2024/08/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 標葉魔法店」にシルニアさんが現れました。
シルニア > 「………」

魔法の明かりに照らされる店内は、しかし明かりは控えめ。そうでないと小さな虫がたくさん入ってきてしまう。
私は例によってお店の最奥のカウンターの上で作業中。

じりじりと虫の声が響く中、対照的に黙々と作業を進める私。
筆に魔法液をしみこませ、紙に魔法陣を丁寧に描いていく。
まずは基準円、きれいな丸を書くだけ。完璧な円形を書くのは一番練習が必要な部分かもしれないけれど、慣れてしまえば簡単なものだ。
次に陣を今回は3分割。2つの理、そして1つの理の無視…悖理を行う。
分割された中には、文字を敷き詰めていく。詠唱からとった文字だったり、自らが考えたこの世の理のルールであったり、さまざまだが、今回は後者。つまり私のオリジナルの魔法陣である。
文字のブレは魔法のブレ。燃費や出力、射出角度などあらゆる要素に影響を与える。
今回はお祭りのにぎやかしのためである故に、精密な動作を求められる。ミスは許されない。
…それを、あと、14枚。

「んくぅ~~…骨が折れるのです…。」

夏祭りのときに出店のスペースの確保も、商品の準備も大まかは終わった。あとはお店側の装飾と、サプライズ。
魔法の氷を使ったパフォーマンスを行えば、その場も涼しくして観客に興味を持たせられるし、私の工房の技術の示唆だってできる。
そう考えての魔法陣の形成をしているが、少々こだわりすぎたか。

シルニア > 「………」

ひたすらもくもく作業。でも嫌いじゃない。
魔法陣を使った演出というのは、手書き魔法陣によるブレも美しさに含まれる。けれど、それは完璧な魔法陣に近づけようとしている故の努力の証でもあるのだ。
私は魔法陣を完璧なものに近づけようと、1枚は先の一枚よりもより正確に、次の一枚はもっと…と向上を目指していく。そして実際に質はよくなっている…と思う。

「ふああぁぁ…」

けど、眠気も襲ってきた。そういえば、今日は運動をする予定がないから夕飯を抜いたんだっけ。
エネルギーが不足すればそれは眠くなる。魔法で無理矢理目覚めさせることはできるけれど、祭事には間に合うだろうし、急ぐことでもないだろう。

…椅子を立ち、伸びをしながら店内の入口へと歩いていく。
開けっ放しの扉をしめつつ、からん、と扉にかかった板を裏返して「CLOSED」の表記に。
戸締りもばっちり。窓も閉めよう。ここ最近の夜は涼しい。
体も洗ってあるし、ローブは頭からするりと脱げる。
下着一枚の姿になった私はぽふん、とベッドに横たわった。

さて、明日はまずギルドに優良な依頼がないかを探しに行こう。あったならばそれで稼いで、なかったならばこの作業の続き。
それから、杖の材料に育てていたヤドリギがそろそろ矯正が必要かな。適した矯正用の木材も買わないと。
以前お客さんに試飲してもらったポーションの味は好評だった。時間があれば、別の味を考えてみても良い。
白樺の蜜を調味料にしつつ、魔力抽出の元とした甘みのあるポーション。
香りがあるともっと良い、と言われたから…そうだ、木の皮を燻製をしてみるのはどうだろう。
燻製は好みの問題が立ちはだかるかもしれないが、バリエーションをつくるのだって悪くない。

材料に使う木の種類を変えるのもいいかもしれない。魔力を豊富に含み、蜜も多彩に取れて、蜜の味も美味…となると調査がなかなか大変そうだ。
いや、故郷ではクヌギの木の蜜が食用に使われていたっけ──

…目をつむると、いろいろな思考が駆け巡る。どれも良い案で、どれも今すぐ実行したい、のだけれど、そこで私は意識を手放した。
きっと明日になるころにはすべて忘れて、のんきにギルドに向かって出発するに違いない。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 標葉魔法店」からシルニアさんが去りました。