2024/05/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 「あー……聞いたことはあるが、これが『神の塩粒』かぁ……」

女店主から効能を聞きつつ、男は露骨に顔を顰めていた。紙包を受け取らず、ただ眺めている。
酒場の女店主は人格に多大な問題があるが、能力はある。一週間経たずに魔術式および化学式を解析したようだ。
男が不満そうな表情を浮かべているのをみて店主は首を傾げ、黒髪が揺れた。

「いや……洗脳とか催淫とか、俺はそういうの好きじゃないんだ。あ、他人がやることまで口出しする気はないよ?
なんか、難易度を下げるみたいでさぁ……自分の能力・技術だけで攻略したい派なんだよ、俺は。
羞恥心を薄れさせる、ってのも良くないな。こう……嗜虐心がそそられなくなる、っつーか」

『何言ってんだコイツ』といわんばかりの絶対零度の視線を受けつつ、女店主へと告げる。
セックスはコミュニケーション。毎回うまくいくとは限らない。不完全な場合が圧倒的に多いし、失敗もある。
だからこそ成功した時の喜びが大きいし、成功が続く相手とは心の底から関係を深められる――そう思っている。

「……あ? いや、知らせないでいいだろ。東に行くって言ってたから、王都に来た時で……」

先日、この場で話題を共有した異端審問官に伝えるかどうかを問われ、即座に不要と答える。おおかた聖都だとは思うが、正直なところ彼女がどこを拠点にしているかすら知らない。この件が気になったのならむこうから確認しにくるだろう。

ヴァン > まっとうな聖騎士ならば主教内部を蝕む薬物を許しはしない。蛸が自らの足を喰うようなものだ。しかし、『自派閥内での流通に留まり、かつ制御下にあるなら問題なし』と男は判断した。なんでもかんでも嘴を容れればよい訳ではない。
この麻薬が故郷に届くようなら男は聖バティスタ派と明確に敵対するだろうが、そのような兆候はない。王都からラインメタルまで船で30日、生産施設がどこかは知らないがそこから王都までの日数もかかる。また、これに手を出すような愚か者も男の大切な人にはいない。結果として、我関せずの立場をとった。

むしろこの薬物を海外に流通させて儲けることができないかと思考を巡らせている。陸路は専門外なので自身が挑戦する気はないが、魔族の国やシェンヤンは格好の対象だ。ナグなんとかという都市には人間も多く存在すると聞くし、そこに卸そうという野心家もいるやもしれぬ。敵国への薬害は基本的な戦術の一つだ。

「とはいえ、夢物語か」

解析したからといって製造ができる訳ではない。実際にそういう話になったなら、ノウハウを持つ所が動くのが一番だろう。
王国のしかるべき人物が彼等に接触したら北方の戦局も変わるのだろうか。