2025/05/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にカロンさんが現れました。
■カロン > 冒険者ギルドの一角には、いつも人で賑わう場所が二つある。
一つは受付。冒険者の登録から、依頼の斡旋、受託、完了処理。その他諸々、誰もが毎日お世話になる場所。
もう一つは――――
「はぁ……。採取依頼は売り切れ、ですね。うーん……」
その背丈よりもずっと大きな掲示板の前で、一人の少女が深い溜息をついた。
どうやら駆け出しの魔法使いのようで低ランクの依頼を探しているようだが、思うようなものが見つけられないのか、左に行ったり、右に行ったりと、順番に売れ残りの依頼書を見て回っている。
「先日のような依頼があればとも思ったのですが、そうなかなか上手くはいきませんよね」
経験の乏しい駆け出しが一人で受けられるのは、薬草採取や迷子のペット探し、荷運びなどの簡単かつ安全性の高い案件が多く、そう言った仕事は総じて報酬は低い。
先日の貧民地区へのお使いは、急ぎであったためか例外的に通常の二倍の金額が支払われると言う幸運(実際は危険薬物の運び手にされていた)が巡ってきたが、毎度そんな美味しい仕事ばかりではないのだ。
「よし。……んーっ、と!」
左を見ても、右を見ても、分相応な琴線に触れる依頼は無く。背が低いから見つからないのかと、今度は精一杯背伸びをして掲示板を見上げた。
■カロン > 顔を上げて少しだけ目線は高くなり、空色の瞳で、じーっと依頼書を見てみるけれど。
「んー……」
コボルトの討伐は一人じゃまだ不安だし……。
スライムの討伐は……負けないと思うけど、沢山出てきたらちょっと怖い。
渋く唸ってぎゅーっと目を瞑り迷う十数秒。
つま先立ちで――ヨタヨタ、ふるふる。
体幹も、足腰も、全然鍛えられていない小鹿のような足で姿勢を保つのは至難の技です。
「――とっ、あっ……あ、あ、あぁ~……っ」
そして、あっという間に体を支えきれず、少女は掲示板に向かって倒れて行った。
「へぅっ」
と、少し間抜けな声を上げて。