずほっとしてしまい。

「…あなたが、やっているんですか…これ。あの…帰りたいので、解いていただけない…でしょうか」

姿を現したのは自分と同じ背丈くらいの少女だった。影から出てきたような様相には驚いて後ずさるものの、おかしな術にかけられていると認識しているから、不用意に逃げ出したりはせず。
眼鏡越しではその力量をはかったりする事もできないけれど、こうして自分を惑わしているのだから不思議な力はあるのだろうと推測できる。
普段から誰に対しても強気な態度を取れるような性格ではないけれど、今はより慎重に。なるべく相手を刺激しないように、控えめに物言いで懇願して。

タマモ > 「いやしかし、大した力ではあるが…辛そうじゃな?
びっくりする姿を見られれば、今回は満足だったんじゃがのぅ。
その点だけは、謝罪しておくとしよう」

そう、悪戯の成功を楽しむ、それが己にとっては重要だが。
体に要らぬ負荷を掛ける程の事を、させてやるつもりがなかった、と言うのもあって。
姿を現した後、するりと少女の側へと歩み寄る。
まぁ、逃げるかどうか…とも思ったが、逃げるつもりなら、この時点でとっくに逃げているだろう。

「あー…まぁ、ばれてしまったのならば、続けておる意味も、大してないが…
妾に少し付き合うてくれるなら、お主の手伝いぐらいは、してやっても良いぞ?どうする?」

少女の言葉に、ひらひらと手を振りながらも、はいそうですか、とすぐには解いたりはせず。
それと共に、少女が何かを探している、その手伝いを申し出る…条件付きで。
探し物をしているのに気付いている、そう思わせる言葉なのだが、実は違っていたら辛いところだ。
悪戯好き、己の言葉から、それくらいは分かるだろうから、直球で拒否をしても、流されそう。
少女からすれば、なかなかに難しいが、多くはない選択肢と言えるだろうか。
そんな少女の答えを待つように、じーっと少女の顔を覗き込むように見詰めるのだった。

ミンティ > 一瞬にかかる負荷はかなり大きいけれど、眼鏡を戻してしまえば問題ない。静かに呼吸を整えていれば、やがては落ち着きを取り戻せる。
謝罪の言葉には小さく首を振って、かまわないとの意思表示。わけもわからないまま襲いかかられるような事も多い弱者の立場だから、軽いいたずらくらいで済んでよかったと、結構本気で思ってしまっている。

「…悪酔いした…みたいな感じなので、大事ではないです」

とりあえず話はできるような相手だからと、か細い声でそう告げる。
そのころには眉間に刻まれていた深い皺も消えて、普段どおりの、愛想に欠けるような表情へと戻り。ふう、と一息つくと、地面を踏み締めるようだった立ち方からも強張りが抜けた。
持ちかけられた取引から、しばらく行動を観察されていたようだと理解する。一人よりは二人の方が探し物も捗るだろうけれど、ふるふると、首を横に振った。
先ほどの一瞬で、このあたりに鍵が落ちていない事は確認できてしまった。もし近くにあるようなら、ほんのささやかな金属の反射でさえ見つけられてしまうから。

「お心づかい、ありがとうございます。ただ…落としたのは、このあたりではないみたいで。
 ……ずっと歩き通しだったので、今日はもう、休む事に……しようかと」

それで解放してくれるような相手である事を願いながら意思を伝えて。行く先を塞がれないようなら、そっとした動きで歩き出そうとする。

タマモ > なるほど、少女の言葉から、実際に大事となる程ではない、と分かるか。
それならば良いと、頷きながらも、続く言葉に軽く視線を周囲に向ける。
確かに、この付近にはないだろう。
少女の浮かぶ術であれば、それで諦めるもの、ではあるのだろうが。

「それはそうじゃろう、大事なものであれば、お主の匂いが強く染み付いておるものじゃろうし?
そんな匂い、この付近からは、感じられぬからのぅ。
どちらかと言えば…この付近ではない、あちらの方から、僅かに感じ取れるもの…
さて、どうする?」

すん、と鼻を鳴らし、その判断を留めるように、そう伝えた。
視覚であれば、確かに目に見える範囲でしか探れない。
だが、臭覚であれば、目の前の匂いの元があるのだから、それを利用して探れば良い、のだと。
そもそも、己の元は獣な上、集中すれば五感は更に鋭敏となるのだ、難しい事ではない。

まぁ、実際に少女の匂いを嗅ぎ、それを辿ってみれば、確かに進んだ大通りの方から嗅ぎ取れる。
そうして指差し示す方向は、確かに少女が行き来した道。
別に道を塞ぎはしないが、改めてどうか?と問い掛けるのだ。
…そもそも、道を塞いでも、通しても、まだ道を戻してない、と言うオチがあったりするが。
助けを求めるなら、ここまで来たら、後は素直に探してやろう。
それでも断るのなら…うん、仕方ない。

ミンティ > 獣の耳を持つ少女が、においでわかると言うのなら本当にそうなのかもしれない。
裸眼で探索を続けるわけにもいかない以上、彼女の嗅覚に頼る方が早く見つけられるかもしれないとも。対価を要求されて、それが具体的には伝えられないのが不安ではあったけれど、無駄に宿代を支払えるほど裕福でないのも確か。
しばし悩んだ末に、困ったように眉を垂れた表情で頷いて。

「では、においのするところまで…で、いいので…案内、してもらえないでしょうか」

自分の失せものに人を付き合わせる事が単純に心苦しいというのもあったけれど、親切な申し出ともとれる言葉を頑なに拒むのも気が引ける。
手間をかけさせてしまう事には申し訳なさそうに、小さく頭を下げて。
とろとろと遅い足の運びで歩きはじめる。向かう先で鍵が見つかるかどうかは、相手の鼻次第なのだろう。それから、なにを対価に要求されるのかも。
ただ、夜道を歩くのに話し相手がいるのは、すこしだけ安心もできたようで――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からタマモさんが去りました。