2024/02/29 のログ
リセ > 「ノリと……勢い、ですか……能動的ですねえ……何もしないでいるよりはよっぽどいいことだと思います。
 わたしには……とてもそういう風に出来ないので……
 そんな風にできなくって後悔ばかりなので、羨ましく、思います。とても……」

 勇気がなくって踏み出せない。無謀なことでも時には踏み出さなくてはいけなくってもどうしても足が竦む。
 そんな風にはできないからこそ、憧憬の念を抱くので。微苦笑気味に眉を下げて。

「あ、あり、がとうございます……そんな風に云っていただけたの、初めてです。
 クロエさん、も響きが良くてどこか活発な感じが素敵ですね」

 そんな風に云われたのもあだ名で呼ばれるのも初めて。
 初めてばかりで少し追いつかないが、戸惑いながらもはにかみ、嬉し気に表情を和らげ。
 かといって彼女のように即興で綽名を付けて呼べるほど頭も回らないので、クロエさん、と無難な呼び方しかできず。

「……だ、大丈夫、で、ふ……」

 明らか無理した風に、大丈夫です、と云いかけて噛んだ舌が回らずに情けなく眉を崩し。

「い、いえっ…そ、そんな迷惑、だなんて……滅相も……だた、すごく、予想外で…びっくりして……お、お友達……なかなか、できない、ので……こんな風に降って湧いてきて……本当に驚いた、だけで……あの、嬉しい…です……っ」

 軽い謝罪にふるふるふるっ、と毛先を大きく振るように首を左右に揺らしては。
 自分でいいのだろうか、と恐縮しきりで、本当に降って湧いた出来事に処理が追い付かずに頭の中がぐるぐるとプチパニック。
 今わたしに何が起こっているのでしょうか、と自問したりしていた。

「でも……学院ではその……浮いていて……むしろご迷惑を、お掛けする、のは……わたしの方かもしれなくって……だから……
 あの、もし、厭に、なられ、たら……そう云って下さい、ね……?」

 学院ではカースト上位の貴族連中に没落貴族、と虐げられて苛められている。もしも巻き添えになったら、なんて思うと気が気ではない。
 それに急に意識が途絶えて所構わず寝入ってしまうのだ。
 迷惑をかけるのは主に自分の方と思っているから気が引けて。
 お友達になっていただけるという申し出は、驚きはしたものの嬉しくはあって。だからこそ気を遣ってしまい、なんだか小さくなりながら声のトーンも低めに窺うような目線を向けて。

クロエ > 「そこはお互い様かもねー。あたしなんかはやっちゃってから失敗したーってなったりするし。
 間取れるといいのかも知んないね?」

踏み出しすぎるのも事故の元、である。時には引くことも大事なのだ。
そう考えると、踏み込みすぎる女と踏み込めない女。間を取れるのが最上なのでは?なんて思ったりする。

「えー、マジでー?
 リセっちの可愛さを世に伝導しないとだめかなー?」

戸惑い、はにかむ少女の姿はそれだけで可愛らしく。
さらにそれに合わせて名前を唱えれば、「おおなるほど」となる可憐さが伝わるはず……と勝手に思う。
こんな少女が埋もれているなんて世の損失ではないか?

「そっかそっか!嬉しい?それならあたしも嬉しいな。
 こんな素敵な子が友だちになってくれるんなら言うことなし、だし。
 友だち少ないの?マジ勿体ないし。」

長く真っ直ぐな髪は美しい白銀で。
落ち着いた藤色の眸は乳白色の肌によく映えて。
とても、素敵に可愛らしい、と思った。

「浮いてる?あはは、浮いてるっていうなら多分あたしも浮いてるし。
 なんだ、なら浮いてる同士ちょうどいいかもしんないねー。」

手広く交流している分で多少は緩和されているかもしれないが、逆にそれだからこそという浮き具合もある。
結局のところ、何だアイツ、という目は一定数浴びている。
もう気にしても仕方ないし、そういうものだと割り切っているのはある意味強みではあるのだろうか。

「リセっちは、もうちょっと自分に優しくしてあげてもいい気もするけどー。
 ま、多分いろいろあったんだろーね。じゃあ代わりにあたしが優しくしてあげよう!」

唐突にハグりにかかり、もし拒否されないのであればそのまま頭を撫でまわすことだろう。

リセ > 「あ、でも、失敗は成功の母…と云いますし。
 クロエさんの物怖じせず行動できるのはとてもすごく、素晴らしいと思います。
 きっと、失敗を恐れないクロエさんは沢山成功を重ねてゆけるのだと」

 何もしないで二の足を踏んでいるよりはずっといい、と立ち竦むばかりの引っ込み思案としては彼女のキャラクター性は貴重だと力説した。

「え、いえ、いえいえいえっ……そ、そんな滅相もありません……
 わたしなんかよりもクロエさんの方がずうっときらきらして眩しくて素敵です」

 それはもう世の中は存じ上げている事項だとは思うけれど。
 ふるふるふるとまた慌てたように首を振ると少々顔を赤くして金色の髪に緑の瞳、褐色の肌、と己とはまるで正反対の色彩と印象と健康美を兼ね備えた彼女を目を細めて見つめて。

「ええ、あの、とっても……嬉しい、です。クロエさんのような朗らかな方とお近づきになれて。
 す、素敵なんて、そんなことは……。
 クラス、ではずっとひとりでいます、ね……」

 どれだけクラスに溶け込めていないのか。空気のように扱われるか悪質に弄られるかどっちか。
 しょん、と思い出して若干しょげつつも。
 快活、という言葉がよく似合う明るい魅力を持つ友人ができた幸運に感謝し。

「そうなん、ですか……? クロエさんはみんなの輪の中心にいるような感じがしますけど」

 明らか自分とは対照的な典型的な陽キャ。
 浮いているという言葉はどうしてもピンと来なくてこてり、と首を傾げ。
 
「自分に、優しく……ですか……考えたこともありませんでした。
 え、あ、きゃ……く、クロエ、さ……んっ……ふ、ふぁ……」

 出し抜けに抱きしめられて、びっくり、と目を瞠った。相変わらずわたわたと焦るも、幼子にするように頭を撫でられて擽ったそうに目を細め。
 おずおず…と酷く遠慮がちに、そうっと両腕を回して抱擁を返そうとし。

クロエ > 「なるほどなー。リセっちは賢いというか、褒め上手というか……
 色々考えられる人の物言いだなあ。あたしにはそういう発想はないもん。
 足を踏み出せばあたしよりよっぽどうまくやれそうだけど」

なるほど、失敗は成功の母、ね。確かにそういう見方もあるのか、と感心する。
ある種、刹那的にものを考えるところのある少女はその思考力を称賛する。
それは自分にはないものだ。

「ほーらー、まーた言ってるー。
 わたしなんか、はナシ無し!リセっちも素敵であたしも素敵。
 それでおっけーでしょ?」

クロエは自分を可愛くすることに余念がないし、それを讃えられるのはまあ当然と思うところはある。
だからといって他人が下とかも別に思わない。
いいものはいい。ただそれに尽きるのだ。

「ふーむー……嫉妬でもしてるのかなー。
 こーんな可愛い子、放っておく理由ないと思うんだけどなあ。
 さもなきゃ……んー、あー、面倒くさいやつかなあ」

自分だってあまり上等な貴族とは言えないし、そういうものに巻き込まれることもある。
クロエの性分ではそんな輩のほうがよほど気に入らない。
彼女もひょっとして、そういうのに巻き込まれているのだろうか……

「あはは、そりゃだってさー。あたしこんなじゃん?
 でもこう見えて貴族の端くれでさ?そうなると、そういう中じゃ浮いちゃうわけ。
 まあ受け入れてくれる人もいるけどね。やっぱ変な目で見る人はそれなりにいるんだ。」

あたし自身が貴族っぽいの得意じゃないしね、とけらけら笑う。
しょうがないよねー、とばかりに。

「そういう意味じゃ、混成クラスは有り難いね。
 あんまりそういうの考えなくて済むし。
 まあ、理由はそっちじゃなかったんだけどねー」

それでふと気づくのが、混成クラスでは彼女を見かけた憶えがない。
とすると、やはりさっきの懸念通り彼女の敵はカーストみたいなやつだろうか。

「んー、よしよーし。ん、おろ?」

抱擁が返されれば、お?と軽く驚くが笑顔で受け入れる。

「よしよし。」

妙に満足げだった。

リセ > 「クロエさんこそ、誉めるのがお上手です。
 自然体でそんな風に云えるのはお人柄ですね。
 ……考え過ぎて踏み出すのが怖い、という感じでしょうか……いろいろ云い訳をしてやらない理由を見つけてしまうんです。悪い癖ですけど」

 だから下手な考え休むに似たり、でまずは余計なことを考えず正しいと思ったことを実行できる行動力は称賛に値するもので。
 それは今日、助けてくれたことからも充分な長所だと思えた。

「……す、すみません……余り自分のこと…好きにはなれなくて……
 気を付けます……」

 さっぱりと竹を割ったような明朗快活な彼女とは違ってうじうじと締めっぽく自己肯定感の低い性質。
 自虐しがちではあるが、余り聞いていて気分のいい物ではないだろうと反省して。

「い、いえ、そんな、そんな……わたしの、性格暗い、ですし……クロエさんのように積極的に声をかけていったりも…できないので……自分のせい、です」

 しょっちゅう暗いとか陰キャとか詰られる歴史から、ぼっち状態のは全面的に自分の責任、と困ったように俯きがちに。

「クロエさんは明るくて人を惹きつける方だと、わたしは、思うんですけど……
 でも、貴族社会はなかなか……派閥があったり階級差別の意識が強かったり……神経を使いますものね……」

 そんな一見華やかな裏のどろどろと陰湿な局面の一端くらいは承知している、というか没落階級だけあって差別の矢面にいる立場は、思わずしんみりするが。
 それすらも軽く笑い飛ばしてしまう様子気丈さにはやはり感服する。

「そうですね、大きな学院なので選択肢が多くて助かることも、ありますね」

 とはいえ、授業自体は方々で受けられるとしても所属クラスはやはり決められてしまっているのだが。
 貴族クラスに所属を余儀なくされている立場としてはホームルームが主に針の筵と化している。

 年齢も体格も似たような少女に抱きしめられて、気恥ずかしそうにしながらも温かくてくすぐったい様な心地よさを覚えて控えめながら、きゅ…と軽くその背に腕を回しては、小さく笑って。

「あったかい、ですね……」

クロエ > 「そお?えへへ、リセっちにまた褒められちった。
 んー、まー大体そんなもんじゃない?あたしが考えなさすぎって話もあるし。
 でも自分で悪い癖って思ってるなら、一歩足は踏み出してるよ。
 次の一歩を踏むこと考えるといいかもね?」

何が悪いか、ということが分析できているなら次に何をすればいいか。
それを考えていくことが大事なのだろう、と思う。
……それを考えられるのがある意味羨ましくもあるのだが。

「あ、いいっていいって。謝るのも無しナシで。
 あたしの前でだけでも少しずつ慣れてって?」

自分のことを好きになれない、と目の前の少女は言う。
言葉の節々から感じられる気の弱さは、そこからも来ているのだろう。
せめて自分の前くらいはもうちょっと余裕を持ってもらえたらいいな、とクロエは思う。

「そそそ。貴族はめんどくさいねー。このカッコもさー。
 やれだらしない、やれみっともないって言われるわけ。
 あたしは可愛いと思ってやってるんだけどさ?まあ、そこの感性の違いはしゃーないけど。」

めんどくさいよねー?と、相手も貴族社会の面倒くささに理解を示してくれれば嬉しそうにしつつ文句は垂れる。
我、同志を得たり、である。

「んー、たしかにあったかーい。リセっちマジいいにおーい。
 あ、そだそだ。リセっちさー。ふふ」

お互い抱きしめ合いながら、少女は楽しそうに笑う。

「実行したじゃん?ハグ。
 いいよいいよー、踏み出してるよー?」

くすくすと本当に楽しそうに笑った。

リセ > 「クロエさんはいいところが、沢山ありますから。
 ………ふふ、なんだか、クロエさんは……先生に向いているかも知れませんね。
 励ましたり、自信を持たせようとするのがすごくお上手です」

 普段は自己嫌悪してお終い。特に進歩もなくいじけながら思考停止したりするが。
 そんな視点からの意見をいただいたのは初めてで少し意外そうに目を見開いては、嬉しそうに微笑して。

「はい、がんばり、ます」

 こくり、と神妙な顔をして生真面目に肯いた。
 やたら謝られるのも困るのは分かるし、気楽に過ごすことを望まれているのも理解できるので。

「仕来たりに厳しいですよね。
 ……領地を治める役割があるので、領民の方のことを考えて身形を整えろというのは仕方がないかとは思います。
 ただ、公の場以外では自由にして構わない、とわたしも思いますし、その制服はクロエさんに良く似合って素敵ですね」

 いちいちうるさく云われてストレスに感じるのはよく分かる。理屈は分かっても好きなお洒落を楽しめないのに不満を覚えるのは確かにそうだと深々と肯いた。

「あったかくって、いい匂いで柔らかい、です……でも。少し恥ずかしい、ですね……
 え? ぁ、あ……そういう、こと、なん、でしょうか……?」

 踏み出せた?とかくり、小首を傾げつつも、まだまだ寒風の吹きすさぶ春間近の街中ではお互いの体温が暖かくて心地よくて。
 踏み出したにしては小さすぎる一歩にしてもそういうことなのだろうかと思考しながら、楽し気な彼女の笑い声に、小さく笑って。そうですね、とほっこりと表情を和らげた。

クロエ > 「え、マジ?先生向き?んー……考えたことなかったな……
 マジかー、センセかー……」

どうなんだろう?と思わず首をひねる。
人付き合いは好きだし、ヒトが楽しんでるのを見るのも好き、だけれど。
だからといって人に何かを教えられるほどの知能があるだろうか……いやでも、リセっちがいうならアリよりのアリだろうか……?
などと真面目に考えてみたりする。
……といっても、答えなどすぐに出るわけもないのだが。

「うんうん、いい!いい!その調子!ちょ―っと真面目すぎる気もするけど、まあそこはしゃーないか。
 全然まだ慣れてないもんね。
 ま、あたしを練習台にしてさ。気楽ーに生きる感じをつかめるといいね」

神妙な顔で肯く様子に思わず微笑んでしまう。
力が入っているな―、と思うけれど気楽に過ごす一歩目と考えればこれなら上等では?

「そそそ、それそれ、マジそれな!って感じ。まあだからってあたしは同じカッコを他の人にもさせる気はしないけどさ。
 リセっちがこんなしたら……あー、いや。それはそれでマジカワだけど。リセっちがもたなそうだし。」

照れて爆発しないだろうか、なんて思ったりする。
それとも意外と図太く着こなすのだろうか?
どちらにしても強要するつもりはない。

「うんうん。大したことないって思うじゃん?実際大したことないかもだけどさ。
 ちょっとでも大したことなくても。色々やっていけば足を踏み出す力になるっしょ。
 できたーって気になったら気分も上がるしね!
 そういうのマジ大事だよ。やっぱ気分良いと色々違うし?
 じゃあ次。友だちと、したいことある?リセっちはさ?」

小さな一歩。取るに足らない一歩。なんなら、そんなこと普通にできるよ、という一歩かもしれない。
それでも、意識して積み重ねていくことが大事だとクロエは思う。
だって、自己肯定ってそういうもんじゃん?知らんけど。
だから、まあ……更に一歩、ちょっと踏み込んでみたりする。
ここで返事が来ないなら、それはそれで仕方ないけど。

リセ > 「少なくともわたしは今、教えられたようですよ」

 自信をもっていいことや、踏み出すことへの励まし。
 そんな風に教唆してくれるのは友人でも師でも貴重な存在だし、教える側に回るのならば救われる生徒も多いだろうと。個人的な見解だが。

「我ながら……不器用で……。
 練習台、だなんて、そんな……むしろ本番だと思って挑んでます」

 だから変に力んだりはあるのだろうが。少しずつ肩の力は抜けていると思うが、まだ初対面の段階なのだから道のりはまだ一歩目。

「礼装が必要な時はすべきだと思いますけど、そうでない時はかわいいお洋服、着たいですよね。
 わたしには似合わないような……」

 持たないというかお洒落に気崩した制服が似合うようにも思えない。
 うーん…と彼女の改造制服を眺めて眉根を寄せ。

「っふふ……やっぱり、先生みたいですよ? 大事なことを教えてくれますもの。
 クロエさんはお日様みたいですね。
 したい、こと……ですか? え、と……普通に…放課後一緒に帰ったり、寄り道したり……お勉強、したり……お昼…食べたり……とか?」

 世間一般の女学生はみんな毎日友人と営む有り触れた日常。
 そんなものもなかなかする機会のないものだから、世間一般に憧れて。
 普段から思い描いていた極普通の理想を口にすれば、望みが低すぎるだろうかと気恥ずかしくもなりながらも、一歩踏み出していくのが大事と教えられたばかりだから。

「あ、あの……で、ですから……その……よろしければ、途中までご一緒、しません、か……?」

 多分富裕地区の方面に向かうだろうから方向はそんなに外れないはず。話し込んでいてすっかり遅くなってきたから、友人との一緒に帰宅する、有り触れた憧れの一つを控えめながら申し出て見て。抱擁を解いて遠慮がちに手を差し出し。

クロエ > 「そお?あはは、ちょっとえらそうだったかなー。
 まあでもリセっちの役に立ってるみたいならいいかな。」

別に教え導く、なんて大層なことをしようとしているわけではない。
ただほんのちょっと、せっかくできた友だちの後押しをしてあげたいだけなのだ。
楽しいは嬉しい。そのために。

「あはは。たとえたとえ。
 リセっちがあたしと同じカッコする必要はないしさ。
 可愛い服なら他に色々……ああ、いいなそれ。」

言いながら何やら考えたのか、にやりとする。
それがなにか、まではいわないが。

「ううーん、マジで?ちょい照れるかもなあ。
 やっぱリセっちも褒め上手だってばー!」

先生に向いてる、と再び言われればちょっと照れる。
ほんのちょっとその気になっている自分もいたりして……

「お、うんうん。いいねいいね。いいじゃん、それ!
 ……お。早速?もっちろん、おっけー!」

ぽつりぽつりと語られる、ほんの些細な。友だちとしたいこと。
クロエはそれを馬鹿にすることもなく、楽しげに、満足げに聞いていた。

そして、最期におずおずと差し出された手。
それを迷うことなく取る。

「そういえば、すっかり良い時間だもんね。
 んじゃ、いこいこ!」

そして、にっと笑って。二人は帰っていくだろうか。

リセ > 「偉そうだなんて……っ。そんなつもりで、云ったのでは、ないので……」

 ぶん、ぶんっ、と強く首を振って否定して。
 敢えて大げさなことをしようとしている訳でもなく。さり気なく思ったままに告げられた言葉が励まされて嬉しいのだと伝え。

「あ、そ、そう、ですよね……例え……
 ……?」

 ほくそ笑むような表情に気づくとかくり、と首を傾げ疑問符を浮かべて覗い見るように見つめ。

「誉める、というか……本当のこと、ですよ? わたし、お友達に嘘は云いませんし、お世辞も云えませんから、そう思ってるんです」

 個人的な見解ではあるけれど、少なくとも自分にはそう思える。
 彼女はきっといろんな人を良い方向に導くような力を持っている、と素直にそう感じて言葉にし、柔らかく微笑して。

「き、きっと、他の方は、普通にやっていると思うのですが……わたしには、レアなので……。
 い、いい、ですか? わあ……嬉しいです」

 何も特別なことでもないけれど笑うことなくあっさりと肯定してもらってさらに差し出した手を取ってもらい、早くも実現すると嬉し気にほこほこと笑みを浮かべ。

「はい、クロエさん、お宅はどちらですか?」

 確認しながら別れ道まで手を繋いで今日できたばかりの友人と辿る帰り道はいつもと違ってとても賑やかで笑顔もお喋りも絶えなかったことだろう――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリセさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からクロエさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にランバルディアさんが現れました。
ランバルディア > とあるギルド内、酒場の一角。
知らぬ先客がいなければ、指定席のようになりかけているテーブルに腰掛けている男こそ。
そのギルドの掲示板に張り出されている“割のいい採取依頼”の依頼主である。

品物はそう珍しくはない薬草。
持ち帰ってきた時の報酬は、際限無しで量に応じて即時その場で現金払い。
ギルド所属の冒険者じゃなくても構わない。ギルドへの面倒な付け届けは男持ち。
その他諸々都合良く。
ただまあ、報酬支払い後に酒に食事に付き合えというのが御定まりのようで。

この日、やってくるのは――。