2024/01/24 のログ
■アウローラ > お嬢ちゃん、と言われればふっふ、と笑う
単純に生きてる年数で言えばきっと男より年上だが、長命種から見ればまだまだ小娘と言って差し支えない年齢
なんだかくすぐったくて面白くて、酒の酔いもあっておかしそうに笑っている顔はあどけなくご機嫌だ
羽織、と多少似ている白いコートは脱いで椅子の背にかけ、青いマフラーは今は外して膝の上
隣に座す男の前には、黒地に刺繍の入ったどこぞの民族風の上着とズボンにショートブーツといった服装が見て取れるだろう
旅装、といって差し支えないシンプルなものだ
「アツカン、うまい。今日みたいな寒い日にはちょうどいい
それにスクランブルエッグとは違ったこのうつくしい形状の焼いた卵!
なんだっけ、ダシマクィ? おいしくてね、もうね、わたしの気分は最高潮だよ」
注文を受けた店主は熱燗の準備をしながら、刺身の盛り合わせを準備し始めた
同じ熱燗を頼む彼の隣で、フォークでだし巻き卵をひと口で咀嚼する
優しい風味に頬を膨らませて美味しそうに頬に手をあてながら、はふ、と息を吐く
傍らには箸もあったが、どうにも扱い方が分からず断念したばかりだ
隣に座っても上背のある彼と話すなら見上げる形になる
「わたしはつい最近訪れたばかりでね、お兄さんは旅人さんかい?」
観察するような視線を受けながらもさして気にした様子もなく、ゆるい笑みのまま問いを重ねて行く
■影時 > 男も男で見た目よりも年月は重ねているが、言葉を交わす相手がそうではないという事例は――意外と多い。
何せ、人間の姿に化身した竜が雇い主となれば、他者は見た目に寄らないと気づかせてくれる。
年齢差の沙汰でマウントを取るようなことがあるとすれば、認識の相違の違いで遊びたい位でいい。
(……ふむ)
羽織と一口にはいうが、首裏にフードを縫い付けた男の仕立てはパーカーの類のようにも見えなくもない。
型式にこだわるのではなく、今暮らす土地で見るものがあれば、気軽に取り入れる意志の表れだ。
袴の裾を縛って纏めれば旅装にも出来なくもない仕立ては、先客の一張羅にも似通っている。
既に酒が入ってるからだろう。お嬢ちゃんと呼びかければご機嫌そうな雰囲気に、釣られて口元を緩め。
「この手の酒は冷えてても旨いが、こういう夜は燗をつけておくに限る。
出汁巻きのこと、だろうなァ多分。味付けは色々あるがね。ここの奴は甘い仕立てかね?」
冷やしても旨いんだぞ?と。箸ではなく、フォークで出汁巻きを食する姿に声をかける。
不慣れな者には流石に箸は使い辛いだろう。形式を重んじるような場でもない限り、それを言うのは野暮が過ぎる。
しかし、出汁巻きと聞けば味付けが色々あった筈だ。大別して甘いか、塩辛いか。
前者である場合、砂糖が手に入り易い地域だったか――否、そんな心配は要るまい。この国なら、割と手に入ろう。
「じゃァ俺が先達だな。旅人であり、冒険者、だ。ここに居つくようになって暫く経つ」
料理より先に出来た熱燗を供してもらいつつ、お通しと称して置かれる小鉢を前にする。
頂きますと手を合わせ、手酌で猪口に酒を注ぐ。
そうして持った温かい徳利を置く前に、隣席の方に注ぎ口を向けようか。呑むかい?と。
■アウローラ > 「熱いエールなんて不味いからね、冷たくても温めても美味い酒ってのは貴重だと思うのさ
そうそう、ダシマキィ、あまくてふわふわでね、酒のつまみにちょうどいい味だとも」
甘いのもしょっぱいのもあるよ、とは店主の言
どっちにしたっておいしいことに変わりはない
はいよ、と彼の前に置かれるのは熱燗の徳利と猪口、それからお通し
それを受け取ってつまむ様子を見ながら、だし巻き卵をもう一切れ、咀嚼する
「んぐ、ん…ん~! へえ、そいつは良いことを聞いた!
わたしはアウローラと言う、旅の彫金細工師なのだけどね
滞在費と旅費を稼ぐために、売れそうな店を探してるとこでねぇ
お兄さん、そういうものに心当たりはあるかい?」
軽く首を傾げながら尋ねつつ、向けられた徳利にぱぁぁ、と嬉しそうな表情を浮かべていそいそと猪口を差し出す
まだあるけど美味しいお酒は貰えると嬉しい、お返しになにかせねばならない作法があるならそれを知らないでいるのだが
口をつけて、自分のよりも熱いソレをくぃーっと飲み干した
っっはぁ~、と吐き出す息もまた美味しい、を全力体現している
店主がトン、と男の前に皿を出す
細切りの大根のつまと一緒に、マグメールで沿岸でとれる新鮮な魚を器用に捌いた赤身と白身魚とイカの刺身が数種類3切れずつのそれ
生の魚をカットしただけのそれを見て、彼の顔を見て、また生魚を見る
えっ、ほんき?という顔である
■影時 > 「処によっては、温い麦酒が珍しくない……ってのも在ったけか。
とはいえ、如何様にも呑める酒というのは、常備してても困らねぇ類だよなァ。
……どっちもあるのは有り難い。出汁巻きとか食べた時は、ビックリしたもんだ。こんなのがあったのか、なんてな?」
酒は各地を巡ると、まるで酒神の思し召しのように色々とある。その地なりの呑み方がある。
冷やす手立てがなければ自ずと温くなるが、それも踏まえ、合わせた酒肴の類も色々あっただろうか。
旅の記憶を思い返しつつ、出汁巻きの志向のニーズを満たすさまにほっと息を吐く。
置かれる品々に改めて会釈し、お通しの鉢の中身を一口。思った以上にしっかりしているのは、良い店だろう。
「アウローラね。俺は影時だ。言い辛ぇならカゲでも良い。
彫金屋、ねぇ。露店通りならこの近くにあったな。
出来と腕にもよるが、何処ぞの店に決まった数を収める類なら、……あー、商会に相談してみるのもアリか」
お近づきの一杯、という奴だ。良き遭遇を祝っての一杯を惜しむ理由は何処にもない。
名乗りを返しつつ、いい飲みっぷりを示す様を眺め遣り、ふぅむと考え込もう。
彫金については多少は腕に覚えがあるが、彼我を比べるまでもない。技量は間違いなく向こうが勝ろう。
問題は出来栄えを如何に売り込むとともに、一定の質の品をどれだけ用意できるか、等も絡むか?
飲みやすい反面、直ぐに酔っぱらいかねない酒を景気よく飲み干す様子に敢えて突っ込まない。というのも、
「おお、来た来た。醤油と山葵もあるなら此れよな」
頼んだ品がきたからだ。生魚を食べるやり方はあっても、火に焙るやら酢で締める方がまだ馴染みがある。
新鮮な魚を捌き、刺身とする風習はきっとこの地でも珍しいに相違ない。
本気本気、と悪戯っぽく笑い、小皿に醤油と山葵を注ぎ、取り分ける。
躊躇いなく一切れに調味液と薬味をつけ、ぱくり。そして酒を口に含む。――言うことは無い。これが、良いのだ。
■アウローラ > 「こんな美味い酒が飲めるってんなら、ぬるいエールはもう飲めやしないよぉ…」
徳利を手に頬擦りしながら、うっとりとした表情を作る表情は恋する乙女さながら
しかし現実は酔っ払いである
キノコや根菜、肉の天ぷらに粗塩を軽く振って、頬張る
サクサクの頃もからじゅわりと油が染みて、甘味の増した具材に染み込んでうまみが増す
揚げる、という調理法を考えた人物は偉大だとしみじみ実感でします
「んふふ、カー…カゲ、カゲだね、異国風の色男、覚えたよぉ
んで、商会かぁ…そうだねぇ、そこまでまとまった数を、ってなると、お抱えの彫金師とかいるんじゃないのかい?」
ん~、と言いながら考えつつ、袖をめくって腕につけていたそれを外し、彼にも見えるようにカウンターに置く
細いミスリルの土台に、複数の宝石が細かくカットされて嵌め込まれたアミュレットバングル
それ自体に防火、防水、防毒の守りの効果があり、装備者の活力の底上げをする術式が刻まれている
所謂HP増量とかいうタイプのやつ
デザインとしては蔦草に花模様と、普段使いも出来そうなものだ
それを見せながら「こういうのを気ままに作ってるよ」と
「ただ数がねぇ、毎度同じものってのにはならなくてぇ…、一点物ばっかになっちゃうんだよねぇ…」
こういう付与属性がいらないなら、別に加工するだけで出来上がりなのだが、デザインまでやるとなると同じものはできないのが難点
時間もかかるし集中力もいるしなぁ、と困り顔
品質に関してはそこそこな高品質というところだろうか
ぐび、と更に酒を呷りつつ、とどいた刺身に何のためらいもなく手を付ける様子にはえぇー、と真顔
しかし興味は湧くのか、そわそわちらちらと覗き込み、椅子をズッズッと寄せて、ちょっと身を乗り出す
魚を狙う猫のごとく、酔っ払いの小娘は美味しそうに頬張る男に、あ、とはしたなく口を開けて見せた
餌を強請る犬とてもう少し行儀がよいものだが、酔っ払いなので致し方ない
ひとくち、ひとくち、と強請る顔、与えられなければ、頬を膨らませるだろうけど、わめいたりはしないはず
■影時 > 「人それぞれ、だなぁその辺り。
……どうも俺が行くあたりじゃ、この酒は扱ってない処が多くてな?
だから、自ずと別の酒を試したりする。もう少し北の方だと、温めた“えぇる酒”を出してるトコもあったな」
酒が恋人か。いやいや、これはもう酔っ払いだ。
天婦羅という料理は故郷では割と新しい食べ方ではあったが、この地は源流に近いのだろう。
この地の食材を上手く工夫して仕立てたものというのは、違った味わいが楽しめるに相違ない。
横目していると、ついつい食べたくなってしまいたくのが悩ましい。
濁り酒はあるか?と問いつつ、小鉢を先に食べ終えてしまおう。
「色男とは照れるねェ。
俺が世話になっている処だと、お抱えの職工が居るな。ドワーフの。
だが、一品物なら――先方の見立て次第にもよるが、出来栄えや効用次第で買い取ってくれるかもしれん。
あとは、あれか。例えば、冒険者ギルドのカウンターに並べて貰うか?」
金工であれば覚えがあるが、ここに現物が示されていくと、素直に感嘆の声が漏れる。
片目を眇め、黒に近い暗赤の瞳でアミュレットを角度を変え、検分する。
ごくり、と酒を飲み干すのと息を呑む音が重なる。此れと同じ効果の品が店に並ぶ場合、如何ほどの値が付くか。
嵩張らないが、色々と身を護る手立てを増やしたい冒険者からすれば、喉が出る程の代物だろう。
何処ぞに腰を落ち着けて、品質を抑えて同じ品を黙々と作る――のが向かないなら、矢張り売り込みの手立てを考慮せねばなるまい。
旅人は難しい。気儘な反面、工房やら拠点を考慮しなければならない時が悩ましい。
困り顔にウームと考え込みつつ、己も酒を呷る。
「……――しょうがねえなぁ。ほれ」
そんな中、刺身に真顔になるも、興味を隠せない様子が視界の端に入る。
猫の耳や尻尾でももしついていれば、ぴこぴこ、ふらふらと揺れてそうな。そんな有様に瞼を瞬かせる。
少し考え、食べかけの一切れではなく、新しい赤身の一切れを醤油に漬ける。
山葵は出来る限り少なくつけ、開かれた向こうの口にそぅと運んでみよう。ちゃんと食べられるだろうか。
■アウローラ > 「えぇ、本当かい? そんなトコもあるんだなぁ…」
北の方からえっさほいさときたものの、そんなのあったかなぁと首をひねる
おそらくは苦みのすくないエールを温めたものなのだろう、酒の経験は彼に軍配が大きく上がるようだ
天ぷらを見る様子をみれば「たべるかい? お返し」と盛り合わせの皿を彼のほうに差し出したりもする
店主は頷いて「熱燗かい?」と尋ねる、大きな一升瓶から用意することだろう
そんな色男に作品を見て貰いながら「これでも良い値で買って貰えたこともあってねぇ」とゆるゆると笑っている
「だよねぇ、あんま商会お抱えの場を荒らしていいことないからね
わたしはどうも、腰を落ち着けて懇々と、ってのが苦手らしい
ああ、冒険者ギルドに買い取ってもらうという手もあったか、それもいいねぇ」
確かにその方がまだマシかなあと候補の一つとして考えてみる
なにせ自分は魔法使いだとわかりやすい杖を持ちながら、攻撃系の魔法は一切使えないので戦闘依頼は請けられない
商業ギルドは駄目だ、あとこは取得権益やらなんやら権利やなんやら、うるさくて細かくて売り込みを断念した過去がある
「えへへへ、やった~!」
あむっ、と口に運んでもらった刺身に喰い付く
潮やら生臭さ……は殆どない、店主の腕前なのか新鮮だからか
触感、は何とも言い難い、赤身魚の独特なもの
なによりちょっとついた調味液が、刺身によくあっている────が
「……っっっ!?」
少量だったものの、ツーン、とキた山葵のそれに大きく目を見開いて両手で口を覆う
猫耳があればピンッと限界まで立っていたし、尻尾があれば逆立って膨らんだだろう
なぁにこれぇ、と呻きながら、なんとか食べ干したが、ぐぬぬ、と眉間に眉が寄ってしわくちゃな変顔が生まれていた
いそいそと椅子ごと元の位置に戻っていった
■影時 > 「この季節なら、葡萄酒に香辛料を入れて温めて呑むのもアリだろう?
聞いた限りを思い出すなら、似たような理屈だったか、と、おぉ。有り難い。貰う貰う」
場所と地方にもよる、か。向こうの旅路と己の旅路が同じとは限らない。
故にそう言った違いが面白い。どちらが上だの何だの、とは比べない。つまらない考え方だ。
記憶するホットビールと云うべきものは、スパイスワインの類にも少し似た手法だった。
珍しい飲み方だったのだろうかな、と思っていれば、天婦羅盛り合わせの皿に目を輝かせる。
山菜の天婦羅と思われる一つを手元の皿に一つ有難く拝借し、一口。塩をまぶしてもう一口。実にサクサクだ。
「冷やでくれ。濁り酒はその方が好みだ。
……ま、初対面でどーこーとごり押すつもりは無ぇ。必要だったら紹介状でも一筆書いてやるよ。
処にもよるが、気休め程度の術を込めた指輪やお守りをギルドの受付で商っていたりもするからなあ。
これ位買えるようになったら、一流――というのは言い過ぎでも、需要はあるんじゃねェかね」
新たな酒を一杯頼みつつ、今この場で考えられる限りを声に出す。
腰を落ち着けて、という言葉を聞けば、そんな感じだよなァとしみじみ頷くのは、旅好きの性質からか。
戦うのも好きだが、物珍しい場所があると聞けば、まずは其処に行きたくなる。悪い癖だ。
何にしろ、先ずは酒と。何よりこの奇遇を嗜み、愉しみたい。
「あ。」
そして――刺身だ。新鮮な上に下処理をちゃんとしてるのだろう。悪い予感をさせるような異臭の類は無い。
火を通していない肉を食べるという抵抗感に加え、刺身のもう一つの問題は山葵だろうか。
山葵のそれ自体は如何にして手に入れたかはさておき、十分満足できる薫りがある。
それが初めてとなれば、それはさぞかしよく効くだろう。その反応に口元を押さえつつ、くつくつと笑い声を噛み殺そう。
「折角だから、こいつも飲んで口直ししてみるといい」
その上でグラスに注いでもらった、白い沈殿のある濁り酒を相手のほうに滑らせよう。
濾過されていない味わいは清酒と比べて濃厚だ。男はどちらかといえば、この類を良く好む。
■アウローラ > 「おっ、ホットワインだね、あれはすきだよ、おいしい
ワインで有名な土地で買ったものを冬の旅の合間にちょっとずつ飲んでたんだ」
あれは何年前だったかな、何十年前だったかな…一面のブドウ畑がとても綺麗だった思い出がある
天ぷらをシェアしながら、しょうゆをつけて焼いた餅に乗りを巻いたものもフォークをさして、みょーんと伸ばす
食べながら飲みながら、相談にのってくれる彼に礼を言って、素直に腕を褒められてるとわかればえへえへと嬉しそうに頬をゆるゆると緩ませた
「ありがとねぇカゲ、やさしいねえ
この国にはしばらくは滞在するつもりだから、のんびりやっていくよ」
ギルドも合うところ探さないとねぇ、なんて言いながら腕輪を嵌め直す
初山葵の独特の香りと風味に口の中の後味を気にしていたが、グラスで差し出された濁り酒を受け取る
清酒と違って白く濁って沈澱しているそれを眺めながら、へぇ~と物珍しそうに見ながら口をつける
清酒と違うのはコクの深さだろうか、確かに味わい深い、くい、と飲んで、ふはぁ、と息を吐く
「これはすごいねえ、おいしいねえ…!
カゲの故郷には、いいお酒が多いねえ、これはもういつか行かなきゃ」
東の方だよね、と大雑把な聞き方ながら、長命なエルフにとって長旅は慣れたもの
彼と同じく、面白いものがあるなら赴いて楽しみ、気に入れば滞在し、また気ままに旅に出る
森に閉じこもるよりもずっと楽しい人生だと思うのだ
うんうんと頷きながら、同じものを店主に注文する、熱燗も飲んでみたい、と手を上げて
──一夜隣り合っただけながら、旅人仲間とあって話題は尽きなかっただろう
この国の事であったり別の国のことであったり、お酒の事や食べ物のことと、話題は二転三転していって酔っ払いはお酒もご飯も美味しく摘まんでいく
酒が入ればもっと盛り上がったかもしれないし、お勧めがあればそれに手をつけたりシェアしたり
お腹がはちきれそうなくらい食べて飲んで、べろべろに酔っ払いながらも最終的には酒精を治癒魔法で全部浄化するという荒業
出来る女は二日酔いにならない、というドヤ顔のキメ台詞を言いながら、楽しい時間を過ごした後は手を振って別れて、宿屋へと帰路についたはずだ
■影時 > 「分かるか。あれは偶に飲むと美味しいよな。
しっかし、中々面白い飲み方してンのな。
酒は集めて楽しい、呑んでさらに愉しいものだが、あれもこれも置いていられないのだけが悩み処だな……」
十年前のレベルとなると、どうだろう。この地に至るまでの旅の途中であろうか。
刺身もある。天婦羅もある。酒もある。餅まであるなれば、最早隙が無い。
王侯貴族や大名好みのものまでここで求めたい、という気はない。
今更で郷愁を催す気は無くとも、知った味をまた試したい、味わいたいという気分には実にこの店は程よい。
だからか。食べ飲みしながら、こういう話もまた良く弾むのは。
嬉しげに頬が緩む様を見ればついつい、頬をつつくような手もいたずら交じりに伸ばしつつ。
「礼には及ばねェよ。折角の、とも言うかね。
喜楽にやると良い。荒事やら採取の手伝いでも欲しいなら、……のギルドに顔を出すと良い」
そこの受付で名を出せば、繋がるだろう――と。現在、籍を置いている冒険者ギルドの名と場所を声に出す。
冒険者ギルドも色々だ。肌に合う合わないというのは、それこそ話を聞いてみないと分かりはしない。
物怖じしないかもしれないにしても、知った顔があるというのは、それだけで安堵に繋がる。
そう気配りしながら、新たに薦めるのは濾過されていない、白く濁った酒だ。
材料と醸造の過程は同じだが、工程を一つ置かないだけで味わいがまたがらりと変わる。
「だーろう?清酒も良いが、俺はどっちかと云やぁ濁り酒の方が好みなのさ。
然り。東の、さらに東の方よ」
然り然り、と。引き戻したグラスを回し、己も口を付ける。
扱っているかどうかは少し不安だったが、僥倖だ。故郷でよく飲みつけた味わいもこの類だ。
馴染みがあるだけに、余計にしっくりくる。配分とバランスを考えつつ、次の品を木札の品書きに求めよう。
――そうしながら、食べ飲みの傍らの話題は尽きない。
なぞった冒険の一端や旅の記憶やらを出しつつ、酒や食事を分け合い、シェアして。
満腹になっても、逆に男は然程酔いを見せないまま、宣われたキメ台詞には大笑いしてみせただろう。
支払いを終えて店を出た後は、違う道。また会うなら、同じくらいに楽しくなるかもしれない、とも思いつつ――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアウローラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区「冒険者ギルド」」にバカラさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区「冒険者ギルド」」からバカラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2「大通り」」にバカラさんが現れました。
■バカラ > 冷え込む大通りをプラプラと歩いている。
靴の裏からも伝わってくる冷たさに小さく体を震わせると、途中の出店で手に入れた湯気立つ蒸かしたまんじゅうをがぶり。
中は甘みのつよいたれに絡められた柔らかい肉。
むぐむぐと口を動かし咀嚼をすればじゅわっと広がる肉汁に味の濃いたれが絡み合い舌を刺激してくる。
喉を上下に揺らしの混めば冷えた体を内から温めるような気さえする。
お行儀悪くまんじゅうをぱくつきながら何か面白い出物が無いかと露店や店先をウィンドーショッピングしている。
■バカラ > 気付けば、手に持っていた饅頭は既になく、僅かに汚れた指先、ぺろっと舐めとって綺麗にしてからハンカチで拭い一息。
次は何を食べてみるかと鼻を擽る匂いに誘われながら人ごみの中を進んでいく。
ぶつかりそうになるが、男は最小限の足運びで避け、人込みの間をすり抜け、串焼きの店に向かい進んでいく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2「大通り」」からバカラさんが去りました。