2024/08/06 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区 蚤の市」にアルマースさんが現れました。
■アルマース > 昼下がり。雑多な露店や屋台が並ぶ広場。
月に一度だか半年に一度だかの蚤の市が開かれている。
掘り出し物を探し歩く目利きもいれば、盗られても困らないガラクタしか無いとでも言うみたいに、
売り物のソファに座って居眠りをしている店番もいる。
値引き交渉の声や、さして買う気も無い冷やかしの声で晴れ空の下は賑わっている。
――踊り子の仕事帰り、衣装のままふらつく女もまた、普段とは様変わりした広場の様子を楽しんでいた。
鼻から下を覆う薄手のヴェール、臍の見える淡い紫の水着のような衣装。
派手な刺繍の施された腰布をふわふわ翻しながら歩く様は華やかだ。
「――やっぱ祝い事は良いよね~。みんな財布の紐も緩むし」
婚礼の宴を盛り上げる催しとしてのショーがつい先刻終わったところ。
酒も入り、チップやおひねりで約束の報酬より随分良い稼ぎになった。
場の空気に当てられて、新しい衣装でも買ってしまおうかと思ったところにたまたま行き当たった蚤の市。
古物が多いけれど、近所の衣装の店も出張してきているらしい。
あれこれ手に取って見比べる目つきは真剣である。
■アルマース > これは可愛すぎだし……こっちはサイズが微妙か……、端から順に弾いていく手が止まる。
青みがかった濃いグリーン。紺や金の孔雀の羽根模様。
手書きの値札を捲れば、他の品より五割ほどお高い。
先ほど入った臨時収入と当面の生活費を計算して悩んでいると、店主から声が掛かる。
「ン? お安くしてくれるの? 何で? 美女割……?
……それとも呪いの品だったり、する~……?」
聞けば特注品なのに買った相手が逃げてしまったという。
顔見知りだからと半額前払いで貰っていたもののけちがついたので早めに処分をしたい……と、
経緯を聞いて――途中から聞き流す。訳ありや下心で無いなら何でも良かった――頷く。
「へーえ災難だねえ……あたしにとってはありがたいけどさ。
道理で手が込んでると思った。それなら貰っちゃおっかな」
代金をやり取りし、薄紙で包んでもらった衣装を鞄の中にしまいこんだ。
良い買い物をした……とほくほく顔で店主に礼を言い、まだ見ていない店がある方へ爪先を向ければ、
高いところでひとつに結わえた髪が上機嫌に揺れる。
「さてとお……そうなると靴も欲しい…………」
人の欲望には際限が無い――ということを体現するがごとく、蚤の市をさまようのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 蚤の市」からアルマースさんが去りました。