2023/12/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にアニタさんが現れました。
アニタ > 冬至の祭り時――さらに昼の酒場前ともなれば、内も外も喧騒そのもの。
溢れんばかりの活気に満ちたそんな場所のすぐ前で、小柄な少女が男に肩を掴まれていた。
格好を見るに――防具こそ外しているが、冒険者だと言うことが分かる。
彼に詰め寄られ、少女がその身を縮こめた。

「い、いえ、あの……でもそろそろ……」

「えー、飯ぐらい良いじゃん?」「一緒に依頼クリアした仲間っしょ!」

そんなことをまくし立てては少女を酒場へと誘っている。
――純で鈍い少女でも、流石にその下心には気づいている。故に何とか断ろうとしているが――
だがそのうち細い肩を抱く様にし、
下心丸出しの笑顔で「いいじゃん」と繰り返しながら店内へと連れ込もうと。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 己の半分の年齢も生きていないであろう小柄な少女に絡むのは中年の冒険者の男。
ギルドを通じた依頼を共に果たした事を口実に、下心を隠そうともせずに笑顔を浮かべ、
その細い肩に手を掛けると、強引に押し込むようにと酒場の扉を開いてカウベルの音を鳴らす。

「じゃ、一杯だけ一杯だけ。
 冒険者同士、連携を円滑にする為には酒の付き合いも必要だぞ。
 こいつは、学院じゃ教えない処世術だけどな」

真昼間の酒場に堂々と少女を連れ込んだ中年は、ベテランの域に達する冒険者であると同時に、
彼女が通っている王立コクマー・ラジエル学院で臨時講師を勤める事もある男。
少女を伴い、酒場のカウンターへと赴けば、椅子に腰掛けながらマスターへと目配らせする。
それを受けた店主は、やや呆れ顔を見せながらも、度数の高い酒をグラスに注ぎ、二人の前へと差し出してくる。
酒に強くない者が呑めば前後不覚に陥りかねない酒を何も言わずに提供する辺り、
これが彼の常套手段であり、店主も半ば共犯めいたやり取りである事を物語っていて。

アニタ > ぐいぐいっと押す力は強くないものの抵抗しづらく、どうにもその手を強引に振り切れないのは、
通う学院で何度か教えを乞うたこともある恩師だから――なのだろう。
扉の向こうから流れ来る美味なる香りや喧騒は、少女の空腹と依頼達成の疲れを大いに刺激するものでもあった。
故に少し苦笑いしながらも彼に誘われるままに酒場へと足を踏み入れる。

「もう……分かりました。……先生のお言葉ですし。
あ、でも本当に一杯だけですよ。外、まだ明るいですし」

親子ほども歳の離れた男だったが、故に父親を慕うような心持で気兼ねなく交流することが出来た。
少なくとも少女からは、学院では。
――彼に続いてカウンター席へと腰かければ、「仕方ない」なんて態度で指一本立ててみせる。

程なく――差し出されたグラスを小さな両手で包むように掴んでは、「乾杯」と彼に桃色の唇で微笑んだ。
ぐい、と口元で傾けては喉が大きく蠢く。

トーラス > 「幸い、冬至の祭りの真っ最中だ。
 昼間っから酔っ払いもいる位だから、気兼ねもいらないだろ?
 ――――乾杯」

外の大通りも喧騒に満ちていたが、店内も満席に程近い。
ぐるりと見廻して見れば、各卓では既に顔を赤らめて酩酊する酔客と、
彼らのテーブルについて配膳や酌をする綺麗どころの女達の姿が見えるだろう。
酒場と言っても、提供するのは飲食物のみならず、店の奥には簡易な宿泊施設を兼ね備える。
女給達は接客をするだけではなく、下の方でも男達を持て成すという、そういう店であり。

「んっ、ぷはっ。この酒、中々に強いがイケるだろう?
 冒険時の痛み止めなんかにも使える奴だから覚えておくと良い」

一杯、グラスを飲み干せば、店主から酒瓶を受け取り、その瓶のラベルを相手に見せる。
さり気なく銘柄を紹介する振りをしながら、相手のグラスに追い討ちのお代わりを注ぎ込み。

アニタ > 「……ほぁ。
おいしい……」

こくん、こくん、と細い喉が動く。大きく、ゆっくりと。
――グラスから唇を放した途端、熱の籠った色気すらある吐息を零した。
喧騒に満ちた酒場の中で、彼だけに聞こえるような声でぽつりと一言。
それから上げたその顔、頬は、眼帯を着けていても分かるほど桜色に色付いている。

「はい、あまりお酒……は慣れないんですけど、コレ、美味しいです。
あ、あ……ど、どもです。
――痛み止めにも? 確かに効きそうです……!」

掲げられた酒瓶へと千里眼を向けていれば、再びなみっと溢れるお代わりの一杯。
慌てて両手でしっかりとグラスを支え、礼を言う。
と、注がれた酒を見下ろし、一瞬「まだ大丈夫かな?」と、ためらいを見せるも、再び喉を蠢かせた。

――まあそんな調子で飲んでいては、あっという間に酔い潰されてしまうというもの。
さほど時を置かず、カウンターに突っ伏すなりしている少女の姿が見られるだろうか。

トーラス > 一杯目のグラスは相手の警戒心を解くためにも、率先して一息に飲み干し、
されども、二杯目からは横目で彼女の具合を窺いながらちびちびとグラスを傾ける。

「他にも薬草を漬け込んで消毒に利用できる酒なんかもあるぞ。
 川の水でも腹を下す事があるから、水分補給の為にも冒険に酒はつきものだ」

酒を呑む代わりに話す方へと専念して口は廻り、まるで課外授業でも行なっているかのように、
冒険のノウハウを少女へと語って見せる。
同時に、適度に彼女に酒を勧め、やがて、酔い潰れるのを見て取れば、口端を緩め。

「……ん? アニタ、大丈夫か?
 ――――飲み過ぎたかな。無理せず、少し、休んでいこうか?」

懐から銀貨を取り出して、マスターへと微笑み掛ければ、無言で鍵がカウンターの上に置かれる。
それを受け取れば、少女の身体を抱き起こし、彼女を支えながら店の奥の部屋へと連れ込んでいき――――。

アニタ > 先生が率先して飲んでいるのだから――と、グラスを煽る頻度が増したのは確かで。
まだまだお子様な少女の舌、喉からしても美味しいそれを、くぴくぴとまるでジュースのように飲んでしまう。
と、なればあっという間に酔いは回っていく。
すぐ傍のはずの彼の言葉が遠く、酒場内の喧騒などはまるで彼方からのように聞こえてくる。

「あ、薬草……の、お酒……は、村にもあった……か、も……
せんせ、は――」

と、何か言いかけたところでダウン。ぐでっと体重をカウンターに預けてしまった。
真っ赤な顔で彼に抱き起され、「大丈夫か」の言葉には「大丈夫です」と、舌足らずに答えるも自分からは動けず。
支えられて店の奥へと消えていったのだった――

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からアニタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイグナスさんが現れました。
イグナス > 冷える。雪がぱらぱらと降り続けて、もうだいぶ積もってきた。
ハ、と吐き出す息は、その巨大な体躯に比例するように大きく、ふかい。

「ええい、くそ。」

付く悪態も、ちょっと大きい。頭に雪を積もらせながら、これで何件目だろうか。

『いきなりの雪につき食材がないため、本日もう閉店』

そんな張り紙を見かけるたびに零れ落ちているのだった。
たまたまにしてもこんなことあるか、って文句もひとつ。
何件目かの扉の前、遅い時間、暗闇の中、降りしきる雪の中で身体を抱えるように抱いてまた悪態が、ひとつ。

「くそう。……はらへった。」

ぐぬぬ、と呻く代わりに、ぐぅう、とおなかが鳴った。
やっぱり体躯に比例するように大きく、雪の中に吸収もあまりされずに響くんだった。