2023/07/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店」にラリーさんが現れました。
ラリー > 「…よし」

ある日の平民地区の古書店。開店の準備を済ませた目立たない少年は、感情の起伏というものが
感じられないながらどこか達成感を滲ませる一言を漏らすと、店の扉を開けた。
店の方角の関係で陽光が店先に差すことはないが、代わりにその向かいの景色は明るく
太陽に照らされている。
そんな光景にまぶしげに少し目を細めてから、扉の掛け看板を反転させ"CLOSE"から
"OPEN"に変え、開店する。
あとは店内に戻り、いつもどおり悠々と読書しながら来るかもわからない客を待つ…と思って
いたところで、こちらに近づく足音が聞こえる。
珍しく開店早々の客の訪れか、それともなにかまた別の用向きか…ともかく、少年は緩慢な動作で
顔を振り向かせてそちらを見た。

ラリー > 声を掛けてきたのは、初めて王国を訪れたという旅行者。探している店の位置を教えてやってその背を見送り、それから少年は店内へと戻っていって…
ご案内:「王都マグメール 平民地区 古書店」からラリーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にテンドンさんが現れました。
テンドン > 「フッ、フッ、フッ!!」

強い空気の流れが頬に触れる。
だが実際には然程に風は吹いていない。
物凄く早く走っている為に流動しているだけ。
背筋を少し丸めて前傾がち亀が甲羅を背負うみたいなでっかい荷物。
マグメールの区画内を弾丸みたいに疾走中。

テンドン > 「はぁ…っ…っ!」

じりじり照らし付けて来る日光が無茶苦茶に暑い、バイザーの庇があっても眩く感じる程の快晴。
ばたばた文字通りの馬の尻尾みたいに上下に弾んでいた銀髪の一房の根本は汗だくになっている首の項に張り付いちゃっている。
路面を蹴り付ける勢いが少し減衰した、ペースを緩める。

「邪魔邪魔ー!」

往来に居るのは自分だけじゃない。
他にも行き来する住民達をじぐざぐと走る方角を調節しながら避けて回る。
声掛けでサッと退いてくれる人も居れば、それを期待できない人も居た。
大回りに迂回するカーブを描くとぎゅっ!とブレーキの掛かった踵が地べたに擦れて悲鳴をあげる。

テンドン > 「げっ!?」

間も無くして目の前にちょっとした混雑を発見した。
馬車が街中で事故ったらしい、通りのど真ん中に車体と馬体が倒れている。
それだけならまだしもその加害者に被害者、更にはマグメールの警備達。
加えて言うならば物見遊山の見物客たちまで集まって人間の垣根を形成していた。
牛一頭はおろか、鼠一匹すらも通過出来そうな隙間は在りはしない。
目的地はまだ先、此処からの迂回路はあるが、それを選択すれば大幅に配達時間は遅延する!
そしてクレーム!減給!!

「………」

ちかちか脳裏に過る瞬間思考。
健脚を生かした速度はそのまま疾風すらも追い越して蛇のように曲がって路地裏にへと入り込んだ。
そちらの方には人気は殆ど無い。

テンドン > 「っっ失礼っ!」

ぎゃりり!地面に擦り付ける摩擦の強さに超頑丈な靴底から白い煙が一筋昇る。
ぐるりと振り返り仰いだ行く手には区画内に建っているアパートメントの一つ、その絶壁。
漆喰を骨材にして積み上げられた煉瓦の外壁に臨んで蜥蜴のように飛びつく。
張り出している僅かな建材の出っ張りを手で掴み、つま先で足場を捉えて登り出す断崖パルクール。
単純に壁だけではなく途中経路にある窓の縁なども使い、跳ね上がるようにしてぐんぐん高度を稼ぐ。
あっという間に登攀は跳躍以上の高さに勝った。

テンドン > 「よっ!」

そのまま飛び上がる塩梅で屋上、というより屋根に到達。
雨曝しになっている瓦の劣化部分を避けて休む暇も無く走り出す。
雨滴やゴミを流す為に傾斜になっている角度を突っ切り加速に次ぐ加速…。
目の前で間も無くして訪れる屋根の途切れ目に至る瞬間に膝にバネを溜め込んで。

「っっっひょおっっ!!」

蹴り上げて跳ぶ!速度をつけた走り幅跳びにはたはたと空中に靡く髪の毛の尾とジャケットの裾。
見下ろせる下界路上の事故現場を横目にしながら滞空時間はほんの少しだけ。
ガッ、と、重力に引っ張られて降りた靴の底に集合住宅に隣接した他の建物の屋根を捕まえた。

「ひゃえ!?」

つんのめる。
バランスを崩しかける。
手をばたばたさせる。
だが直ぐに姿勢は安定。
ホップステップの後はランに入る。

テンドン > そのまま建物の端っこにへと辿り着くとぐるり回れ右。
懐に収納していた配達道具の一つであるフック付きのロープを屋根縁に引っ掛ける。
そのまま壁際に沿ってロープ下降。
とんっ、とんっ、とんっ、と、三度壁を蹴る頃にはローブ伝いで急降下した体はあっという間に地上に辿り着いた。
しゅる、と、後はかけたままのロープフックを屋根から外して回収するだけ。

そして建物を跨いで降りて来た路地裏を介して、そのまま、また往来にへと出て来た。
ちらっと配った一瞥の向こうでは邪魔な阻害物だった事故現場がある、無事ショートカット完了。

「ふふん、流石ボク」

とん、とん、と、踵で路面を蹴り、背中に背負っている荷物を背負い直し。

「おっちゃん!お水下さい!」

ついでに道端で商売やっているおじちゃんから水を買い付け。

テンドン > 「っっっ!!」

じゃばー!!水瓶から柄杓で掬い上げた水を頭から被る。
じりじりに火照り切った頭の上で、蓄熱した角からじゅわー!と鉄板に水落としたような激しい音を立てて水蒸気が飛散した。
晴れ間なのに大雨の中を通過したみたいなびしょ濡れになった姿でぶるるっと犬みたいに小柄な体躯を揺すって水を飛ばす。
汗水の代わりに水分を吸ってぬれそぼった銀色の前髪を手で掻き分ける、めっちゃきもちいい顔。

「っっっっっっっぷはー…生き返るーーーー……」

熱中症対策。
ぎゅっと軽く重たくなった髪の毛の尻尾のウェイトを手で搾った後に道の向こうにへと振り返り。

「間に合うかな…間に合うでしょ!いけるいける!」

足場を蹴りつけてまた走り出すのであった。
縦横無尽に駆け巡る配達人の駆け足。
町の何処かで待っている筈の受け取り手の元にへと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からテンドンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシアンさんが現れました。
シアン > 冒険者ギルド、併設酒場。かんぱーい! 威勢の良い音頭と共に打ち鳴らされる、ジョッキ。沸き立つ笑い声や歓談――
王国を出立して幾つかの都市を経由して異国へと趣き王国へまた戻ってきた隊商たちと護衛に付いた冒険者たちの打ち上げ。
其処に、偶々居合わせた、依頼帰りや只飲みにきた冒険者や休憩しにきた職員なども混ざって大宴会の大騒ぎになっている。

「はい、かんぱーい。
 あい、おつかれぇー」

見知った顔が掲げてくるジョッキに、見知らぬ顔が掲げてくるジョッキに、
かんっ! と気持ちいい音を鳴らしてジョッキを合わせて一息で煽る。
飯は食ったが酒が欲しくなってちょいと引っ掛けに来たらこの騒ぎ、
しれっと混じってビールを一杯さっそく空にしては酒精混じりの長い長い一息。

「ハハハ。なーにがドラゴンだ嘘こけお前ぇ」

道中がどれだけ大変だったかどれだけ苦労したか! を、語る顔見知りが竜と一戦交えたの何だの言い始めたものだから、ごん! 何て結構いい音立てて空になったジョッキの底で頭ぶっ叩いて笑いながら、ジョッキを返却してお代わりを受け取り、あとついでにアテのソーセージの盛り合わせも受け取って、一旦隅っこに退避。
飲めや歌えやの大騒ぎにどんどん混じっていきたいところだが……
最近ちょっとばかり酒の量が増え過ぎなので自重である。

シアン > 「しっかしまぁ。長旅かぁ。大変だよなぁ」

一つの国の中にさえ風習や文化の違いがある。国と国を隔てればもはや言葉も違う。
一つ所に定住する目的でさえ旅には苦労が付き纏い一つ所に着かぬ行商となれば……
帰ってきたら兎に角飲んで食らって一騒ぎして発散したい気持ちはよくわかる。

「まあ今一番大変なのぁ此処だろーけどさ」

宴にあわせて酒から料理からせっせと作って運んで片付けて、
宴が終わった頃には死屍累々な奴らと食器諸々とを片付ける、
酒場の店員方の苦労が忍ばれる。
そのうち裸踊りでもしそうな連中に店員の娘にちょっかい掛けて平手で吹っ飛ばされる奴やそれ見て大盛り上がりの者たちに歌い出すご陽気な集団諸々。見ているだけで可笑しくってくつくつと喉を鳴らしながら、ソーセージを齧れば、ぱきっ、と快音が立ち噛めば溢れる肉汁と油をビールで洗い流す。

「んん゛。うまい……酒が進む……もう一杯っ……いや、いや……!」

つい、もう一杯! 
と、追加注文しそうになり、右手を左手で抑えた。

シアン > 暫く、葛藤。横の方でがぶがぶ飲んでるご同輩が居る分だけ葛藤も長かった、が……。

「腹が弛んじゃこの業界しめぇだよ……!」

まだ、弛んでない。というか、弛む気配なしの割れた腹筋である。
然しだ、現状をずうっと末永く続けていくためには自制は必要。
酒は止められやしないからこそ暴飲暴食は止めねばならない。
云々ぶつぶつと独り言呟いて拳を額に当てて。よし、と最後に一つ頷き。

「お会計を……!」

酒の未練が振り切れていない感ありありの顔と声音で、席を立つ。
ビールに二杯に肉の腸詰め盛り合わせの代金をさっと払って、
ぁ゛ー……なんて唸りながら大騒ぎに背を向けて歩き出すのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシアンさんが去りました。