2025/05/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアリアナさんが現れました。
アリアナ > 昼を過ぎたころの時間帯の平民地区の大通り。
客を呼び込む商店や露店、そして行き交う人が多くいるその場で一軒の店のそばに立って客引き。
消して大きくはないが人の耳に届くように声を上げては客を呼んでは店内に案内し。

「いい武器がそろっていますよ。一度見て行ってください」

そう冒険者や傭兵という姿の相手に主に声をかけていき。
時々にそれ以外、衛兵やほかで店をやっていそうな人も店に案内をする。
そうして店は常に一定の客がいるようになり、店内では店主や店員が忙しそうに接客をしているのが見え。

冒険者らしくない依頼ではあるが、報酬の他に購入の時に割引をしてくれるという魅力に負けていて。
積極的に声をかけては客を引き、スルーされては次の人に声をかけ。
また目についた人に声をかけて店にと案内をしていく。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアリアナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に影時さんが現れました。
影時 > ――手続きと書類が絡むような事態は、つくづく面倒だ。

副業と呼ぶ仕事だけではなく、本業と言い張る仕事でもそれが絡み出すと、おのずと渋面が浮かぶ。
いやいや、事務員や受付の苦労を考えればこの位楽なもの――なわけではない。
嗚呼。さながら、他者への思いやりと面倒を厭う心情が天秤に掛かり、揺れるかのよう。
だが、此れも仕事だ、と。そう言い聞かせ、割り切りながら事を済ませてゆけば。

「……――気づけば夜かぁ。滅入っちまうなァおい」

そうぼやく声が、平民地区の一角、夜を迎えた冒険者ギルドに隣接する酒場の一席にある。
迷宮から帰還しない者達を捜索する依頼を受け、結果としてどうにか生還を迎えた、までは良し。
命は大事だ。初心者の生命はだいたい安物同然ともなりうるが、だからと言って無為に死なせていいものでもない。
この街でそれなりの暮らしの家に生まれたものなら、自分と違って親も家族も居ることだろう。

問題はその後。

報告書を書面で出すことを求められ、事情聴取への同席を求められ、さらに説諭じみたあれこれまで。
最終的にはちゃんと報酬は支払って貰ったとはいえ、そこまでに至る諸々に時間がかかり過ぎた。
休憩室を借りて身を清め、着替えてみてもなお、奇麗な筈の装いに何処かヨレて見えるのは気のせいではない。
こういう時は、そう。呑まずにはいられないものである。

「おぅぃ。おかわり一丁。なんだったら、瓶と氷で一緒に持って来てくれや」

夜を迎え、混雑する中で手を上げ、通りかかるウェイトレスを呼びつけて注文を通す。
卓に乗るのは何もかかっていないサラダと茹でた腸詰、そして今しがた空になってしまったグラスだ。
卓上で、葉野菜をもしゃもしゃと齧る茶黒の齧歯類二匹から、まだ呑むのかとばかりの視線が生暖かい。

影時 > 「……なンだね? いつも呑んでる、とか? 気にすンな。いつもと違う酒だろ」

喋る生き物ではないが、こう思っているのだろうか。きっと、恐らく、多分。
なまあたたかーい目線を遣ってくるシマリスとモモンガに着物姿の男が宣えば、ぱたぱたと二匹が尻尾を動かす。
二匹に人語を解しているように思う節があるなら、当たらずとも遠からずと言ったところだろう。
普段呑む酒とは違うから問題ない、ノーカンだとか言う飼い主、親分の有様に二匹が耳を震わせ、顔を巡らせる。

ウェイトレスが運んで来る品に気づいたのだ。
ドワーフ仕込みの蒸留酒と名水で名高い地の冬場の時に切り出され、温度を保ったまま運ばれた氷である。
見た目こそ地味だが、いずれも安いものではない。初心者が呑もうとするには贅沢が過ぎるもの。

「おぅ、すまんね。あぁ、あとナッツの類も持ってきてくれると有難ぇな」

礼を述べ、追加注文を頼みながら下がってゆくウェイトレスの姿を見送り、グラスに割られた氷を盛る。
氷に対する酒の分量は、適当だ。並々と。たっぷりと。呑んでいるうちに少しでも薄くなってゆく、かもしれないくらいに。
ほぼ生に近い濃さのまま、ぐいとグラスを呷る。ほのかな香り、喉を焼き、臓腑に落ちてゆく感覚が何とも言えない。

影時 > 顔馴染みのウェイトレスなら、男がナッツを頼む時の要求は理解していることだろう。
塩がかかっていないものを頼むのだ。ナッツは勿論酒のつまみにもするが、野菜を頬張る二匹の餌でもある。
ぷはぁと酒を呷り、息を吐いていればその間に追加注文の品が運ばれてくる。
その到来に野菜を食べ終え、別途小皿に注がれた水を舐めていた齧歯類たちがありありと喜色を示す。
沢山食べさせるつもりはないが、自分と半分こにするくらいならば――まあ、きっと適量だろう。
小皿に乗せられた胡桃を二匹が取り合い、ぢたばたの末にそれぞれが思い思いのものを摘まむ姿を眺めて。

「……やれやれ。
 この前のとこは、ちぃと落ち着いてきたら潜りなおしたい処だが……毒気がなあ」
 
喧嘩するな、とまではいうまい。本当に取っ組み合いの体を見せたら、その時はその時である。
大人しくする姿にほっとしつつ、潜った場所のことを思い返す。
救出者たちの申告、報告内容を読み返すだけでも、随分と様相が変わっていそうだ。
その際、見込めるものがないわけではない。未知なるマジックアイテム、魔導機械、なぜそこにあるかと分からぬ遺物等々。
行けば必ず手に入る? そんなわけがない。されども危険を冒さなければ、そもそも何も手に入らない。
ぼやく飼い主の言葉を聞き、二匹が胡桃を抱えつつ顔を見合わせ、尻尾をだらりとしならせる。

二匹は一見ごくつぶしの賑やかしだが、毛玉の冒険者である。
飼い主に引っ付いてどこにでも行くし、何処にでも行きたい。だが、危険地帯ばかりは如何ともし難い。
忍者たる飼い主が耐えられる毒気や瘴気の類が、二匹にとっても耐えられるとは限らない。