2023/10/10 のログ
サウロ > (どういたしまして、と笑みを浮かべて頷く。
 彼女が注文したついでにバターとコーンを溶かした蒸かしたジャガイモと、パンを追加する。
 飲み物は檸檬の炭酸水も。
 それまで食べていた物をさらえてしまえば、少し温くなったスープも飲み干す。
 ふう、と息をつくと同時に視線を感じて軽く顔を上げて。
 彼女が見えているものが何かは自覚はないが、碧い目が彼女の黒い双眸を見据え、数度瞬いた。)

「ああ、最近なんだね。踊り子……」

(踊り子、という言葉に、何か引っかかるような記憶があるが、白くぼやけて分からない。
 すぐに頭を軽く振って何もなかったように思考を切り替えれば、彼女が笑って零す様子には不思議そうな様子。
 騎士はその通りだが、王子様と言われると困ったように眉尻を下げながら笑みを零して。)

「騎士は騎士だね。僕はサウロ、自由騎士の一人だ。王子や貴族とは無縁の平民だよ。
 この店は美味しいから、お気に入りなんだ。ゆっくりしたい時とか、お酒を飲まない時とか」

(宿つきで、治安も良い。
 大衆酒場でもないので、酔っ払いもさほど多くはないので、彼女のように女性一人が泊まるのも安心できるだろう。
 そんな話をしているうちに「お待たせいたしました」と彼女が注文したものが届けられる。)

アルマース > 食事が運ばれてくると、うきうきと髪を後ろでゆるく括り、オニオングラタンスープのうつわを慎重につつく。まだ熱々だったので、スライスされた楕円形のパンに、これもスライスされたチーズを乗せ、惜しみなく盛られたサラダのうつわからも野菜を移すと、パンに挟んだ。
かぶりつこうとして――サウロの視線が不意に遠くなる。
どした? と片手をひらひらさせて。

「……昔の女でも思い出した?」

踊り子という言葉が引き金だったようなので、呼び起こされる感情が悪いものではないといいなあ、ととばっちりをほんのり憂慮する。

「じゆうきし。自由騎士……あー……えー……?」

警戒すべき出会いの多い国で、久々に遭遇した気のする善の者に、感情がついていかない。
そんな善人この世にいる……? というような。砂漠で鯨を見たような、そんな目になってしまう。
と言っても自由騎士というのがどういう組織なのか、詳しいことは忘れたけれど、王族貴族に忠誠を誓う騎士とは違って、市井の人々のために力尽くすとかなんとか、ふわっとした良い印象だけがある。

自前のサンドイッチに一口かぶりついて、頬袋をふくらませつつ、頷いた。
飲み込んでから、

「ごめんごめん。久々に会う人種で、新鮮すぎて頭が止まっちゃった。
 あたしはアルマ。アルマース。サウロはこの国に長いの?」

サウロ > 「ああ、いや、大丈夫だ。昔も今も、特定の女性はいないよ」

(届いたものでサンドイッチを作り上げる様子にそういう食べ方もあるのかと物珍しそうに。
 サンドイッチ自体が置いてないわけでもないが、量が自由に調節できるならこちらの方がいいかとも思う。
 踊り子に嫌な思い出があるというわけでもないようで、何か引っかかっても思い出せない"よう"に記憶を弄られているだけ。
 熱々の湯気を立てる蒸かしたジャガイモをフォークを割り、蕩けるバターを染み込ませながら一口運ぶ。)

「珍しいかい?」

(自由騎士、というものを珍しく思っているような視線ではなさそうで、その表情の変化に苦笑を零す。
 善・正義。王国の全てが腐敗しているわけではなく、勿論公的機関にも善良と正義を持つ者はいるが。
 悪心、奸計を孕む悪魔や魔族や人間の思想が現状この国に根付いてしまっている状況を、よく知っている。
 彼女のような反応をされることも珍しくはないが久々だったので、特に不快感を持つということもなかった。)

「長いといえば、そうだね。僕はこの国の生まれだよ。元は孤児で、教会育ちだ。
 アルマース…。ここらへんでは聞かない響きだね、君の国のことも聞かせて貰えると嬉しいな」

(長いのかと言われれば、マグメール人であると頷いて伝えて。
 踊り子として旅を続けているという彼女が、どこから来て何処へ行くのかも興味がある。
 とは言え、その関心の多くは、趣味である食事に関し、外の国の料理へと向けられているのだが。)

アルマース > 咽かけて、葡萄酒を流し込む。

「っ……それ、遊び人宣言じゃ……」

特定の女性はいないと聞くと、広く浅い付き合いはあります、とも受け取れる。
過去の女性関係を根掘り葉掘りするつもりは無かったので、声は尻すぼみになる。聞こえなかったことにしてくれてもいい。
気管のあたりを叩きながら、ふう、と息をつく。

「珍しいは珍しいよねえ。あたしが女だからかもしれないし、仕事柄かもしれないけど、あたしの狭い付き合いの中じゃあ珍しいよね。
 そういう人もいるんだなって。ちょっと安心した。
 なあんて、悪どく見えて筋を通す奴もいるし、きらきらした腹黒王子様もいるかもしれないし、わかんないけどさ。
 とりあえずご飯を楽しく食べられる相手だったから、他のことはどうでもいいや」

屈託なく笑って、サンドイッチの残りを食べ、ほどほどの温度になってきたオニオングラタンスープに手をつけた。
浮かんでいるパセリを沈め、ふやけたバゲットをうつわの中でスプーンを使い切っていく。

「へえ、じゃあ出世頭、って感じかな。
 あたしは砂漠の方の生まれ育ち。両親はここみたいな宿をやってるんだ。
 いろんな国や街を見てみたくて家を出たけど、良いところだよ。ここに比べたら死ぬほど田舎だけど、ご飯は美味しいし」

サウロ > 「えっ。ああ、あー……そういう風に取られてしまうこともあるのか」

(遊び人宣言と言われて素で驚いたような表情をする。
 実際のところは、最近のことはさておき商売にしている娼婦を相手にしたことぐらいしかない。
 実直、真面目、お堅いとも取れる性格と、性欲を明け透けにするのは恥であるという教えから、
 広く浅い付き合いすらしていないという実態である。
 咽る様子に変な印象を持たれただろうかと、この国の気質を思えば確かに珍しいのだろうか。
 比較的聞き手に回ることが多い性分か、気持ち良く語らう彼女の声を聞きながら食事を口に運び、
 うんうん、と頷いている。竹を割ったような快活さで判断する様子に笑みを零し。)

「そう言って貰えるなら良かった。
 誓って悪心はないから、安心して欲しい」

(胸に手を当てて告げれば、その言葉だけを信用するのは難しいことも知っているので、ある意味自己満足のようなものだ。
 それで信用してくれるなら、それはそれで嬉しいことではあるが。
 話は彼女の故郷のこと。砂漠の出ともなれば肌の色や髪の色にも納得がいく。
 エキゾチックな魅力とは彼女のようなことを言うのだろう。)

「砂漠の方か……一面が砂で覆われている世界は本の挿絵でしか見たことがないな。
 そういう地方では何を主食にするんだい?」

(美味しいという言葉につられて興味を持つように問いかける。
 フォークを動かし食事を進めながら、炭酸水で口の中を湿らせて話を聞き。
 二人の皿が空になって、飲み物も尽きるまでは、彼女の国の料理や、この王都で美味しい料理を出す店など、
 食事周りを中心に歓談に興じていただろう。)

アルマース > 「今夜くらいは、オウジサマって本当にいるんだ……という感動を大切にしたいから、それ以上は言わなくて良いよ」

サウロの様子からして遊び人の説は不正解のようだったので、ただの揶揄である。
気を取り直して残りのサラダをつつく。これでもかと入っている葉野菜と、グリルした南瓜や茸。
具材は日替わりだけれど、量は保証されている。上品なサンドイッチよりも断然ボリュームがあることに気がついてから、毎回注文するようになったメニュー。オイルとビネガーと塩胡椒の振りかけられたサラダはシンプルで食べ飽きない。

「ふふ、これでも久々に安心をしているよ。
 サウロは柄の良い店をたくさん知ってそうだなー。
 踊り子もいるような店で安全そうなところ知らない?」

『誓って』なんて言葉も、こんな風に真面目な脈絡で聞いたのはいつぶりのことだろう。
微笑ましくなって、安心した安心した、と茶化すわけではないのだが笑いながら頷いてしまう。
が、食べ物談義になると、真面目な顔になる。

「主食。豆? と羊? 商船も着くから外の食べ物も入ってくるけどねえ……
 あっちでしか食べられないものって何かなあ……あ、そういえば茄子があるのにムタッバルはこっちで見たことないなあ。
 茄子をペーストにしたやつ、こっちでも作れると思うんだけど」

郷愁、と言っても食方面に関してのそれが沸き上がってきて、食べたい……と呟く。
料理をつくる方はさっぱりなのでレシピはあやふやだけれど、美味しいご飯の情報を仕入れて行きたい店リストが充実した夜。
お互いに情報交換がはかどったことだろう。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアルマースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からサウロさんが去りました。