2024/10/31 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にホーセーアさんが現れました。
■ホーセーア > 「故国(くに)にもあった風習だから、やっては見た物の・・・
違う自分になったみたいで、案外気分は悪くないな」
そう独り言ちながら、ちらほら灯消え始めた街中進んでいくのは
一見するとどこかの宗教めいた服着ながら、堂々と胸張って歩を進める少年。
その実は不幸な事故で年齢遡った上固定されてしまった、いわゆるなんちゃって若人。
普段は学院で真面目?に教師やっているのだが、
最近手に入れた『シェンヤンの方から流れてきた書物』を読み漁った結果、
なぜか目に留まった挿絵に描かれていた男性の服装を、出身国の風習での衣装に決めて
知り合いに特注で作ってもらい、こうして人通り落ち着いた街中を練り歩くという
行動に出たのだ。
ちなみに本来ならその衣装のまま近所を練り歩いて菓子を強請るまでがセットなのだが
年が年だけにさすがにそこまでは出来ずに、
代わりに同じ知り合いの店で買った焼き菓子を適当に袋に詰めて腰からいくつかぶら下げていたり。
「神の名のもとに・・・など、魔法使いたる僕が言っていい台詞じゃないんだが、
どこかで一回は言ってみたいものだな・・・なんかカッコいいし」
・・・最近、精神年齢が外見に引きずられつつあるような気がしないでもない少年モドキは
ちょっと危ない笑み浮かべながら独り言ち、少し疲れたので適当な店とかで休もうかなと
辺り見回していて。
■ホーセーア > とはいえ、こんな時間に気軽に入れそうな喫茶店などは開いていないし、
酒場に行ったりなどすれば、子ども扱いされて追い出されるのが落ちなのは判っているから
遅めの客目当てにした飲食店をメインに探し、どうにか通りに面した一軒見つけて中に入り。
少々値段高めの軽い食事何品かと飲み物(notアルコール)を頼んで、
運ばれて来るまでの間を手持ち無沙汰に、ぶらぶらと椅子から足揺らしながら待っていて。
「早すぎたというか遅いというか・・・普通に考えれば子供が出歩く時間じゃなかったな。
折角用意した菓子を無駄にするわけにもいかんし・・・むむむ」
この店の客達に適当に配ってしまおうかとも思ったが、店側に許可得たわけでもなく
勝手に食べ物渡すわけにもいかないなと少し頭抱えて。
そんな事をしていたら頼んだ料理運ばれてきて、今夜はこれ以上の収穫はないなと
諦め半分で食べ始めると、存外美味だったのでその後は目を煌めかせて食事続け。
■ホーセーア > 思いがけなく良い店を見つけたなと笑顔になりながら会計を済ませ、
再び外に出ると、明らかに先程より空いているであろう店は減り、
それに伴ってか人の影も少なくなっており、少年モドキは深いため息一つつくと
「・・・今日の所はこんなものか。
仕方ない、今度はもう少し早い時間に出てみるか」
多少前向きな独り言呟きながら、それでも格好のせいか堂々と胸張って家路を急ぎ。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からホーセーアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露店通り」にドリィさんが現れました。
■ドリィ > それはとある日の昼下がりだったか──。
目抜き通りより一本奥まった、些か如何わしきも玉石混淆の露店通りにて。
骨董商の営む襤褸幌屋根の露店にて、女はかれこれ暫く立ち止まっていた。
手に携え持つは、羊皮紙を束ねた手稿らしきもの。
指がふれたときに、微弱な電流じみた予感があったのだ。そういうときは、大抵ビンゴだ。
この女ときたら、強運に呪われているものだから。
そして今、何をしているかといえば──楽しい楽しい値下げ交渉であり。
「ンー… もぅ少ぉしー…… 下がらない? 例えばぁー……」
コレくらい、と指を数本立てれば、露天商は皺面に更に深い皺を刻む。
『いやいやお姉ちゃん、そりゃあ厳しい。なんたってその手稿は──…』
「オッケーオッケー! わかってるってば。
名のある冒険者が竜の巣で朽ち倒れた遺骸の懐から持ち帰った、ってヤツでしょ?もぉ3回聞いたわ。
でも、欠損ページが多いし? 肝心の地図が破けてるし?
このページに到っては、ぐちゃっぐちゃに汚れて読めやしない。 ──…だぁーかぁーらー…ね?」
お願い♡ とばかり女が片手を眼前に、甘え声で肩を竦めた。
店主の渋面が眉を動かすのに、畳み掛けるよに追撃にウインクを飛ばす。さぁ、返事は如何なるものか。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露店通り」にシグルズさんが現れました。
■シグルズ > 青年は雑多な品物が詰まった木箱を抱えて、裏路地の石畳を歩いていた。
目指す骨董商の露天の前には、珍しく人が立ち止まっている。
後ろ姿からも分かる体の曲線からして女性だろうが、今は用事を片付けるほうが先だった。
女性の肩越しに店主と視線が合い、ニッカリと笑いを滲ませて。
「女性のお客さんなんて珍しいじゃんか。
お得意様になってくれるよう、頑張れよぉ」
なんて遠目から声をかけながら近づいていき、露天の軒先に木箱を下ろす。
青年にとってそれほどの重労働ではないのだが、木箱を置くと肩を解すようにぐるりと回した。
人間の姿が板についてしまってからの癖のようなものだ。
「それで、これ。うちの『主』から。
どれも貴族から仕入れて裏を取ってある代物だから、
買い叩かれないようきっちり売ってくれ、ってさ♡」
木箱の中には古めかしい宝石箱、やや錆ついてはいるが豪奢な細工の探検、禍々しい細工に彩られた手鏡、ボロボロで歴史を感じさせる革表紙の写本などが綺麗に収まっていた。
品物を店主に預けたことでお使いは終わり、と話し途中で割り込んだかたちになってしまった女性の方へ顔を向け。
「邪魔しちゃってごめん、後はゆっく――……あれ、ドリィ」
■ドリィ > 『いやいやいや!其処迄負けたら儲けなんてありゃあしない!勘弁してくれよお姉ちゃん』
───どうやら、ウインクひとつでは釣りは出ないらしい。女は残念そうに、瑞々しく赤く潤う唇を尖らせ。
暫し考える素振りをしてから、数本立てた指の内の一本を勿体振りつつ折り仕舞い。
「ぇーー… だめなのぉーー? そしたらぁー… こーれーなーらー……どうだ!」
まるでトランプの出札を威勢よく出すみたいに、ばぁんと細指を店主に突きだした。
そんな最中であったろう。背後で誰ぞが店主に声を挟んだのは。
其方を振り返らぬままに、すかさず女はその言葉にノった。
「そう! 珍しい女性の上客、手放すなんてナンセンス!
大枚だってなんのその、即決即現金払い。しかも見目麗しい美人ときた。…如何?」
流暢に口上を述べてから、是非を問うかに掌を返し、差し向ける。
ウインクが効かぬなら、とっておきの流し目のヒトツも惜しみなくくれてやろう。
更に背後の相手は仕入れの品迄持ち込んだらしかった。
そうなれば仕事の増えた店主はムムムと唸る。唸って唸って『よし、それで売ろう』 ──…折れた。
女は、相好を崩し。得たりとばかりにんまりと笑み。
「交渉成立ね♡
いいえ、邪魔なんてとんでもない!良いタイミングでありがとお兄さ──… あら?」
其処で漸く相手へと振り返り、見知った青年に目を丸くするのである。
■シグルズ > 回り回って自分の『主』の懐にも金が入るのだから、女性だからといって油断しないようにと支援したつもりだったのだが。
客である女性のほうが交渉上手だったらしい。
小気味よく捲し立てられた店主は、一瞬助けを求めるように青年に視線をくれたが、さすがにそこまで助け舟は出せない。
肩を回しながら素知らぬフリをしていると、瞬く間に店主が押し切られ、代金を押し付けられるかたちで交渉成立しており。
野暮用は済んだのでそのまま立ち去ってもよかったのだが、客の女性を振り向いたのは、自称『見目麗しい美人』が気になってしまったからで。
その正体は知人だったのだが。
「――まるでドリィが物を売りつけてるみたいだったよ。
モノを買うときは、いつもそんな強引にいくのかな。
それとも、通用すると判断した相手だけかな、『見目麗しい美人』さん?」
つい揶揄をしてしまうが、彼女が自身の美貌を自覚していることは承知しており。
その言葉に嘘偽りが一切混ざっていない、極上の美人なのだから文句のつけようがなく、からかうのが精々というのが実際のところ。
流し目をされた店主も渋い顔だが口元は緩み気味で、満更ではないといった表情を浮かべながら、青年の置いた箱の中身を取り出し、店に並べたり奥へ持ち込んだりしていた。
他に客が寄り付く様子もないので、露天の軒先に立ったまま。
彼女が交渉の末に入手した、手に持っている羊皮紙らしき束を興味深そうに眺めて。
「それ、いったい何が書いてあったの?
宝の地図……にしては、ちょっと小さいか」
これまで冒険探検にはあまり縁がないので、当てずっぽうになるしかない。
丸まっている羊皮紙の中身を見たそうに、指先で筒の先端を軽く突付いた。
■ドリィ > 当初の言い値からは此方が幾らか折れたけれど、それだって想定の範疇。上々の交渉結果といえた。
女は満足そうに早速革袋から金子を取り出し店主へと渡し、手許より返す必要の無くなった手稿を揺らし示す。
「ふふっ、ありがと♡
価値のある商品を取り扱う、目利きで良心的な店主のいるー…素晴らしい店だと思うわ。」
にっこりと微笑みながら斯様に宣うのだから、店主も苦笑を禁じ得ないだろう。
そしてそんな遣り取りの一部始終を見ていた青年から向けられる揶揄に、女は双眸を態とらしく瞠り。
「強引? そうかしら。正当な交渉術よ。
それともー…ぉ、腕をとって頬にキスして、色仕掛けでも嗾けるとでも思った?」
面白げに片眉を動かし、そんな風に彼に問おうか。
店主にも同時に視線を配れば、むずりと弛みかけた口髭蓄えた顎元を揺らし、片手で撫でている。
ひょっとしたら其方の方法をとればもっと迅速に入手が適ったのかもだけど、女としてはそれじゃあ面白くないのだ。
そのまま立ち去るでも無く女の入手品に視線を投げてくる相手へと眼差しを仰がせ。
「貴重な未踏地の有益情報ってヤツ。
探索地に持ち込んだ日記──… になるのかしら。
地図に罠の座標に解除法、魔物の種類から調理記録まで… 興味深いでしょ?」
彼の指先をトントンと軽く打ち揺らし。
■シグルズ > 勝ち誇ってすぐさま颯爽と立ち去るのではなく、美人からお礼の言葉に続けてお世辞だろうと称賛を投げかけられてしまったら、大抵の男性は嬉しさ半分悔しさ半分の複雑な感情を抱くことだろう。
頑固そうな古物商の店主もその例外ではなかったようで。
今にも鼻の下を伸ばしそうな顔は初めて見たのだが、それを指摘するのは野暮と腕を組んだまま黙っていた。
「ドリィだったらやりかねないだろ?
――ああでも……」
絶対にやらないだろう、と断言できないのが彼女だと思った。
なにせ、男を手球に取る技巧にかけては、淫魔もかくやという底知れなさであることを実体験が証明している。
ただ彼女が想像させた光景について、むむ、と眉間に皺を寄せて悩むような表情を浮かべ。
「ここで、オレの目の間でされるのはフクザツな気持ちになるなぁ。
顔見知りのおっさんが美人にキスされてデレデレしてるところも、
ドリィが知り合いを誘惑してるとこも、あんま見たくないし……。
とかいうと、余計にやりそうなのがドリィなんだけどさ」
店主に嫁がいるという話は聞いたことがない。
彼女の美貌と肉体、甘い香りで擦り寄られたら確実にイチコロだろう。
結局、どう想像しても彼女の掌で転がされそうであり、表情を緩めて笑いながら肩を竦めた。
普段、あまり縁のない話だけに。
羊皮紙の中身についての語りを、興味深そうに、時折首を縦に動かしながら聞き入った。
「――なるほど。
そんなところに手ぶらで向かうわけにはいかないから、
情報をしっかり揃えてから向かうってことなのかな?
オレ、自分の故郷とこの国以外の場所って行ったことないから、
そういう話を聞いてるだけでワクワクしてくるね。
その遠い場所に行くつもりなのかい、ドリィは」
触れてくる彼女の指先、爪とその裏側の先端だけを摘み、撫でるように柔らかく擦って戯れ。
■ドリィ > 青年の言い淀んだ語末に続けるように女が小頚を傾ぎ、悪戯に反芻する。
「───“ああでも”、…何かしら?」
そうしてから、彼の端正な唸り顔の眉間の皺を伸ばすべく、付け加えるのは軽快な口調にて。
「やらないわ。彼には客として、末永くお世話になりたいもの。
そぉゆぅときはーぁ……投げキスくらいの距離感が大事なの♡ 」
ね? なぁんて店主に同意を求めつつに、尖らせた唇を、ちゅ、と小さく甘めに鳴らしてみせる。
『──…そうだ。』なんて咳払いしつつに表情引き締めて同意に頷く店主の面目も保たれた形だ。
これ以上は言いっこなし、とばかり青年へ短く目配せをしてから。
「そ。 探索地に用心は幾ら準備したって足りないくらいだもの。
それにー……面白そうなハナシは仕入れておきたいじゃない。」
手稿に書かれているのが過去の天気記録でも落書きでも眉唾物が雑ざっていても。
先人が遺した過日の記録であるというのが重要なのだから。
艶やかなアーモンド形の爪先に玩ぶ手持ち無沙汰な青年の指を、ぴちりと戯れ弾きつつ。
「この手稿に書かれているのはぁー…タナールの南方だったかしら。
行くなら流石に馬車で近隣の宿場街まで出て、
そこからはぁー…馬じゃ心許ないから、騎獣を借りて──…ってカンジ?」
其処で、ふと。女は青年の面持ちを見遣る。
この青年そういえば、と。思い到った妙案があったものだから。
「一緒に来る?」
■シグルズ > 投げキッスが別れの挨拶とばかりに、堅物そうな表情を取り戻した店主は、店の奥へ引っ込むために背を向けた。
「――だってさ。
もし店主と客のラインを超えて惚れたりしたら
痛い目に遭うから気をつけなよ、おっさん」
その背中にからかいの言葉を投げかけるも、その程度で動じる相手ではない。
聞こえたのか聞こえなかったのか、反応をせずに麻のカーテンを肩で押しのけて消えていき。
「それはそうだ。
いかにも美味しそうな果物を口にしたら、
全身が真っ青になってしばらく指1本も動かせなくなったって話、
こないだ酒場で話してたヤツがいたなぁ」
別種類の仕事の話をしたことはあれど、彼女が生業とする仕事の話をするのは初めてだった。
美貌を武器に生きているような格好をしているのに、語る表情は普段の彼女と少し雰囲気が異なる。
色香は少しばかり鳴りを潜め、専門家の顔を覗かせているように感じ。
爪弾きになった指先も、語り口の真面目さに影響を受けて、彼女の指先に舞い戻るのではなく顎の下へ。
地理に話題が移ると、覚えている範囲の地図を頭のなかに広げ、フゥムとひとつ頷く。
都合よく、額縁に飾られ芸術品として仕上げられたらしい、この近辺の地図が店先に置かれていた。
その地図の左上のあたりを指で示しながら。
「タナール……あの辺りはオレの故郷にも近くなるけど、
遺跡群に魔物や野盗がはびこってて、危なっかしい場所って聞くね。
確かに情報もなしに手当たり次第で探索してたら、
いずれ襲われて身包み剥がされちゃいそうだ」
こうして地図を見ながら話をしていると、自分が冒険者になったような気分になる。
想像のなかでの冒険に思いを馳せていたせいで、問いかけに対して一瞬理解が遅れ。
「――……え。……えっ、オレ?
……ドリィみたいに探索の経験はないし、
頑張っても荷物運びか、馬の代わりぐらいにしかならないよ」
普段は酒場で飲んだくれている冒険者連中も、いざ仕事となれば己の修めた技能を駆使して危険に立ち向かう、専門家集団だということは知っているだけに。
そこで言葉を区切て数秒言い淀むも、頭に思い描いた冒険の絵を消すことはできず。
「でも、そうだな。何でもするから、一緒に行きたいな」
穏やかな笑いを浮かべて、彼女に向き直り。
改まるように手をズボンで吹いてから、体の前に差し出して。
■ドリィ > 「そぉゆうこと。先輩の叡知は拝読しておくべきでしょ?
たとえ───ちょぉっとばかり、アーティスティックな筆致でも、ね」
手稿の束をひらひらと振ってみる。
先程僅かに捲ったけども、探索地で書かれたのだろう文字は随分とアクロバティックかつ芸術的だった。
はたして解読できるかしら、なんてひっそりと思うけども、まあそれはそれである。
青年の視線の先を追えば、装飾的な古地図が目に入る。
成る程、視覚を補えば会話が通じやすくなる。青年の指差す先に夕暮彩の双眸丸め。
「あら。そっちの出身? じゃあ、道は多少詳しいかしら。
ぁ。一緒にってゆってもー…安心して?
御察しのとおり、荷物運びと馬の代わりとぉ──…話し相手の同伴者ってとこ。
宿場街まででも構わないわ。勿論、報酬だって出すつもり。
───とはいえ、道中だってちょっとした冒険よ?」
如何かしら?と悪びれずに種明かしをしてはお伺いに首を傾ぐ。
確か、何時だったか。血生臭いことは不得手だと──主人の厳命なのだと聞いた気がする。
女とて、彼に無体を強いるつもりはないのだと、其処は言い置いて。
それでも快諾が得られたなら、女はにんまりと双眸を弛く細めることだろう。
ズボンで拭われた掌に、普段とは異なる青年の初々しい機微を垣間見た気がして、軽やかに表情綻ばせながら。
「それじゃあ改めて、───…よろしく、シグルズ。
詳しい商談はぁ─…… 杯でも傾けながら、いかが?」
差し出された手を握り、離し、───先を促そうか。
誘う先は勿論、酒馨と肴のあるところに違いなく。
■シグルズ > 「それはつまり――……
そこに書かれてるのが、落書きである可能性もゼロじゃないってことね。
いや、本当に博打なんだな、冒険者の仕事っていうのは」
アーティスティックなどと遠回しに言ってはいるが、つまり確実に読み溶ける保証もなければ、読み解いた情報が頼りになる保証すらもないということは薄っすら伝わった。
代金と引き換えに入手した品物だというのに、それを語る彼女に不安そうな感情は見えない。
むしろ、不確かな未来を愉しんですらいるような。
彼女の茶目っ気溢れる笑みに吊られ、口元を緩ませてしまう。
「――…そうだね、道も多少は知ってるし、
どこが特に危険かは故郷の人たちに聞けると思う。
話し相手でも遊び相手でも荷物運びでも、なんでも受け持つよ。
途中までなんてカッコ悪い、行って帰って、最後までね。
それから、もしもの時にはドリィを背中に縛り付けて一目散に逃げる係、ってコトでいい?」
こうした握手を交わすのは、初めてのことだった。
指を絡めるでもなく、ただ力強く手を握りあっただけなのに、どこか気恥ずかしいような。
ぐっ、と一度だけ力を込め、白い手と暗褐色の手が互いに離れ。
「イイね、大賛成♡
どっちが酔い潰れてもいいように、そのまま泊まれるとこにしよ」
気づけば周囲は暗くなり、建物の窓には明かりが灯り始めていた。
酒場の立ち並ぶ通りもここからならば近い。
酒と肴と冒険の期待を胸に、雑踏のなかへ男と女の姿が紛れていった――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露店通り」からドリィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 露店通り」からシグルズさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 食事処」にサフィルさんが現れました。
■サフィル > 平民地区の食事処。
玉石混合数あれど、その中でも隠れた名店、貴族が身分を隠してでも足を運ぶ店もいくつかある。
始原の薔薇亭
凝った作りではない料理が多く、店主は意識していないらしいが食材の味を引き出すような味わいが多い。
手間が減っている分量も多く、しかしステーキなど独自のルートで上質な肉が仕入れられ
特に人気が高い。
経営者が元々腕利きの冒険者だったらしく、当時の人脈を活かして手に入る、当時食べて回って美味いと思った食材達が
その背を追う冒険者達の意欲を殊更に駆り立て、外に出ない町民も町の外の数々の味に思いを馳せる。
長身の術師女性も愛好家の一人で、分厚いステーキを切り分けて頬張って。
「んぅ~♪ いつ来てもここは格別ですねぇ~♪」
時には富裕地区でも上等なものが手に入らない時期も、ここは安定して王都の外の地域から
多くの上質な肉を仕入れるだけあって術師は機嫌が良く。
……それにしても今日は客が多い。相席を頼まれている席も目立ってきている。
さて、自分のところにも案内される者でもいるだろうかと。
ご案内:「王都マグメール 食事処」からサフィルさんが去りました。