2024/04/09 のログ
■影時 > 今回の臨時パーティで割り勘にした食事はまだ少し残っている。おかげでつまみには困らない。
あとは酒代を自分で足せば、満ち足りはするだろう。
そう思いつつ、酒のおかわりを頼む。今日は麦酒の気分だ。蒸留酒も良いが、そればかりでは飽きる。
「……暖かくなってきたからなぁ。
雪が緩めば運び屋の仕事も増えるだろうから、思い切ってシェンヤン辺りまで行ってみるのもいいか」
ここ暫くは迷宮通いと学院の仕事で良いだろう。
それで満ち足りるというよりは、新学期らしい案件が連なっている。校外演習に行く生徒の付き添いに駆り出されるだろう。
その合間を縫い、数日をかけて迷宮に挑んでは未踏破領域の開拓に勤しむのもいい。
だが、過日聞いた話を思えば、未知への遭遇への欲求もうずうずと騒ぐのも否定できない。
運ばれてきた麦酒を受け取り、残り物をつまみにしながら杯を進める。今後を思案しつつ未知の期待を躍らせて――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から影時さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にスルーズさんが現れました。
■スルーズ > 平民地区の中でも若干治安の悪い辺りにあるとある冒険者の酒場。
昼間から仕事がないか、仕事上がりで今日は休んでいる者たちがたむろしているそんな店の中は、相変わらず何人かの冒険者が酒を飲んだり、談笑したり、道具の手入れをしたりをしている。
そんな冒険者の店の扉が開かれれば、全員が扉の方を一瞥するのも道理。
その全員の視界には、十分大きい宿の扉をくぐって入ってくる巨体の姿。
フルプレートアーマーを身にまとい、背には斧と背嚢、腰には剣を下げて左手には盾を下げた姿。
ただ、この巨体で普通に見えるということは、それらの武器防具はすべて規格外の大きさをしていることを現してもいた。
この店を定宿にしている女戦士であることを認めれば、何人かは声をかけ、何人かは視線を戻し、残りの何人かは軽く手を上げる程度の挨拶。
これもこの店のいつもの光景。
「よぉ、相変わらずだねぇ。……あぁ、さっき仕事が終わったところさ。ギルドには既に報告済。」
声をかけてきた相手にそう返事を返せばカウンターへと歩いていき、軽く声を書ければ今日の部屋を取る。
その後一旦、取った部屋へと引き込んでから、武装を解除してまた降りてきて、カウンターの一角に腰を掛けた。
「昼メシもまだなんでね。何か腹に溜まるものとエール。
……ハハッ、仕事上がりなんだ。昼から飲んでもまぁいいじゃないか。」
通した注文と、昼から飲むのかと窘める店員に軽口めかした言葉を返せば、これもまたいつものこと、と肩をすくめた店員が注文の準備に動き始める。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にゴーマさんが現れました。
■ゴーマ > 「君たちはここまでで良い。……心配いらないよ。父上には言ってあるからね」
明らかに柄の悪そうな店の前で停まった馬車から降りた、フリルだらけの豪華な服を纏うチビデブ男は、顔をしかめる兵士たちにニヤケ面を見せた後、冒険者の酒場の扉を押しのけた。
客たちの視線は、2人目の来訪者にも集中する。しかしそれは嫌悪であったり侮蔑であったり、少なくとも1人目の屈強な女戦士に向けられたものとは大きく異なっていた。それらを全く気にすることなく、男は短い足をちょこちょこ動かしてカウンター席へとやってきた。
「店主、ここは腕利きの冒険者が集う店と聞いてきたんだが、噂通りだね……いきなり逸材と巡り会えてしまったよ。時に、契約を結ぶ際はどういう」
カウンターの一角に腰を下ろす、巨人と呼ぶに相応しい体躯の相手を横目で見ていた男は、その人物の容姿と性別に気付いて言葉を途切れさせた。視線を落とし、目を細めてにんまりと笑う。
「……失礼した。つい見惚れてしまったのを許して欲しい。貴女のような……女傑は、城でも見たことがない。今日まで噂を聞かなかったのが不思議なほどだ。その食事、僕が出そう。お近づきのしるしにね」
ニタニタ笑いながら、興奮で震える手を懐に入れ、取り出した金貨をカウンターに置いた。
■スルーズ > 程なくやってきた料理と酒。それに手を付け始めた時に開く扉。
扉を開いた相手に一瞥を向けるが、特に興味をなくしたのかそのまままた食事の方へと戻るが、その来客がカウンターの方へと。
そして店主に話しかけるものの、どうやら用事は自分に向けてのようだ。
「……まぁ、別に構いやしないけどね。でもまぁ、城でアタシみたいなのは見ることもないだろうさ。
城ならたおやかなお嬢様たちがたくさんいるだろう?」
改めて一瞥することで仕立ての良い服と上物の生地。
それを見るだけで悪く見ても下級貴族。普通に見ればお貴族様。
もし何かとち狂った相手なら王族、ということも考えられるが、ここはマグメール。何が起きても不思議ではない。
そんな軽口めいた返答をしていたが、最後の言葉には苦笑とも役得とも言えそうな微妙な笑みを浮かべつつ
「まぁ、奢ってくれるってんならありがたく奢られとくさ。ありがとうよ。
とは言っても、名無しの相手に奢られるってのも座りが悪い。
アタシはスルーズ。アンタは?」
貴族か王族かと認知していながらも、別に調子を変えるつもりもない。
今日は自分が相手のテーブルに呼ばれているわけではないのだから。
正しい招待を受けたのならば、それ相応の礼はむけるが、今日この場なのであれば、荒くれどもの宿である以上、わざわざ変える必要もないだろうと。
■ゴーマ > 「へへ、そうだね。お嬢様たちは沢山いるよ。着飾って、上品な……ありふれたお嬢様たちがね」
相手が自分の金貨を受け入れたのを見て、男もカウンター席に腰掛けた。小さく、背もたれもない、普段使っているのとはまるで違う家具の座り心地に尻をもじつかせた後、名前を問われて笑みを深めた。
「よしなに、スルーズ殿。僕はゴーマだ。ゴーマ・ゼノフィラス……カルネテル」
名前の最後については相手に顔を近づけ、囁くように言った。その後、肩と腹を揺すって笑う。
「家名についてはあんまり気にしないでくれ。父上が上手いことをやったのと、先王が少しばかりだらしなかったのと、たまたま女子が多めに生まれただけのことだ。スルーズ殿とは、もっと意義深い話がしたい。仕事の依頼とかね」
金貨をもう1枚だし、店主を見て女戦士の飲み物を指さす。過剰な支払いを済ませた後、にたにた笑う男は奢った相手に向き直った。
■スルーズ > 「そりゃ、世の中は普通はありきたりなものさ。例外を探すなんてのは、もの好きのすることだ。」
自分がとにかく例外なことは自分自身がよくわかっているが、一般論としては、ありきたりばかりであることの方が正しいし、例外を探すのが物好きと言うのも会っている。
そうこうしていれば、名乗ってくる男。
最後の家名が囁き声として耳に届けば、口元の苦笑がさらに深まって。
「もしかたらとはおもってたがね。本当にこの国にはモノ好きが多いこって。」
話し半分くらいに思っていたとち狂った王族が目の前にいるというわけだ。
とはいえ、元々権力などどうとも思っていない女であるがゆえに特に調子が変わるでもなく、なによりそれが元で何か気圧された様子もない。
そうこうしていれば、一杯目を干した酒。それをゴーマが次と店主に。
程なく運ばれてくるエールをそのまま受け入れながら
「仕事?……アタシにも仕事を選ぶ権利はあるはずだが、まぁ、内容を聞いてみなけりゃ受けるとも受けないとも言えないわな。」
軽く済ませる食事故に、食事自体はすぐ終わる。二杯目のエールには軽く口をつけるだけにして、仕事の依頼と告げるゴーマに体を向ける。
とはいえ、カウンター沿いの腕をカウンターの上に突いた状態のままではあるが。
■ゴーマ > 「依頼は探索と護衛だ。無名遺跡をご存じだろうね?九頭竜山脈の麓にある、建立された時期も目的も分からないほどの、迷宮がごとき広大な史跡だよ」
喋りつつ、相手に合わせるつもりで分厚い木製ジョッキに唇を触れさせた。王城では細身のグラスに入った、氷で冷やされ切った爽やかな飲み口の酒ばかり嗜んでいたので、舌をびりびりと痺れさせる良く分からない液体にまばたきした後、努めて冷静を装いつつジョッキを置く。
「そこに、ある魔導機械が大量に貯蔵されていることが、城内の文献から分かったのだ。自分の意思を、同じ機械を持つ遥か遠くの相手に投げ放ち、声が聞こえないどころか姿さえ見えないほどの長距離で会話が出来るという機械なんだよ」
話している内についつい身を乗り出した男は相手のビキニアーマーの谷間を視界に入れてしまい、咳払いしつつ視線を逸らす。
■スルーズ > 依頼の内容を口にする男。それを一通り聞いてから
「アタシは荒事専門でね。だから、探索は依頼から外れる。
あと、護衛をするとしたら、アタシが何人を護衛せねばならないかも教えてもらえないか?
アタシの見立てじゃ、アンタ一人を護衛すればいいわけじゃないくらいは予想ができるんでね。」
魔導機械であればそういう不思議なことが出来ても不思議ではないだろう。
もちろん、言われた言葉の内容通りならば、十分以上の価値がある。
そういうものを欲しがるというのはわからないでもない。
とはいえ、自分にできることとできないことが存在する。
出来る範囲であるならば、受けること自体はやぶさかでもないが、出来ない護衛なら最初から受けない方が良いとも言えるのだ。
もちろん、これで一人で来ると言い出したらこの依頼には裏があることもわかるというわけだ。
この店に来るまででも護衛がついているほどの身分の「お方」なのだから。
■ゴーマ > 「勿論、探索といったって学者の専門知識を期待しているわけじゃない。それは、僕の仕事だ。足場の悪いところ、危険な魔物が跋扈している道を切り開いて欲しい、という意味での探索だよ。そして護衛対象は……僕1人だ」
そう言った後、男は背の低い身体を更に縮こまらせ、声を低める。
「これがどれだけ怪しげに聞こえるかは僕も承知している。しかしながら、こうした発見は先駆者になることが重要なんだ。城勤めの学者たちは誰もこの話をしていないし、さっき言った魔導機械が出土した報告もない」
再び身を乗り出し、またしても相手の胸と鍛え抜かれた筋肉が目に入り、鼻息を荒くさせながらも、チビデブ男が更に言い募る。
「スルーズ殿は高名な冒険者とお見受けする。名声なくば、そんな立派な体躯も装束も維持できまい。ゆえに、名を挙げることが如何に大事かご理解頂けるのではないかな?」
首を傾げてにんまり笑った男は、上目遣いに相手の顔を見上げる。
「何卒ご検討頂きたい。大量の魔導機械をそっくり持ち帰る必要はないのだ。状態がいいものを1つ……出来れば2つ手に入れさえすれば良いのだよ」
■スルーズ > 依頼の内容として別におかしいことはない。そういった部分においてはさほど問題視しているわけではない。
だが、1人と言った所が引っかかる。
この手の貴族王族の場合、身の回りの世話をする人間が少なくとも複数人ついていることが普通だ。
護衛となれば、彼らをも護衛する必要が出てくる。
そういった人数を含めて自分だというような貴族や王族は何人も見てきたからそうなのだと言ってくれるのであれば納得もしよう。
とはいえ、ごくまれに本当に一人で野外活動をするもの好きな貴族王族もいないわけではない。
さて、目の前の男はどちらなのか。
「そうだねぇ……」
思案するような様子を見せながら、服装に引っ張られてみていなかった部分をそれとなく観察する。
具体的には手。
手や指にはどのように使ってきたのかが分かるから。
1人で野外活動ができるのであれば、ただのお貴族様のような手はしていまい。
そこでも疑いが晴れないならば、直接的に質問することだろう。
身の回りの世話に何人連れて来るのか、と。
野外活動をする様子もなく、身の回りの共連れもない、と言われたら、流石に受けることは難しい、と答えるつもり。
わざわざ見えている罠にはまる趣味はないのだから。
■ゴーマ > 「如何かな、スルーズ殿」
にべもなく突っぱねられていないということは、まだ望みはある。そんな前向き思考のチビデブ男がにまにまと笑いつつ、両手の指を組み合わせた。
「新種の魔導機械を発見したとなれば、僕も貴女も相応の報酬を得られるだろう。単純な富も、名声も含めてね。どうだろう。受けると言ってくれまいか」
組んだ指をすり合わせた時、悪魔のような幸運の女神が男に微笑んだ。この数日間、それこそ遺跡の如き王城の地下図書館にこもって本を読み漁っていた男の手には、細かな擦り傷や、単純な水洗いでは落ちないインクなどの痕跡があちこち残っていたのだ。
勿論、何年も辺境で旅をし続けた熟練の冒険者とは似ても似つかないが「王族にしては」という但し書きを付ければ、汚れ仕事や多少の痛い思いを厭わない心得が備わっている……ように見えるかもしれない。
■スルーズ > 手先を観察することで、王族である男の状況と考えればまぁ、一人で行動することもなくもないのか、とも思える状況だった。
まだ半信半疑の所もあるが、ゴーマ一人で自分を何とかできるとも思えない。そこまで状況がそろえば……
「別に名声は売るほど持ってるんでね。正直、そこまで必要とはしていない。
金も生きるに足りるほどあれば問題ないさ。ありすぎてもかさばるだけだ。」
ゴーマの言葉に対して返していく返事。
ここまで聞いていればそのまま拒否されるだろうとも受け取れそうな返事。
「だがまぁ、そんなに遠いわけでもなし、拘束時間も無茶苦茶長いわけでもない。
だったら、請けてやるよ。物好きの王族サマに免じてね。」
最後の部分でひっくり返すような承諾の言葉。
で、いつから出るんだ?と付け加えるような言葉を向けた。
■ゴーマ > 「ん……そうかね。そうだろう、と考えるべきだったね」
カネも名声も困ってはいない。そう言われれば肩を落として俯く男。残念そうな笑みで相槌を打った刹那。
「おお……おお、それは!有難い!スルーズ殿さえ良ければ、直ぐにでも支度にかかるよ。まずは城に来てくれたまえ。心配無用! 正式に招待する。九頭竜山脈へ突撃する前に、出来るだけ情報を共有したいのだ」
椅子から立ち上がって小躍りしたチビデブが、満面の笑顔でカウンターに重い袋を置いた。
「店主! ここの皆様に御馳走して差し上げてくれ!ではスルーズ殿!しばし待たれよ!今晩にでも遣いを寄越す。貴女の時間は毛筋ほども無駄にはしないよ!」
喧噪の中、太った小さな身体は跳ねて転がるように冒険者の店を飛び出していった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からゴーマさんが去りました。
■スルーズ > 当初の言葉で肩を落とした様子の男。
その後でひっくり返った返答に反応がころころ変わるのを面白がっていたものの、
続いた言葉で少し悪戯を楽しんでいた笑顔がひきつった。
『正式の招待』と言われてしまえば、この宿のような気楽な調子というわけにもいかなくなる。
とはいえ、請けてしまったものは仕方がないのだ。
そのまま飛ぶように店を出て行ってしまうゴーマ。
最後の言葉で酒場は大騒ぎに。
このようにみんなが楽しいのであれば、まぁよいか、と割り切って、店主に部屋に戻ると言伝れば、今日の部屋に戻り、荷物をまとめ直すことだろう。
そして、その夜。ゴーマの家の迎えが来た時に、二階から降りてくる礼装姿の女戦士をみて、冒険者仲間が驚いた顔をするのはまた別の話し。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からスルーズさんが去りました。