2024/01/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシロナさんが現れました。
■シロナ > 冬も良い感じに過ぎてきている、新年も空けたうえで、深々と、寒くなっている。
シロナは、人竜であり、普通の人間よりも色々と強いものだけれども、寒くなってきたら、必要なものがある。
「偶には、アタシ用のコートとかも必要、だね。」
シロナ自身、いつも小遣いは妹とか、妹とか、妹とか。
可愛らしい彼女達の服とか、小物とかを買ったりしている。
それを、本当に珍しくもあるけれど、自分用の防寒具を買わないと、と言う気になった。
叔母のラファルとか、竜胆は違うみたいだ。ラファルは、基本的に氷点下の空をビュンビュン飛んでいて、未だに半裸。
竜胆は、魔法を使って自分の周囲を暖かな場所にしている。
そう言った技能の一切ないシロナは、矢張り暖かな服を買う必要がある。
「冒険者用の服にも、暖かいのが良いなぁ。」
自分の家は商家なので、其処で買えば、と思うのだけど……。
矢張り、自分の家ではなく外で買いたい、幾つか店を回って良いものがあれば。
なければ自分の家で、と言うプランで良いかな。
そんな風に辺りを付けてから、シロナは何時もは足を運ばない、服屋へ。
冒険者用の御用達の場所、を探し始める。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシャーニィさんが現れました。
■シャーニィ >
最近、カイモノという概念はなんとか学習できたので、さて次は何を買うか、という問題につきあたる。
手始めは食べ物というわかりやすい方面でカイモノをしていたが、それだけではきっと駄目だろう。
そこで、ふと気づく。
一応冒険者という肩書を持っているのだが、どうにも自分の格好はそれっぽくないのではないか。
……といっても、この体自体が半分幻のような揺蕩うものなので、都合よく見えて誰も気づいていないかもしれない。
こうなるともう、自分では判断がつかない。
それでも、テイサイ、というものは大事だと学ばせてもらったのでフクヤ、というものに赴いてみようと考えた。
のだが。
「うん。さっぱりわからん」
開始からしばしして。もう投げそうであった。
そもそも、どうすればそれっぽいのか、という基礎知識がすっぽり抜けているのだ。
服屋のある区画で途方に暮れていた。
■シロナ > 縁は奇なり、と言う言葉が東方にあるという、叔母のラファルの師匠で、色々教えてくれる東洋人に教えて貰ったことがある。
シロナの母親を見て居れば、リスの嫁とかを見れば、それを強く理解できる。
それは兎も角、シロナもそれなりに色々とあるのだ。
街を、服屋を探して歩いている所に、目の前に一つの少女の影。
友人の姿を見つけて、彼女がきょろきょろとしている所、そして何かを諦めた様子が見て取れた。
「へろーシャーニィ?
どうしたの?」
何時ものように気軽な挨拶、にぱっと、桜色の唇を吊り上げて、笑って見せる。
彼女は色々と楽しい子だし、それに、世間知らずすぎて守ってあげたくもなる。
一緒に居るのは楽しいので、まずは彼女の用事を聞いてみようと思った。
自分の用事は何時でも何とでもなるし。
それに、良い感じに思う友人が困っているのを見過ごすのは、シロナの性格にはない。
邪竜とは、とか、淫魔とは、とか言われるかもだけど。
其処は、人間部分の感覚ですよと、行ってしまおう。
ひらひらと、手を振りながら、近づいた。
■シャーニィ >
「……む、シロナか」
思考を放棄して、さてどうしたものか、と混沌をまとう少女は自らを混沌と成しかけていた、が。
知己の声がかかったことで我に返る。
一瞬、安堵したような顔をしかけ……表情を引き締める。
邪神たるもの、威厳は大事である。もはや今更な気もするが。
「はろー。
ああいや、どういったものか。
シロナに吾がどう見えているかはわからぬが……
装い――特に冒険者、というものの装いを学ばねばならぬかと思ってな。」
元々の性質が混沌であるので、人によって見た目が変わるカノジョ。
ゆえに、服装すら都合よく見えていることもある。
そのため、あまり拘っていなかったのだが……万一の時に面倒だろうか、と思うようになった。
最近の学習効果である。
ちなみに、だからといって着ていないわけではない。
実体としては非常に簡素な貫頭衣状の服をまとっているだけである。
「とはいったものの、だ。
カイモノの仕方は覚えたが、服の何を選ぶべきか、はさっぱりでな。」
恥を晒すようだが、と相手に応える。
まあすでに、恥やら秘密やらを晒しまくった相手なのでもう気にしないことにした。
「……で、そういうシロナは何を?」
しかし、自分の恥を晒してばかりなのもなんなので、相手にも聞いてみる。
■シロナ > 此方に声掛けに反応してくれたようだ、元邪神……じゃなかった邪神の欠片、と言う彼女。
それに関しては真実なのだろう、実際に、シロナの竜眼にもそんな風に映る。
「貫頭衣の、可愛らしい女の子、だよ。
竜の目、舐めちゃぁ、イケナイよぅ?」
シロナの目は、真贋を見抜く竜の目。更に、淫魔として覚醒したので、魔力に通じるものに対する鑑定眼はさらに上がる。
今現状のシャーニィであれば、そのごまかしを抜いて本当の姿を見ていられる。
それを、公表する気はないし、どんな姿でも、彼女は彼女だ、と言い切るだけのシロナである。
「なるほど、ね。
丁度良かった、アタシもそろそろ、冒険するためのと、学校での冬用の服を買おうと思ってたの。
……今から買うのは遅いんじゃね、と言うのはナシね?
実際遅いんだけど。」
買い物初心者の彼女、ツッコミは出来ないのだろう事を知りつつ先回りして、言っておく。
基本的には、その状態になる前に買い物を済ませておくのが冒険者なのだ、と。
奇しくも、同じ場所に買い物に行くのだと理解したので。
そっと手を差し出す。
「ほいじゃ、一緒に、いこっか?
アタシが一緒に、買う物をみたりしてあげるよ?
ぐふふ。」
可愛い女の子を着飾るのは、シロナの趣味のうち一つ。
下心がどろりともれます。
害意はないが、善意ではあるが、それでも、ぐふふ、なのである。
■シャーニィ > 「そうか。龍眼の真偽を見分ける力、か。
まあ、吾も別に隠しているわけではないのだが、な。」
出自が出自ゆえ、勝手に混沌がつきまとう。
お陰でどうも聞いていると自分の見え方が人によって異なるらしいことがわかっている。
とはいえ、パッシヴ効果は自分ではどうにもならない。
ただ今回に関して言えば、目の前の相手には普通に見えているようなのである意味好都合ではありそうだ。
「ん、そうか。シロナもカイモノか。
……ふむ、遅いのか。シロナにしては、怠惰なことだな。
その手のことは手が早いと思ったが」
相手も買い物、しかも服、となれば実に都合がいい。
便乗させてもらえればありがたいな、と思う。
ちなみに、買い物にも疎いが「冬には冬服」という概念がそもそもないので、そこに思い至ることがない。
そのうえ、今着ている寒そうな貫頭衣だろうと寒さを感じることがないので不自由しないから尚更なのだった。
……そういう意味では、素の姿は周りからは奇異に見えるかもしれない。
「う、うむ。
共に行こうか。」
シロナの申し出にありがたく乗る、のだが……
悪意は間違いなく感じないのだが、邪気……とも違うなにか奇妙な気配だけは感じて、じゃしんはわずかにどうようした。
■シロナ > 「でも、その力はいいよね。
だって、変なのに襲われなくなるのだろうし。」
姿が一定ではないというのは、誰かに逆恨みされても見つかりにくい。
冒険者ギルドは、基本冒険者のギルドカードで判断するので、問題は無いとおもうのだ。
彼女は色々と隙があるから、彼女のパッシブスキルは彼女を確かに守って居るのだ。
「そう言う事。
ああ、服とか鎧とかは……ほら、アタシ、人竜でしょう?
物理的な防御力は、鎧が無くても、普通の鎧以上に強いし、魔法防御力は淫魔の力があるし、ね?
身を護る事に関しては、アタシ、鈍くなりがちなのよ。
最近普通に寒くなって来たから、ね。」
彼女と共に冒険に出たときはレザーアーマー、それこそ、前線に出る戦士にしては、軽装なのだ。
その辺りは、シャーニィの服装と同じ感覚だった、と言う事なのだ。
「あ、シャーニィ、予算は幾ら?ご飯とかに使うお金を抜いて。
何処までお金を使えるのかな?」
こう、素に戻って問いかける。
彼女の予算次第では、冒険者の宿での売店、冒険者の御用達のお店、トゥルネソル商会。
様々な店から、選べる。
魔法の装備とかも含めて、の話に。
■シャーニィ >
「そういうものか?
まあ、今のところ妙な連中に会うことは……うん、なかった、な?」
シロナも含め、個性的なメンツにはあっているのだが……
ただ言いたいのはそういうのではないだろうし、そもそもそれを言ってしまうとイロイロとよくない、と思ったので口にはしない。
「なるほど。経緯は違えど、吾と似たようなものか。
必要性を感じなければ、求めもしないわけだ。
強い、というのもヒトの世では考えものなのかもしれぬな」
邪神が言うことでもない気はする。
ただ、強者が異端となる、というのは持っていていい感覚かもしれない、とちょっと思うのであった。
「予算、か?
この間見せたものから、さほど減ってはおらぬな。」
前に不用意に街なかで見せたそこそこの大金。
それ以降、買い物を覚えたとは言っても、別にそんなに使っていないので大半は残っていた。
■シロナ > 「そういうもの。
人は、外れすぎると、敵意を向けてくる。
敵意を向けきれなくなって、初めて認めるような存在、だから。」
敵意を優先で考えると、強いと排除しに来る、排除しきれなくなって初めて。
逆に善意で考えるならば、人の感謝を沢山受ける、そして、感謝が極まれば。
どのみち、強いという、それだけで、まずは排斥の対象になるモノだ、と、シロナは思っている。
だから、彼女には、ちゃんと伝えておこう。
力を取り戻していくのならば、其の上で、国に住まうなら、と。
「そーそー。
なので、アタシも久しぶりに衣替え、なのです。」
邪神ならば、彼女ならばいいようにできるだろうと思う。
まあ、それは其れとして、と、人に溶け込むのは、良い事だよ、と。
美味しいもの食べられるし。
「それなら、うん、御用達の店で、それなりに良い物見繕えるね。
じゃあ、そこにしようか。」
アタシもそこに行く積りだったし、と。
案内するように、歩き始めた。
元々、この周囲にある店だし、さほど遠くないので到着する。
基本的に、防具を専門にしていて、様々な冒険者が使う店。
魔法の鎧とか、服とかも合わせて、沢山の品ぞろえはある。
品物も確かだが、その分、割高な、お店に到着する。
「さて、シャーニィは、どんな装備にしたいの?
動きやすい、とか、魔法を強くしたい、とか。」
彼女の意向を、まず確認。
■シャーニィ >
「敵意、か。
ははは。吾に敵意を向けるのは、至極当然の話ではあるがな?
とはいえ、それを一々滅ぼすような真似を今はする気もせぬし……面倒は避けるに限るか」
邪神とは思えない発現である。
それもそのはず。
かつて、目の前の相手には伝えたが「滅ぼすべき相手」を失った自分は、負の感情を向ける先を失っていた。
――己を滅ぼしたものに報いを
そのために産まれたモノは、目標を変えることすらできなかった。
それなら、どうにかこの世で生きねばならないのだ。
「値については理解をしたが、店は分からぬからな。
シロナに任せられればありがたい。
……やれやれ、頼ってばかりだな」
知らないから仕方ないとはいえ、おんぶにだっこである。
いつかなにかの形で礼でもしなければいけないか……
一瞬思いつくこともあったが、それは多分違うのだろう、と封をする。
さて、そんな中でお店まで到達。
高級店と一般店の区別もいまいちつかないカノジョは、そんなものかと店に入る、が。
「……多いな?」
品揃えに目を丸くする。
おそらくこれだけの品があるということはいい店なのには違いない。
だが、本当に多い。目移り、というより、もう何を選んで良いのか全くわからない。
思わず、拾われてきた子犬みたいになりそうになる。
そこへ、シロナの質問が飛んでくる。救いの手であった。
「そう、だな。動きやすいものが第一だな。
魔法については、あまり強くしてもな……」
欠片とはいえ、邪神である。出力はそれなりのもの。
下手に強力にしてしまえばどうなるか、自分でもわからない。
うっかりトンデモ威力にしてしまっては目も当てられない。
……本来なら、そんなことも気にしないのだろうけれど。
■シロナ > 「そだね~。そして、それが一番面倒避けるのに役に立ってるんだ。」
彼女は自分の力の使い道が判らない、使うべき物がもうないという事を聞いている。
力は、浸かっていかなければいつかは暴走する、溜めて置いてしまうのは、爆弾を育てるようなものだ。
だから、自分が知り得たというのなら、その知り得た物の義務として、彼女がこの国で生活する一助を。
年がら年中一緒に居る訳ではないけれど、彼女が居る時は、頼ってくれる時は、何時でも力を貸そうと思う。
「アッは☆
知らないんだもの、仕方ないじゃん?
慣れて行けば、一人で買い物もできるようになるし。
そうすれば、シャーニィ完全体、でしょ?」
邪神だから、人間の世間を知らないのは仕方が無い。
彼女が知ろうと、歩み寄ろうとしているなら、手伝うのが先達と言う物だ。
共に、魔の欠片を持つ物だし、共感できるところも、多いから。
きにすんなし、とにっこり笑ってサムズアップ。
お店のランク的には、中堅処、詰まり普通。
冒険者用の道具と言うのは、案外高いものだ、武器や防具もまたそうなる。
「そりゃ、色々な冒険者が居るから。ね。
多く無ければ、需要に応えられないよ。
でも、これでも、大きさ的には並みだし、もっと多い所は沢山あるよ。」
その辺りは商家の娘だ、この位は判っている。
自分の知っている中で、彼女の予算と品質のバランスが良い所を選んでいる。
シャーニィの手を引いて、優しく握って見せて。
「動きやすさ、か……。
確か、シャーニィは魔法が得意で、格闘もそれなり、だったね。
それなら、軽めの服とかが良いかな。
今着ている貫頭衣に近いような物。
それで、魔力の増幅が要らないなら。
余剰魔力を使って、防御力を増すような服、がいいかな。」
採算度外視で言うなら、魔法のかかった服だろう。
使用者の魔力で強化される魔法の服、魔法使い系御用達の装備。
良いものがあるが、お値段は……ゴブリン退治を10年しても届かないようなお値打ちもの。
この店で言う最高級品だ。
その廉価版で、防御の魔法をエンチャントされている服とか。
金属の糸を縫い込んで作った服などもあるが、これもそれなりに高いのだ。
これがいいかな。あれがいいかな、とフリフリの魔法少女みたいな可愛らしい服を、シャーニィに持ってくる。
可愛い子を可愛く着飾るシロナの悪癖が。
■シャーニィ >
「……まあ、知らぬなら学ばねばというのはそうなのだが。
それでも借りは借りだ。いずれ何かの形で返さねば、と思っている。」
妙に律儀なのは、生来のものなのか、それとも今の気質なのか。
はたまた、それ以外の何かが要因だろうか。
ともあれ、今は学びのときなのは間違いない。
なのだが
「こ、これでまだ並、なのか……ううむ。
恐るべし……」
何が恐ろしいのかはよくわからないが、ともあれ何らかの戦慄を抱いたのは間違いなく。
これ以上、となるともはや想像もできなかった。
そんなカノジョは、大人しく手を握られて引っ張られていく。
「う、うむ。わからぬが、なにかそんな感じで、だな……」
仔細に考えるシロナの様子に、わけもわからず賛同する。
軽い、今の服に近い、ということだけは理解したので多分大丈夫だろう、とふんだのだ。
まあ、シロナのことだから任せても大丈夫だろう、という信頼もある。
「ん、む?
な、なにか色々ないか?」
そうして選ばれた精鋭たちを前に、少々たじろぐ。
フリフリとか、魔法少女っぽい、という辺りについては明るくないのでよくわかっていない。
ただ、なにか思ったより色々出てきたのに驚いたのだ。
「ええ、と……これを……着るのか?
む、むむ」
一通りの説明を受けたは良いが、ちょっと困惑する。
そもそも貫頭衣だったのは、着るのが楽だったからだ。
なにしろ頭からかぶれば良いのだし
■シロナ > 「もう、そんなに気にしなくても、ね?
余りそんな風にすると、悪い人に騙されたりしちゃうゾ☆」
彼女の律義に、ノンノンと、指を振って言って見せる。
だって、それならその恩を盾に、肉体関係を迫る、と言うのは、この国ではよくある話だ。
だから、程々に、気にする程度にした方が良いの、と。
「そうだよ?」
パット見れば、沢山の服があるのは恐ろしいだろうと思うのだろう。
服と言うのは何時も何時も増えていく物だ、デザインにしろ、効果にしろ。
様々な服は、新しくできたものが、増えて行くのだろう。
それが店に並ぶのだから、並の場所でも100着とか500着とか、普通にあるモノだ。
「うんうん。
了解、了解、だよ。」
様々な服装、彼女に持ってきている服を身て、不思議そうな彼女に笑って見せる。
にまぁ、とする笑いは、邪悪な邪竜そのもの。
以前の邪神様の笑顔に似通っているのかもしれない
「色々あるよ?
だって、服だって洗ったりする必要あるし。
状況に合わせて着替えなければいけないし?
だから、普段使い、冒険用、デート用。」
そう言う意味で。
冒険用の服は、金属の糸で編まれた防御力に長けた強めの物。
普段使いは、フリルのある、黒を基調としたゴシックドレスのもの。
デート用のそれは、白を基調としている、可愛らしいドレス。
あと、魔力を吸って防御力にする、高級な魔法のローブセットも合わせてみせる。
様々な状況に応じて着替えるのは大事だよ、と。
真顔でまじめに話しているが。
ドレス系は立派にシロナの趣味全力全壊だ。
■シャーニィ >
「いや、いくら吾が人の世を知らぬ物知らずとはいえ、どいつもこいつもと約定はせぬ。
世話になっているシロナだからこそ、であってだな……いや、まあ。うん。
気にするな、というなら。」
言うだけ言ってから、ちょっとなんか気恥ずかしいというか。
というわけで、なんだか曖昧に誤魔化して終わる。
「ふ、む」
圧倒されてはいたが、当然のような顔をされると少しだけ冷静に成る。
服など、要は体を隠せばよかろう、みたいな精神だったがどうにもヒトにとっては違うわけだ。
用途も意図も色々そこには含まれている。
と、なれば数が多くなるのも至極当然、ではある……のだが。
「……う、うん?
シロナ、笑いが……なにか……」
色々な服を持ってきたシロナは邪悪な笑みを浮かべていた。
そういえば、記憶の片隅に残っている邪竜などはこんな笑みを時折浮かべてはいなかっただろうか。
しかし、悪意が感じられるか、といえばそうではない。
この落差がどうにも消化しきれず、困惑してしまう。
「ふ、ふむ、なるほど。用途をわける、のは……理解できる、が。
デート用……? いや、吾は……」
必要ない。そういいかけて、謎の圧を感じた。
よくわからないが、これはさからってはいけないのではないか?
邪神は戦慄した。
「う、む、む。で、ええと、これを……着る……?」
フリフリのドレスを前に、困惑する。
なんだか色々とゴテゴテついているのはともかく、どう着れば良いのだろう、と。
■シロナ > 「あはは、シャーニィ。可愛い。」
こう、話をしている間に、どんどんどんどん口籠る彼女。
曖昧にしようとしている彼女、可愛らしくて、嬉しくて目を細めてほんのりと笑う。
こう、抱き締めて、頭をなでなでしたくなってしまうのだ。
なでなでしたいな、と妹を見るような目で見守るのだ。
服の理由に関しては理解が出来たようだ。
確かに、体を隠せればいいのだというのは有るのだけども。
それ以外に、色々と便利になるのだ。
彼女は頭が良いので、直ぐにわかってくれるだろう。
「なーに?」
にっこり、にこにこ、にこーん。
背中に邪竜オーラがもわわわーん。
可愛い女の子に、可愛い服を着せるので、思わず零れてしまって居るのかもしれない。
邪神様、困惑。 その前で、邪竜、にまにまーり。
カオスが過ぎる。
「今直ぐに使わなくても、必要になる時があるでしょ?
それに、必要になった時に判らない、だと困るし?
今のうちに、着られるように、判るように、成っておかないと。」
でーと、してほしいなぁ?なんて、首を傾いでおねだり。
きゃるーんと、紅いお目目をぱちくり。
「これは、こういう風に着るんだよ。
取り合えず、試着室にいこっか。」
彼女の好みの貫頭衣タイプの服も又あるのだけど。
色々な服の着方を教えるから、と、試着室へと。
■シャーニィ > 「む、ぐ。吾の威厳が……」
可愛い、言われてしまえばぐぬぬ、となる。
その時点でもう威厳とか言えるような姿ではない。
そも、真に邪神の状態であればともかくハンパな上に少女姿であれば元々威厳などあるはずが……
それはそれとして。
「……い、いや、なんでも」
邪悪な笑みを浮かべる人竜の娘に結局気圧される邪神。
これが、血で血を洗う戦闘状態、であればこうもならなかったであろうが。
今の戦場は……服飾店。
そもそも地の利もなにもあったものではないので、最初から敗北しているのであった。
「む、う……必要な時、か……む、ぅ……
う、ん?シロナとか?」
まあそういうことなら、まあありなのだろうか、と圧も含めて納得してしまう。
それこそ、愛とかなんとかはいまいちまだわからないが、仲を深めるという意味ではデートはあり、ではないだろうか。
「う、うむ、服も色々あるのだな……
頼んだ」
かつての自分は、といえば。
そもそも邪神に服など不要、というわけでもないのだが。
魔力で編んでいたので、着付けとか考える必要がなかったのだ。
そういうわけで、大人しく試着室へと連行されていくのであった。
■シロナ > 「あはは、かーわーいーいー。」
威厳とかは、今現状はどこかに旅に出ていると思われる。
ぐぬぬ、と言う表所が可愛らしくてもう、愛おしい、撫で繰りまわしたい。
それに、人竜なので、今現状のシャーニィの圧力に屈することは無いのだった。
因みに。
色々出している者の、彼女が嫌だというならそれは外すつもりはある。
服を着るのは彼女なのだから、彼女が選択する必要があるのだ。
服飾店は、ホームになるので。
そもそも、勝ち負けとかそんな考えはしてなかったりするのだ。
「そだよ?
他の人とデートするための服を提案する程、聖人してるわけじゃないわ。
シャーニィとデートするとき、貴女に着て欲しいから。」
可愛い服を着て歩く女の子と共に歩くのは、とても、とてもいい気分だ。
それに、彼女も可愛い服を着る理由に、目覚めて欲しい所もある。
可愛いは正義、ちょっとした事くらいなら、可愛い女の子なら、許されるのだっ。
「この服は、こう言う風に、着るのよ。」
試着室に移動すれば、彼女に服の着方を説明する。
一枚一枚下着から、洋服のボタンや、干物縛り方を。
もっと、普通に着やすい服などを教えて見せようか。
と言うか、目の前で自分で同じように着てみせて。
■シャーニィ >
「……」
もはや、何を言ってもしょうがない、と諦めの心境である。
とはいっても不思議と不快感はない。
随分と世俗に染まってしまったのだろうか、と思ったりしないでもないが。
これはこれで、今の生き方にはあっているのだろうか、と思う。
「ふ、む……打算込み、というわけか。
いつもながら、あからさまなのだな。うむ、まったくシロナらしいな。
よい。様々に得心もいった。
ならば、それに報いるくらいはしてもよいな。」
むしろ自分のため、と言われれば逆に清々しいものがある。
そういうことなら、色々と遠慮もしなくて良い、とも言える。
それに、そういうあからさまさは好ましい。
それにシロナが言う通り、選択肢はあって悪いものでも多分ないだろう。
それに、であれば。デートとやらも、してもよいか、と思う。
まあそれも、まずは服が着れなければ意味はないのだが。
そんなわけで試着室。
「ふ、む……?
そこを、そう……うむ?
ふむ……留め具が、そこに?
うむ、むむむ……」
仔細に実演してくれるのを一生懸命に見て、真似をしてみる。
見るのとやるのではだいぶ違うので、苦戦しつつもなんとか真似をしてみたりする。
どうにかこうにか、形くらいは整うであろうか。
■シロナ > 彼女が不意に黙ってしまった。何で黙ってしまったのだろうと思うのだけども。
さて。そこは聞かない方が良いだろう、そう思ったから、今は何も言わずにすることにした。
何となく、彼女は怒ったりしているわけでは無い、と言うのは理解が出来たから。
「そりゃね?
だって、理由の無い親切程、それが、知らない相手からであるなら、判らないし怖いじゃん?
正直、アタシとしては、もっと仲良くなりたいし。
アタシを理解してもらえるなら。打算抜きでもいいんだけどさ。
シャーニィに、そう思ってもらえる関係かどうか、だし。」
自分としては、と思うけど、彼女がどう捉えて、どう思うかが大事なのだ。
だからこそ、欲望も含めてストレートに、しかし、下品にならない程度に。
色々考えてるんですわ?なんて、にやり、と笑って見せるのだった。
「うんうん。
ここは、こう、ね。
……もう少し、簡素な服から、少しずつ学んでいった方が良いかも。」
まずは、軽く着られる系の服。
ワンピースとか、そんな風なドレスから始めて。
少しずつ難しいものにした方が良いのではないだろうか。
お揃いのフリフリドレス状態、でも、彼女の方が着るのに手間がかかっていて。
なんとかかんとか、と言う様子も。
それなら、一寸待っててと。
似た性能で、もう少し着やすい、胸元でボタンを留めるだけ、とか。
そんな感じの服を幾つか選んで戻ってくる。
冒険者用の服に関しては、普通に脱ぎ着やすいものにしてるので、大丈夫だろう。
ローブと、マントだし。
■シャーニィ >
「そうか……確かに、まあ理解は大事だな。
最初の印象と話してみての印象が変わる、といった覚えもある。
が、まあ……いい加減、シロナのことはそこそこはわかってきた……と、思う。」
体験談である。
微妙にトーンが落ちるのは、今こうしているときでもシロナの評価、というより人物把握が少しずつ変化しているからだ。
……概ねは、ズレていない、と思うのだが。
少なくとも、見知らぬ警戒スべき人物ではない。
いまや、既知の友人であり、信頼できる相手、である。
欲望に忠実、というか隠そうとしないのも好感が持てる。
かつては邪悪、と称された自分と比べれば可愛いものである。
「う、ぐ……い、いや、だいじょ……
む、ぅ」
もう少し簡単な服から、という気遣い。
そこはなんとなく、プライド的に気になるところで遠慮しようとするが、相手が手早く用意してきてしまう。
……好意には甘えるが、服の着方、くらいマスターしてやる、と心に誓うのであった。
「いや、しかし……色々な服があるのだな」
素直に着やすい服を受け取って、試してみることにする。
ところで、服に色々ビラビラとしたものが多いがこの店の傾向だろうか?とふと首を傾げるが、特に口にはしなかった。
■シロナ > 「そこー。自信無くさないでぇ!」
なんでそんな風になるかなぁ。
一寸待ってくださいよ、と言わんばかりに剥れた。
もう少し、自信満々に、言っても良いのよ?違ったら否定するだけだし、と。
邪悪化で言うならば、小悪魔と言って良いと思う、と言うか、そっちに思われたいなーとかはある。
別に意識してのムーブではない、それは寧ろ姉の領分だし。
今ここに居ない姉の事を思い出しつつ、まあそれはそれ、と思考を逸らす。
「大事なのは、使えるかどうか、でしょ?」
無理して買ってもも良いけれど、使えなければ、結局は肥やしになる。
使われないままに放置されてしまう。
彼女のプライドもまた大事なのだけど。
それに、変な着方をして、途中で脱げるとか、無いわけでもないのだ。
「そりゃね、専門店、だし。
色々な種族、色々な需要、それらを鑑みると、沢山になるのよ。
同じ効果でも違う服、と言うのもいっぱいあるし。」
脱衣所から頭をだせばわかる事だけど。
ひらひらぴらぴら可愛らしい服を選んで取っているシロナが其処に居る。
多いのは確かだが、それを選んで持ってきている、が正解である。
■シャーニィ >
「む、いや。自信がない訳では無いがな。細やかな部分は異なるやもしれぬし……
だがまあ、信のおける好ましい者である、ということはもう変わらぬであろう。」
剥れる相手に、いや待ってほしい、とばかりに応える。
完璧主義、というわけではないが、もしや……?ということもあるかも、とつい思ってしまってのこと。
どちらかというと、無から始まった分の慎重さの発露であろうか。
とはいえ、気分を害したというほどではないかもしれないが、相手が剥れるのであれば正直に今の所感を述べるのであった。
なるほど、こういうところで剥れたりするのだな、という新たな感想はしまっておいて、だ。
「それは、そうだが……いや、しかし学ぶものは学ぶべきだと……」
合理な生き物なので、相手の言い分もよく分かる。
とはいえ、ハンパに感情とプライドを持ち合わせてしまったので、ちょっと譲れないものもあったり。
でも、理もわかるので、ちょっと板挟み。
「なるほどな。
それもそうか。獣人やらなにやら、形の違いもそれなりにあるか。
うん、道理だな。」
そういう理屈はシンプルにわかりやすく、飲み込みやすい。
ちなみに、信頼したまま受け取っているので服のチョイスが偏っていることには気づかない。
渡されたものがあれば、わざわざ他を見る必要もないし。
そして
「……む。着やすい……」
新たな服は、着やすかった。
なんとはなしに、悔しかったが事実には勝てなかった。
■シロナ > 「もう、それなら、許してあげる。」
ぷす、と息を吐き出して、しょうがないにゃぁ、と頷いて見せる。
彼女の正直な感想を貰ったので、満足したというのが正しいか。
シロナはこれでも、ちょろいのかもしれない、これでも、ではなくちょろいのだろう。
「学ぶのは大事だけど、順序と言う物があるよ。
基礎を覚えて、その次に応用。
最初から、飛ばして覚えられるものはないよ。」
彼女だって、覚えがあるはずだ。
魔法が最初から使えたとしても、年月が経てば。色々な使い方を新たに覚える。
学びの重要を理解しているからこそ、だ。
「と言う事で、追加。
同じぐらいのお値段、同じぐらいの効果で、着やすい服。」
これもこれも。
気に入ったのにしてね、と。
どれも同じ効果なので、気に入ったのにすればいいよ、と。
「アタシも隣で、服をちょっとチョイスしてるねー。」
彼女が色々と選んでいる間に。
自分も冬用の暖かなズボンに上着と、コートを選ぶことにする。
頑丈なものを選ぶのは、基本自分がドラゴンでパワーが強いから、動いても破れないように。
「あと。」
にしし、と笑いながら。
プレゼントとして、最初に見つけた物を買う事にする。
装備者の魔力を防御力に転嫁する、ローブとフード付きマント。
シャーニィの魔力ならば、普通に鎧が要らないぐらいに強くなるだろう。
魔力での防御力になるから、魔法の防御力も高くなる。
魔力を使い続けるので、冒険者には敬遠されがちで欠陥品とされるが。
邪神の欠片であり、魔力が無尽蔵の彼女ならば、最高の防具だろう。
彼女の資金では買えないし、シロナは、自分の小遣いから出して、買うのだった。
■シャーニィ >
「納得してもらえたなら、よかった。」
満足げな相手の様子に、こちらも満足する。
こんな些細なことでも、心象というのは変わるものなのだな、と変な感慨を抱きながら。
これだから、ヒトの世の有様というのは面白くもある。
昔は、上から下への目線でしかなかったのだから。
「う、む……わ、わかった。わかったから。
む、むむむ……」
お説教、ではないが理を諭されて、ぐぬぅとなる。
理屈はわかるのだ。ただこう、邪神としては見栄を張りたい……というのか。
ともあれ、当たり前のように行われていることくらいやっておきたい、という気持ちもあるのだ。
……友人にいいところを見せたい、というところほんの僅かにあるかもしれないが。
「ああ、すまないな。
シロナの買い物もあるのだし、行ってきてくれ。
吾は、これを……うむ、これを……」
そうやって送り出したシャーニィの前に広がるのは、様々な衣服。
趣味に沿っているので、ある意味の統一性は取れているのだが、それにしてもパターンが有る。
どれが、いいのやら……
「これか? むう、これか?
いや、これか……?」
ためつすがめつしながら、考える。
といっても、センスも何もあったものではないので何が良いのかわからない。
……結局、昔なじみのカラーである黒のドレスをまずは選び出す。
魔力で編んでいた頃の衣服は、概ねこんな感じの色をしていた、ような気がする。
次いで、対照的な色となる白のドレス。いっそ清々しいほど異なるもの、というのもありだろう、という雑な選択。
つまるところ、最初にシロナが選んだのと似たような路線の服を選び出すのであった。
「……さて」
そうしてシロナの戻りを待つ。
■シロナ > 「なにが、どうしたのん?」
むむむ、と唸っている様子、可愛いのだ、こう、見得を張ろうとする彼女。
女の子が、知らないことを知っているようにしている姿がもう、可愛い。
彼女の様子には、本当に妹を見る目が出て来てしまう。
「うーん、アタシの方はどうしようかな、と。」
自分の分の服に関しては、色々ある。
魔獣の革で作られている強い服に、防寒の為の怪我しっかり組み込まれて居る物にする。
それと同じようなコートにしよう。茶色一色になっているけど、シロナは気にしない。
人には、可愛いを薦めるものの、自分は地味なのである。
可愛いは自分じゃないと判っているから。
暫くの時間を持って、自分の買い物を済ませて戻ってくる。
「シャーニィ、楽しんでるー?」
服装を見つけて決めて、買ってきた少女。
いまだに試着室から出て来ていないシャーニィに声を掛ける。
まだ時間がかかるなら、追加でも探して持ってきちゃおうかなぁ。
例えば、アクセサリーとか。
「アクセサリー……シャーニィに……。
在りだ。」
可愛いリボンとか、指輪とかはいきなりは困るだろうが、イヤリングとか。
良いかも、良いかも。
シロナの暴走が、始まりそうな気配。
■シャーニィ >
「い、いや、なんでもない」
なんだか見透かされているような目だ。この懊悩に気づかれているのだろうか。
いや、龍眼は見透かす目であったか。いや、いや。
それでもそこまでの性能はないはず、と自身に言い聞かせる。
……それ以前にわかりやすくバレバレである、ということには気づいていない。
「う、むむ……そも、これでよいのかさっぱりではないか。
まあ、シロナの見立てであるから、誤りもないのだろうが……
いや、そも着れているか、のほうが問題か……」
気づきである。
服の着方は一応学んだが、揃いでしっかり着てみた、とまではいかない。
ということで、だいたい着た感じは同じようにすればいいのはわかったので、黒の方を手に取る。
黒、ということで全体的にシックな作りながらフリルが適度に華やかさを作り出す。
そして、ところどころに入る白が全体の印象を重くしないように引き締めている。
……のだが、当のシャーニィにはいまいちわかっていない。
ともあれ、着ればよかろう、とごそごそと身につけ……
「ん、む?
戻ったか、シロナ。し、しばし待て」
着始めたところで声をかけられたので、なんとか着て間をおいてから試着室から黒のドレスを着て顔をだす。
「そちらの方は済んだか?
吾は一応、決めておいたぞ。これと、後もう一つこちらだな」
選んだ白のドレスと今着ている黒のドレスを見せる。
それに加え、自分ばかりに時間をかけてしまって申し訳ないな、と思いながら相手の様子をうかがった。
■シロナ > 竜眼は、物の真贋、嘘を見抜く程度は出来る、見透かす事は出来ないが。
その辺りは、淫魔としての能力に、竜としての頭脳での補完なので、ある。
彼女は判りやすい、可愛い、それに尽きる。
妹じゃないけど、妹のようにかわいがりたいと思える可愛い子。
「ただいま、だよ。
楽しんでもらえているようで、本当にいいね!」
彼女が待って、と言うぐらいには服を楽しんでいるのが判る。
何となく、声もうきうきしてるんじゃないか、と思うのだ。
うんうん、良いね、と言いながらも、待つことにする。
自分の分はもう買ってあり、コートを身に付けている、茶色のコートをみたら何を言うのだろう。
「おお、凄い、似合うね、と言うか、着慣れているところあるし。
凄いしっくりしているよ。」
黒を可愛らしく着飾るのは才能だ。
彼女自身、黒い色を良く来ていたからこその、馴染み方なのだろう。
これに合わせたお化粧をしてみるのも良いなぁ、とぐへへ。
「じゃあ、今回はその二着にしようか。
普段使いと、デート用、ね。」
にひ、と笑いながら、シロナは、こっちで清算するんだよ、と。
着なかった服を手にして、戻しながら売り場へと案内する。
■シャーニィ >
(楽しんだか、言われるとなんともいえぬが……
まあ、悩みはしたな……うん、だが。悪くはない」
今回もまた、初めてのことの嵐であり困惑やら懊悩やら色々と忙しないことこの上なかった。
楽しかったか、といわれれば、なんとも言いようがない。疲れたのは間違いない。
ただ……悪い気分でなかったことだけは確かであった。
だから、そういう風に応える。
「ん、む。
かつての吾は魔力で勝手に編まれた衣服をまとっていたゆえ……色もまあ、これよりもっと単純な黒一色であったな。
それでいけば、着慣れている、といえなくもないが……
まあ、シロナの目によく映るのであれば、それでよい」
結局のところ、選んでもらった相手の感想が一番肝心である。
見立てて微妙、であるなら直したほうが良いだろうし。
ただ答えは満足の行くものであったので、自分も満足する。
ところで、ようやっと一息ついたところで相手の格好をきちんと見れるようになると。
「む。シロナはそれなのか。だいぶ色が……その、茶色いな?
それでよいのか? 吾のような、黒やら白やらは着ないのか?
吾も茶の方がよいか?」
やっと気づいた。
服についてはいまいち分からないが、自分にいい方を譲ったのでは?などと明後日の勘ぐりをする。
もしそうであれば、揃いの色にすることもやぶさかではない、と。
「うむ、普段用とデート用……う、む?
うん、そうだな。金は……そうか、あっちか」
冒険用、というのがさらにあったはずなのだが、あまりの情報の奔流によりすっかり思考から抜け落ちていた。
そもそもの話、冒険者らしい装いを、というのがはじめだったはずだが本人はそれも綺麗サッパリ忘れていた。
一瞬、なにか忘れているような、と引っかかるが残念ながら思い出せなかった。
そのまま買う服を持って素直についていく
■シロナ > 「今度は、悩まずに楽しめるようにするから、ね。」
初めてで戸惑いが多くあったという事を素直に伝えてくれる彼女に、あちゃーと自分の額に手を当てて見せる。
うむ、もっと彼女をおモカンバって、一つ二つに絞っておいた方が良かっただろう。
悪い気分でなかったのは僥倖だが今後はそうならないようにもっと気を付けるね、と。
「ふふふー。
これは、まだ、初心者向けなのです。
その内もっとパステルになったり。シックになったりゴージャスになるのだぁ。」
そう、黒い色、白い色と言うのは、判りやすいのである。
認識しやすいし想像しやすい、可愛いポップなピンクを入れたり、黄色い色を入れたり。
緑で目を優しくしたり、水色とか、赤とか。
可愛くしてあげるよーと、にへら、と笑うシロナ。
「ああ、アタシは良いのよ。
アタシは可愛いわけじゃないし、ね。
ムキムキな女が可愛い服を着ても仕方がないから。
でも、同じ色の服を着て歩くのは、恋人とか、そう言う、親密な関係の方が良いよ?
そう言う風に見られやすいから。
まあ、ギルドで同じ色の制服とか、そう言う場合はあるけれど、ね。」
見ている部分、腕にも、足にも太腿もそれなりに筋肉があるし、腹筋も割れているシロナ。
女らしさと云うには筋肉が足りすぎているので、可愛い服とかは、他に任せてるのよ、と。
顔だけで言うなら、まあ。並み以上だけど、化粧はにおいがきついし、と。
少しばかり困ったように笑うのだった。
同じ色、似た服装に関しては、そう言う風にみられるから、と。
アタシはカモンだけど、彼女になってくれるのー?問いかける。
「ああ、アタシはもう会計は済ませてるから大丈夫よ
と言う事で、はい、どうぞ。」
売り場に到着すれば、流石に道を開ける。
シロナは、シャーニィを促す。
あそこで、金貨を這えば大丈夫、これを二着買っても余裕がある料金で選んでいるから大丈夫のはず。
■シャーニィ >
「ああ、違う。そういうことではなく。
悩むこと自体は……うん、少々疲れはしたが悪くはなかった。」
反省する相手にやんわりと訂正を入れる。
どうにも、今の学び多き時間は悪い気分にはならないのだ。
悩むくらいがちょうどいいのかもしれない、と。
「む、むむ、む。
ぱすてる?しっく?ごーじゃす?
よ、よくは分からぬが、奥深いことだけはわかったぞ。
お手柔らかに頼む」
そうはいったが、これ以上詰め込まれたら知恵熱でも出そうである。
いや、邪神にそんな物があるのかは知らないが。
まあこの分だと、おいおい学ばされるのだろうな、と思うと、それはそれで悪い気はしない。
「そういうものなのか?
吾は、世の美的感覚など正確に把握しているわけではないが……
そのあり方は美しい、と思うが。
いや、分類が違うということか……?」
シャーニィにとって、人型のものの違い、というのはそこまできちんとはわからない。
人が、動物の美醜をどう捉えているか、というのと同じようなものである。
ただ、それでも。自分の基準の中での評価というものはある。
それでいえば、顔つき、肉付き……その全てが、それぞれに美しくある、と思えるのだ。
とはいえ、シロナにとってはどうもなにか違うらしい。
そこでしばし、ヒトの美醜について真面目に考察を始める。
といっても価値観というものは、違うのであれば理解するのはなかなか難しい。
どうも段階やら種別があるっぽい、というところまでの理解をする。
「買い物はあちらだな。うん、持ち金は足りそうだ。」
そうして、案内をされた先で買い物を済ませる。
実はこっそりと、最初に提示されたちゃんとしたドレスも一着だけ潜ませて三着買っているのだが、気づかれただろうか。
どちらにしても素知らぬ顔でシロナのもとに戻ってくる。
「で、だ。先程の話だが……難しい、な。
いや、シロナが嫌である、ということではなく。なんなら、好ましいと思う。
ただ吾は、あれだ。出自が出自ゆえ。その、なんだ。
そういうことは、感情やら感覚からして、疎い、というか……
ゆえに、よいぞ、と此処で言っても良いのだが……それが、シロナの求めるものか、というと……だな」
彼女になってくれるの?という質問に、至極真面目に応える。
友人だからこそ。自分に良くしてもらっている相手だからこそ。
そして、あけすけに好意と打算を伝えてくれる相手だからこそ。
筋は、通すべきだ、と妙に律儀に考えてしまう。
それこそが、先程も自分で引っかかって言葉にできなかったことでもある。
だからこその、答えであった。
■シロナ > 「気を使わせちゃった。
でも、あきらめないから。ね」
悩むことは良いという感じ、少し疲れたとの事に、連れまわしちゃったものね、と。
「大丈夫大丈夫、少しずつ、必要に応じて行けば、そのうち、だよ。
でも、その美貌を生かすなら、服は大事だよー。」
生かして見せるから、任せておいてね、と二マリと笑う。
お化粧も、アクセサリーも、一杯、有るんだから、と。
「そんなもの、だよ、ほら、女の子は基本的に柔らかくていい匂いがして。
か弱くて、がいいんだよ。
おっぱいやお尻が柔らかくてボインなら尚よし。
ムキムキでがさつで、男より強いのを好むは、珍しいんだよ?」
これもまた、服とかと同じく色々とあるので、そう言う物だよ、と軽く伝えるだけに抑えて置く。
それでも、シャーニィの言葉に、感情に、ありがとう、とにっこり笑って見せる。
女の子なので、褒められるのは、嬉しい所なのである。
彼女の維持らしい行為に関しては、少女は何も言わない。
気が付いたとしても、気が付いてなかったとしても、それを口にするのは無粋と言う事だ。
なので、三着目に対しては、闇の中。
「良いんじゃない。
むしろ、好きでもないのに、何も言わずに曖昧にするよりも。
ちゃんと自分の今を伝えて、相談してくれるのは好感度大、だよ。
だから、いいよ。
シャーニィ、今すぐ答えを出せというわけでもないよ。
いろいろ学んで、知った時に。
その時には、逃げずに答えてね。
ああ、ちゃんと他に好きな人が出来たなら、それも言う事。」
独占をする積りも無い。
彼女が幸せを望んで幸せになれるなら、それでもいい。
無理に今答えを出さないで良いのだ、と、彼女の頭をそっと撫でて。
「さて、お互いちゃんと目的も果たせたしね。
アタシもそろそろ、戻るよ。
あと、はいこれ。
シャーニィにぴったり。
シャーニィの魔力を防御力に変換する服。
際限なく強くなるけど、際限なく魔力を食うんだ。
これを着て居れば、ドラゴンのブレスでも、爪牙でも守れるよ。」
こっそり買っておいた、魔法のローブを、彼女の買った服の上に置いて。
冒険者として、頑張ろうね、とウインク一つ。
じゃね、と彼女に笑いかけて、家路に戻るのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシロナさんが去りました。
■シャーニィ >
「吾を、誰だと思っている?
吾はかつて……いや、それは今いうべきことでもないか。
うむ。だが。
逃げることだけはない。絶対に、だ。」
今日は立ち向かうことが多かったが、最後に来た大きな壁。
壁、というのはまた異なるか。
それは、自身の問題でありながら、他者をも巻き込む問題でもある。
だが。
大いなるものであったプライド、ではない。
ただ一つの、者として。
友人である者を裏切るような真似はしたくない。
ゆえに。
答えを言うべき時に逃げることはしたくないし、するつもりはない。
だからこその、宣言だった。
「……まったく。
人がいいというか、打算的と言うか。
ありがたく受け取るが、な。」
そして、最後に受け取った冒険者服を苦笑しながら撫でて。
またな、と去っていく姿に声をかけて。
邪神のカケラである少女もまた、帰路につくのであった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシャーニィさんが去りました。