2024/01/28 のログ
ノーマ >  
日差しの温かい昼下がり。特にやることもないので、どうしたものか、と散歩をしてみた。
たまにはぼーっとすごすのも悪くない……と思ってはみたものの、普段から割合ぼーっと過ごすことは多かったな、と思い直す。

「……ん?」

そんな彼女の視界の中に入ったのは、ジャグリングナイフを器用に放りながら歩く女の姿。
そういう見世物があるらしい、というのは読んだ記憶はあったが、実際に見るのは初めてでつい子どものように追ってしまう。

つまりは家鴨の一員入りである。

結局、女が止まるまでついていってしまい――

「おや」

びっくりするさまと、子どもたちに囲まれる姿まで見届ける。

「んー……こう、だっけ?」

さて、どうしたものか……と少し考えて記憶を探れば。
とりあえず、拍手、をすればいいのかな、と思い当たる。

「やーやー、おみごとおみごとー」

ぱちぱちぱち、と拍手をしてみるとわちゃわちゃとしていた子どもたちの一部も、思い出したかのように拍手を始めた。

アルマース > 釣られて拍手が広がれば、ナイフを奪取される心配はなくなったようなので。
ウエストを締めるベルト代わりの布リボンに挟んでいた、丸めた革を広げてナイフを巻いてしまう。
半ば習性でスカートを摘み、三方へ向けて大仰な礼をして。

「はいはあい、ありがとお~。そのうち広場かどこかでやるし、また見においでよね」

何人かの子どもの肩を掴んではくるんと後ろ向かせ、ぽんと背中を押す。
素直な子はそれで走り出すし、そうでもないのはまだ何か期待する顔でたむろしている。

「ほらおしまいだよー、て、大人も混ざってたかー。おひねり徴収すれば良かったね?」

子どもの群れからは、頭ひとつ飛び出たノーマが拍手をしているのに笑う。

ノーマ >  
「ほいほい、おしまいだってさ―」

子どもたちを散らそうとする姿に、手伝ったほうが良いかな、とおいたてにかかる。
が、笑いかけらればこちらも、にっと笑い返す。

「やー、こういうの初めてみたもんだからさー。
 今からでも払ったほうがいいかな?」

のんびりとした口調でそんな風に聞く。
割と本気だったりするのであるが。

「旅の芸人さん……って感じかね?
 でも今の話からすると、オシゴトってわけじゃなかったのかな。
 練習?」

そのまま好奇心に任せて質問を重ねる。
 

アルマース > 三々五々散って行く子どもたち。
しつこいのは頭のつむじに指をあて、ぐりぐり逆回転させて髪を乱す嫌がらせなどして適当に追い払う。

「初めて? へー、このへんじゃあ珍しくないかと思ったけど、よそから来たの?
 お代は次回からよろしく~」

腐っても王都、日々どこかしらで小さなものから大きなものまで催しには事欠かない。
王都の生まれ育ちなら、宴や祭りの席に呼ばれたついでに路上で稼ぐ大道芸人を見たことくらいはあるだろうと。

食うに困る懐具合なら、人が好いのに付け込んでおひねりをもぎとるのも、やぶさかでは、ない。
が、ありがたいことに本日はそこまで困窮していない。

「あたしは旅の踊り子さんって感じかなー。アルマだよ、よろしく。
 ナイフを新調したからさ、練習しとこうと思って」

んふふ、とナイフの包みに頬をくっつける。お気に入りらしい。

ノーマ >  
「そうだねえ……よそから来たっていえば、まあその通り。
 居着いて、ちょっとは経ってるけどさ」

色々あって、とあるところからやってきた、というのは間違いない。
それからしばらく経って、街に慣れ始めたところではあるので来たて、というほどでもないが。
やはり、まだ細かいところで知らないことは多い。

「あ、そう?払わなくていいなら、じゃあなしってことで。
 そっかー、踊り子さんだったかー。剣舞みたいなのもやったりするのかね。
 いいナイフさばきだったしさ。」

なんとなく、それなりの腕前なのはわかったのでちょっと聞いてみたりする。
単なる好奇心である。

「……っと、そうだそうだ。うちはノーマ。
 単なる冒険者だよ。よろしくねー」

ひらひらと手を振った。

アルマース > 「お、そうなんだ。あたしもそんなとこかな。流れてきて数か月ってところ」

なしってことで、という言い方が面白くて笑ってしまう。

「変なの~。百万ゴルドですって言われても払っちゃいそう。
 どこかの大富豪なの……?」

いくらと言われても、『そうなんだー』と言われるがままに払うノーマが目に浮かんでしまったのは
彼女ののんびりした雰囲気のせいかもしれない。

「剣舞もやるよ。ここじゃいまいち需要が無いけどねー。
 もう少しあたたかくなったら広場の舞台ででもやろっかな」

需要が無いなら開拓するまでである。
屋外の舞台は人通りが多いからたくさんの人の目に触れるのがいいところ。
反面、冬の間は寒いので屋外の広場に露出の多い衣装で立つのはなかなかつらい。

「ノーマ。ノーマ……? よろしく……?
 ん……? 『ノーマ』…………?
 ……もしかしてなんだけどお……アドラーくんて知ってたりするう……?」

ノーマの名前を何度か口の中で繰り返して首を傾げていたが、ふと思い当たった様子で
自分の黒髪をくるくる指に巻き付けて、癖毛のー、あ、泣き黒子のー、と特徴を追加する。

ノーマ >  
「うはは、残念ながら貧乏……ってほどでもないけど、カネモチにはだいぶ遠いなー。
 そんなお金あったら多分冒険者とか辞めてるよ」

冒険者などやっているのは、それしかないから、である。
なんにもしなくていいなら、それが一番楽でいい。
……そのほうが、厄介がなくて良い。

まあそんな都合のいい未来なぞないのもわかっているから、こうして生きているわけだが。

「おー、やるんだ。それは見に行かないとかなー。
 期待してるよー」

色々なことを見て知るのは面白い。
今の生き方の中で一番の趣味と言えるかもしれない。
それにしても、そういうのが需要あるなら自分もやってみようか……
いや、多分ボロが出てしまうか

「ん?アドラー?あー、知ってるよ。
 そうそう、そんな感じそんな感じ。
 あれ?アルマってアドラーの知り合い?」

唐突に出てきた知り合いの名前。
アルマが語る特徴も、間違いなく一致する。
そんなこともあるのか、と思いながら少々びっくりする。
まあ自分と違って顔広そうだしなあ

アルマース > 「え、そうなの? 冒険者ってみんな危険中毒の夢追い人だと思ってた……」

金があったらあったで一晩のうちに酒や女で使い果たし、翌日には稼ぎに出る。
そんなイメージが一般的なのかズレているのか、賛否両論ありそうではある。

「期待されたら頑張らなくちゃね!
 お色気な踊りを観に来てとは言いづらいしねえ……」

女一人で観に来てもらって無事に帰れそうな店での仕事……は、無くも無かったけれど。
何せ客層が野卑だったりするので、冒険者というなら慣れっこかもしれないが、
来てもらっておいて楽しい思いができるかどうか、数秒で色々考えすぎた挙句言葉を濁す。

「あ、やっぱり。聞き覚えあると思ったんだあ。
 『今度、冒険者仲間的な人と組んで仕事する』って言ってたなあって。
 あたしも友人なのよ――結構会ってないような気がするけど、実はそんなんでもないか」

元気かな、と思い出して懐かしい顔になる。
最後に会ったのは年が変わる前だった。
さほど広くもない行動範囲がかぶっているのか、会う時はよく会うけれど、
会わない時はぱったり会わないものだ。

ノーマ >  
「あー、まー……そうだねえ。うちが変わってるのかもしんない。
 やれることがあんまないから冒険者選んだってくらいだしねえ」

軽く肩をすくめて見せる。
ひょっとすればあったかもしれないけれど、多分ソレは自分の中の記憶が拒否しただろうし。

「あー、そっかそっか。
 そういうのもあるっけねえ。踊り子さんってば。
 別に構わないっちゃあ構わないけど、誘いづらいのはまあそうか」

別に誘われれば行くだろうけれど、真面目に考えてみればそんなところにいってしまっていいのか、というのは確かにある。
野卑な連中については……まあ多分、慣れてるし。

「んあー、そんな話してたんだアドラーってば。
 そうそう。話の流れでねー、組んでみよっかってなってねえ。
 ちょいと前に虫狩ってきたりしたんだよね。
 いや、そっか。トモダチだったかー。
 アルマは前から知り合いなの?」

冒険者、ということでたまたま遭遇してたまたまちょっと会話して。
気がつけば流れで組んで仕事をしてみよう、なんてことになった。
仕事の性質上、常に共にあるわけでもないので自分も最近会ってなかったりする。

アルマース > 「変わってる感じはとてもするねえ。
 冒険者のが、色々何でも自分でやらなきゃいけないこと多そうなのに」

とりあえず自分の身を守れないといけなさそうだし。
実は多方面に器用なのでは? と、謙遜か天然か見極めるように瞳を眇めてノーマを見た。
が、さすがに会ったばかりでそこまでは判然としない。

「アドラーは会うたび冒険のお話をしてくれるのよ。
 知り合ったのはここに来てからだから半年も経ってないなあ。
 元気にしてるなら良いんだけど……」

怪我をしていることもあったし。
暫く顔を見ないと思ったら死んでいた、というのも冒険者だと無くは無さそうなので。
下がった口の端を、人差し指でむにむにしながら、ちらっと無事を案じる間。

悪く考えればいくらでも考えられそうなところ、いかんいかんと首を振り。
仕事先へ向かっていたことを思い出す。

「――――っと、ごめん、これから仕事なんだった。
 ねえ、ノーマはどっかの宿に滞在してるの?
 暇なとき、お茶でもご飯でも行かない?
 冒険の話とか、聞きたあい。その、虫取りのやつも~」

何なら王都の外で冒険中に違う顔を見せているかもしれない友人のこぼれ話なども聞いてみたい。
主に野次馬精神で尋ねる女の脳裏に、虫狩りと聞いて浮かぶのは、
純粋に虫取り網を手に駆け回る子どものような二人――である。

ノーマ >  
「んー……そうだねー。なんでも自分でやる、なんていうのだとアドラーなんかはそういうタイプなんだろうけど。
 うちの場合は、概ね殴って解決するほうが専門かなー。やることシンプルで済むしね。
 割合、それができればどうにでもなる仕事も多いし」

用心棒じみた仕事とか、魔物を狩るとか。とりあえず力こそ正義、みたいな仕事はそれなりにある。
勿論、細かいことも考えないといけない仕事もあるが……
そういうのは、頭が回るほうに任せれば良い。

「あー……結構世話焼きっていうか……なんか細かい気遣いっぽいの得意だよね。
 んー……多分、元気にはしてると思うんだけど。」

今のところ、そういった話は入ってきていないし
変に暗くしても良くないだろうから、おざなり気味ではあるがフォローする。

「おっと、そっか。引き止めちゃったみたいで悪かったね。
 うん、お茶は歓迎するよ。
 うちは、だいたいあそこの通りの宿か、ギルドのいるからさ」

相手の言葉に、そういえば相手の仕事のことを考えてなかったな、と反省。
だいたい王都で自分がいる場所を伝える。
ちなみに、虫狩りは本当に言葉通りの仕事だったので、真実を知った時の反応はどうなるだろうか。

アルマース > 「殴って解決……!? あ、そちらの方なんだ……意外」

自分より上背も低いし、あからさまに体格や筋肉を備えているようにも見えない。
が、人は見かけによらない事例はたくさんある。
ノーマを見る目がいささか変わる。
暴力は全てを解決するよねえ……と、極端かつ若干の羨みのこもった呟きが洩れた。

「世話焼き……? んー。あたしの中では、親切ではあるイメージ。
 世話焼きなのかあ。ふうん」

ノーマの前では違う顔を見せているのかもしれないなあ、
などと思うと自然とにこにこしてしまう。
そういうのも根掘り葉掘り訊いてみたいところだけれど、
初見からがつがつするのもよろしくないので、本日は控えめにしておこう。

自分の中のいたずら心を抑えるべく、えへんと咳払いをひとつ。

「んーん。こちらこそ拍手をありがとね~。
 お茶と甘いものかなー。美味しそうな店見繕っておく。
 そいじゃまたねえ、ノーマ!」

遊歩道を抜けて、向かうは平民地区の住宅街。
鮮やかな紅い服の裾をはためかせ、足早に――

ノーマ >  
「そういう感じで良ければ、アルマの頼み事くらいは聞けるよ?」

暴力で解決、みたいな事案があるかは知らないが。
アドラーのトモダチなら力を貸してもいいかな、などと思う。

「気にしい、っていうか単なるツッコミ体質かもだけど」

色々な事情で常識やら良識やらに欠ける自分に色々言ってくれるのは助かっている。
やっぱりツッコミ体質の方が正解では……?

「あいあい、またね。よろしく、アルマ」

足早に去る相手に、ひらひらと手を振って見送り……
こちらはのんびりと散歩を再開するのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 」からノーマさんが去りました。