2025/05/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にレナさんが現れました。
レナ >  
「ん、しょ……っと。 ありがとうマスターさん!此処に置いておきますね!」

少女がようやく抱えるくらいの大きさの木箱。
中身は山で採れる果実で作られた果実酒だ。

王都より少しだけ北の名も無い小さな農村。
父や母は忙しく、祖父や祖母も荷車を引いて品物を降ろすのは大変な年齢になった。
15歳を迎えた村の娘、レナが許しを得て王都に訪れるようになったのは数週間程前からになる。

酒場への荷下ろしを終えてゴルドを預かれば、愛想よくその場を去って、大通りへ。

「ふー……。ようやく半分くらいかな…?」

少し荷物の減った荷台に腰掛けて、小休止。
さすがは王都の大通り…目移りするくらいの人の往来…目まぐるしく行き交う人で溢れている。
活気があるなあ…なんて、少し寂しくなってしまった自分の村を思う。

「これはみんな、男の子が都会にいっちゃうわけだ」

レナ >  
「ええっと…後は。宿屋さんに納品と…」

残った品物とメモを確認、ごろごろと馬が荷車を引きながら、共に歩いて目的地へと歩いていく。
納品が終われば宿屋で一泊して、翌日王都で買い物をしてから帰路に着く。
それほど険しい道ではないが、時折盗賊やモンスターが出るため、行きと帰りは冒険者さんに護衛をお願いすることになる。
あまり高い賃金は払えないため、駆け出しや若い冒険者さんにお願いすることが程んどだ。

「宿屋さんにいってー…それから、冒険者ギルドさん。
 あ…さっきの酒場の近くだったんだ。先にそっちに寄れば良かったかな……」

まだ王都の地理に明るくない様子できょろきょろとしている様は、若干田舎者丸出しで恥ずかしい。

レナ >  
「こんにちわ!お世話になってますー!」

目的地に着いて、元気な大声を張り上げる。
外まで聞こえそうな声に、それでも宿屋の主人はまんざらでもない。
これまでは少女の祖父がやってきて、それなりに厳しく品物と値段の交渉をして帰っていたのだが。
少女がその役目を代わってからは、そんな部分もそこそこで落ち着いている。
宿屋の主人としても自分の娘のような年齢の少女にふっかけるような真似はせず、ちゃんと相応のゴルドを支払ってくれていた。

「それじゃあ…はい!お部屋を今晩は借りさせていただいて!
 明日には村に出発しようと思いますので──」

お部屋を借りる手続きをして、馬と荷車を宿屋の裏手の馬舎へと留めさせてもらう。
荷物も捌けて、身軽になった少女はうーん、と大きく背伸びをする。

まだ陽が高い。買い物は明日にすることにして…せっかくの王都…色々散策してみようと通りへと歩み出してゆく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にグアルティエロさんが現れました。
レナ >  
明日にはまた市場を巡り、荷車いっぱいに品物を乗せて村に帰る。
名もなき農村の暮らし、王都との行き来はそれの繰り返しだ。

畜産などの生産品を王都の各所に降ろしてゴルドに替え、
村に必要な品々を王都の市場で購入して、村に持ち帰る。
差額で護衛のための冒険者を雇ったり、ちょっとした私物を買ってみたり。
もちろん持ち帰って貯めるのも大事。

「(おじいちゃんは王都に来るたびに酒場でお酒を飲んでたって言ってたな~)」

あいにくお酒はちょっと苦手。
村のお祭りでエールをコップに一杯、それだけで目の前がくらくらになって、お前は酒はやめておけと父に言われた過去がある。

往来へ踏み出すと遠目に見えるのは立派なお城。
村の男の子達はあそこやそのお膝元の街…富裕地区で暮らすのを夢見て村を出ていく。
大半は冒険者や他の仕事で食い扶持を稼いでいるのだろうけど──。

「子供の頃に別れたあの子なんかも、今は立派な鎧とか着ちゃってたりして…?」

往来を、王城に向け歩いてゆく騎士様らしい人を見送りながら、そんなことを考えたりもしていた。

グアルティエロ >  
「おっと」

あっちをきょろきょろ、
こっちをきょろきょろ、
王都を物珍しそうに散策する小柄な少女――
そんな彼女に曲がり角からひょいっといきなり出てきた影がぶつかる、あるいはぶつかりかける。

「あーっ堪忍! ごめんな!?
 おっさんどこに目ぇ付けとんねんってなぁ」

背丈だけでも少女より頭三つは高くって、
目方ときたら少女より十倍重いという、
ド派手な頭にド派手で趣味の悪い上着の目立つ大男。

ぶつかれば、間違いなく撥ねるに近い衝撃ですっ飛ばすだろうから手を伸ばして支える、ぶつからずとも、慌てて手を合わせて平謝り。

その頭ぐらい日中においてはきらきらと輝いている紫色のサングラスを外して、軽薄そうな顔付きに『弱った!』とでも書いた表情で、

「いやほんとごめんな。怪我はないか~?」

レナ >  
「わあっ!?」

少し、余所見をしていたのもあって…。
曲がり角から出てきた大柄な男の人とぶつかってしまった。
その場で尻もちをついてしまうと同時、見上げてみれば…。

「ご、ごめんなさい。私ったら余所見なんかして……」

男性の影にすっぽりと隠れてしまうような小柄な少女。
手を差し伸べられば、ありがとうございますと言いつつその手を素直にとって立ち上がる。

「いたた…あ、だ、大丈夫です!これくらい!」

村では落馬したことだってある。この程度なんてことはない。ただ…

「(すっご…都会にはこんな色彩の人がいるんだあ……)」

ただただ、男の容貌に目を丸くしてしまっていた。
田舎の村にはまずいないんだもの、こんな人。

グアルティエロ >  
「あっちゃー」

考え事をしながら歩いていたせいで、曲がり角から誰か来るかもだなんて全く気に留めていなかった。
結果。衝突事故。
小さな女の子の悲鳴に慌てて手を伸ばしてみたものの尻もち付かせてしまったものだから、
眉根は寄るわ目尻は下がるわ口元がへにょへにょに曲がってしまうわ内心が顔にありあり。

「いや、いやいや、おっちゃんこそぼけー歩っとってな。ほんま堪忍や」

ひょいっと、いかな小柄な少女にしたって手を取って貰えば林檎でも持ち上げるみたく軽々立たせ。
もう片方の手では胸元の前に立てて言葉もしきり謝り通し。

「大丈夫、そー、ではあるけど。悪かったなぁほんま。お詫びさせてや。
 ……あ、俺の馬鹿たれこーゆー時に限って……
 暑いし何か冷たいもんでも飲ませたろか?」

ごそごそ、と懐を漁るものの、こういう時に限って、いつも持ち歩いてる飴ちゃんやら何やらが品切れ。
しまったなぁとかぼやきながら、サングラスを外しても日光できらりと輝く瞳と、より燦々と明るい髪色の頭も巡らし……
賑やかな通りに幾つも並んでいる露天のうち果実を絞った果実水やら果実氷やらに目をつけてから少女に戻して首を傾げる。

「……ん? どしたん、そない、まじまじ見て。何か付いとる? え、鼻毛とか飛び出してへんよね?」

そこで、自分の顔やらに目を真ん丸にしている少女の様子に、うん? と不思議そう。

レナ >  
「え? や、そんなお詫びなんてされるほどのことじゃ…」

風貌もすごいけど、変わった喋り方。
王都では流行っているのかな…?なんてズレたことを考えつつ、ぱたぱたとスカートについた石埃を叩いて。


「あ゛ッ、えっと……か、変わった髪の色だったので、つい…」

思わずまじまじ見てしまって、失礼だったかな…と、翠色の瞳を逸らす。
村では絶対こんなに目立つ男の人、いないし…!仕方ないと思うけど…!

そして、余所見をしていてぶつかってしまったのは、自分のほう。
お詫びをしてもらうなんてとんでもない、と身振り手振り、必死にアピールしていた。

グアルティエロ >  
「女の子張り倒しといて何もせんかったら罰当たるわ。
 今、喉乾いてへんかったら、何か美味いもんでも買うてもらおかなぁ」

色んな人たちで賑わう王都でも風変わりな格好に喋り方。
あの人すごい珍しい人だったんだな……と、少女もそのうち思う事もあるだろうか。
ポケットから革紐で括った革の財布を出してはゴルドを数え始めて、
お詫びと称してお駄賃渡そうとしているところも含めて。

「ああ。ハハッ。かっこええやろ~。染めてへんねん。地毛やこれ」

じいっと見遣ってくる視線の答えを得れば、気分を害した風もなく、からからと笑った。
一生懸命に『とんでもない!』とお詫びを断る姿勢も、うんうん、頷きつつ。

「ええ子やね。なんかこう思わず構いたなるちゅーか……垢抜けてへんちゅーか……
 王都の子やないんかな? どっかの村から出てきたん? 俺が言うのも何やけど色々危ないから気ぃ付けてなぁ」

こうやって、人通りが多いせいで誰かにぶつかる事もあれば、もっと危ない事もあるから云々。
余計なお節介をぺちゃくちゃと。

レナ >  
「ダメですよ。このくらいでお金なんてもらえません!
 もらっちゃったら私こそバチが当たります!」

革の財布を紐解く様子を見れば、ようやくちょっと落ち着いたのか少し強めの抗議をする。
お金はまっとうな方法で得るもの、という生真面目さが感じられる程だ。
そんな節々からも、男の言う垢抜けなさ、は感じ取れるやもしれず。

「ふふ、綺麗だな~って思います」

地毛…地毛なんだ…と内心驚くも、
でもそういう鳥さんもいるからおかしくはないのかも…とヘンに納得する。

「あっ…私レナって言います。
 王都から少し北の丘にある村から、買い出しとか色々で王都に来てるんですよ♪
 アブナイ…ですか?」

出自を明かしつつ、小さく首を傾げ、サラリと陽光のような金髪が揺れる。
こんなに活気の感じられる街なのに。たまにモンスターが出て騒ぎになるうちの村のほうが危険なんじゃ…なんて思ってしまう。

グアルティエロ >  
「おおう。お嬢ちゃんに罰当てるんも本意やないな、それは。
 落とし所どないするか悩みどころやけど、にしても、ほんまええ子やな……」

飛んできた抗議にびっくりして目を丸くした。
小銭とはいえ銭は銭だから真っ当な方法で、と、立派な主義も伺える生真面目さに、
『ほんまええ子やな……』と次には丸くした目も細めて顎に手をやり感心している。

「んふふ、おおきに。タダやからたっぷり見てったって」

光の具合によって、紫を基調に、青色になったり赤が差したり桃色が覗いたり……
鳥なら成る程居るだろうその色合の褒め言葉にまた嬉しそうに笑った。

「あら、ご丁寧に、おっちゃんはグアルティエロいうねん。
 ノーシス教いうとこの神父さんやっとってな、これでも。王都にゃよう来んねん、宣伝に。
 アブナイで~? モンスターとかは出ぇへんけど人がな? ぼったくりとか物取りとかぁ。」

自己紹介に、胸板に手を当ててお礼をしながらこちらも名前と所属をつらつらと。
自分よりか色合は控えめなれども綺麗な髪に瞳とあどけない顔立ちをじっと見据え、
人が賑わう場所だからこそ人が起こす問題があれやこれやとかなりあるのだと嘯き。

「……あんま大きな声では言えへんけどさ。レナちゃんみたいな可愛い子かどわかす奴とかも居んねん」

腰を屈めては、耳打ちするように手を口元に立ててひそひそ声で、金銭問題だけでなく性犯罪もあると、ひそひそ。

レナ >  
「私もお兄さんも怪我がなかった、お互いに謝りましたし、それでいいと思いますよ?」

むしろそれで何がいけないのかもわからない、といった様子…だったのだが。

「グアルティエロさん。
 ええっ!?神父様!?と、とんだご無礼を…」

村にも小さな小さな教会がある。
年老いた神父様は村の相談役であったりして、少女からすれば村の中でも偉いヒト、である。
故にノーシス教の神父を聞いて畏まってしまうのも仕方がないのであった。

「私なんか拐かしても、お金も大してもっていないんですけど…」

忠告にはほんのり苦笑する。
だって、往来を見れば派手な格好の美人さん達も多くいる。
そんな中でわざわざ田舎くさい村娘をかどわかす、なんて…と思ってしまうのだけれど。

「でも、ご忠告ありがとうございます。気をつけますっ!」

それはそれとして注意をしてくれるのは善意。
ちゃんと聞いて、身に着けることが大事。大人の言うことはちゃんと聞くものである。

「でもちょっと照れますね…」

一方で、可愛いと言われたことにはむず痒そうに照れ照れとしていた…。

グアルティエロ >  
「まぁ~。そう言うてくれるんやったら好意に甘えよか」

お詫びさせて! 受け取れません! 等と押し問答するわけにもいかない。
引け目はあるにせよ彼女の優しさを受け取ることにして、胸の前でもう一度手を立てる。

「ああ、ええ、ええ、ノーシスいうても本流やないし神父いうても教会持っとらん流れの人やさかい。
 近所の気の良いおっちゃん、程度に気安く見てくれたら嬉しいわ」

役職に驚いた様子には、可笑しそうに笑いながら手を右に左にゆらり緩りと揺らして物言いも緩いもの。
彼女の村にはきちんとした神父さんが居るのだろうが自分はその人とは色々違うから、と。

「田舎いうんは人ん繋がり深いもんやで結構金たかれる! なーんて、考え持つ奴がおるし……
 あーそのほらあとほら……えーーーーと……言いにくいんやけど……男が女拐ったらほら……」

田舎娘には、田舎娘なりの需要があって、生々しい話になってしまうから言い淀む。
苦笑を浮かべている彼女はどうにもやはり分かっていない様子だからあれこれ、
出来うる限りひどい言い草にならないよう言葉を選んで。
兎も角ひとまずは気をつけると言ってくれたので、本当にな、と念押ししてから。

「ん? ハハハッ。ほんとの事やん。えらい別嬪さんやと俺は思うで~?
 レナちゃん今他ん人とか見とったけど別に見劣りせんぐらい器量良えわ」

もじもじと照れ始める様子に、そこも含めて、顔立ちにしろ髪色にしろ別嬪としきり褒めて。

レナ >  
「近所の気の良いおっちゃん、なんて神父さんいます?」

そんな様子に思わずくすくすと笑みを零してしまって。
でも世の中は広いし王都まわりは人も多い。
色々な神父さんがいるんだなあ、と認識を改めることができたかもしれない。

「?」

なんだか言い淀んでいる様子に小さく首を傾げていた。
無垢、というか男女のそういった営みにも疎いのだろうことがよく理解る。
15歳になったばかり、村には他に若者も少ない環境では無理もない。
ともあれ、気をつけますという宣言で安心してもらえたようだった。

「そ、そう…ですか…?」

さすがに褒めちぎられると赤くなってしまって。
確かに村では器量よしと言われているけど、そもそも若者自体がみな王都に出てしまって少ない小さな村だ。
王都の女性と見比べればさすがに派手さもなく、幼げであり地味でもある、そんな自覚もあった。

グアルティエロ >  
「おるで? ここに。今度見掛けた時は『グーのおっちゃーん!』いうて声掛けてみぃ。
 ジュストいう洗礼名もあるけどグアルティエロで構へんしグーで略しても良えで~?
 はーーーーい! て元気に返事したるわ」

ビシッ! と無駄にキレのいい動きで親指立てて自分を指差してからサムズアップ。
朗らかに笑ってくれる彼女にからからと元気よく笑って。

「まーまーまーまー……」

彼女、見たところ13~15歳前後といった具合に見受けるがそちらの知識はどうにも疎いらしい。
村の方針なのか村全体でちょっと甘やかしが過ぎるのか、両方か、王都に出すには危うげな……
『……今度村んお邪魔すべきかな……?』とは余計なお節介も過ぎるが一先ず置いておいて。

「そうそう。まーな、ええ仕立てん服着て綺麗にお化粧してっちゅーのも魅力やが、それだけが女ん魅力ちゃう。
 レナちゃんみたいな素朴で放っとけない感じ、さっき俺も構いたなる言うたがそれも魅力やで~? 自信持ち?」

髪、瞳、顔立ち、照れる仕草に、全体的な雰囲気まで言い始めて褒め殺しの様相になってきた。
只お世辞でもなんでもなく事実、少なくとも己は本当にそう思っているので恥ずかしげもなくつらつらつら。
耳まで赤くなって首まで赤くなってきそうなほど火照っているからそこでようやっと止めた。

レナ >  
街角とはいえ大人と少女がにこやかに笑いあっている様子はどこか牧歌的で。
そういった雰囲気もあって、男の言う王都の危険…というのはまだ少し、少女にはしっかりと伝わっていない。
実際に少女が王都を歩くとしても日の高いうち、大通りが多くなるため、目立った危険はそこまでないのかもしれないが。

「それはさすがに神父様相手に失礼ですよ」

キレの良い動きに頬を綻ばせながらも、そこはちゃんと、真面目に。
基本年上ばかりの村育ち、年上への礼儀は弁えているのだった。

──少女が一人、王都に来ているのは単に他に若い人間がいないから、という理由もある。
祖父や祖母も、馬と荷車で村から王都へというのは厳しい年齢となり、父や母は働き盛りで多忙である。
それでいて村の中でも器量良しであれば、品物を買い付ける王都の人間にも気に入られるだろうという村の者達の思惑もあった。
護衛すらも冒険者に頼ったりしているあたり、本当に小さな村から来ていることが伺える。本来ならば村の若者がいれば一緒に来るものなのだろう。

「わ、わかりました自信はわかりませんけどっ」

ふしゅう…と煙が立ちそうなくらい真っ赤になるほど褒めちぎられてしまった。
ぶんぶんと左右に頭を振って、熱を散らそうとしている様子などはあざとさすら感じられる。

「えっと、すっかりお足を止めさせてしまいましたけど、大丈夫なんですか?」

神父さんだし、何処かに向かっている途中だったのでは…と、心配する。
まだ顔が少し熱く感じるのか、両手で自分の赤くなった顔に触れつつ。

グアルティエロ >  
田んぼの前で鉢合わせたご近所さん同士が鉢合わせて世間話でもしているような雰囲気漂う、初対面。
危険を説くには和やかにしすぎたあたりは『しまったかなぁ……?』等と思わないでもないが……
大人の言うことはきちんと聞くとようく教育されているようだしようく口酸っぱく言っておいた。

聞けば、少女一人でやってきたのは村の人手不足という。
己があれこれ心配するところは村衆もきちんと心配しているらしき配慮は伺えたものの、
神父やるだけあってお節介なので見目は年若い男ながらに実齢通りおじさん臭く口酸っぱい。

「んはは、村の神父さんにそんな事言うたら怒られるかもしれへんわな?
 グアルティエロ神父は例外! あ、ジュスト神父で声掛けたらたまに気付かんかもしれんで根気よく声掛けたって」

洗礼名呼ばれて気付かないかもしれない神父はどうなんだという話だが、んはは! と笑って誤魔化し、

「なぁに、そのうち自信も付いてくるから安心しぃ、どこ行ってもレナちゃんなら可愛い言うて貰えるわ」

演技臭くもなく素で全身で照れ照れしているあたり口端がだらしなくなるぐらい撓んでしまう。
おっと、と緩みすぎた口元を直してから、ついで向けられた言葉にも、おっと、だ。

「ああ、せやな、そしたらそろそろお暇させて貰うわ、レナちゃんも買物の途中やろ? 足止めさせて堪忍な。
 またそのうち縁がありゃあ会う事もあるやろしそちらん村にお邪魔する事もあるかもやからそん時ゃ宜しゅう」

用事、の言葉に頷いてから、ゆらりと右手を上げつつお別れの挨拶を。

レナ >  
耳疎い少女であっても女であることには変わりはない。
見た目を褒められれば当然悪い気はしないけれど、面と向かってはっきり言われることなんてあまりないから、
それだけでちょっと、気恥ずかしくなってしまったのだった。

「わ、村にですか?」

宿屋とかみたいな施設ないんですけど、大丈夫かな…と思いつつ。
ああ、でも神父さんなら教会のお部屋で宿泊できるのかなと思い直す。

「その時は是非。特に見るようなところはない村ですけど、
 小麦で焼いたパンや自家製のチーズなんかには自信がありますので!」

歓迎させてもらいますよ、と胸を張った。
そういえば、巡礼なんかで村を訪れる神父さん何かには、滅多にないことだからとおもてなしをしていたなあ…と、子供の頃を思い出す。

「色々とご忠告、ありがとうございましたっ!
 余所見しないよう、気を付けて歩きますね!」

片手をあげて去る神父さんに、少女は元気一杯に手を振って見送った。
王都の町中ではちょっと目立ってしまう行動。
されど村の少女の持つ垢抜けない雰囲気にはよく似合う、そんな所作。

「──すごい髪の色の神父さんだったなあ」

これが王都…。
まだまだ見たことのない人やものがいっぱいである。
忠告されたことも胸に刻んで、まだ陽が傾くには早い時間。
もう少し町並みと、賑やかな露店を見て回ることにするのだった。

グアルティエロ >  
「うん、もしかしたらな、ほら流れや言うたやろ? あっちこっちかなーり当て所無く彷徨いてんねん」

元来の拠点である、神聖都市、出向先でよく顔を出す此処王都、他にもあちらこちらをぶらりぶらり。
地図にも乗っていないような村々に居ることもあるから彼女の村にもひょっこり顔を出す、事もある。

「ほほ~。チーズ! ええね、好きやねん、小麦のパンに挟んで食べるのいっちゃん好きまである。
 楽しみにさせてもらうわ」

歓待の予告にうんうんと頻り頷いてはその自信のある味に思いを巡らし。
ぐぅ~。
と、お腹が鳴ってしまったのは流石に恥ずかしかった。

「……まぁ今のは聞かんかった事にしといてや、お腹の虫がな、悪さをな……。
 ま、まーまーまー。うん、行きも帰りも気ぃ付けてや、俺も神さんにお祈りしとくな?
 それじゃあ、またなあ、レナちゃん」

綺麗な髪の毛先も、似合っているディアンドルの裾もひらひら元気よく一杯に振ってくれる返礼にやはり笑顔は絶えない。
名残惜しさまでつい感じてしまうぐらいだったが手をひらひら緩々振りながらも踵を返してすたすたすたと人混みへ……
紛れるにはかなり目立っているから少女も見失うまで少し掛かったろうがそのうち見えなくなっていくだろう。

「元気なかわいこちゃんやった」

しみじみ、呟きながら、遣り取りを思い返せば思い出し笑いをぽつぽつ零しながらに用事を済ませに歩いていく――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からグアルティエロさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からレナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にライラさんが現れました。
ライラ > じゃ、これお願いね」

冒険者ギルドの受付で討伐依頼を受け、達成確認の収集部位の入った袋を手渡しては報酬を受け取る。
予定よりも多かった討伐の結果、報酬もそれなりに色が付き余裕もでき。

このまま帰ってもいいのだが折角なのでギルドで売られている遺跡からの発掘品を見ようと考え。
それらが置かれる一角に向かえば、珍しい剣や魔導機械を眺め始め。

「こう言うのは僕に使えそうなのがあれば一個ぐらいは…でも、高いよね」

それぞれに用途が書かれた説明を見てから商品に目を向けて考え込み。
買う買わない以前に先ずは使うのかとかよく考え、使わないなら買うだけ損、そう考えては使いと共に悩み。
そしてこれは使わない、似たようなのが安く買える、などと判断しては候補から外していき。

「魔法を防げるようなアクセサリーなら一番だけど…」

そう言うものは滅多になく、今も並んではいない。
そう言うのがあればと言葉を零しながら、有用性から珍しいものにと目的を変えて商品を眺め続けて。

ライラ > しかし結局のところ、何か買うことはなくそのままギルドを後にする。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からライラさんが去りました。