2024/01/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にラッツィオさんが現れました。
ラッツィオ > 男は平民地区の一角にある、目立たない扉を潜って中へと入っていった。
仕事の相談があるという連絡を受け、相手から指定された酒場だった。
一見するとただの民家のようであり、それと知らなければ迷い込んでくることがないだろう店構えだ。
押し開けた扉についていたチャイムが鳴り、奥の暗がりから店員らしき男が幽霊のように現れる。

「――ちィと待ち合わせでな。これを見せろと言われたンだが」

届いた手紙に同封されていた、暗褐色の紙に不思議なマークのついたカードを店員に渡す。
それが馴染み客であることの証のようだった。
案内された店の奥には大きなカウンターテーブルがあり、2席ごとに天井に届くほどの高い板で区切られている。
大人が2人座ると、ほぼ膝を突き合わせるようになりそうだが、快適さはそれほど求められていないのだろう。
既に先客が何組かおり、声が全く聞こえてこないのは不思議だったが、案内された席に着くときに理由が分かった。
言葉で表しづらい微弱な空気の膜のような抵抗感――どうやら、仕切りの外に漏れない術が施されているらしい。

「内緒話にはもってこいってわけだ、なるほど」

注文の時、退店の時には手元のベルを鳴らすことだけを告げ、店員がすぐさま立ち去りそうだったので、慌てて引き止めて酒を注文する。
ほどなくしてエールの瓶が運ばれて来ると、店員はやはり幽霊のように店の奥に蠢く闇に消えていった。

「さて。いくら居座っても追い出されそうな感じはしねェし、ゆっくり待つとするか」

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からラッツィオさんが去りました。