2024/06/29 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にピュリュさんが現れました。
■ピュリュ > 暑気を帯び始めた昼下がりの市場を、軽い足取りで歩むメイド姿のミレー族の少女が一人。
時折特定の男たちの目を惹くも、弾むような足取りとともにちりん、と密やかな音を奏でる小さな鈴の音が、少女の細い首に飾られた赤い首輪からだと知ればすぐにその興味も削がれていくだろう。
立ち並ぶ露店を嬉し気に足を止めては眺め、顔見知りの店主もいるのだろう、短い挨拶と談笑と無邪気な笑顔を交わす
「今の季節、おいしい果物…なんですか?」
こてりと首を傾げて店主へと質問し、握りしめた小さな巾着の中のささやかな貨幣を確認している。
主からもらった貴重な自由時間と、お小遣い。
少しだけ考えるようなそぶりをして、再び歩みを取り戻す。
迂闊に街歩きなどできない身だが、主が用件を片付けているこの時間に自由を許してもらった。
年若い少女らしく、市に来ればやはり興味を惹かれるのはちょっとした買い食い…特に甘味だが、異国から来た物珍しい小物も面白いし、書物にも強い引力を感じる。
露店の主も人それぞれで、少女のふっさりとして白い耳を見ると、いささか侮蔑的な視線をよこす者もいるが、そういった相手には逆らわずそそくさと退散するのが少女の処世術だ。
硬い石畳、ことこと、小さく軽やかな足音を立てながら、人の群れをするすると歩みぬけて──
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
■トーラス > 露天商の客引きと買い物客の値切り交渉の応酬で活気付いた市場。
その場を訪れた中年冒険者の男も、消耗品の類の補充と掘り出し物を求めて、
あちらこちらの露天に並べられた商品を冷やかして回る。
市場には店を構える小売店よりも安い値札が付けられた商品が並ぶ事が多く、
少しでも、家計や必要経費を抑えたい街の住民や冒険者には得難い存在となる。
「ふぅむ、……硬パンの類はまずまずだが、干し肉の類は駄目だな。
これじゃ、処理が甘くて、この時期、すぐに腐っちまうぜ?」
軒を連ねた露天の一つ、主に乾物を取り扱う店で商品を見定めながら眉間に皴を刻む。
冒険で遠出をするならば携帯食糧は必要不可欠な物資の一つであり、
保存の観点から生モノを持ち歩く事が難しいので必然的に水分を抜いて防腐処理が施されたものになる。
その品質に文句をつけながら、実のところ、値引き交渉に入ろうとしていた折、
手にした干し肉を掲げながら、こいつは駄目だ、と大袈裟にジェスチャーをした所、
背後から器用に人の群れを抜ける少女にぶつかってしまい。
「おっと、とと。……ありゃ」
彼のその手から零れ落ちた干し肉が地面へと転がり落ちていき。
■ピュリュ > 人のにぎわう露店の並ぶ通りは歩くだけで気持ちを浮き立たせる。
決して、周囲に気を付けていないわけではなかった。
けれど、人の波を泳ぐように躱していた少女とて、いきなり目の前に現れた腕を避け切ることはできなかった。
ぬっと目の前を遮るような逞しい腕。
一瞬息をつめて足を止め、身を縮めるも──
「きゃ……!」
思わず小さく声を上げ、ぶつかってしまう小さな、ありふれた粗相。
石畳に落ちていく干し肉を一瞬視線で追い、表情に狼狽がよぎる。
「………ぁ、も、申し訳ありません…」
とっさに出る謝罪の言葉は、やはり身に馴染んでいるからだろう。
申し訳なさそうに身を縮め、ぺこりと頭を下げた。
そして、おそるおそると、紫色の瞳で、クラシカルなメイド服姿の少女は腕の持ち主と店主を上目遣いで伺う。
■トーラス > 振り上げた手が背後を通り抜けようとして少女にぶつかり、結果、干し肉が地面に落ちる。
周囲の目から見れば、彼と彼女のどちらに非があるかは一目瞭然であろう。
後頭部を片手で掻きながら、振り返れば、ぶつかった事への詫びを口にしようとして、
だが、彼の言葉を遮るように、何も悪くはない筈の彼女が先に謝罪の言葉が届き。
「お、悪ィ……、んん?
へぇ……、あぁ、大変だ大変だ。こいつは遥々シェンヤンから運ばれてきた最高級の乾物だぜ。
誰かの所為で台無しじゃないか!」
頭を下げるメイド服の少女の顔から胸の膨らみまでを舐めるように見廻しながら、
咄嗟に口から零れたのは、先程まで粗悪品呼ばわりしていた干し肉に対する嘘八百の戯言。
当の店主が双眸を瞬かせながら、何を言っているのか、と怪訝そうな視線を向けるのを妨げると、
馴れ馴れしい様子で少女の肩に触れると、その身体を逃がさぬように抱き寄せて。
「その顔……、確か、王立コクマー・ラジエル学院の生徒だよな。
俺も学院で臨時講師をしていてな。――――ちょっと、落ち着ける場所で話をしよう?な?」
少女の肩を抱いたまま、そう告げれば市場から道を外れた路地裏へと相手を連れ込んでいこうとして――――。
■ピュリュ > 立場的に、ささやかな衝突があったとしても理不尽ながら、膝を折り謝罪を口にするのが当然のことだった。
ゆえに、どんな場合でも恐縮し、謝罪をし、許されるまで嵐が吹き抜けるまで耐えるのが習慣ではある。
が。
足元に転がった干し肉へと視線が自然と向き、頭上からの言葉にまた小さくびくつくように身を縮めたが。
「…………さい、こうきゅう…?」
その言葉には、ついうっかりと首が斜めに。
何しろ、一応は高位貴族の傍仕え、高級品は見慣れている。
ゆえに思わず確認するように、店主へと視線を向けようとして──それが遮られるように、距離が近づく。
ゆえに店主の表情は全く確認できなかった。
舐めるような視線に一瞬竦み、そのせいであっけなく抱き寄せられてしまう。
反射的に身をよじるも、力は決して強くなく。
「…………え。 あ、はい…そぅ、です…。
あ、あの……──待って…ください…
せ、先生…?」
成り行きにやや混乱きたしつつ、突き飛ばして逃げる余裕もなく、小さな体は半ばたたらを踏むようにして、連れ込まれるままに路地裏へと──
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からピュリュさんが去りました。