2024/02/03 のログ
ソフィー > 「ハァァッ!? 頭きた、絶対有り金全部奪ってやるんだから……!!」

煽られればもうそれは面白いぐらいに乗っていき、眉だけでなく目も釣り上がり、般若の相になっていくがこの顔では相変わらずの迫力不足。
絶対、絶対勝ってやると脳内で繰り返しながら手札交換すれば、予想通りの勝利。
悔しげな様子に、ふふんと鼻で笑いながら胸を張り、ニヤついた笑みは止まらない。

「おにーさんも運がいいみたいだけど……私のほうがもーっと運がいいってコト♪ 勝負挑んだこと、こうかしたってもう遅いんだから」

金貨を受け取れば、きれいに重ねてさながらカジノコインの柱と同じ扱い。
カードを配れと言われれば、はいはいと言いながら肩をすくめていき、山札を取って配っていくしていく。
手付きも子供のそれと変わりなく、五枚を配り終えると、そちらにはキングのワンペアが流れ着く。
それに対してこちらはもう見えているので手札を交換する必要もない、フラッシュ。
配札が終わった後、手札を確かめた後、変更無しで先程と同じ額の金貨を積むと、にんまりと笑う。

「私はこれで勝負する、おにーさんは交換する?」

どっちにしろ勝てないと思うけどと、山札を一瞥して確信する。
どれを引いてもフラッシュ以上の手札にはならないはず、つまり勝ち。
これが終われば本命の3回目が来るとも知らずに、ニマニマが止まらない。

クレイ >  
「ハッ、1回勝った程度でイキるなんてガキだねぇ」

 なんてさらにダメ押し。
 そして勝負が始まる。

「……」

 苦い顔。
 周囲の客もダメだこりゃという顔。つまり他の人の視線でもこいつがイカサマをしていないという事を示している。

「こ、交換だ」

 そして出たのは4カード弱くはない。決して弱くはない。

「勝負だ! ……うっそだろ!?」

 自信満々に出した手が沈んで良い顔を見せてくれるだろう。
 手は尽くした。顔をむくりを上げて。

「もう一回だ。でも」

 袋をひっくり返す。どう頑張っても負け金を回収できる金額ではない。
 だからだろう。腰の剣を腰から外す。

「掛け金に関してルールの変更をしたい。どうだ?」

 男が提案するのはこういうルールだ。ポーカーに存在する役は全部で10。
 それぞれ下から勝利した時に相手から奪える金額が増えていくという物。ワンペアで勝利すれば掛け金の2倍を相手から奪えるし2ペアなら3倍といった具合だ。ロイヤルストレートフラッシュなら10倍まで膨れ上がる。
 そして勝負から降りた場合は本来の半分。例えば男が金貨2枚でスリーカード。そちらが下りた場合はこっちに金貨4枚払うという事だ。

「この剣は魔剣だ。もし万が一、俺の軍資金以上の金額で負けたら……こいつをくれてやる」

 彼女側の金額の場合はフルハウスで魔剣を奪い取れるチャンスという訳だ。
 そして負けた場合はストレートフラッシュを出された所で金貨を失うだけで済む。
 つまりそちらにとってどう考えても悪い勝負ではない。

「どうだ、乗るか? 乗らないか? 乗るならカードを配るが」

 と言いながらシャッフルをしておく。ここで既に仕込みをする。ミスディレクション。魔剣に目線を誘導させて……シャッフルで細工をする。相手に渡すカードにフルハウスを。ロイヤルストレートフラッシュをこっちに回すように。
 勿論魔力にも細工をする。魔力の種類がわかればその程度造作もない。
 魔力だけを見るなら相手にフルハウスがくるのは見せたまま……こちらに来るのはスリーカードにする。

「まぁ、でも……子供には怖い勝負かもしれねぇなぁ。だって仮にロイヤルなんて出されたら。お前マジで丸裸だぜ。折角だし上の宿でお世話してもらおうか」

 なんて笑う。ダメ押しの煽りであった。

ソフィー > 「1回? 違うわよ、これまでずっと勝ってきてるんだから、そこで指くわえてみてるおじさん達がいるでしょ?」

敗北した男達をちらりと一瞥しつつ、ふふんと自信満々の笑み。
そうして始まる勝負は、周囲の客の顔を見なくたって分かる。
既にカードは決まっているのだから、彼がどうあがこうと変わりない、例えいい手札が出来上がったって。
そうして勝負と見せられたそれをみれば、決まりきった勝利が確定し、ニマニマとしながら、積まれた金貨を両手で抱え込むようにして引っ張っていく。

「はい残念でした~♪ ぇー、もう辞めとかないと、ホントに一文無しになっちゃうよ?」

それにもう有り金をすべてかけたところで、負け分を取り戻すには難しい。
ヤケになってるとケラケラと笑いながら、全く心のこもっていない心配の言葉をかける。
しかし、重なる提案に首を傾げながらも耳を傾けるのは、無駄な足掻きと侮っているからだろう。

「ふ~ん……そう、でも私にメリットないじゃん。そっちは玉砕覚悟の大博打だけど、みかえりがないんじゃ……」

しかし、腰の腱をテーブルに置いた瞬間、その物音と存在感にビクッと驚きながらも視線はそちらへ向かう。
万が一負け越したならこれを差し出すと言うが、別段魔剣の類など興味がないお子様。
しかし、魔剣を失うというのは、この男にとっては相当な痛手となるだろうというところが面白い。
負けてもどうでもいい金貨を失うだけだし、勝ったら彼から剣という名誉を奪えると。
その合間にシャッフルの仕込みが進んでいるとは気付かぬままに。

「……どうしよっかな~、私、剣になんて興味ないし、売ったらお金になるかもだけど」

手に入れたら換金してしまうと口にするのも、勝った後のショーを盛り上げるための言葉。
きっとこんな魔剣を失うとなったら、やはり返してくれと泣きつくに決まっていると思っているのだ。
ニマニマとしながら呟くものの、その時はごめんなさいでも言わせるなり、ちょっとの間召使いみたいにこき使ったりして、どっちが上か分からせてあげるのも楽しそう。
そんな妄想を浮かべていれば、追い打ちの煽りに、ピキリと怒りのボルテージが跳ね上がり、一気に顔が険しくなる。

「ハァァッ!? おにーさんこそボロ負けのクセに何いってんの!? 頭にきた……!! そっちが勝ったら別にいいわよそれで!! その代わり私が勝ったら、絶対この剣売り飛ばしてやるっ!!」

予定変更、絶対売り飛ばして絶望顔させてやると奥歯を噛みしめると、配られたカードを再度確かめる。
既にフルハウスが来るのが見えている、そして相手にはスリーカード。
カード交換をしても勝てる手札ではないのも、重なった山札から見て取れれば、ザラァッと硬貨の山を前へ差し出して勝負に乗ってしまう。

「吠え面かいたって知らないんだから」

予想通りのフルハウス、何ら問題ないとにんまりとしながらこれで勝負と告げて。

クレイ >  
「金になる所じゃないぞ。俺が買う時……こいつに賭けた金額は1本に付き6桁だ」

 勝負が始まり、逃げ場を封じてから雰囲気が変わる。
 さっきまでの酔っていたような雰囲気はなりを潜めニヤリと笑う。

「もう勝負といった、そしてここはアウェーだ……今更待ったが出来ないのはお前の周りの空気を見ればわかるはずだ。さて、じゃ勝負の前にネタバラシだ」

 手を自分の札にかざす。
 別に袖から新しいカードを取り出すとかそういった事はしていない。むしろそんな事が出来る袖ではない。
 行ったのは魔力への細工を解除しただけ。

「魔力の付着を見るのは良い着眼点だ……けど、魔法を使える奴。それなりに腕が経つ奴なら操作するのは簡単なんだよ。特に俺みたいにエンチャントが得意な奴はな。さ、勝負……だろ。お嬢ちゃん?」

 手札から零れ落ちる。キング、クイーン、ジャック、10。そしてエース。
 手札見せてみろと合図をする。周りからも出せよオラァと負けた奴らが吠えるだろう。

ソフィー > 「おにーさん、正気? そんなの賭けたら人生終わっちゃうじゃん」

よほどの値打ち物だろうに、こんな勝負で捨てられるなんて可愛そうなどと、流石に魔剣に同情する。
困惑の顔を浮かべながらも煽られてしまえばそれどころではなくなるのが、子供なところだが。
そして雰囲気の変わる彼に、訝しげに目交に皺を寄せたところで、呟かれる言葉。

「今更いうわけないじゃん、ネタバラシ?」

何の話と首を傾げていると、魔力の細工が溶けていく。
こちらが誤認していた情報が急激に変化し、スリーカードがロイヤルストレートフラッシュへ変貌していく。
自身が仕込んだタネを利用されたことに気づき、さぁっと顔から血の気が引いて青ざめていく。
減らず口も引っ込み、ここまで綺麗に騙されてしまうと、カードを持つ手が小さく震えるというもの。

「……っ、ぐ、ぐぅぅぅっ!! う、うるさいわよ負け犬!! 黙ってなさいよ!! ばーかばーか!!」

完全に裏を書かれたと悔しげにうつむいていると、周囲のやじに気丈に怒りの相を向けて声を張り上げる。
私が負けたのはお前らじゃない、この目の前にいる男だけだと、自分に言い聞かせるように。
そして、悔しさのすべてを叩きつけるように手札を明かしながらテーブルに叩きつければ、完全に決着する。
5と7のフルハウス、勝負が付けば、完全なふくれっ面で金をすべて男の方へと押し出すようにして渡していった。

クレイ >  受け取った金貨。それを店主へ。自分の分は回収して残りで他の奴らに酒を出してやれと。
 そして目線を彼女に向けて。

「足りねぇな。忘れたか? 俺の手札はロイヤルだ……金、足りねぇぞ?」

 そのギリギリを狙っての金額だ。
 後数千ゴルド程……足りない。
 机をトントンと叩いて。

「さーて、どうするかな。丁度娼館数回分って所か……でも、服もそれなりに値打ちがありそうだ。俺だって鬼じゃない、選ばせてやる」

 ニヤリと笑って。

「候補1、さっき俺の宣言通り丸裸になる。その服を貧民街の古着屋にうっぱらえば足りない分位は確保できるだろ。候補2、今夜俺に買われる。さ、どっちがいい? 少なくとも候補2なら朝まで宿を使えるし、服も無事だ。候補1は今日中に帰れるし上手くいけば襲われないが……まぁまず無理だろうな」

 さ、どっち? とニコやかに笑う。
 無駄にさわやかな笑顔だった。
 

ソフィー > 持っていかれる金を恨めしげに見送るものの、別段対した金ではないと己に言い聞かせる。
ちょっと火遊びした程度のお金なんだから、お小遣いの方がもっと多いしと脳内で繰り返す。

「ぐっ……」

ギリギリ足りない支払いを求める彼に、ぐぬぬと悔しげに睨み返すも敗者はこちら。
どうするかという彼に、コイツここでぶっ殺してやろうかなんて物騒な案が脳内に浮かぶ。
そう、戦えば絶対にここらの奴より自分のほうが強い、魔法をぶっ放せばすべて吹っ飛ぶじゃない。

「ぐぅっ……だ、誰がアンタなんかに……!!」

誰がそんな提案に乗るものかと、テーブル下の掌を広げて爪を伸ばしていく。
力技で押し通る第三の選択肢をいってやろうと思った瞬間、脳内に浮かぶ母の顔。
流石にここの輩をふっとばしたとなると、母の耳に入るし、最悪父にも影響が及ぶ。
そうなると母にどんなお仕置きを受けることやら、火遊びが許されるのも両親に影響が出ない程度だからだ。
絶対大変なことになるとうつむいたまま、百面相状態となっていたが、候補で上げられた言葉でピンと思いつく。

「……ばぁか、おにーさんのお陰で帰れる方法見つかっちゃった」

にんまりと笑うと、爪を引っ込めた手を掲げていき、ぱちんと指を鳴らした。
その瞬間、全身が青白い光に包まれていき、ポンと弾ける音を響かせながら礫へ変化する。
それが蝙蝠の形変化すると、翼をはためかせて四方八方へと散っていくのだ。
壁や窓にぶつかるとするりとすり抜けて外へと抜け出していくのは、人によっては手品の類にみえるだろうか。
選択肢がないなら作るのが商売と母の言葉、そしてその第三の選択肢はトンズラ。
同じく母が言っていた、商売で大事なのは引き際、取引を誤ると大損をすると。
今回は間違えた自分の大敗だが、勝負では負けても喧嘩では負けたくないという我儘。

『今度あったら、逃げ道教えてくれたお礼にさせてあげる♪』

しかし、人前で大恥をかかないで澄んだヒントのお礼はするべきだろう。
彼にだけ聞こえる言霊を残し、なんてねと冗談めかすように言葉を残して消えていく。
夜空に浮かぶ蝙蝠達の小さな影は、次第に消えていくのだった。

クレイ >  
 さて、力押しという選択肢だが、それはある意味でしなくて正解だったかもしれない。目の前にいるのは歴戦の傭兵。少なくとも詠唱の隙などこの距離なら与えない。
 お互いにタダではすまない事態に陥っていた事だろう。
 さて、蝙蝠に変身するのを見れば。素直に関心した声を出した。

「へぇ……」

 撃墜を試みる事も出来たかもしれない。だがそれはしない。
 そもそも丸裸にしたとして脱ぎ始めれば止めるつもりだったし、仮に癇癪起こしたら護衛に隠れてついていくつもりだったから。
 そしてこの勝負も男からすればマスターからの依頼でしかない。つまり躍起になって勝ち金を全額回収する必要など全くないので。

「へいへい、じゃ、今度会う時を楽しみにしておく」

 なんて返事をしてさっさと行けと。周りの奴らが見つけたら面倒だ。逃がすなとか言い始めるだろうし。
 酒に皆の気が移っている内に窓から彼女が逃げていくのを確認すれば。

「おらぁ! 英雄の帰還じゃ。てめぇら酒奢れ酒ー!!」

 他のメンバーの宴に混ざりに行くのであった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からクレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 酒場」からソフィーさんが去りました。