2023/11/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にアルマースさんが現れました。
アルマース > 「ありがとうございました、またいらしてね――」

平民地区の居住区に位置するヴァルケス武器防具店。
鍛冶施設を併設し、その名の通り武器防具から日用品の金物まで扱うお店である。
よく通る女の声に見送られ、背を向けた人影は遠くなってゆく。

黒のカフタン――襟の無いガウンのような丈の長い服――の胸元に店員の名札をつけた女は、ゆるい三つ編みを背中に払い、接客を終えて一息ついた。

「ふう忙し。今日はえらく受け取りが多いわねえ。何かあったのかしら」

今しがた去って行った客もメンテナンスした武器の引き取りでの来店だった。
傭兵さんか何かだろうな、と思ったけれど尋ねてはいない。
雑談が長引くことも多いけれど、お客の多かった今夜は用件だけで済んだのは助かるところ。
まだ営業中の店で受付として、店の入り口に掃除が必要なところなど目視確認して、大丈夫そうか、と店内へ戻る。

アルマース > 「ふんっふー」

軽く武具を振り回せるくらい広い店内中央。
客足が途切れたのを良いことに、自分の鼻歌に合わせて跳んで、くるくるっと二回転。
危うげなく着地し、裾幅の広いカフタンを摘んで軸足の膝を曲げ、芝居がかったお辞儀……

「忙しい方が調子が出るから良いけどさ。最高潮だ~」

ゆっくりとポーズを解きながら上機嫌だ。
自分の上に光が当たっているかに振舞う女は、ある時は武具屋の店員――またある時は踊り子なのである。
身体の線を隠すゆるっとした服装も、化粧気の無い顔も、一見そうとは見えないかもしれない。
赤く塗られた爪だけ、妙にけばけばしいくらいである。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエリビオさんが現れました。
エリビオ > 隙間なく入れられた数打ち剣の木箱を巡り、荘厳な盾を掛けられた壁を巡り。
広々とした武具店を巡り巡る黒髪の少年は双眸を不機嫌気味に眇めて武器店を物色していた。
目当てのものが見つからないからだ。だからこそ店の奥まで当てなく進み。
他の客が退店して尚も店の中を屯していた。
そんな中で軽やかなステップの足音が聞こえる中央へと誘われて。

「……」

ちょうど踊りをしている店員の姿を目撃した。
暇つぶしにしては仕草慣れておる様に店の柱に背を預けて観客となる。
言葉1つ発せず眺めていた長身が動いたのは、残心残して踊りの終焉を迎えた瞬間。

「いいね。最近の武器屋は踊りのサービスもあるんだ。」

軽く手を打ち鳴らして明るい声が室内に響く。
こちらに振り向くなら目を細めて微笑む姿が見えるだろう。

アルマース > 「――っとお……?」

数ある商品の陰で見えなかったエリビオの声。
見られたくない時こそ誰かに見られているものである――どこかの偉い人の名言は真実であった。
誤魔化すように笑って、また踊り出しそうだった手を戒めるべく、腰の後ろで組んでおく。
声の方に顔を向ければ、背は高いものの、少年と言うべきか青年と言うべきか微妙な年頃のお若いお客さんの姿。

「ごめんなさいな、気紛れにね。調子が良すぎて脚が勝手に動いちゃった。
 何かお探し? お若く見えるけど冒険者さんかしら」

いつもなら少年、とでも呼んで軽い口を利くところ、年下に見えるとて一応初見のお客様。
恭しく、しかし簡易な礼を再度見せ、近くへ足を運ぶ。

万一店に見当たらない品があれば、研究にも熱心な店主が仕立ててくれることもある。
女にできるのは御用聞きくらいだが。

エリビオ > 「ううん。いいもの見せてもらったよ。
 えっと、別に商品を探すために尋ねたわけじゃないんだけれど。」

咄嗟に隠そうとした爪先のマニュキアに僅かに目を細めるが、表情は変えずに。

「胸当てを探してるんだ。なるべく軽いやつ。
 こんな大きなお店じゃそんなちゃちなもの売ってないかもしれないけれど。」

近くに寄れば存外背丈がある。
首を動かさず話せる相手に僅かに口元を緩め。

「店員さんは、もしかして本業は別にあるのかな。
 さっきの踊り。タダ見して良いものじゃなかったように見えた。」

顎に指を添えて貌をじっと見る。
化粧薄いそれは自分が描く踊り子とは結びつかないが。