2025/04/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアシュラスさんが現れました。
■アシュラス > 「――だから誤魔化してませんて!」
商店が両脇に立ち並ぶ通りの片隅で、騒ぎ事が一つ。
露天の前でその店主と口論になっているひょろ長い男。
眼鏡を押し上げながら僅かに背を前へ傾斜させ、乗り出すようにして。
「ほんまに最初から中身足りてなかったんですってっ。嘘なんかゆうてませんっ。――証拠? ……そんなんないですけど……でもほんまに…!」
何やら箱詰めにされた商品の中を見せながら言いよどむ男。く、と口端を噛んで。
珍しい南国の果物を売るその店。橙の果実が12個詰まっている筈の箱の中身は11個。
普段ならばこうも食い下がるまいが、明日来客用にと絶対に12個必要なのだ。
しかもこの果物はこの店でしか売っていない。男は髭面の店主にそう説明しながら。
「元から入ってなかったんですって。お願いしますよ、困るんです」
懇願口調になってきた。拝みそうな勢いで頭を下げ。しかし、店主は確かに総て12個詰め合わせた、きちんと自分の目で確認したと中々譲らない。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスヴィチューナさんが現れました。
■スヴィチューナ > 給料日前である。
基本的に生活費の内食費に大半消えがちの
保険医にしてカウンセラーの恵体女子としては、
安くて品質もそれなりの露店通りは有り難い場所なのだ。
当然学院からの帰りに寄っていっても何の不思議もない。
それなりに収穫あって両手に袋下げ、
ほくほく顔で帰路につこうとしたところで騒ぎに気付き
野次馬根性丸出して近づいていくと
店主と客の言い分がまるで違う状況であると知って
知らん顔で通り過ぎようとした時、ある事が目に入り
慌てて軌道修正のうえ、ぽちゃった体二人の間に割りこませるようにして。
「ちょちょちょちょっと待ってください。
えっと、わたし只の通りすがりなんですけど、一度状況整理させてくださいね?」
まずは店主指さして
「あなたはこの人の注文通り、確かに12個の果物をこの箱に入れたんですね?」
次にくるりと振り向いていかにも人良さそうな背の高い男性客に向き直って
「でも、この人が中を確認したら11個しか入ってなかった、と。
間違いないですね?それなんですけど・・・」
そういってその箱の蓋を出来るだけ高く持ち上げてみる。
すると、そこには蓋にあたる部分が丁度傷んでしまっていて、
そこにへばりついている橙色の果実が一つ。
それをよいしょと外して手に持ってから
「・・・さっきちらりと見えちゃったんですよ、
こんな事じゃないかと思いました。
それでですね・・・このままだとお二人とも立つ瀬がないでしょうから
わたしから一つ提案させてもらいたいんです」
一旦傷んだ果実を店先の適当な所に置いてから、箱に入っていたのと同じ果実手に取って、
再度店主に向き直り。
「これをわたしに売ってください。普通の商売ですから問題ありませんよね?
それで・・・」
もう一度男性客の方向き、どうぞとばかりにその果実差し出して。
「こちらをあなたにあげますから、代わりにこの傷んだやつわたしに下さい。
そして・・・」
料金払い終えた手で傷んだ果実掴むと、そのまま一気に口の中に放り込んでしまい、
ゴクリと飲み込んでしまう。
「ちょっとアレかもしれませんが、これで手打ちにしてもらえませんか?
誰も損しませんし、問題ないと思うんですけどっ!?」
最後の方焦った言い方になったのは、今までのところ2人に有無を言わせずの行動だったため
不興買ったらどうしようかと、今更ながらびくついてきたからで。
■アシュラス > 入れた入れないの堂々巡りな押し問答が続く中。
不意に割り込む人影。
急に間に入られて目を丸くする店主と眼鏡男。
「………は?」
思わず面食らったように何が起こっている?と同じ顔をする二人の男とその間に身体を押し込める様に声を発する女性。
そして、口をはさむ余地もなく俯瞰的に事態を見て飲み込んだらしい彼女の解説と――
「「あ……っ」」
急に果物を売ってくれと口に放り込む仕草に一体全体何事かと呆然としてしまう大の男が二人。
あ、がハモった。
「……………えーと。あ、はい………」
ちょっとリアクションが上手く取れなかった様子で力業にて解決された事態を前に、気の抜けた返事をして、眼鏡がずり、と傾く男。
店主の方も、まあ…いいか…。このままでも不毛なだけであると良く分からないながらも肯いて。
『毎度』と代金を支払う様に手を出して。受け取れば納得した。
■スヴィチューナ > とりあえず事態が収まった事に、
内心ほっと胸を撫で下ろす。
まあ二人とも大分毒気抜かれたような顔しているようではあったが、
これで自分がちゃんと代金払えば丸く収まるのだと
気を良くしながら財布取り出して告げられた料金支払おうとして
「あ」
思わず手が止まる。
いや、足りない訳ではない。
一応学院勤めなのでそれなりの俸給は貰っている、しかし。
それまでに散財しすぎた保険医の残り財産は料金支払ってしまえば
文字通り雀の涙しか残らなかった。
さっきまでの勢いはどこへやら、血の涙流しかねない雰囲気で
店主の手のひらに代金分の金貨置いて。
「・・・これで大丈夫ですね?
追加払えとか言われても、もう無理ですから、わたし・・・」
少し涙ぐみながら、今度は男性客に向き直り。
「よかった、ですね・・・これでお客様に失礼する事ありませんよ、
ほんとうによかっ・・・」
そこまで言った後、ついにボロボロと大粒の涙零してしまったのは不覚だったが、
一度堰切ってしまった感情は止める事出来ずにいい大人の女性が
二人の男性の間でわんわん泣き始める図は別の意味での地獄であっただろうか。
■アシュラス > 「えっ……」
なんだか颯爽と現れて事態を収拾して去る謎のヒーローみたいなお方が現れたかと思いきや。
代金を支払おうとするお手々が止まってらっしゃる。
その赤い涙すらちょちょぎれそうな空気を……眼鏡男も読めました。
金ねえんだな……
読めてしまったのでこれは気まずい。
しかもその内泣き出してしまうので店主と一緒におろおろと狼狽えて。
「ちょ、え、あ、捨て身の善意…!?
捨て身過ぎてどうしたらええんこれ……!?
ていうか、おたく失礼やけど割と考えなしにやったやろ……!?」
お人よし過ぎて心配通り越して怖い。
身を破滅させかねない彼女に、困ったようにずれた眼鏡を直しながら。
「えーと……取りあえず泣き止み? お店の人も困ってはるし……代金は折半するから。
はい、これ半分な。手ぇ出しや」
と、片手に持っていた彼女が渡してきた果物を箱に収めてから。
彼女が食べたからには全額持つのも変な話なので半額と妥当な線で号泣する彼女に眉を八の字に下げて覗き込むように腰を落とし、銀貨を5枚差し出した。
■スヴィチューナ > 捨て身&考えなしと言うか、ついうっかり騒ぎに近づいてしまい、
更に見なくても良かった二人の主張食い違いの原因に気付き、
そのまま去るのも忍びなかったから、勢いに任せて
半ば力づくの解決してしまっただけである。
まさか最後の最後、料金払う段階で家計の危機に直面するとは思ってなかったので
爆発させた感情のおもむくままに泣きはらしていたが
流石に見かねたのであろう男性客の善意たる銀貨5枚はしっかり握りしめてから、
今さらながら迷惑にならないようにと取り合えず近くにあったベンチに移動して。
なお無意識にではあったが銀貨ごとしっかりと男性客の手握ったままだったから
用事がある筈の彼もいっしょにベンチに来る羽目になったか。
「ばいぃ・・・ずみまぜん、折角丸く収まりそうだったのに
余計にご迷惑おかけして・・・お金有難う御座います、これで明後日までくらいは
生き延びられそうです・・・」
まだ若干しゃくりあげながら、相手に感謝の意を述べる。
なお、給料日は多分後一週間くらい後なのだが、それは男性客は与り知らぬ事だろうし、
関係もない事で。
■アシュラス > もうちょっとこう……何か手があっただろう。
少なくとも果物を食べてしまったら払うしかなくなってくる。
懐に余裕があるならともかくそうでもないならマジでちょい待ち案件だった。
せめて止める間は欲しかった気がした。
そして、彼女へ返金するような形で半額は払ったが、よくよく考えれば傷んでいた果物を定価というのもどうかと思う。
ので店主へと交渉した。
「大将、あれ傷んどったやん? ちょっと正価で売るんは阿漕ってもんちゃう?」
そういえば、冷静になった店主も別に悪徳商人でもないので肯いて、銀貨二枚分引いてくれた。
それを握りしめて、ベンチの方へ引っ張っていく彼女へ、
「ちょっと姉さん、そんな焦らんで……手。手……僕の手も掴んどんねんけどー?」
とベンチまで引きずって来られて苦笑しつつ、銀貨二枚分の割引分。
一枚…と差し出しかけたか、うーむ、うむむむ、と少し悩んで。
困り笑いを浮かべながら銀貨二枚彼女へと差し出し。
「――そら良かった。そしたらはい、値引きしてくれはったからこれも持ってき。
難儀やったな、もう泣かんとってや。
ほら飴ちゃんあげるわ」
とベンチに並んで座ると銀貨に続いて青紙に包まれたキャンディをひとつ、おばちゃんよろしく渡していこう。
■スヴィチューナ > 「・・・おお」
男性客の店主への交渉耳に入って、「そう言われてみればその手もあったなー」とか
感心してしまい、思わず称賛の声出てしまい。
そして、ベンチに落ち着いてからしっかりと手握り締めていた事に・・・
というよりそもそも生徒以外の男性の手引いたのも初めてであった事に気付いて、
慌てて手離してぶんぶん振り。
差し出された銀貨には今度は首をぶんぶん横に振って受け取れないと
「いいいえ!それは貴方がとっておいてください!!
わたしは半分払ってもらっただけでも有難いです、それなのにそんなにしてもらったら
あなたの方がお人よしですよっ!?
あ、飴ですかっ♪有難うございます、喜んでいただきますっ」
しかし、次いで目の前に現れたキャンディには文字通り目を輝かせて、両手を差し出す。
何というか、少なくとも成人女子の態度にはとても見えないだろう。
■アシュラス > 感嘆符めいた声が聞こえた気がした。
『姉さんもまだまだやな』そうちらりと流し見てにやりと口角を上げる。
気づけばがっつりお手々を若いおなごに握られていた。
アラサーは童貞みたいに挙動不審になったりはせず、暢気に強引な姉さんやなあーと笑って。
「ほんだら……半額言うたからには、ほら、一枚だけとっとき。
これで手打ちや。
いやあ、姉さんのお人好しには負けるわー。
それになあ、あんな高価なくだもん、一気食いなんてあかんでほんま。味なんて分からんかったやろ、勿体ない」
ちょっとばかし説教、食べ物に対してとても勿体ない事をしていると無鉄砲な行いよりもそちらを重点的に考えていて。
飴玉を渡すと、非常に無邪気なご様子。
餌付けできそうな姉さんやな。
心からそう思った。
■スヴィチューナ > ・・・いい人だあ。
ここまでの男性に対する保険医の印象がこれである。
まず店と口論にこそなってはいたが、事荒立てるのを嫌ってか
あくまで平静に話し合おうとしていた事。
次に保険医が割って入った時に邪険にせずに受け入れてくれた事。
(これに関しては、正確には何か言う暇も与えられなかっただけかも知れないが)
三つめが、黙っていればそれ以上自分の懐傷まなかっただろうに、
わざわざ半額を払ってくれた事。
最後に、好物の甘いものをくれた事。
・・・印象的にはこれが一番大きなポイントではあったが。
「・・・いいんですか?確かに有り難いんですけど、
あなた、わたしに余分にお金払っちゃってるんですよ?
それなのに折角の儲け半分こしてくれるなんて、大損ですよ?
・・・う。で、でもああしないと店主さんの評判落ちちゃうじゃないですか。
だったら早く何にもなかったことにしようかなーと・・・
・・・はい。少しだけ噛みましたけど、美味しかったです甘かったです。
もっと味わえば良かったなと、少しだけ後悔してます・・・」
食べ物が勿体ないと説教されれば、そこは自分も大切にしたかったところなので、
流石にしょぼんと項垂れながら聞き入っていたり。
しかし、手では早速包み紙解き、ミルク色のキャンディに目奪われていて。
■アシュラス > 「………?」
彼女の方から漂ってくる空気が、『このアラサー人が好いな』という感じのものに思えた。
単に女の涙が必殺だったというのもあったとは考えられるけれど。
それにしてもいい人間かどうかはともかくまっとうに生きる普通のアラサー独男としては。
誰も損しないと言って自分だけ損を被る女性をぼけっと見ていただけとなったら……
一生結婚できない気がしました。
「ま……確かにな。これやったら僕が姉さんのくだもん代、半分奢っただけやけどもな。
やけど、別にほっといたらええような余所さんの揉め事にわざわざクビ突っ込んできて何とかしよう言う姉さん泣かしてもたからにはこっちだってこのくらいせなしゃあないやん。
あの大将もそう思たから値引きしてくれたんと思うで。
ほんま……一口齧れば売りもんにはならんのに、丸呑みするもんちゃうよ?
喉詰めたら豪い事やしな?
危なっかしい姉さんやで」
そして、箱に綺麗に詰められた12個の果実に目を落として。
僕も食べたかったわ……と遠い目。
そして飴の包み紙をはがす様子を横目に自分も食べようと気を紛らわせるようにもう一つポケットから取り出した飴を剥いて。
「あ、そっちミルク味? じゃあこっちも食べ。
イチゴ味。一緒に食べるとイチゴミルク味になんねん」
飴玉はいくつか持っていたのでイチゴ味の飴を彼女の手に追加しようとしながらもう一つ飴を取り出して口に運んだ。薄荷味ですーっとする。
■スヴィチューナ > 「・・・そんな事言ったって、あのままわたしが何にも言わなかったら、
お二人とも一歩も引かなかったでしょう?
そのまま喧嘩にでもなったら、どっちか怪我しちゃうかもしれないし、
そうなったら、果物手に入らなかったあなたも、
この後来るかもしれないお客に何も売れない店主さんも、損するだけでしたし。
だったらわたしが少し損して丸く収まったらいいなー・・・と思ったんですけどね、
正直これだけ買っちゃう前なら、あそこで泣いたりせずに済んだんですが、あははは・・・」
そう言いながら両手に引っ掛けた袋に満載の食材掲げて見せたり。
そして自分も食べたかったと明後日の方見る男性には、再びあわあわして
「ええええと、でしたら、まだ少しだけ汁とか残ってたりするかもですから、
味見してみますかっ!?」
とか言いながら、思わずキス待ちの顔になって相手に向き直ってみたり。
なお追加のキャンディ貰ってしまった日には、混ぜた後のいちごミルク味に思いを馳せて
ほわわんとしてしまった為、傍から見れば男性が保険医にイケナイ薬盛ったかのように
見えてしまうだろうか。