2024/09/30 のログ
エレイ > 「──ン……」

雑多な足音、雑多な人の声。そんなものをBGMとしながら、か細い期待を込めた視線を
適当に彷徨わせていたところ。その中に交じる異質な音に、男は一瞬動きを止めた。
"ゲタ"の音とは珍しい、と首を緩やかにそちらへ向ければ、その足音の印象に違わぬ
着物姿の女の姿を認めて瞬きをひとつふたつ。

その女と目が合った、かと思えば女はこちらにまっすぐに向かって歩いてくる。
すぐ前までやってこられれば、座っている男は彼女を見上げる形になって。

「うん? ──まあそうだのぅ……無くしたとゆーか、迷っているとゆーか……
つっても大したことでなくて、今日泊まる宿をどこにしよーか……とかそういう単純なハナシなんだけどよ」

無遠慮な指差しととともに投げかけられた問いに軽く目を丸めるも、また下がり眉でへらりと笑うと、
軽く頭を掻きながら事情を説明し始め。

「せっかくだから、テキトーな宿じゃなくって誰か親切なヒトが泊めてくれたり
しねぇーかなぁ……とかささやかに期待しながら困った雰囲気をちょっと僅かに出して佇んでいたワケなんだが……
オネーサンはどうだい、俺にそういう親切とかしてくれちゃったりするかね?」

理由はどうあれせっかく話しかけてくれた和装の女性に、掌を上に向けて指さし返しながら、
眉下げた笑みのままそんな事を問いかけてみる。
とはいえなんだか普通の雰囲気の女性ではなさそうなので、望みは些か薄いかも、などと内心で考えつつ。

枢樹雨 > 見下ろす明るい金の髪。その下に添えられた碧眼。
長い濡羽色の前髪の隙間から困り顔を見据えた妖怪は、歯切れ悪く応える貴方に耳を傾ける。
返ってきたのは、妖怪にしてみればそれほど重い内容ではなくて。

「なんだ、この国の者じゃないのか。宿を探すには随分と日が暮れてしまったね。」

家に帰れない理由でもあるのかと、興味本位で声をかけてみれば、そもそも定住者ではない様子。
新月が近づく空は暗く、ゆるりと見上げてみれば長い前髪がこめかみの方へと流れ、目許が少し露わとなる。
――と、続く話を聞けば、露わになった双眸が瞬きをひとつふたつ。
再び貴方を見下ろすと、妖怪は己の胸元に手を当て。

「そういう親切は無理だ。私は家も無ければお金もない。」

胸でも張っているのではないかというくらい、堂々とした返答。
恥じるべき現状とも思っていない様子で、差し出された掌に何も持たぬ手を乗せ。

「以前連れて行って貰ったお宿を教えることは出来るけれど、費用はもちろん君の懐からだ。」

エレイ > 「おう、俺様は国外(よそ)から来た旅人なんでな。つってもこの国に滞在するようになって
まあまあ時間は経っているが……それでもやはり根無し草なのに変わりはないので
タイミングと場合によってはこうして宿ロストすることも稀にだがよくある」

この国の者ではない、という言葉には何故かドヤ顔で大きく頷き。
つらつらと風変わりな口調で言葉を並べ立てながら、前髪の隙間からわずかに見えた目元をちらりと見やり。

「まあわかってた。キミなんかそういう普通の感じじゃあないもんな……。
──ああ、そもももキミはヒトではないのか」

堂々と自分と同じ根無し草な上に無一文だと明かされ、苦笑しながら大げさに肩をすくめ。
指差す手に彼女の手が触れると、はつりとまた1つ瞬きしてから、改めて彼女の顔を見やっては、ぽつりと。

「ほう。まああ費用を出すのは別に構わないのだが……それならキミも一晩ご一緒してくれると
俺様としては嬉しいんですがねぇ。──どうかね?」

続く言葉にふむ、と小さく唸って思案する仕草を見せてから、にへ、とまた締まりの無い
笑顔を見せながらそんな問いかけを。
要は同衾してくれ、という意味ではあるが、果たしてそもそも伝わるかどうか。
伝わったところで、断られればそれまでではあるが。

枢樹雨 > 「外から来たと言うところは私と一緒だね。けれど過ごした年月は君の方が随分と、長そう?」

じぃ…と、見つめるのは貴方の顔。
落ち着いて感じる雰囲気とは違い、顔つきはそれなりに若く見える。
長いとは言っても何十年という話ではないのだろうかと、少し首を傾げれば、ふと目が止まるのは貴方の羽織るジャケット。
不思議な光沢を持つそれに目線留めるまま、目許には長い前髪が再び落ちて。

「…人の子とは違うと、わかる?君は人の子?」

チラリ、碧眼を見遣り問いかけては、再びジャケットに落ちる目線。
そこへ誘いが投げ掛けられるなら、パッと顔を上げて。

「その服、よく見せてくれるなら良いよ。見せてくれなくてもふかふかの布団で眠れるから一緒には行くけれど。」

隠しもしない好奇心と、遠慮を知らない子供の返答。
けれど触れる手があるならば、妖怪はきっと拒みはしない。
ジャケットへの好奇心が収まった先、交わす欲があるならそれもまた妖怪の好奇心を刺激するから。

触れた手、そっと開けば、貴方の指先を軽く握り。

エレイ > 「もうこのマグメール国内で何処行っても迷子にならないぐらいには長いかな。
まああ別に迷子になったこととか一度もないけど。
俺様は人の子ですよ、まあ一般人とは違う体質をしてはいるが……ン、コイツが気になるのかね?」

目前の女をヒトと違う存在と知って尚、男の態度に揺らぎはなく落ち着き払ったもの。
ふと、彼女の視線が自らのジャケットに向かっているのに気づけば、これに興味があるのかと首を傾げ。

「──ほほう、よしわかったお安い御用だ。……ふむ、ふかふかの布団があるトコか。
まあなんかちょっと僅かに行き先の予想はついた気がするが……とりあえず行ってみることにしよーか。では案内よろしくッ」

彼女からの返答は男の予想に反し、好奇心旺盛で無邪気なものだった。
驚きに軽く瞬きしながらも、色よい返事をもらえたのなら頼みは断れないと、笑顔で大きく頷くとビシ、と親指を立て。
指先を軽く握られながらゆっくりと腰を上げてベンチから立ち上がると、
彼女の手を握り直して案内を頼み。

そのままその場を離れ、案内に従って宿へ向かっていくことと──。

枢樹雨 > コイツと、目線で示された貴方のジャケット。
こくこくと数度頷き肯定を示せば、立てられた親指の意味を知らぬ妖怪は不思議そうにその親指を見遣る。
何はともあれ貴方がベンチから腰を持ち上げるなら、握った指を軽く引いて歩き出そう。
向かう先は同じ平民地区内。
カラリと下駄を鳴らし、人の流れの中を歩いていって――…。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > どべちゃっ

王都マグメールの平民地区、表通りや商店街、住宅街でもない人気の無い通りに間の抜けた音が一度鳴り響く。

「……ぅあ……っ ~~~~っ ったったたた……」

素肌にだぶだぶの桃色シャツを羽織っただけの涼しげを通り越した格好で、背中にはその小柄な体格を一層強調するような大きなリュックを背負った幼子が、正面から大の字に路地に転倒し、裾から太ももとまんまるお尻の一部をさらけだして倒れ込んでいた。

そのとき、背中のリュックいっぱいに敷き詰めた、薬師の仕事に使う様々な素材や日用品……
きのこやら、花やら、果物や種子、何かの粉、奇怪な動植物の干物などがばさばさと広がって散らばり、
その無数の音と感触を察知した幼子は、起き上がって目にするのも億劫になって、5秒…10秒……しばらくのまま行き倒れのごとく、大の字ポーズで地に顔を伏せたまま呆然としている。

「……~~~……」

ほうきが使えない環境で米粒を床にぶちまけたかのような、もうなにもかも面倒くさい心地。
瞬間的に完全に気力を失ってのフリーズ、現実逃避であった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からタン・フィールさんが去りました。