2024/02/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」にヴァンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」にマーシュさんが現れました。
■ヴァン > 夕方の図書館。仕事が終わった男は受付近くのテーブルで革装丁の本を読んでいた。
じっくりと時間をかけながら一ページづつ読み進めている。
テーブルの上には一枚の紙とペンが置かれていて、様々な単語が記されている。
「若い頃に、もうちょっと勉強しておけばよかったかな……」
所々わからない単語が出てくると受付にいる司書に尋ねる。だいたいが主教関係の単語だった。
三回目には呆れられた表情と共に、神学辞典を差し出された。
■マーシュ > 幾度か訪れたことのある施設。
ただ書を紐解くために訪れるだけの場所ではない、というところが己にとっての違いではあるのか。
その蔵書量を知らせるように大きな建造物の外観を見上げてから、静かに扉を開く。
顔見知りの司書に挨拶代わりに軽く頭を下げて。
それから……なぜそんなところで、と思わなくもないが読書している男のもとへと歩みを寄せた。
テーブルに積まれた書籍のいくらかは己にもなじみのあるものだが。
「……珍しいものを手に取ってらっしゃいますね?」
神学辞典の表紙につと手を伸ばして表面を指先で撫でる。
分厚く、重厚な装丁は経年を示しつつもそれゆえの味わいを醸し出している。
ただ、彼はあまり此方への興味は薄いと認識しているがゆえの物珍しさを感じて、挨拶よりも先にそんな言葉が零れた。
■ヴァン > 受付の近くにいることで、いくつか便利なことがある。
トラブルがあった時に上席の者として対応できる。時々視線をやることでサボりを防止できる。
そして、来客があった時に互いにすぐに見つけやすい。
「一通り学んだつもりだったんだが、ほとんど忘れてしまってね……」
苦笑交じりに答える。神殿にいる者ならば大半がわかる言葉も、男はわからなかった。
平信徒ならともかく、それなりの立場がある人間としては資質を疑われかねない。
「いいところに来た。話をしようと思ってたんだ。君自身のことで」
かざして見せる革装丁の本は、彼女から送られたものだ。出生についてだと察せられるだろう。
出生について興味を持つこと自体はさほど不自然ではないが、調べるとなると話は別だ。
男は長年携わっていた目的を完遂し、ぽっかりと時間が空いたことは目の前の相手も知っている。その手慰みだろうか。
ちらりと受付を見る。司書二人が何やら会話しているようだが、内容まではわからない。
こちらの声も聞こえないだろうが、場所を変えた方が良いか考えているようだ。
■マーシュ > その場所に陣取る相手なりの理由はあるのだろう。
此方が近づくのにも気づいていたような相手の言葉にわずかに眉尻を下げる。
派閥はともかく、主教関係者である以上は……頷かざるを得ない。
「…まあヴァンにとって、書の上での教義というものはあまり意義がないものだったんでしょう」
それを表立って口にするほど愚かではないだろうけれども。
忘れた、と言われてしまうとさすがに返答には困るところだ。
懐かしささえ感じる辞典を数ページ眺めていたところで、話題を変えるように声が上がる。
己のこと、と向けられる言葉とともに見せられたのは、以前彼に贈った写本が目に入る。
静かに辞典を閉じると、改めて向き直る。
己の出自についてはすでに語った通りで──現状何の不満もない女は自身のことについてさほど意識を向けたことはない。
それを改めて掘り出そうとするのは徒労に終わるのでは、と思わなくもないが。
成したいことを成した後、浮いた時間を調べものに使っていたらしい。
周囲に視線を配り、それとなく耳目を憚るあたりに何かあるのかなと軽く眉を上げる。
テーブルにある数冊の本を手に取ると──
「書架のほうなら、耳目はないかと思いますし。本を戻すついでに話をするというのはいかがでしょう?」
普段もたまにする。
いつもなら、おすすめの書籍を紹介してもらいながら、ゆるゆる気に入った本を探すための行為ではあったけれど。
己の出自にさほど意味があるとは思わないが、でもだからといって知らない人の耳に入れることもないだろうと水を向けた。
■ヴァン > 「騎士団生活が長くて、本よりも剣を持ってる時間が長かったから。
枝葉の方に興味を持ってて、幹の方には……ね」
言い訳を口にする。枝葉の方というのは、主教の変遷や矛盾点など、彼が追っていた事柄についてだろう。
長年変わらない、変わりようがない芯の部分は男にとって興味を惹くものではなかった。
「そうするか。神学辞典は……哲学書の近くだな」
己の本を鞄に入れると、辞典を持って立ち上がる。神学の本棚は二階の奥にある。
以前台車を使って本を戻しに行った先の手前だ。一年ほど前の話だが、忘れはしないだろう。
歩きながらいつもの声で話す。時間帯のせいか、人は少ない。
「本。内容以前に、これだけでわかることがある。
活版印刷ならともかく、羊皮紙を使ったものは特に高価だ。修道女に言うのも変な話だが。
持ち主は当然読み書きができる。貴族、主教、知識階級……」
写本は修道院でされることが多い。修復などに携わっている彼女ならば高額であることは当然知っていることだ。
王国の識字率は他国より少しだけ高いが、それでも二十人に一人程度。
己の名前や住んでいる場所の綴りぐらいなら書ける者もいるが、それ以上は生活に必要がないので知らないのが大半だ。
図書館にいるとそのあたりの感覚から遠ざかってしまう。館内のまばらな人を一人一人眺める。
椅子に座って船を漕いでいる老人も、絵本を読んでいる母子も、写本をしている青年も。この王国の中では珍しい部類なのだ。
■マーシュ > 「実際私もすべて知っているかと問われるとそれは難しいですし。知っていることと、学ぶこと、はまた違いますから」
己は神学者ではない。
綴られていることが正しいか否か、と疑義を呈すことは己にはできないことだ。
主教に携わりつつもそのかかわり方はそれぞれということなのだろう。
「はい、……この辺りは懐かしいですね」
己も、今は諳んじる程度に読み込んでいる所も、当時は言葉の意味が分からないことも多かった。
抱えている書籍はそういった時分にはよく当たっていた部類の書になると目を細める。
ただ、示された場所は多少記憶に引っかかるというか、その奥での記憶はさすがに拭えるものでもない。
若干歩みが重たくはなったが──己が言い出したことだしと歩を進めつつ。
文字を読むことができる、というのが当たり前なようでいて
そうではないことも分かってはいるつもりだったけれど。
あらためて耳にする言葉には、すこし考えさせられるものがある。
「…………まあ、そうですね。」
修道院が写本を熱心にするのはそうすることに意味があった、というのは彼が語るとおりに。
読書は修養でもある、けれどそのための本がない。出発点はそのようなものだ。
そうして、それに馴染んだ立場を離れてみると、存外に文字を扱える存在というのはやはり少ない。
代書屋や、代読が仕事として存在するのはそのためだ。
貴族でも、あるいはその方針によっては文字を読めないというのはままある話。
そして、彼の手にあるのは写本ではあるが…己が親らしい存在から託されていた唯一のものだ。
言わんとすることはわかるが、ならば余計に───
「藪をつついてしまいそうな話、ですね」
■ヴァン > 階段を上り、二階へとあがる。
書架の間はほとんど人がいない。冬は陽が落ちるのが早いから、帰ってしまう者が多いのだろう。
「内容を考えると、俺よりも主教には熱心なんだろうと思える。
文言の引用やアナグラムといった仕掛けでヒントがないか読み直しているが――」
冗談めかして伝えるが、これも一つの情報といえる。
主教の勢力拡大を好まない領主や宮中貴族はいる。少なくとも主教に対して好意的な人物と思われた。
ヒントがないか読み返しているが、おそらく徒労に終わりそうだ。娘と共にある本に、何か意味を見出せるかと考えたが……。
「写本の場合、特徴的な筆跡ならば誰が書いたものかを辿れる可能性もある。
綺麗な読みやすい文字は人気が出て、誰が書いたかもわかるかもしれない」
歩きながら言葉を続ける。本そのものから読み取れる情報はこれくらいだろうか。
藪をつつく、という言葉に頷く。
「そうだな。君が産まれ、何か理由があって孤児院に――。
二十年近く昔の話だ、彼等が生きているかどうかもわからない。ただ、俺は知りたい」
男は産まれた、ということを強調してみせた。魔術や薬品などで堕胎することもできる。
しかし、彼女の両親は――少なくとも母親は、産むという選択をした。
本棚に辞典をしまうと、深く青い瞳でじっと女を見つめる。当人以上に真実を追いたがる姿はやや奇妙でもある。
■マーシュ > 元より所は光を嫌う。だからこそ図書館は窓が少ないし、火を使った照明も少ない。
ここは明かりは魔導灯に頼っているのだろうが、光量はやはり控えめだ。
薄暗い中、頼りない照明に伸びる影は二人分。耳目が少ないだろうという読みは当たったよう。
「……何度も目を通していますが、普通の詩編だと思います。……暗号と思ってないから気づいてないのかもしれないですが」
原本を渡せばわかることでもあるのだろうかと、己がお守り代わりに常に所持しているものを思い浮かべつつ。
そちらには、己の姓の由来となった文言がただ一行綴られてはいるが──。
それを手放すのは少しはばかられもする。別に相手が信頼できないわけではないのだが。
己が己の出自に対して、思っている以上のものが出てきそうなことには戸惑いや懸念を感じずにはいられない。
「…………、……知りたい、ですか。」
小さく唸るようにその理由を鸚鵡に嘯く。
己も知りたくないわけではない…が。
書籍をしまい、こちらに視線を向ける相手を見やる。
返答を待ってるのだろう言葉に対して───また少しの間をおいた。
「……私は今の自分に満足しています。出自がどうあれ、静かに暮らせることは大事なことだと思っていますから。」
常、語っている言葉。それを紡いで、それから───。
「知りたいのであれば……そうですね。マザー……、聖都のマザーであれば何かご存じ…なのかもしれません。マザー・セシリアは、……多分教えてくれませんから」
彼方はガードが固い、というわけではないが手ごわい。王都で長年勤めを続けていることからもそういった情報の扱いにより厳密さを求めているように見えるからだ。普段は割とそう見えないのだけれど。
先に彼女の上司でもあり、己の親代わりの聖都のマザーを口説くほうが早いようには思ったからそう告げて。
「手紙を、またおくってみようかな、とおもいます。それと──こちら、を」
彼が持っているのは己が作った写本だ。その原本である詩編を差し出した。
書から謎を紐解く、のなら此方のほうがふさわしいだろうと。
■ヴァン > 理由を問うような鸚鵡返しの言葉に、視線を外した。
右手で己の頭を掻く。静かに暮らせるというくだりに深く頷いて同意した。
「貴族社会ってのは面倒でね。いろんな関係に家柄だとかなんだとかが関わってくる。
今の俺達の関係を誰かが何か言う訳ではないが、今後を考えると……な。静かに暮らすためにも知っておきたいんだ」
男は嘘をついた。数か月前、平民であることを理由に侮辱した騎士団の男がいる。そろそろ包帯はとれた頃だろう。
何かあるたびに暴力で片づけるのは簡単なことだが、いずれ限界がくる。
男の家族は父と三男の関係を修復した恩人ということで彼女の身分を気にしていないが、その周囲も同じとは限らない。
「親代わりの人か。ちょうどいい。明々後日から聖都に行くことになってね。一週間から十日ほど、ここを留守にする。
その時にマザー・ヒルデ……に、挨拶も兼ねて話を聞いてみるよ。手紙は俺が持っていこうか?」
マザー・セシリアは王都の女性だ。何度か立ち話をしたことがあるが、情報を持っているようには思えない。
それに、他人の個人的な情報をさらりと流すような人物にも見受けられなかった。
諜報員ならそんなガードもすり抜けられるのだろうが、あいにく男は暴力専門だ。知人に手荒な真似はできない。
オリジナルの詩編を受け取ると、ぱらりと開く。
書き込みがされたページとその内容をメモに追記すると、相手へと返した。
「冒険ものにもあるが、頭文字を繋げると言葉になるとか、ある単語の文字の順番を変えると別の言葉になるとか。
著者以外が作るのは難しいが、これは昔からある詩編だからな……」
本自体に魔力があるようにも思えない。物と人を繋ぐ糸を見るという魔術があるが、古すぎてもう辿れないだろう。
男は話をしながら、まるで自分が物語の登場人物になったような気がして笑ってしまった。
■マーシュ > 「─────」
含みのありそうな言葉には、さてどう応じたものか。今後、と言われてもピンとは着てない現状。
己の周囲は一応俗世と切り離されていることもあってか身分そのものを取りざたするものはない。
それゆえにあまり現実的な問題として受け取れないのもある。
男の嘘については、むろん知らされていない以上は何も言葉にすることはないが──。
問題が生じた場合、一方的な行為で解決するというのはひずみが生じるのも確か。
たとえ男の存在が騎士団内で浮き駒の様な扱いをされていたとしてもだ。
「お仕事ですか、それは……お気を付けくださいね
────………う、……直接お会いになるんですか。………では一応紹介状を一緒にしたためますので、お願いできますか?」
手紙も、こちらの近況を知らせるものを定期的に送ってはいた。
魔術的な通信をするほどのことでもないし、私信ということもあったから街からの配達を頼んでいたが
思わぬ申し出と言葉に対して、都合がいいというべきか否か。
一応派閥の問題があるから話を通しやすくするための書面を一緒に、と答えるものの──。
聖都のマザーがどのような反応するかは女にも少々読めないところではあった。
差し出した書を開く仕草を見守りながら、暗号化に関する情報を耳にしつつ。
「……手の込んでいる祈祷書などは書き出しの頭文字を、絵文字にする場合もありましたし
……その意匠に当事者だけがわかる意匠を書き込めば暗号としては成立するでしょうね」
あいにくとそこまで手の込んだものじゃない、シンプルなものではあるが。
書き出しの文頭をそろえたり、何らかの法則を組み合わせるのであれば難しくはない。
───とはいえ、その法則を見出すのが難しいからこその暗号文なのだろうけれど。
「……個人的には何もないほうが、とは思うのですが。」
言葉を交わしながら、物語の渦中にあることをおかしく感じてるらしいのに
此方もまた目を細める。己の出自に意味があるのかないのかはまだ分かりはしないが──
確かに物語の端緒のようではある、と。
■ヴァン > 「あぁ、聖都に数日滞在するのも久々だから……多忙だったとしてもどこかで時間を割いてはくれるだろう。
紹介状か、助かるよ」
神殿騎士団のナンバー2とはいえ、相手の予定も考えずに訪問するのは不作法だろう。
修道院の院長がどれだけ忙しいかは知らないが、紹介状があれば無下には扱われまい。
「他の文字の何倍もあるから、何か読みづらいんだよな、あれ。
大きな区切りってのはわかるんだけど。そういえば、主教関係の本以外ではあまりあの装飾を見ないな」
先程見た限りでは、装飾に細工がされているようには思えなかった。
じっくりと見たのは追記がされたページだけだったので、見落としがあるかもしれない。
ただ――写本をした人物と追記をした人物が同一でなければ、そんな細工もないだろう。
インクの色や筆の質で、追記の跡というものは意外と気付くものだ。
「慎重にやるよ。まずはマザーとの挨拶からだな。
どんな人柄なのかとか、好きな物とか教えてくれないか?」
初対面の印象は今後を大きく左右する。
予行演習をするにしても相手を知らなければ対策が立てられない。
まずは目の前の彼女を通じて、相手を知る事から始めようと――。
■マーシュ > 「装飾に使うインクや、意匠の選定にも一応意味づけがありますから。より高価になっていくのも理由じゃないかなと思います。」
そこにかける手間や費用。そういったものを喜捨として準備できるか否かももちろんかかわってくるのだろうが
それができる技術者の育成や保持、というのもコストにはなってくる。
なにより実用向きでないのは確かなことだ。
「………ご無理はなさらないでくださいね。
ええ、おそらく問題はないかと思います。主教関係者であれば特に忌避する理由もないですし」
己の紹介状にさほど効力があるわけではないが、双方が己の知己という点では信頼を担保できるだろうとは思う。
さほど精力的に活動している会派でもない。
紹介状に綴る文面と、手紙に託す文言へとわずかに思考を馳せたが。
なにより以前も仕事だといって王都から出向した相手の疲弊具合を思い出すと──、少々思うところもあって
少し、心配そうな視線を向けた。
次いで問われたマザーの人となりについては、さほど語るほどのないようなはかったりもする。
長であるが、やはりその本意は修養に尽くす人、という面も強い。
親代わりとしてそれなりに長く付き合ってきた人でもあるが──。
だから思い出すように目を細めてゆっくりと言葉を作ってゆく
「そうですね、あまり怒っているところは見たことはないです。
……もともとは貴族の方なので教養については問題ないかと思いますが──。
長く修養されている方なので派手なものよりは落ち着いたものを好まれますね
……詩を嗜んでいらっしゃったのを覚えています」
己が詩編を読んで覚えたのも、そうすると喜んでいたのを思い出したから。
他愛ない子供のころのエピソードを一つ一つ拾い上げて言葉にしていたら、きっとそれなりに時間が過ぎていったのだろうと思う。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/神殿図書館」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にリーアさんが現れました。
■リーア > 平民地区の大通りから路地に入った先にある細い通り。
本来なら足を踏み入れる事など先ず無い場所ではあるが依頼となれば足も運ぶ。
狭い通りで扱いに不利な長槍を手にして通りを進み、道が分かれれば探し物をするように両方を見て片方に進んでいく。
そしてまた分かれ道になれば同じようにし、大通りの微かな声を聞きながら足を進め。
「本当にこんな場所に店なんてあるんでしょうか。
依頼だと違法な品を売ってるそうですから、可能性はありますけど」
依頼の内容を思い出してはあるのだろうか、流石に露骨すぎてないだろう。
その両方の考えが浮かんでしまっては引き返しそうになる。
しかし商品の確認はしなくてよく、露店があるかだけの確認なのでもう少し頑張ってみようと思いなおし。
聞こえる声と日の向きで大体の場所を頭に浮かべては路地裏の通りを歩いていく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からリーアさんが去りました。