2023/11/13 のログ
アルマース > 唇が切れそうな冷たく乾いた木枯らしを、追い抜くように早足で寝床へ帰る。
一階――営業中の酒場兼食事処を横目に上の階へ。
ここ一月借りている部屋へ戻ると、鞄から取り出した衣装――今夜は自前の衣装での仕事だった――を壁へ掛けた。
面倒になってしまう前に厚手のガウンに着替えると、ベッドへうつ伏せに倒れ込む。枕と白いシーツに散らばる黒髪。同じ色の目には半分瞼が落ちている。

自分の息から酒精が香った。
緩やかな瞬きから目を瞑っている時間の方が長くなってきて、ランプの明かりも消さぬまま、もうすぐ眠れそう――と思った時に、それは始まる。

「…………、…………いい加減にしてよ…………」

心地良いまどろみを邪魔したのは、隣の部屋の物音だった。
正確には、ベッドの軋む音と女と男の声である。
元気だね――と最初は思うだけだったのが、ここ最近は毎晩のようになっている。

枕に勢い良く顔を埋めて、同じ言葉を繰り返した。
酒臭い溜息を最後まで吐き切ると、諦めて部屋を出る。
ガウンの上に肩掛けを羽織り、一階の酒場へ。
そろそろ注文も締め切るかという頃合い、客は少なかった。
話したことは無いけれど見たことのある顔もいくつかあるのは、おそらく自分と同じ泊り客だろう。

足を引きずるようにカウンターの隅の椅子に座り、机に突っ伏す。
何にするんだい――という女将さんの声に、コーヒー、と呻き声を返す。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 宿」にファルスィークさんが現れました。
ファルスィーク > 日付も変わって深夜も更に深まった時間帯であれば、人通りは無く静まり返った街中は、昼間とは全く違う顔になる。
賭場での儲けがそれなりにあったので、娼館に繰り出して宿泊しても良かったのだが、生憎と機会を逃してしまいここへ宿を取ることになった。
そんな夜更けに目が覚めたのは何とも珍しい事ではあるが、寝付けると思ったが余計に目が冴えてしまったのも珍しく。
であれば、飲み直すか…部屋を出ると途中通り過ぎた部屋からは、結構な嬌声が漏れ聞こえて来たので肩を竦ませながら、階段を降りていきつつ、それもまだ女将が起きていればの話だがと呟いた。

階段を降りていくとまだ明かりがついているので営業はしているらしく……其処に一人の女性が突っ伏しているのも見えた。
己もカウンターの椅子を引いて腰かけながら、オーダーはまだ通るかの確認をし。

「夜更けに済まないな。
適当なワインを1本、後、軽く摘まむものがあれば助かる。
そちらの女性も、何か頼むのなら奢るが」

突っ伏しているのは酒の飲み過ぎか疲れているからか。
意識があるかどうかは分からないが、お疲れ様だな。と声を掛けつつ。

アルマース > 階段を降りる足音――隣の部屋の男だか女だか知らないが、今夜こそ一言言ってやろうか。
カウンターに降りて来た人物の座る気配と同時に、顔の横に置かれる湯気の立つコーヒーマグ。
ありがと、と女将さんへ告げながら、突っ伏したまま顔が横を向き、赤い爪の指がそろりとマグを退かした。

金髪に白い肌――着ているものは上等そうに見えたし、寝乱れた様子も無い。
今しがた事を済ませて一人で降りて来た様子には見えない。
値踏みする視線を隠しもせずに真っすぐ三秒向けたあと。

「……兄さんの部屋の場所次第じゃ、ここで一番高い酒奢ってもらいたいところだけど――……違うみたいね」

どうやら眠りを妨げた犯人ではないらしい、と判断した声からは敵意が抜けて、なげやりな雰囲気が滲む。

「……と言うか、場所間違えてなあい? この宿にこんな上等な客が来ることあるのね」

掃除は行き届いているものの、壁は薄くて値段も手頃な宿だ。
冒険者や傭兵――良くて羽振りの良い商人くらいしか見ないと思っていたところへ身なりの良い男が現れて、迷子を見るような目つきになる。

ファルスィーク > そろそろ店仕舞いをしようとしていた所であったので女将には申し訳ないが己にしては有り難く。
故に女将の選んだワインに文句は言う事も無い。
肴として出されたのは燻製肉を薄くスライスしたものとチーズ。一人で飲むには丁度良いくらいか。

女性のオーダーらしい緩く香る珈琲の香りは、気分を鎮静化させる効果もあるようで、良い香りだとスンと鼻を鳴らし。
突っ伏していた女性からの視線に気付けば、軽く会釈をしつつも―――。

「部屋次第か。よくは分からないが、ふむ……では、それを頼むとしよう」

一瞬だが、何やら感じ取れた敵意に心当たりはないのだが…はて?という感じで目線を交わらせはして、女性の欲しいと言った物を女将に再度オーダー。

「壁は少々薄いが、悪い宿ではないな。
値段相応よりも、安めだと言ってもいいので良心的な方だろう。
それに、こういう宿の方が快適な場合がある。
……そちらは仕事終わり…にしてはだな。
寝付けないのなら珈琲は逆効果な気はするが」

宿を利用している客層から、面白い話も漏れ聞こえてくる。
人間模様が色濃い。それが一番の理由でもあるが、それは言葉に出さないまま。
女性の格好から吞み潰れていた訳ではなさそうだ。との判断をしながら、ワインのボトルを傾けグラスに注ぎ……傾けて二口ほど飲んだ。
悪くはない味に目元を緩ませ。

アルマース > 頭をもたげると、コーヒーの湯気に手を翳し、マグを包み、爪の赤く塗られた指先を温める。
横目で見ていれば、男の所作には品が漂う。
やはりどこかの良い家の人間だな――騎士か何かかなあと見積もった。
平民の泊まるような宿を貸し切りもせずに使うなんて貴族を見たことがないから、想像はそのあたりが限界だ。

よくわからない――と言うのに、人差し指が二階を示す。

「上。うるさくなかった? もう終わったのかな……って。
 部屋に女連れ込んでたの、兄さんじゃあないんでしょ?」

オーダーをするのに、やっぱりそうなの?と疑惑が再度沸き上がる。

「壁は……薄いね……。ご飯が美味しいから別の宿探したくはないんだけど。
 ……隣の部屋に怒鳴り込む前に冷静になろうと思ってさあ」

快適――という言葉には首を傾げたが、金持ちの物見遊山かな、と思うくらいだ。

肩からずり落ちかけたショールの前を合わせ直す。
寝衣の上に一枚羽織っただけの姿でも、泊まり客しかいない時間帯の普段の雰囲気なら別段恥ずかしいことも無いのだが。
傍にいる男の恰好に比べれば――比べなくても、まあ、だらしないことは確か。
姿勢くらいは良くしておくか、と片手でもう片方の手首を掴み上へと腕を引き伸ばす。
脇腹や背筋を伸ばした後、脱力して、ほどよく冷めたコーヒーに口をつけた。

ファルスィーク > 流石に粗悪な宿は御免被りたいが、此処は十分に宿泊できるレベルである。
旅にも慣れてはいるし、特に拘りは無いので気分次第では上等な宿に泊まる事もあったりはするが、やはり主な宿泊場所は娼館となるので今宵は珍しいとも言えるか。
女性が指差した二階は宿泊施設となってはいるが…指差された天井へと目を向け…言葉を聞けば成程と納得したような。
そんなやり取りの最中、女将が女性の前に店で一番高い酒のボトルを置く事になる。

「そう言う事か。
私が此処へ来る途中、部屋の前を通ったが、まだ艶声が聞こえていたな。
生憎と疑惑の先は私ではないが……連れ込みか。その手があった事を忘れていた」

宿によっては禁止している所もあるが、同伴ではなく連れ込みも可能であれば機を逃したかと少し笑いながら、疑惑を払拭する様に首を横に振り。

「食事が美味いのは、かなりな値打ちになる。
出来る策としては、角部屋にしてもらうかだな。
これからの季節は他の部屋に比べて、少し冷えるかも知れないが被害は減るだろう。
しかし…怒鳴り込むほど、被害は甚大なのか」

深夜になる時間帯には確かに迷惑になる場合もあるし、ドアの外まで漏れるとなれば騒音とも言えるのか。

物好きであるのは確かなので、否定する事も無いまま燻製肉を時折摘まんで傾けていくグラス。
無くなればまた自分で注ぎながら目線は女性に向けると、緩くではあるが躰のラインも分かりそうなもの。
突っ伏していた躰が起き上がれば、それは尚更、自然と目に入るのは仕方が無い事でもある。

アルマース > コーヒーを啜る目の前に置かれたボトル。
珍しくはないが有名どころの葡萄酒である。こんな酒置いてたんだ……という呟きが洩れる。
半月分くらいの稼ぎが飛びそうな気がする。値段を知りたくはない。

「まだやってんの……ここんところほとんど毎晩なんだけど……。
 その手、て。やめてくれる、両隣挟まれちゃたまんないわ。
 濡れ衣だったからこれはお返しするし。疑って悪かったわ」

指紋をつけただけで代金を請求される、とでも言うように、ガウンの袖で酒のボトルをファルスィークの前へ、ずずず……と押しやる。

「ああー……部屋移動って手があったね。
 ――ねえ……姐さん、空いてる部屋あったら移っちゃだめ……?
 角じゃなくても隣じゃなけりゃどこでも良いから」

カウンターの奥にいる女将さんに、お願いお願い、と頼み込んで。
あっさりと『明日空き部屋が出るから移って良いよ――ただし掃除があるから午前中に』と約束を取り付ければ、ありがとう、と万感込めたお礼。両腕を広げて、睡眠不足からの解放に満面の笑み。

「やあった!――寝不足すぎてこんな簡単なことに気づかなかった。
 兄さんもありがとね! ……、……、おーい?」

ガウンの下は下着だけなのが心許なくなるような視線。
上げていた腕を下ろし、緩んでいたガウンの胸元を合わせ直した。
注意を引くように視線の先で幾度か指を鳴らし、顔はこっち――と指で視線を誘導する。

ファルスィーク > 出された葡萄酒は、それなりに名の通った代物であったようで、その価値から申し訳ないが確かにこの宿には似つかわしくない。
故に一番高い物である事は間違いないとも言える。
取り敢えずは、女性の留飲も下がるだろうと思ってはいたが…。

「一晩ではなく毎晩とは結構な性豪だが、騒音被害とも言えるか。
嬌声も度を過ぎれば害になるのは理解はしているが……まあ、其処は男女の違いもありそうだ。
―別に返さなくても構わないんだが」

何やら押しやられるボトルには肩を竦ませる。
2本目を開けるつもりはなく、さてどうしたものかと一瞥しながら、怒鳴り込む以外の穏便な解決方法を提示に早速乗っかり、それも叶えば一件落着と言ったところか。
一変して喜色満面となるのを見て、これが本来の表情なのだろうと眺めてはいた。

「どうやら、本当に相当だったようだな。
睡眠不足は肌にも悪いと聞く。解消できて何よりだ。
……うん?――いや、魅惑的な物に見惚れるのは男であれば当然の事ではある」

両腕を広げれば尚更よく分かる躰のラインではあったが、隠す事のない視線にはどうやら気付いたらしく、指に誘導されながらの言葉は至って本音。
再び目線を重ねながら、己にとっては誉め言葉を女性へ投げかけた。

アルマース > 「女が男を連れ込んでるのか、逆なのか知らないけどね。
 ……男女の違いって、男はこういうの気にならないってこと……?」

顔を合わせたこともない隣人は性別すら分からない。

「……それじゃ部屋移動のお祝いに、二階のアレが収まるまで飲もっかなあ。
 いただきまあす。兄さんはもう良いの?」

貰う理由の無いものは貰わない――から、貰えるものは貰っておく、に軽やかに切り替えた。
金持ちの酔狂は見慣れているし、腐るほど金を持っている人種ははした金など頓着しないか、一ゴルドに至るまで執着するかの大体どちらかだという経験則もある。

自分で開ける、と女将さんからコルク抜きとグラスを貰う。
ずずず……と再びボトルに手を伸ばして手繰り寄せ。

「眠れそうな時に限ってなんだもの、よく耐えた方だと思うわ。
 ……っと、イイモノ貰ったのにまだ名乗ってなかったね。
 あたしはアルマース。最近この辺に流れてきて踊り子やってるんだ。
 その顔(と、財力)で女なんていくらでも寄って来るでしょうに、見惚れるなんて可愛いこと言うね」

瓶を開けると景気よくなみなみとグラスに葡萄酒を注いだ。よろしく、とグラスを掲げて笑う。
火を落とすぞ――と。誰へともなく、客全体へ言い渡す厨房の親父さんの声がそこで。
もう注文は受け付けないということだけれど、勝手に飲んでいるくらいは見逃してもらえるだろう。

ファルスィーク > 「毎晩ともなれば連れ込んでいる部屋主は男と考えるものだが、女だとすると客を取っている個人娼婦か。
男の場合は、余程疲れていなければ欲情のお裾分けになる。
まあ、時間帯で相手が居なければ、君と同じく鬱憤は溜まる一方になるだろうが。
――いや、一人で飲むには量があると思っていた所だが、付き合ってくれるのなら頂くとしよう」

女性の言葉から、決めつけていた性別の件に関して男だと決めてかかっていたが、納得したように頷いた。
祝いだと言っボトルを開ける切り替えの良さは臨機応変と言い様に捉た。
実際、金持ちではあるが金の価値と使い方は知っているつもりであり、拘りはあるが使うべき時は惜しまないタイプだと己では思っているが…他からは酔狂であるとみられるのも仕方はないか。

「夜更けと早朝はな……大体の雑事が終わるか、始まる前で、欲情しやすい時間と言えなくもないが、寝入り端であれば怒りも湧くのも理解できる。
ほう…流れの踊り子とは珍しいが、中々いい曲線を持っていたのも納得できる。その内に是非、拝見したいな。
私は…ファルスだ。職は…さて、如何名乗るべきか。
――容姿の評価は面と向かってする物ではないのだろうが、事実は事実だからな。
尤も、アルマースにとっては当然の賛美かも知れないが」

女将に頼んで新しいグラスを持ってきてもらう際、聞こえた親父さんの店仕舞いの宣言に改めて礼を言い、後は勝手に2人で飲む事になる。
暫く歓談した後にそれぞれの部屋に戻るか、口説いて自室に女性を連れ込むかは、また別の話。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2 宿」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2 宿」からファルスィークさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にサウロさんが現れました。
サウロ > (数週間ぶりの王都の空気。
 自由騎士団の詰め所に顔を出し北東側や奴隷市場都市などの情報を共有をし、
 次に見てきて欲しい地域の指示を請けて、宿に戻り休んだ翌日。
 ここのところ降り続いていた肌寒い雨も止み、晴れやかな青空が広がっている。
 しかし吹く風はどこか肌寒く、冬の訪れを感じさせた。そろそろもう一枚肌着を重ねるか悩みどころ。

 平民地区の大通り。
 相変わらず賑やかで往来も多く、広場では奴隷売買が行われている。
 そちらへと足を向ければ、その規模は小さく、奴隷市場都市と比べるとささやかなものに感じてしまう。
 やはりあの都市がおかしかったのだと思わざるを得ない。)

「……あちらではミレーが多かったけれど」

(こちらは珠玉混合というか、貧民地区や王都から離れた村落から売られたりかどわかされた子も混じっているのだろうか。
 奴隷を吟味する者達から少し離れたところからその光景を眺めている。)

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にフー・メイユウさんが現れました。
フー・メイユウ > (白い雲も疎らの真っ青な快晴――
 日差しは日光浴をするには丁度良い具合だけれど気温と風はどうにも低め。
 気温の急な変化に服の変化が間に合わない人がくしゃみしたり身震いしたり。

 そんな中あわてて秋服冬服を引っ張り出して来てなんとか服を仕立てた桃髪。
 もうちょい前からやっとけばな……。
 何て内心ぼやきながら本日オフ故買い出しもちょちょっと済ませて服を見繕いに散策中の折――)

「おや~?」

(奴隷市場に赤い瞳がくるりと向いた。
 奴隷に用があるわけではなかったが市場の端に見覚えのある立ち姿があるのを目を留めて。)

「サウロじゃ~ん」

(左肩に紐を引っ掛け左手で帆布の鞄を身体に寄せ。右手はカフェラテの器を持ってるので、手は振れなかったが。
 右から左あるいは左から右へと行き交う往来を縦断してひょいひょい人を避けつつ足を向けては声を掛けに行った。)

サウロ > 「……!」

(しばらく奴隷市の様子を眺めていたが、名前を呼ばれれば意識はそちらへと向く。
 人の流れを器用に避けながら近づいてくる桃色の髪には覚えがあった。
 その声も、記憶に鮮烈に残るくらいには聞き覚えが十分に。
 秋冬コーデのお出かけスタイルと言った様子の彼女を視界におさめる頃には、身体も顔もそちらへと向けよう。)

「メイ、久しぶりだね。こんな時間…ということは、今日はお店は休みかな?」

(まだ陽が真上を通過した頃合い、シェンヤン料理の店を構える彼女であれば常なら仕事中という刻限。
 しかし休みも再開も彼女次第だという記憶はあるので、そんな風に尋ねながらラフなスタイルでいる彼女に笑みを浮かべる。
 セレネル海を挟んで北東側まで出掛けていたために、王都で会うのも数週間ぶりになるだろうか。)

フー・メイユウ > 「ねー。久しぶり。一月ぶりぐらい? 元気~?」

(王都でも頻繁には見掛けないだろう派手めな髪色と、
 ぱっと見は可愛らしい系統の顔立ちの割には低い声。
 背丈や格好はとかく人には覚えられやすそうな二つは相変わらず。
 彼にとっては味覚と刺激的な意味でも記憶に残っているだろうか。
 
 誰かにぶつかりそうで誰とも接触しないまま軽々縦断して来ると、
 往来の邪魔にならないように端っこに寄りつつ彼に向かい合えば笑みを浮かべる。)

「そーそ。オフだよ。急に寒くなったね、服全然出してなくてさ、困っちゃうよ。
 服でも見ようかな~と思って出てきたんだけど……。
 久しぶりに見掛けたからつい声掛けちゃった。今大丈夫?」

(お店は本日定休日、ではないけれど急な休店、いつも通り。ずばり彼の推測通りで頷きつつ。
 つい声を掛けてしまったが自分と違って彼はあれこれ仕事している時も多い、と、
 はたと気付いて首傾げて。)

サウロ > 「もうそんなに経ってたのか……ああ、元気だよ。メイは?」

(サングラス越しに見える笑みを浮かべる彼女に頷きつつ建物の傍、道の端に寄りながら改めて向き直り。
 彼女の作る帝国料理も美味しかったし、その後のことも記憶に残っているのでそう簡単には忘れられないだろう。
 世間話のひとつのように彼女の服事情を聞けばなるほどとうなずく。
 頭のてっぺんから足の先まで見下ろし、可愛らしい顔立ちや色合いながら体幹の良さで似合う革ジャンにジーンズスタイルを眺め。)

「そうなんだ。これから更に冷え込みそうだしね。
 僕も王都から少し離れてて、昨日戻ってきたばかりで。休息も兼ねて見て回ってたところだよ。
 今日はオフ、とくに予定もないから大丈夫だ。
 ……けどそっか、今日は休みなら食べにいけないね」

(しばらく王都を離れていたのだとこちらの事情も話しつつ、首を傾げる彼女に問題はないことも伝える。
 彼女の顔を見たら美味しいシェンヤン料理が食べたくなってきた、が。
 お店は休みで服を身に行くのなら予定を変更させるわけにもいかないなと少しだけ残念そうに眉尻を下げて。)

フー・メイユウ > 「もうそんなだよ。でも、ふふ、サウロと会うときは何でか肌寒いね? 私? 絶好調~」

(一月前は、時節はもう秋だというのに暑い日ばっかりで辟易していたものだが、
 彼と会ったときは日当たり悪いところの水場だったせいで肌寒かった覚えがある。
 彼もびしょ濡れになって寒がっていたのを思い起こせばくつくつと喉を鳴らした。

 そのあとの美味しい記憶と、そのさらにあとの“おいしい”思い出も浮かび、
 にま……♡ と、ちょっと意地悪そうに口元を持ち上げた。けど……

 その格好が似合ってる、と言った具合に向けてくれた視線にすぐに得意気な笑顔に切り替わり、
 少し足幅を開いてはブーツを傾けたり腰に手を当てたりとポーズなんか取ったりして。)

「やっぱりこっちに居なかったんだ? お疲れ様。
 ……んもう、しかたないな、サウロったら~。
 いいよ、ご馳走したげようじゃないか」

(眉も声のトーンもちょっぴり落ちた彼の様子に、ん~。と、ほんの少し悩まし気な顔をしたけれどそれもほんの束の間。
 自分の料理が美味しい食べたい何て言ってくれるのを無碍にするのも気が引けるし……と、
 右手のカップから器用に人差し指だけをぴんと立ててはお一人様ご案内である。)

「服はまた見にいけるしね~。何食べたい?」

サウロ > 「はは、今の時期にあの依頼が来なくて安心してるよ」

(絶好調という彼女の元気な様子にはつられるように笑みが浮かぶ。
 彼女の快活さは見ていて元気が分けて貰えるし、軽快な口調で紡ぐ言葉は聞いていて気持ちがいい。
 出会った時のことを思い出せば、連鎖するようにその後のことも思い出して、少しばかり碧い目が逸らされて。
 その眦にはじわりと熱が乗り、肌が白いので分かりやすいのが難点。
 笑顔でポーズをとる様子には、気を取り直して笑みが浮かぶ。)

「ありがとう。……そんなつもりじゃなかったんだが、いいのかい?
 それなら、お言葉に甘えさせてもらおうかな。
 この前食べた奴も美味しかった、んだけど、」

(予定を変えてまで受け入れてくれた彼女に感謝を伝える。
 同じものをとなるとその後のおいしく頂かれた記憶が蘇ってしまうので言葉が詰まる。
 ええと、えーと、と悩むように唸りつつ、彼女と並んで、共に彼女の店へと歩き出そうか──。)

フー・メイユウ > 「今きたらもう嫌がらせだよ。断るか、割増で貰うべきだね」

(三割、いや。五割ぐらい? と、人差し指から中指までを立てたり親指や小指まで全部広げたり。
 あの頃でさえああなのだから今やろうものなら彼どんな風になってしまうやら……
 想像してみると何だかびしょ濡れの子犬みたいな想像図が出てきて可哀想やら何だかちょっと可笑しいやら)

「いいともよ。十人前って言われちゃ困るが一人や二人前ぐらい大した手間でもないからね。
 さ、そしたら、お店に付く前には決めといて? いやまぁ? 前のでもいいけどさ。……さー?♡」

(彼も会話の端々で思い出の数々色々浮かんだ様子だ。
 腹芸には向いていない性質なのは解っちゃいたがそれにしたって解りやすく、
 目線は逸れてしまうし眦には朱色が浮かんでしまうしといった有様には、
 気にしていませんよ。
 何て具合に会話を続け。つつ、何だか含みのある言い方をしては、態とらしく唇からぬらり、舌を少し覗かせて舌舐めずりして見せたり。)

「ぅふふふふっ♡ さあ行こー」

(詰まったり唸ったり忙しい彼の腰をとんと肩で押し遣って。二人一緒に、店に向かって歩き出す――)

サウロ > 【移動します】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からサウロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からフー・メイユウさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にラッツィオさんが現れました。
ラッツィオ > 「――なンだ、今日は随分とシケてんな」

平民地区にある馴染みの酒場へ入ってみれば、客は数人しかおらず、ほとんど閑古鳥が鳴いているような状態だった。
カウンターの奥にいるマスターも、暇そうに頬杖をついてうたた寝をしている。
近づいていっても起きる様子がないので、預けてある酒瓶とグラスを勝手に拝借した。
席に戻ってグラスに酒を注ぎ、ひとり晩酌を始める。
肴はないが、マスターが寝ているのだから仕方ない。

「なんか大事件でもあったのか、他の店に客を取られたのか――。
 まァ、たまには静かに飲めるのも悪くねえか」

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からラッツィオさんが去りました。