2024/01/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にキーラさんが現れました。
キーラ > 雪の降って一夜が経った王都。とあるこじんまりとした店の前を掃除する女が一人。
白く美しい被毛が太陽で銀色に照らされ、両手で握るブラシで床と壁を磨いていた。
しゃっ、しゃっ、と磨く音が響き、時折水を撒いて汚れを落としていく。

「ふぅ。すっかり寒かったけど、太陽が照ってるおかげでなんとか温かく過ごせそうね。
 風が冷たいのに目をつむれば、だけど」

そうぼやきながら額の汗をタオルで拭いて掃除道具を店の中にしまう。
今はまだ店のやる時間ではない為、客などが近づく様子もない。
掃除は終わったし、まだ夜になるまで時間はある。さてどうすごそうかと悩むが。

「……ふぅ。どっかで適当に昼でも摂るかね」

紙たばこにマッチで火をつけて、紫煙を吐き出しながら店によりかかりながら空を見上げる。
そんな風にぼやいて、今日という日の予定を組み立てようと考えて眩しい太陽に目を細めた。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」に夏虎さんが現れました。
夏虎 > 辺りは積雪で白く、吐息も大きく零せば白くなり、風は刺すほど冷たい中――
薬の宅配であちこち歩き回ったお陰で汗が少し額に滲んでぱたぱたと手団扇しながら歩く桃髪。
マフラーやら手袋も最初は着けていたが今は帆布のトートに押し込んでしまい、
時折吹く強めの風に髪型が崩れては手櫛で直しながらふと太陽の位置を確認し。

「ぁーそろそろ昼時かぁ。どうしよな」

どこか適当な店にでも入るか自宅に帰って用意するか。
独り言ちて悩みながら周りへと視線を巡らせた折だ。

「ぉ? ぉお。かっけぇ」

飲食店だろうか? 小ぢんまりとした設えの店構えに寄り掛かる女性に対して……
真っ白な体毛とめりはりのある肢体に黒のコーデがかなり決まっている格好を見かけて、ついぽろりと。
独り言のつもりが結構大きな声で漏れてしまったのは彼女の耳にも届いてしまったろうか。
あ、と、開いた口を掌で隠すが、直ぐに誤魔化すのを諦めて、掌を謝意に立てた。

「ぁー……ナンパみたいな声掛けになっちゃったな、ごめんね。
 いやこう、つい。ナンパじゃないよ、いやホント。ここ、やってます?」

やっちまったぁー。みたいに眉を潜めながらに困り笑いしながら掌は立てた侭足を止めて、改めて、声を掛ける。

キーラ > 聞こえてきた声に、紫の眼が動く。
顔は上のまま、目だけをその青年屁と向ければ、なんとも派手な恰好。
自分も大概ではあるが、なんというか「キマってる」というべき衣装を着た男の姿を捉えて。
ぴょこん、と人ではない耳を軽く動かし咥えていたたばこを一度口から外して。

「別に構わないよ、ナンパだろうと声をかけられる分にゃ気持ちのいいものではあるしね。
 んで、店の事かい? 今開いてないよ。来るなら夜に来な。
 まぁ本来の値段より割高になっていいなら入れてやっても構わないけどね」

そう言いつつ「フー」と紫煙をもう一度吐き出して、改めて青年の方に顔を向ける。
煙草を持っていない方の腕は腹部に置いて、軽く豊満な胸部を持ち上げるように。
別に誘っているとかそういうわけじゃなく普段からやっている仕草の様だった。

「お兄さんもこれから予定がないとか、昼に困ってるクチかい?
 私もこれからどうするか決めかねてるところでね。
 なんか今の気分とか教えてくれないかい? ちょうど他人のを参考にしたくてね」

すらりとした肢体に浮かべる表情はニヒルな笑み。
恰好と服装と、そして煙草のせいもあって女であってもまぁ、確かに先ほど青年が反応したように格好はつくか。
女性が見ても黄色い悲鳴が上がるかもしれない。

夏虎 > 桃色に根本までしっかり染まった髪と同色のアクセを際立たせる様な黒コーデ。
身成を確り「キメて」いるから似たような格好の良い人にはつい目が向く、
にしても、気を抜いていたにせよ初対面にナンパみたいな台詞はいけない。
いやほんと申し訳ない。と、立てた手をもう一度ゆるりと振ってから、

「ナンパにしても下手だったよ、もうちょい気が利いた事言えてたら格好付いたのに。うん、ありがと。
 ぁー開いてな……んー……良ければ入れて貰おっかなぁ……」

お許しを有り難く頂いて、謝罪はそこまでにして手を下ろす。
割高の言葉に少し迷ったものの、自宅に帰って用意する手間やら、昼時の混み具合やらを考えたが。
ぴょこんと動く耳やら強調される乳房になだらかなお腹とつい動くところ魅力的なところに瞳が動き、
まじまじと見そうになってしまってぐいと視線を無理やり持ち上げてから彼女の面構えと瞳へと戻す。

「ご明察。仕事も終わってお昼どうすっか、てね。
 今の気分かぁ。そう、さね、麺類とか汁物とか? パスタとかシチューとか。ミートパイとかもいいなぁ」

相貌に目を移したら移したで、ニヒルな笑みも似合うし口調も合わさって、
何なら男性よりか女性ファンの方が多そうな具合にどうにも感心してしまう。
ほんとカッコいいなぁ……。と、漏らしながら、一つ二つ三つ、ぱっと思い付いたものを指折り数えて指を立てて見せて。

キーラ > ふむ、と言葉を聞きながら適当な積雪で火を消す。
半分ほど吸ったそれを仕舞いながら、懐から小さなカギを取り出して店の錠前を開けて。

「火は消してるから最初は寒くていいなら構わないよ。
 ま、素直な言葉なら悪い気もしないってもんさ。
 朝からお仕事お疲れさん、私も気が利いた子とは言えないタチだから気持ちはわかるよ」

じゃらり、と鎖を適当なところにひっかけて扉を開き、店の中にはいっていく。
カツカツと革靴の音がしばらく聞こえていたが、ひょこっと扉から顔を出して。

「入んないのかい? 暖かくなってから入るってのも構わないけど」

それだけ告げると、また店の中へと戻っていく。
中に入れば多少汚れはあるが出来るだけマメに掃除はしようとしているのだろう事は分かる。
老舗というほどではないが、なかなか年季が見て取れるぐらいの埃っぽさ。
昨日も飲みに来た男どもがいたのだろう、空き瓶などが店の奥の方に見れば箱に積まれている。

「ウチで出せるのはだいたい今挙げたモンはいけるよ。
 ただパイは少し時間がかかるね、さっと暖めて出せるのはシチューとかコーンポタージュとかってところさ。
 それとも、まだ仕事があるならスタミナがつく肉丼とかにでもするかい?
 ま、席は適当に座って構わないよ。どうせ客は今はいないからね」

ボッ、と暖炉に火をつければ、陽の光が差し込んでいる以外の光がない店に灯る光。
コップに水を入れて、青年の前にそれを置く。

夏虎 > 「じゃ、失礼して。ああ、寒いのは平気、こんなナリだけど北の生まれでね。
 それに朝から歩き回ってちょっと暑いぐらいだから寧ろ助かる」

髪といい瞳といい顔立ちといい何方かというなら王国人の様だが此れで北方人である。
桃髪を一摘みしては軽く指で弾いて見せて笑って。頷き一つ、彼女の後に続いて店へ。
店内を伺ってみれば年季も一つの味として成立できる手入れのされた様相に、
良い店だねぇと月次ではあるが素直な感想を口にしながら適当な席へと腰掛けさせてもらい。

「そしたらシチューでも頂こうか。もう仕事は上がりで、あー薬屋をね、大通りの方で露天出してんだけども。
 この時期はお客さんぜーんぜん来ないから常連さんとこに常備薬お届けしてて。今日はもう終わり」

この時期は、というが、この時期でなくとも薬屋としての仕事はさほど無いのだが。
其処は隠すというか現実直視したくないのでぼかしつつの、
空いた酒瓶のほうにも目は向いたが入れてもらった水を受け取ってから一口傾ければ、
歩き通しで火照った身体には冷たい水が丁度よくてほっと一息零している。

「もし良かったらご贔屓に。ぁ、夏虎(シァ・フー)いいます、よしなにね。発音しにくかったら適当に呼んでもらって」

自己紹介のついでに軽い宣伝も交えて、コップを軽く揺らす。

キーラ > 「北かぁ。正直顔立ちから服装からなにまでそんな感じにならないね。
 そっか。なら火もそんなに強くなくて良さそうだ、薪の節約になるから助かるわ」

火をつけてから鍋を置く。中には昨日のうちに仕込んでいたシチューが入っている。
そこに新鮮な具を適当に放り込んで、あとは火が通るまで煮込み続ける。
これで終わり。簡単なものだが、そんな簡単な味でも売れるモノは売れるのだ。
ま、手間暇かけてないと言うとそれは個々人に寄るが私はかけていないと思う。
心は込めてるつもりだけどね。

「薬師か。そりゃあまぁ、この時期だと本当に危ないお客以外はそもそも露店に足を運ばないだろうからね。
 んじゃ適当にここであったまっていきな。私もその分適当に過ごすけどね」

水を飲む様を見て、おたまで軽くかき混ぜながら青年へと笑みを向けて。
室温が温かくなってくる……と言いたいが。
あまり防寒対策はされていないようでモロに積雪の温度が中に響いている。
その上全体的に広い為、そこまで急速に温まる訳ではなかった。
開店するときは数時間前からもう温めなければいけないレベルである。

「問題ないよ。一時期私もそっちのほうに住んでたからね、フー。
 私はキーラ・コリンズ。キーラなりすきに呼んでもいいからね。
 んー、にしても薬ねぇ。どんな薬が得意とか専門とかあるかい?
 薬膳とかもメニュー表に入れようかと思っててさ」

夏虎 > 「でしょ。よく言われるし自分でもそう思う。しかもさ、親はしっかり黒髪黒目でさ、何がどうしてこうなったんだか。
 うん、全然大丈夫。長いこと北で暮らしていたから王国の冬はまあそれなりよ」

支度をしている様子をぼんやりと眺める。
具材はぱっと見でも新鮮だと解るぐらい色合いが良い。
火にかけられて立った匂いも牛乳や出汁の匂いも良い。
見目も匂いも良いのなら言うこともなく美味しそうだ。
十分である。手抜きがないなら十二分だ。おまけに、見目のいい女主人が手掛ける、となれば、いやそれはまた酷く古臭い軟派な台詞になってしまうから言わなかったが、美味しそうだねぇーと当たり障りないこと言いつつの。

「その薬師がいうのも何だけどそんなお客さん居ないほうが良いから良い事だよ。
 そうさせてもらうね。ああ、どうぞどうぞ、肩肘張るのぁ苦手だしね」

お酌しろだの愛想振り撒けだの言うつもりはさらさらないので適当の一言に頷いて、
向けられる笑みに飄々とした笑みを向けながら。
じっくりと、ゆっくりと、薪が赤く染まって炎がくすぶるのを眺めるのも一興だ。
緩やかに暖かくなっていく暖炉やら彼女やらと何処に定めるでなく視線はふらふらしたまま、

「ああ。それなら良かった。よろしく、キーラさん。
 普段は、風邪薬とか胃薬とか、後は鎮痛剤を調合して売ってる。女性向けには生理痛薬とかもあるよ。
 薬膳に使えそうなものはあんまり仕入れないけどご要望ならって感じだね。
 仕入れから始めなきゃいけないけどご贔屓にしてくれるんならお勉強させて貰うよ、今なら献立とかも付けちゃいまーす」

品揃えは主に医家に掛かるほどではない症状を緩和するものが多い。ご家庭にあれば便利なものが主である。
が、滋養強壮、デトックス効果云々、見識が深いわけではないが出来ないでもないのでそこはお客さんのご要望次第、といった具合であることつらつらと語っている。

キーラ > 「まぁ、普通は子は親に似るものだしね。見た目がかなり違うのかねぇ。
 もしかしたら親の親がフーみたいな髪と目をしてたかもしれないし、そっちからじゃない?」

適当に話を聞いて、適当に駄弁る。こういう時間の方が気が休めていい物だろう。
まぁそうじゃない方が好みの客はいるが、拒否しないのなら問題ない。
当たり障りがなくもそんな言葉をかけられるだけで十分だ。
もう何度も言われて慣れたが、そう言われて悪い気はしないのは事実。

「ま、商売上がったりの方が人を治す仕事ってのは世のためにいいもんだしね。
 でも実際ずっと需要は耐えないのが世の中ってもんさ。
 それこそいなくなったらこの世の終わりみたいなもんだよ、医者や薬師ってのはね」

コトコト、グツグツとシチューが煮込まれて行く音が響く。
そうしてから軽く皿に盛り付ければ、ニンジン、ブロッコリー、鶏肉、キノコなどなど。
具だくさんな家庭料理の出来上がり。
空気が冷えているせいで非常に湯気だつそれは上から見れば目に入って痛くなりそうなほど。
と、そこに注目していればまた「コト」と別の皿が置かれる。
少し乾いているがカピカピというほどではない黒パンが4切れ入っていた。

「昨日の売れ残りのサービス。お代はシチューの分だけで構わないよ。
 ん-で、生理痛かぁ。私もそういうのがあるなら今度一袋ぐらいもらおうかね。

 酒場ってのはたまに不養生な輩が来ることがあってねぇ。
 ウチとしちゃ長く客には来てほしいから早死にされたり倒れたりされると困るんだよ、金づるが減る。
 それに「酒はクスリだー!」なんて言って病気でも酒飲みに来る奴もいるからね。
 嬉しいけど、そういう奴にも出せるようにはしときたいのさ」

述べられている手広さを聞いて、こちらも欲しい理由を簡単に説明する。
先ほど消した半分ほど残っている煙草に火をつけなおしてまた一服を始めて。
自分の分のシチューを盛り付けてそれを軽くスプーンで掬って食べる。
人の口ではない、大きな狼の口へと運べんで「はふはふ」と軽く口の中から湯気を出しながら吞み込んで。

夏虎 > 「うん。全っ然似てないの。すわ托卵か!? なーんて話も一瞬上がったけどド田舎に王国人来ないしさ。
 そうそう、爺さんの爺さんまでは北方人のはずなんだけれどそっから前がわからんからあるいは、て話になってねぇ」

気楽に相槌を打っては適当に返してのんびりと喋くる。
酒を片手にしんみりと楽しむのも良いがこういうのも好みだ。
彼女の楽な姿勢は気安いもので此方も足を組んで、
時折水を傾けつつ緩やかな会話を楽しんでいると、

「おまんま食い上げってわけでも無いからね、ほんとそれ。
 商売人としちゃ駄目なとこなんだけど性分だ。俺ぁ多分出世出来ないだろなぁ、ははは。
 ……お? ふふ。ありがたく」

ニンジンの赤色にブロッコリーの緑色やぷりっと茹で上がって牛乳色に紛れる鶏肉の色合いとキノコの茶色。
それらがたっぷり詰まったどろりと濃厚そうなスープは食欲をよくよくそそる。
水で潤したものの寒気でそれでも乾きがちな喉には湯気さえ心地いいもので、
では早速、そう両手を合わせたところで置かれる黒パンの皿に首を傾げたのも束の間。
頂きます、と両手と一緒に頭も下げてありがたく頂くことにした。

「生理痛や避妊薬なら幾らか残ってるよ。今日の宅配には必要なかったけど念の為にちょっと持ち歩いてて。
 俺の腕のお試しってことでお代は要らないから後で包ませてもらうね。

 酒は百薬の長とはいうが……その感じは多分毒になるほうの飲み方だなぁ……。
 よし、それじゃあ、お手伝いさせて貰いましょ。今度幾つかお試しに持ってくるよ」

お客の話を聞いてはくつくつと喉を鳴らして、よく居るそういう手合い、と笑気に震えながら相槌。
マズルのあるお口は、やはり少し物珍しいから視線はいったが自分もスプーンでひと掬い。
熱いものは得意のようで熱いのだがぱくりと一口で含んで冷ます事なくごくりと喉を鳴らして嚥下して、

「ああ。美味い。うん。形式張ったとこでさ、何晩仕込んだの何だのっていうの食うよかこういうのが好きだよ、俺」

キーラ > 「なかなか不穏だけど、まぁ親の関係が冷え込まなくてよかったじゃないか。
 実家が冷えると帰るのが嫌になるわけだけど、親を親と思えるならちゃんと帰りたくなるもんだからね。
 んま、真相はわからないけど。もういいってことになったんならいいんじゃない?」

あんまり重い話はしたくはないが、本人が冗談めかしているなら別に問題ないのだろう。
自身も家族関係は少々複雑故にあまりいいことは言えないし、言うつもりはない。
ただ、雑談に花を咲かせる。酒場ってのはその程度でいいのだ。

「出世したいならむしろそういう風に考えられるのは大事だと思うけどね。
 いざという時に頭がすぐ回れる奴はどこだって役に立つもんだよ。
 ま、人の好さもそこら辺は関係するかもしれないがね?」

青年と共に、スプーンと皿がぶつかる音が響く。
時々パンをかじりながら、今日もいい出来栄えなシチューの味を楽しむ。
時々煙草も吸うのも忘れない。この行為に効果はないが、意味はあるのだから。

「じゃあ貰うとするかね。どうにも私ってばこの見た目だろ?
 なかなかそういうのを売ってくれる所が少ないんだよ。あるっちゃあるけど割高になっちまうし。
 フーの店の場所教えてくれたら今度冷やかしにでも行ってやるよ。

 頼むわ。水のように飲まれてもいいけど、それはちゃんと健康な時にやって欲しいからね」

皿もほどほどに食べたところで、一度かちゃりとスプーンを置く。
お腹いっぱいになったわけじゃないが、一息。すっかりシチューで体もあったまった。

「お? それなら今後ともこの店を贔屓してくれるってことだね、嬉しいわ。
 お代はこんなもんね。ちなみに、他のメニューの食べたいならいいな。
 まぁ全部私の気分で割増になるけど、ははっ!」

大口を開けて笑って、ベロリと長い舌でマズルを綺麗にした後、もう一度ナプキンでマズルを吹き上げる。
笑った時に獣特有の牙が見え隠れしており、人の食べ物を作る割にはあまり人の食べ物を口にするには向いてない構造だった。

「手間暇かけて作る料理も構わないし美味いもんなのはわかるけどねぇ。
 たまにゃあこういう手軽で簡単に出されるぐらいで満足する人種ってのはいるさね。
 オタクもそういう手合か。商人ってなら……偏見込みだけどそういうのも口にしてそうなイメージだったけどねぇ。
 ほら、儲けてる商人って女片手に抱きながらワイングラス持って宝石の指輪たくさんつけてるようなのあるだろ?
 そういうのって見栄えなのか本気なのかわからないよねぇ。
 金がたくさん手に入るからたくさん使う事をしてるのはイイ事だけどさぁ」

夏虎 > 「一時は一触即発って感じだったけど寧ろその一件で夫婦仲が深まったってさ。
 冷え込んでも帰りにくいこともありゃあ温まりすぎても帰りにくいって事もあるんだなって思った……」

息子の前でイチャイチャしやがんのよあいつらぁ? 何て、眉根は寄るわ目尻は下がるわ口は開くわ。
態とらしいぐらいに呆れ返ったような顔をしてから。態とらしすぎたと自分で噴き出して態度で言う程疎んではいないのは明らかに。
……声音の方は呆れのトーンが割と本気だったので何割かは本気なのだが。

「どうかな。あ、褒めてくれてありがとね?
 出世できるといいんだけど。嫁さんは欲しいからさぁ」

すらりすらりと出てくる褒め言葉が擽ったくって頬を抑えるし気恥ずかしいものの、
照れはあるが照れ隠しで受け取れないほど捻くれてもないので頷きながら受け取って。
パンを齧り取っては咀嚼したあとシチューを口に含めばしっとりと喉に入る心地も良い。
ほんと美味いこれ。と、頻り零しながらに喋りつつも手は止まらなかった。

「それじゃ、詳しい場所はあとで地図で確認してもらうとして……。
 このあたりじゃ獣人ってあんまり見掛けないからね、
 にしたって割高ってのは感心できた話じゃあ無いな。
 その点、まぁここぞとばかりに宣伝させて貰いますが? うちぁ適正価格でご安心。効能も保証しまっせ~」

彼女が程々のところで匙を置く頃には此方は食うのが早くてぺろりとパンもシチューもたいらげていた。
ご馳走様でした、と改めて両手を合わせる。

「開けてない時間帯にわざわざごちそうになってるんだ。結構良心的なお代だと思うけど?
 美味かったし今度はちゃんと夜にこさせてもらうよ」

獲物を仕留めて皮革ごと筋肉やら内臓やらを食い千切ることに向いた構造の彼女の口。
余りこういうものを食べるのに向いていないのだろうがそれでも器用に匙も使えて、
見たところ虫歯らしいものもないので手入れも伺える。
虫歯関連の痛み止めは必要なさそう。と、笑って人差し指を向けた。

「庶民なもんで。家庭料理のほうが高級なそれよか肌に合ってんのよ。
 ぁー……たまにいるね、ぎんぎらぎんなの、あれほんと趣味悪いと思うけど……ありゃ見栄が大半。俺ぁこれぐらい稼いでんだぞって周りにアピールすんのって大事でさ、要はそれだけ稼ぎ口がある、それだけ太いところを紹介できるしオタクにも良い思いさせれますよって感じの。女侍らせてんのは単純に趣味かね」

キーラ > くすくすとその楽しげに話す様子も相まって笑みがこぼれる。
他人の失敗談なりを聞いて吸う煙草は美味いものだった、特に話し上手な客とかは。
昼間からこういう話が出来る相手はそういない故、開店までの時間の暇つぶしには実際ちょうどいい。
客も楽しんでいるならさらにいいもんだ。

「ま、嫁は実際商人なら欲しい所だねぇ。自分の遺産を受け取るちゃんとした子供も欲しいし。
 フーはその辺り何とも長生き出来そうな気がするけどね。
 実際恋人とかいないのかい? 結構話し上手だし、見た目も王国人なら言い寄られそうな気もするけど。
 そんでもこの国じゃあ逆に女見つけるのは嫌ってんならわかるけどね」

仮にも自分が店を開いて経営している国に対する物言いでは絶対ないのだが。
ろくでなしが多いのはもう情勢からしてわかることである。
人は人の良い所を話すより悪い所を話す方が饒舌になりがちなもので、それはこの女も同じようだった。
ま、良い所もなくはないのだが。

「ミレー族とかと同一視されがちでねぇ。どうにも嫌がられる事が多いんだよ。
 そういう意味でミレーの扱いが違う北の方に一度行ったんだけどね。
 そっちはそっちで逆に持ち上げられてさぁ、なんか面倒くさくなっちゃった。

 お、ちゃっかりしてるねぇ~。そういうところは商人らしいって言った方がいいのかな。
 ン、お粗末様でした。それじゃあ期待させてもらおうかね、フーの薬師としての実力ってやつをさ」

なはは、と笑うさまは時々気品も感じられるかもしれない。
格好はキメてるが、案外貴族らしい正装をしてみればそれもまた絵になるだろうか。
互いに笑い合い、こじんまりとしたこういう酒場で話すのが性に合っているのはお互いそうだが。

「生まれてからの舌ってのはかなり子どもの頃の経験に寄るからねぇ、そういうモンだろうな。
 趣味は悪いけど、やっぱマフィアとかもそうだけど商人ってのはそういう外見のアピールってのが必要なんだねぇ。
 メンツってのは上に立てば立つほど考えなきゃいけないわけだ。
 ま、そういう奴はウチの店には来ないけど、たまに富裕地区とか歩くと見かけるんだよねぇ。
 趣味でやるって事は楽しいからなんだろうけど、フーはそういうのやってみたいとか思うのかい?」

改めて煙草を吸い終わり、灰皿に捨てながら残っている少し冷めているシチューを一気に飲み干す。
食べるというyろいは飲む辺り、匙よりもこっちの方が手早く食べやすそうだった。

夏虎 > くゆる煙が笑気に合わせて小刻みに溢れている様が笑いを誘うし楽しげにしてくれているのもあって口角は上がりっぱなし。
彼女も流石に客商売とあってか語り口は軽く話題もあれやこれやと絶えず、
夜にきたら結構繁盛していそうだと今はがらりとした店内にまた目が巡る。

「そうそうその通り。只、縁がなくてね、恋人なんかもぜーんぜんで……
 まあ、わかるよ? 今んとこ俺て稼ぎ頭としちゃちょっと難あり物件だ。
 面のほうはいいし腕にも自信あるし健康にも気ぃ遣ってんだけどやっぱ、
 こう、食わせてくって大事なところが抜けてるもんで中々ねぇ?」

彼女のいう“悪いところ”には自分も思う所があるので、それもあるけど、とはいいつつの、
己に至らない点が多々あるのも結構な要因を占めている自覚もあるので肩を竦めて見せて。
中々ねぇ? 何て困ったようにも笑ってから。

「ミレーとはかーなーり差異があんだけどやっぱ見慣れてないと見分けも付かんか。
 いや俺も獣人って種族に造詣が深いわけじゃないから一概にゃ責められんが……
 まぁでも苦労されてるところこう言っちゃ悪いけど。キーラさんが此処に居てくれて良かったよ、おかげで俺ぁ今いい目見てるから。

 ふふ、是非ご堪能あれ、腕に自信ありってぇところきっちり示さにゃな」

時折覗く、豪胆というか毅然というかの物言いや仕草に交じる気品。
ひょっとして結構いいところの出だろうか? とは、首を傾げかけ、
あれやこれやと詮索するのもあんまり宜しくないので口は噤んだが。
懐を漁れば皮革で仕立てられた小箱を取り出すと其れを開ければ紙巻きを一本取り出す。
其れを加えてマッチを一擦りすれば火を点てて煙草に移すと紫煙をもくりとくゆらせる、
辺りにはほんの少し甘めな香りに薬効の渋みがあわさったような少し変わった匂いがする。

「そうそう。さすがよくわかってる。メンツってのは大事でね、これなくてもいいけどこれないと駄目って人も一定数居るからどうしても必要で……
 俺はあんまりああいうのは好かんし女の人も特段侍らせたいってのは思わないなぁ。
 女の人に興味がないってわけじゃないんだけど抱くなら一人気の合う人と楽しみたいって感じ」

キーラ > 「ははっ、まぁ女なんて男が護ってナンボなのが世の中だしね。
 力であれ経済であれ病気であれ。それをちゃんと出来るのならかなり優良物件だけど。
 選り好みする女なんてすぐに売れ残るなり、理想が高すぎて時間ばっか過ぎるっていうのにねぇ。
 妥協しない精神なのは大事だとは思うけどさ。もう少し目をつぶった方がいい私ぁ思うんだよね」

食べ終わった皿をさっさと片づけて、厨房へと行って水受け台に軽く放り込む。
すぐに戻って来るが、厨房からはカチャカチャと洗う音が静かな今の酒場には聞こえて来た。
他に誰かいるのだろうか?

「はっ、私に感謝して今後も客として金を落としなさいな。
 店主様は神様なんだよ?」

ニィ、と自信ありげに笑った後、青年が懐から出した小箱に視線を向け、そこから彼もまた煙草を吸い始める。
しかし自分の吸う安物とはまた違った香りに、スンと鼻を鳴らす。
そのサマは本物の狼や犬が匂いを嗅ぐ動作と全く一緒だった。

「へぇ、そういうのも薬師ってのは作れるんだね。こっちは有料かい?
 もしよかったら売ってくれると助かるよ。たまには違う味も楽しみたい」

頬杖を突きながら興味深そうに紫煙をもくもくさせる青年を見る。
カウンターに軽く身を乗り出しているような状態で、薄着なキーラ。
そうなれば、胸部も軽く揺れながら強調されて。無意識なのか意識的なのかはわからない。
まぁ多分意識的かつサービス精神のつもりなのはここまでの様子でわかるだろうが。

「ふぅん。気の合う人ねぇ……私とかどう?」

親指を自分に向けて、本気か冗談かはわからない、そんなトーンで自信ありげに青年を見る。

夏虎 > 「男としちゃ守ってあげたいしね?力と病気はまぁ何とかなるにして、いや凄い褒めてくれるね? ふふ。顔熱くなるわ。
 ぁー。偶に聞くなぁそういう話って。うん、それで婚期逃すってぇのは可哀想ってーか……」

人を褒めるのはとまれ自分が褒められるとどうにも擽ったくって仕方が無いものだ。
頬に朱色が差す、程でないにせよ何だかシチューを頂いたそれとは別件で熱くなってきた頬を撫でては、
もーやめてぇー。何て可笑しそうにくつくつと喉は鳴るし肩も語調もそれにあわせてくつくつと揺れて。
平らげたお皿を、改めてごちそうさまでしたと差し出したあとに引っ込んでいった向こう側から、
洗い物を片付けている音が目前に彼女がいるというのに響いてきたから、うん? と片眉を上げ。

「神様にそう言われちゃったら逆らえませんやね? ふふふふふっ」

がま口財布でも開けるような手探りで真似をして、
お客様は神様ならぬ店主様が神様なんて台詞にまた笑気が一つ。
これ? と、唇を噛めば煙草をゆらゆらと揺らし紫煙も揺らし、
小箱を閉じる前にもう一本取り出してから彼女に向けて差し出す。

「店にゃ滅多に並べないけれど。殆ど趣味で作ってるものだし。
 いいえ、タダよ、どーぞ? 喉がすーっとするから気ぃ付けてね」

製造法は企業秘密。と、いうか、少々マイナーな煙草葉や香料と少々の薬剤を混ぜ込んで作ってあるためアレコレ説明してもピンと来にくいだろうから簡単な説明だけに留めておいて。
彼女の鋭い嗅覚には煙で燻す前から喉や鼻などに微炭酸を含んだような刺激と清涼感が感じられるだろうか。
ふと、乗り出さなくとも取れるだろうに、これ見よがしとばかりに撓み弾む乳房の実りへ……
視線がついついやっぱり釣られてしまって下へと落ちてしまうとまじまじと見てしまった。
ご馳走様です! 何て、彼女も自分の視線が落ちるのは解ってるだろう悪戯に笑って答えていたら、

「へ?」

私とか。続く言葉に間の抜けた返事になってしまい唇からぽろっと煙草が落ちた。
何処か焦がす前に慌てて、中空にあるうちに指で掬い取ったが。

「どうも何も。いいえ、て言える男居ないって。俺? 勿論言えません」

こんないい女に誘われたらいちころです、とばかり。胸を撃ち抜くように自分の胸板を親指で突いて、笑う。

キーラ > 暖炉の火で熱くなったのか、それ以外で熱くなったのか。
火照った彼の頬を見て「ニヒヒ」といたずらっぽく笑う。
笑みの種類が多く、表情の変化が非常に富んでいるのが彼女の自信だった。
声や話題は無論、しっかりと表情もコロコロ変えれば相手も反応を見たくてさらに話したくなるもの。
まぁそうでなくても素で表情が変わるから、別にテクニックでもなんでもないのだが。

「かみさまのおーなーりーっ。首を垂れて銭をだせー。
 なーんてね。神様なんて割といるけど、実際語利益に預かれるのなんてごくわずかだからねぇ。
 その点私はちゃんと価格に見合うかは別として語利益は授けちゃうよん」

ムニ、ともちもちとしている頬が歪んで僅かに歯が見える。
細目を開けて薄く笑む姿はなんとも言えない味わいがあるかもしれない。

「んじゃあもらっとくよ」

そういうなり、間抜けな顔と間抜けな声を出した青年の口から落ちる煙草を代わりに掴む。
その吸いかけをなんの躊躇もなく、自らのマズルへといれて、すぅ、と軽く息を吸って。

「げほっ! あぁ、こりゃ確かにスーッとしすぎてミント飲み込んだみたいだわ。
 香辛料で口臭をかき消す粉末みたいな感じ。慣れないと咳き込むねぇこれ」

軽く咳き込みながらも、少しずつ慣れたように煙を肺に入れる。
乗りだしていた上半身を戻して、カウンターに軽くよりかかりながら立つ。
胸板を叩く彼の方に、片腕を伸ばして「ツン」とその胸板を自分も突き。

「んじゃま、一本木になれる女をさっさと見つけておくんだね。
 あんまり時間をかけるとおっさんになって、フーが婚期を見逃すかもしれないよ?
 若いんだから早めに、その青少年のリビドーの赴くままにやってみなって。
 私は責任持たないけどね!」

夏虎 > 悪戯成功とでもいった茶目っ気たっぷりの含み笑いに、白旗があったら上げていたところだ、旗の代わりに掌を肩付近まで上げて降参のポーズ。
手で抑えていたら余計熱が籠もってしまって結局ちょっぴりと赤らんだ頬を晒し、
舌戦ではとても敵わないがそれも楽しいと思える歓心を含めて一言お見事と呟く。

「銭を弾めば弾んだだけ美味い飯と楽しい会話付きとはいい神様もいたもんだ。
 無宗教だったが今日からコリンズ教に入信しちまいそう」

あんな顔こんな顔にひひと悪戯っ気な笑顔にちょいと得意気? なにんまりむんにり撓む顔。
ころころと変わる表情に視線は引きつけられがちだ。
たっぷりたわわな乳房から何とか視線を引き剥がすとやはり面構えへと向き直り、

「ああ、ありがと。いやぁ、びっくりしたよ、もう」

女関連少々奥手。間接キスぐらいは流石にそれで恥ずかしがる程初心でもないが先のは驚いた。
もう。何て不満そうな事は漏らすが声音も顔付きもそんな気配は微塵もない。

「気に入ったんなら今度薬膳の材料やら献立やら持ってくるときに一箱用意してくるよ。
 余り物遣って作ってるとこあるし俺の完全手作りだからあんまり量は用意できないけれど」

此れもついでにセットで。と、皮革仕立てのシガレットケースも揺らして見せてから懐へとしまいこみ、
彼女用に取り出したものを改めて自分の口に咥えてマッチを擦って火を点けてから一息を紫煙と吐く。
つんと突かれた指先には、ニットの生地越しでも、ぱっと見は細身なのだがよく絞り込まれた胸筋の硬さが感じられるだろうか。指先の間隔も鋭敏なら、二つにくっきり割れて盛り上がっているところまで感じれるかもしれない。

「俺はおっさんになってもすっごい良い男に決まってるからそのへんは大丈夫でーす。
 でも、若さに任せるってのはたまにはいいかもね?
 俺こういう話になるとどうも気弱なとこあっから……
 今度お店お邪魔する時にゃキーラさんだって誘えるようもうちょい踏ん切り付けるようにしとくよ」

自分の面構えを指差して見せ。薬師としての腕と面構えに関しては少々自信過剰気味なところある。
経済力と、踏ん切りの弱さ、この辺り課題だよなーって肩を竦めて。

キーラ > 呟かれた声には何も言わず、ただ細めていた目をつぶって耳をぴょこぴょこ動かすのみ。

「お? じゃあ信者第一号はフーだな! これからたくさん我を養いたまえー。
 ……なんだかこうするのもいい気分だね。楽しくなっちゃったよ」

ニヒヒ、と不満そうな息を吐く彼を見ながら共に紫煙を吐く。
こういう時、吸い友がいると気が楽になれていい物。というのは本人の談。
指先に感じる感覚に、やはりただの薬師ではないな。と思う。
まぁ一般人かどうかは置いといて、知識も体もちゃんとしてるならいいことだ。
うんうん、と勝手に一人で何度もうなずき。

「おっさんになったらいい男でも、体力の方は若い頃ほどじゃあなくなるもんだよ。
 腰が痛い肩が痛い、足が痛い顎が痛い。なんて漏らすようになったら立派なジジイさ。
 そうならないように健康でいたいもんだねぇ、私も」

ぷはぁ、と浮輪の煙を作り、さらにそれよりも大きな輪っかを何度も吐き出す。
さながら簡単なアートのようだ。口が大きいから出来る芸当なのだろうか。
さらには紫煙の輪に指を入れて軽く動かせば、他の輪っかに煙がまとわりつくようなヴィジュアルへと変わる。

「私を誘うんだったら面白い芸の一つや二つぐらい見せるんだね、こんな風に。
 んまっ、あたしは安くない女のつもりだから誘うんなら本気じゃないと認めたげないから。
 せいぜいがんばんな若人。さて……臨時営業はそろそろ終わりに差してもらうか」

吸い終わった煙草を灰皿にまた捨てて。青年が吸い終わるのを見つめる。

「それ終わったら今日は帰んな。またのご来店待ってるよ。
 吸い終わるまでは話はすっけど、いちおう買い足さなきゃいけないもんがあるってさっき気づいたからさ。
 悪いね、もっと話したかったけど」

夏虎 > 「あっはっはっは、一号の名に恥じないためにもばんばんお賽銭しないとなぁー」

吸い友、に親指立てる。
普段から吸う事が実は少ないため友達がそもあんまり居ないが吸い友はもっと少ないので嬉しい事だ。
胸筋がこうなら腹筋といい腰回りといいもかなりの引き締まり具合である、
肌を隠すような格好で着痩せする質なためぱっと見はそうは見えないが……
彼女の頷きに得意気に口元も目元もにんまりと弛めて見せてはまた笑って。

「それは確かに。昔ほど身体が動かない、て、うちの常連さんからもよく聞くよ、他人事じゃないから用心せにゃ。
 キーラさんもそうならないようにうちとは末永~いお付き合いをお願いしまーす」

医者の不養生なんてことにならないように。
精進は心がけつつさらっとまた宣伝を加え。
面白い芸、というと……それは例えば、と聞く前に披露される幾つもの輪っかと手遊びにうねる様子に、おー、なんて感心の声を上げて。

「煙でハートマーク作るぐらいなら出来るんだけどそれは……んー。要練習かぁ……。
 そりゃもう。口説くとなったら誠心誠意やらせて貰うよ、一晩だけとかケチな事言わない」

次までに決心付けとかないと。その辺りは内心で固く拳を握りながら店仕舞いには一つ頷く。
紙巻きの大半が灰になったあたりで灰皿を拝借してから揉み消してから席を立つと、

「いやいや、態々開けてくれてありがとうね、次もなるたけ早く顔出させて貰うよ。
 それじゃあ今日はご馳走様でした」

鞄の中から革紐で括られた革財布を出しては広げて先に提示されたお代きっちりお釣りないように差し出した後に両手を合わせて本日のお礼を。
顔貌といい格好といいが王国人だから北方式の謝礼がどうにも似合わない。
……まあそれはいいっこなし、とは、自覚しているので笑って流してもらうようお願いして、
そのあとにはくるりと踵を返しては手をひらひらと振りながら扉を潜り積雪の店外へと出ていく事に――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からキーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から夏虎さんが去りました。